ダイナスティとは遠きもの

◎カーライルとダグノート

ウルブズが始めたトリプルタワーはタウンズとリードのシューティングがあるからこその戦術でしたが、それをアダムスとシェングンでやってきて「リバウンド勝負」にするロケッツの恐ろしさが生まれた今シーズンでした。

その前に生まれていたプレータイムシェアからのオフェンシブハードワーク軍団ペイサーズと、ディフェンシブハードワーク軍団サンダーは新たな価値観をリーグにもたらし、そしてプレーオフの勝利によって正当化してきました。

3年前にはプレーオフに出ていなかったチームは、単なる戦力アップではなく、他にはない特殊な戦術スタイルで勝ち上がり、対策もアジャストも難しくしてきます。

シュートを決められた2秒後にはフロントコートへボールを運んでいるようなペイサーズ。特別なハンドラーがオフェンスをクリエイトしていた時代だったのに、だれがいつ何を担当するのかわからないトランジションアタック。

しかも、両コーナーにいる選手は異様な確率で3Pを決めてくる。それでいて個人レベルでも違いが生まれる謎の戦術。ペイサーズにいればジェイレン・スミスは驚異的なフィニッシャーになるんだ。今のニスミスとトッピンであればセルツもニックスも手放さなかっただろうに。

ペイサーズ相手にはスローダウンが有効に見えるけれど、次から次へと選手交代して走ってくるので最終的には走り勝つしかなくなり、走り勝とうにもスタミナはペイサーズの方が一枚上手。対策がないわけではないが、ペイサーズ対策を優先したら他のチームに対応できなくなってしまいます。

信じられない平面ディフェンスで襲い掛かってくるサンダーも同じくベンチメンバーをフル活用してくるので、スタミナ差で追い込まれてしまいます。高速ローテは次に誰がどこへカバーに来るのかなんて考える時間すらも作ってくれない。なんせボールよりも人の方が早く動くという変態組織ディフェンスです。

確かにヨキッチがボールを運ぶことでアドバンテージを作れるけど、ヨキッチを手に入れるなんて方がよっぽど難しい。サボニスレベルでも潰されてしまいかねないので、特殊な選手がいるときにだけ成立する対策になってしまいます。

スモール戦術の醍醐味を存分に発揮してスティールと速攻がリーグ最高なのは理解できても、ペイント内失点はリーグ最少でブロックはリーグ最多になるのもアンビリバボー。スモールのセオリーを持ちながらスモールの常識を無視するディフェンス戦術は対処のしようがありません。

あぁなんと難しきダイナスティ

本当に恐ろしいのは後ろからやってくる新たな戦術。共にプレータイムシェアが可能になっているのは再建段階から選手を集めているから。トップチームには難しい選手層と継続した戦術養成。なので、この両チームすらも数年後には選手層に困る可能性があるわけだ。

他のチームでは活躍しそうにないベンチメンバーが大活躍するペイサーズとサンダー。誰もがうらやむ選手層だけど、誰もがうらやむ戦力ではない。後ろから来たチームにだけ許されるような特殊な選手層になっています。

しかも、ペイサーズが厄介なのはネムハード、ニスミス、ターナーと弱点のディフェンスで個人オプションを持っており、プレーオフの「対策とアジャスト」でアドバンテージを作っていること。

そして最強のディフェンスチームであるサンダーには、SGAという最強のスコアリングマシンがいる。相手からするとSGAを止めるのが最大のミッションなのに、サンダーの得点パターンはスティールからの速攻だしさ。

あぁなんと難しきダイナスティ

前を行くチームに勝つための努力をしていたら、後ろから来たチームの戦術に対処するのが極めて難しい。でも後ろから来たチームはちゃんと対策を持っている。勝ち続けるには3手先をいく戦術を持っているか、戦力で押し切るのが必要不可欠。そんなのサラリーキャップの奇跡でもない限り難しいじゃん。

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