◎タウンズが悪い
カンファレンスファイナルでの敗退後、すぐに出てきたのが「タウンズのディフェンスのクセに多くの選手が不満を抱いていた」というウワサでした。これぞまさに戦略の問題を「人」で解決しようとするから、戦略の問題なのに「人」が悪いという流れです。
ペイサーズのオフェンスの主な狙いを挙げていくと、こんなところになります。これに対してミッチェル・ロビンソンとタウンズを並べるスターターにしたことを交えて考えてみてください。
・ウイングの走力差で生まれるトランジション
・ハリバートンvsセンターのスピードのミスマッチ狙い
・ビッグマンのスクリーンで発生するドロップを狙ったプルアップ
・ブランソンのルーズな対応を狙ったガードのスクリーン交換
ゲーム2ではシアカムのランニングが目立ちましたが、ツインタワーにしたことでタウンズがシアカムの相手をすることになりました。ポストアップの1on1では割と上手く守っており、シアカムのことが苦手なハートよりもベターではありましたが、それ以上にフリーランニングから生まれるワンパス速攻の増加がニックスを苦しめまくりました。
もちろん、ミッチェル・ロビンソンがオフェンスリバウンドに絡んでくれるので、その分だけ速攻を減らすことも出来ていましたが、それって今シーズン12.3リバウンドも奪ったタウンズに徹底させる方法もあったし、ハートはオフェンスリバウンドを取りまくりでした。
「オフェンスリバウンド徹底」は戦略の問題だが、ツインタワーという「人」で解決に向かった
これだけだったら別に問題はないのですが、シアカムに走られまくるという副作用がでてしまっただけでなく、ハリバートンvsミッチェル・ロビンソンで失点を重ねてしまいました。ここで負けまくるからミッチェル・ロビンソンのプレータイムが減ってしまったしね。「人」で解決しようとして、別の部分で穴を広げてしまったわけです。
大逆転負けを食らったとはいえゲーム1はほぼ勝ちゲーム、ゲーム2は3点差の接戦だったのだから、本当にそこに問題があったのかっていうね。確かにゲーム3はミッチェル・ロビンソンとタウンズを並べて勝ったけど、それが全てだから「人」で勝ったような空気でした。これがタウンズを諦めてのミッチェル・ロビンソンならば理解も出来るけどさ。
また、センターが2人になったことでビッグマンとのピック&ロールからの攻略が楽になりました。シアカムにアヌノビーがついていたらハンドラー側はスイッチ誘導したくないけど、それがタウンズなら狙いやすい。なのでターナーとシアカムの2人がスクリナーとして有効になったことは、最終的にシアカムがMVPを取ったことにも繋がっています。
ツインタワーにして穴を増やしすぎただろ・・・
さて、問題は最後の部分です。「タウンズのディフェンスが・・・」というウワサが出たけど、このカンファレンスファイナルではスクリーンからの連携に問題があり、それは個人ではなくチームの問題でした。タウンズ責めても仕方がないというか、むしろミッチェル・ロビンソンの方が狙われていたしね。
それ以上にターゲットにされていたのはブランソンのディフェンスです。ブランソンにマッチアップされた選手がスクリーンでスリップやらゴーストやらを多用し、スイッチするどころかショーディフェンスすらするきのないブランソンによって、いとも簡単にハンドラーがドライブできる体制を作っていきました。
〇ブランソンのオン/オフ
オフェンス 114.3/114.8
ディフェンス 122.8/104.7
ネット △8.5 /+10.1
ブランソンはスターターで最も悪いネットレーティングを記録しましたが、ディフェンスが最低の数字だったことが要因です。明らかに狙われまくっていたブランソン。しかもタウンズとアヌノビーは他のスターターよりもネットが優れていて、オン/オフでの存在価値もはっきりしていました。ディフェンスがニックスの問題で、そこにはビッグマン以上にガード陣の苦しさがデカかった。なお、ミカルもブランソン同様に悪い。
〇アヌノビーのオン/オフ
オフェンス 115.4/113.8
ディフェンス 115.7/122.5
ネット △0.3 /△8.7
〇タウンズのオン/オフ
オフェンス 114.2/116.5
ディフェンス 115.2/121.3
ネット △1.0 /△4.9
「タウンズのディフェンスが良かった」なんてことは口が裂けても言えませんが、ニックスディフェンスの責任をタウンズに求めるのは、ちょっと厳しいものがあります。少なくともペイサーズ戦については。
ディフェンスは戦術面に問題があったが、「人」に答えを求めたことで更に問題が増えた
墓穴を掘ったようなカンファレンスファイナルでした。1年前に負けた相手に対して一体何をしたかったのか。カンファレンスファイナルまで来たことが台無しになったシリーズだったことは間違いなく、シボドーがクビになっても何も言えないのも事実です。
ただし、シボドーがこういう戦い方をすることは周知の事実だし、そのためのメンバーを揃えたわけじゃないか。言ってしまえば悪いのはシボドーではなく、チームの中期方針であり、むしろこの戦い方で結果を出したシボドーって戦術以外の部分で凄いのだろうなー、とも思います。
ブルズ時代も結果を出してローズに大ケガを負わせる結末だったり、ウルブズ時代もプレーオフへと進めてバトラーが反旗を翻して出ていく結末だったりと、上手くいっては上手くいかないというシボドー。
ツインタワーでDFの穴を増やしたのはそうなんですが、それは結果論であって、GAME2後の絶望感を思えば、あの選択しかなかったと思います。
問題は、人で解決するにしても、怪我でシーズンの大半を休んだミチェルを入れる以外の選択肢を用意できなかったことなのかなと。
ニックスファンとしてはティブスには感謝しかないのですが、シーズン通してここまで戦術が何も積み上がらないものかと嘆いてプレーオフに入ったのも事実なので、結果は予想を遥かに超えるシーズンでした。
それだけに、レオンローズの判断の早さには驚きましたし、ここで交代なの?って感じもあります。いずれにせよ、遂に優勝以外は失敗の位置まで来たことは、20年以上の暗黒時代を思えば嬉しさしかないのですが笑