◎日本対策とは何か
銀メダルの紋所は日本国内以上に、他国に対して有効で「日本相手には十分な対策をしなければいけない」と認識されていました。オリンピック時に出来たことが、この大会で出来なかったのは、主力の欠場以上に対戦相手の周到な準備がありました。
特にセルビアは日本をターゲットにしていました。デンソーの元HCが率いていることもあり、日本選手の事を熟知しているし、「日本に勝てば決勝に進める」という認識を持っていたわけです。
ちなみにWC予選で日本が負けたボスニア・ヘルツェゴヴィナは、もう一方の予選リーグで全敗しており、実力的にも日本をターゲットにするのは正しいジャッジだったようです。ジョーンズがいて全敗するとは思わなかったよね。
ちなみに「ホーバスなら」という点については、男子が似たような対策をされてイランに連敗しており、解決しなかった問題だし、前述のウイングへ展開できないことが最大の課題なので、同じ結果が待っていたとしか思えません。
全てガードから始まるので潰しておこう
or
ガードはパスをしたがるのでヘルプは少なくしよう
女子の場合は特にハッキリしていましたが、PGオフェンスなのでPGのところさえ対策しておけば、わりとイージーに止めることが可能です。ロケッツ相手に「ハーデンさえ止めればOK」みたいな状態ですが、ハーデンレベルの選手はいないので、割と楽に対策されてしまいます。町田がハーデンなら話は別だけど。
対策の1つは、
ピックプレーに対してブリッツ気味に仕掛け、PGをハーフラインくらいまで撤退させる
でした。プレッシャーから見事にターンオーバーを繰り返してしまったし、サイドにパスを出してもリターンが戻ってくるだけでした。
もうひとつは、
シンプルなスイッチ対応でPGへのカバーを減らす
でした。要するにカバーが増えれば、誰かが空いてしまい、そこから3Pを打たれるので「徹底してマンツーしろよ」です。これもダントーニロケッツのスイッチングディフェンスに似ているね。
要するに「5年前のバスケ」ってことだ。わかりやす。この対策については、東藤がわかりやすくコメントしてくれています。
「セルビア戦以降は、フォワード陣やシューター陣に対してマークが、ヘルプに寄らずにずっとついていて、圧があったというか、守られているなと感じていました」
「この大会では、ズレを作れなかった。ズレのなさを感じました」
余計なヘルプをしないこと、PGでズレを作られないこと。日本対策はシンプルです。
今大会はターンオーバーが目立ちましたが、それはPGが絡むケースが多く、ディフェンス側がターゲットを絞っていました。日本のPGはペイント内に侵入してくるのですが、そこでアウトサイドを空けてしまう方が危険なので、ペイント内が同数の勝負を選ぶわけですが、フィニッシュ精度が低い日本の特徴を狙われました。パスは怖いけどシュートは怖くないってね。町田がWNBAで苦戦している理由でもあります。
だからこそ町田よりも本橋が欲しくなったわけです。言い換えればオリンピックは町田に慣れたところで、本橋を投入することで相手のディフェンスを困らせました。本橋のプレータイムは決勝トーナメントになってから10分を超え、ベルギー戦10点、アメリカ戦16点と相手に対策されてから本領発揮って感じです。
おそらく、この役割を山本に担わせたかったのでしょうが、スターターで起用されたり、安間に続く3番手になったりと、使い方は曖昧にみえました。あとシンプルにシュートが決まらないから怖くなかったし。
PGにミスが多かったのか、PGのミスを誘われたのか。
後者にしかみえなかったんだよね。特に酷かったのはサイドにパスを出したら「PGへのリターンパスを狙われる」というシーンでした。カナダ戦だったかな。
それくらいPGばかりがアクションしてくると思われていたわけです。PG云々を言う人も多いけど、そうじゃなくて、PGオフェンスそのものが問題だし、通用しないんだよん。
3Pよりはドライブさせろ
こっちの対策はさほど目立ってはいませんが、とにかくキックアウト先がフリーになっていないケースが多く、やっとフリーになってもドライブさせてもいいから3Pだけは打たせたくないチェックをしてきました。
とはいえ、全てを止めるなんてことは出来ないわけで、そこそこオープン3Pもありましたが、シンプルに外しまくりました。また、次第に渡嘉敷を長く使い始めた上に、高田と同時起用もしたので、ペイント内の混雑もあってドライブが更に難しくなり、パスが2つ、3つ繋がることもなかったです。
それでも3Pが頼みの綱だった
これは対策ではなくて、日本側の問題。それだけ警戒されているならば、ペイント内での得点を増やす努力で良かったし、前述の通り赤穂のカットプレーやステファニーのポストムーブは増えていきました。
しかし、どうにも「3Pを打たせる」という意識が高すぎて、ペイント内で渡嘉敷が逆サイドコーナーにキックアウトするなど、全体的に3Pを優先し過ぎました。選手もホーバスの影に追われてしまった。
インサイドの1on1なのにパスを出しても意味はありません。ここにオーバーヘルプしないのが日本対策だし、ヘルプしなくても勝手に外すし。
結局のところ「インサイドをどうやって攻略するのか」が大きな壁となったわけです。ゴール下の攻略はアナリスティックの重要な部分なので、ホーバスの男子と同じような悩みに陥ってしまっています。
ということで「求む!得点力ハンドラー」なのですが、女子の場合はウイング陣も世界と戦えるくらいの人材(男子も渡邊と八村がいるけど)なので、インサイドの攻略をウイングにやらせた方が早そうです。
ここを進めず「3Pだけでなく、カッティングも」みたいな合わせのプレーのパターン増ばかり考えても、WCでは上手くいかないということも分かった大会でした。
走られず、走らせろ
これを特に意識していたのはセルビアくらいな気がしますが、日本の走力は警戒しつつ、走ることを利用して「走らせろ」も展開されていました。
ほとんどのチームはオフェンスリバウンドへの参加を増やし、ムリならハリーバックで日本のトランジションを消しました。ただ、これは日本のディフェンス問題も大きいです。
一方でセルビアは「ショットクロックギリギリのシュート」が多く、オフェンスに時間をかけただけでなく、ボールを動かして日本を「走らせて」いました。そして20秒が過ぎると、追い切れなくなってきた日本によりフリーのシュートチャンスが増えましたとさ。
何故か解説が「ショットクロックギリギリのタフショットが決まった」といってましたが、ギリギリだけどタフではないシュートが多かったです。セルビアからすると、日本が走ってくることは理解していたので、走らせたって感じです。
そして、ディフェンスでのチェイスにより「走らされる」と、その後のトランジションへ「走る」のは難しかったといえます。
セルビアのFGは37%と低調でしたが、しっかりと時間をかけてボールを動かすオフェンスにより、日本を削っていきました。
カナダ戦以降も似たようなシーンはあったけど、それ以前にピック&ロールをすると日本のディフェンスはシンプルに崩せるので、東藤を外してのピック&ロールで鉄板にされちゃったからなぁ。
いつも楽しく拝見しています。(Youtubeも)
素晴らしい分析ですね!有難うございます。
僕は大学までバスケやってて、NBAも観てるし、、経営コンサルティングも長年なってますが、こんな分析はとてもできません。。
いえいえ、大学までやってて、コンサルやってるなら、やれますよ。
バスケというよりも、ビジネス分析みたいもんですし。書くのはちょっと難しいですけど。
町田は8月上旬のインタビューでW杯参加の懸念点として、コンディションと恩塚バスケへのアジャストの2点をあげていました。
プレイオフでは早々に負けW杯まで1ヶ月の間があったので、プレイタイム少なめのセカンドユニットだった町田なら、ホーバスが熱心に求めれば出ていた可能性もあるかなと思います。
林は4月上旬に疲労骨折で離脱しており、それでW杯参加がノーチャンスかというとすごく微妙で、やはり恩塚バスケにアジャストする機会がなかったからノーチャンスになったのかなぁと。
恩塚も熱心に求めても良かったと思うんですよね。
1カ月あるならコンディションくらいどうにでもなりそうだし。
あとホーバスの方が、超長期合宿するから、実は町田には厳しかったかも。