さようならピストンズ’22

◎変わるヘイズ

ボールを持たずに素晴らしいプレーを披露し、決まらなかった3Pを早々にアジャストさせ、コートを広く使うオフェンスでチームを改善させていったカニングハム。ここまででも十分すごかったのに、その真価はまだ先にありました。初めにその兆候を見せたのは迷子だったキリアン・ヘイズでした。

チームオフェンスを中心としたユーロからやってきて、個人で打開するアメリカバスケにフィットできずに困っているヘイズ。特にピストンズは個人の傾向が強いから、なおさら困っているね。どうしても得点力の低さがネックになってしまうわけで、それは今シーズンも何も変わっていません。

〇ヘイズ
6.3点
2P43.1%
3P27.0%
4.3アシスト

ドラフトに失敗したともいえるし、ゲームメイカータイプを連れてきたのに、個人技アタックさせているHCが悪いとも言えるし。いずれにしても明確にフィットしていないヘイズなのですが、今のピストンズの試合を見ると「えっ?こんなにスタッツが悪いの?」と感じてしまいます。つまりは、低調なスタッツに反して、試合でのヘイズは活躍し始めています。

1年目と比べてアシストは減り、FGも向上していないにも拘わらず「改善している」という不思議な状況ですが、とにかくカニングハムとの相性の良さが目立っています。極端な話でいえば

カニングハムとヘイズの2人の関係性でチームオフェンスを生み出している

まぁこれは言い過ぎですけどね。ただ少なくとも個人技アタック以外の形でオフェンスを作ることができるようになりました。シンプルに言えばヘイズはオフボールの動きでディフェンスのギャップを使い、そこにカニングハムからパスが出てくるから、次の展開へと繋げ、ヘイズ自身は再びディフェンスの死角に入り込む動きをしていきます。

これって実はシーズン当初のカニングハムに似ているんだよね。チームの戦術に縛られて苦しんでいたようなヘイズですが、まるで「なんだ、自分のイメージ通りに動いていいのか」と気が付かされたかのように、プレーのスタンスを変えていきました。それはボールを持つ時間とドライブ数に出ています。

〇平均ボール保持
5.04秒 ⇒ 3.99秒

〇ドライブ数
11.1回 ⇒ 6.0回

自分でボールを持ち、ドライブから何とかしなければいけなかった昨シーズンでしたが、今はPGにカニングハムがいることも含めて、オフボールでパスを引き出すことが増え、ワンタッチでの展開も増えたのでボール保持時間が1秒近く短縮されました。それでいてドライブ数を半分にしながら、オフェンスには立派に絡めています。あとはFG成功率があがればね。

〇オフェンスリバウンド
0.2 ⇒ 0.6

〇ターンオーバー
3.2 ⇒ 1.8

ヘイズはトップのポジション以外でもボールに触れるようになり、ギャップを突くのでオフェンスリバウンドが3倍に。逆にターンオーバーは大きく減らしています。なお、ここについては減りすぎたら積極性に問題があるので、今が良いわけでもない。

いずれにしても、なんとなくドライブアタックに縛られていたようなヘイズのプレーは大きく変わりました。今の方が本来のヘイズなのかもしれません。素晴らしいパスセンスは変わらず、自らもパスターゲットになる動きを積極的に混ぜるようになりました。個人よりもチーム戦術でやりたいユーロらしさ。

〇パス数
ヘイズ ⇒ カニングハム 8.2本
カニングハム ⇒ ヘイズ 6.7本

ヘイズから見ると最も多くのパスを出す相手も、最も多くのパスを貰う相手もカニングハムになりました。昨シーズンはスチュワートからパスを貰う事が多かったのですが、それは主としてリバウンドからのパスです。パサーとしては昨シーズンも機能していましたが、レシーバーとしてはコーナーシューターくらいだったヘイズ。それが

「ガード同士のパス交換」が大きく増えた今シーズン

ということになります。これがヘイズにとって非常に重要な事で、お互いにボールを預けてからのオフボールが効くようになったので、プレーの幅が広がっています。カニングハムから見ても自分以外に違いを作ってくれる貴重な相棒感があります。

まだまだフィニッシュ力に課題が大きいヘイズですが、カニングハムが頭角を現すにつれて、ヘイズも大きく改善してきました。ピストンズのオフェンスシステムで輝こうとして苦しんでいたヘイズが、多彩なカニングハムによってシステムから解放されたようにも見えるのでした。何でもできるし、チームメイトの良さを引き出せるカニングハムにより、当初の戦術にはなかったコンビネーションが生まれ始めたガードコンビ。

変わるチーム ⇒

さようならピストンズ’22” への7件のフィードバック

  1. 素晴らしいブログをありがとうございます!

    ピストンズファン以上にピストンズのことを分かってくださっているように感じました!

    おっしゃる通りもはやピストンズはカニングハムのチームです!

    これからのピストンズに栄光あれ!

    1. とても良いですし、駆け引き系統なので、ディフェンスもカニングハムナイズされてます。
      一生懸命守るだけだった昨シーズンとは、アクションの数が違う!

  2. 個人的に今シーズン見てて1番面白いルーキーであり
    フィジカルでもスキルでもないのに
    見ている側に強烈にインパクトをあたえるプレーは圧巻でした
    まさにドラフト1位といった
    特別なルーキーだと思います

    1. 間違いなく「上手い」と感じさせるのに、ワンプレーそのものは普通なんですよね。

  3. クインスナイダーがジャズから去るんじゃないかという噂がありますが、ピストンズでカニングハムとケミストったりすると面白いなと。

    1. ゴベアを有効活用しているスナイダーですが、それがネックなのでスチュワートやバグリーの方がいいかもしれませんね。

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