◎3Pとは何だったのか
スティール数はオリンピックと変わらないのに、速攻が出なかったことで得点力は大きく落ちましたが、同時にトランジション3Pも外れまくりでした。ワイドオープンになっても決まらないのは、正直HCからするとノーチャンスです。
〇30%超え
オコエ 40%
平下 39%
ステファニー 33%
東藤 31%
3Pが強みのはずが、30%を超えたのが4人しかいないのでは話になりません。東藤はマリ戦でしか決めてないしさ。
「5人全員が3Pを打てる」とかなんとか解説が言ってたけど、現実問題として打てるのは4人しかいなかったレベルです。
Wリーグを見た時にオコエは素晴らしいディフェンスをみせていたこともあり、今大会はオコエをビッグマンの中心にしても良かった気がします。前述の通り、ディフェンス面でもスピード対応が好ましかったので、このあたりはホーバスの影を引きずってしまっている恩塚にみえました。
いろんな要素はあれど「30%すら決められない」のは、選手個人の問題です。特にガード陣がプルアップ3Pを決められず、アシスト女王の不在はともかく、本橋不在が響きすぎました。
〇今大会の3P
宮崎 3/16
安間 1/5
山本 1/13
〇オリンピックの3P
町田 2/8
本橋 9/18
宮崎 2/9
ハンドラー3Pで決めまくる本橋は、日本バスケでは異端児って感じです。今大会は山本に同じ役割が期待されていたはずですが、まったくもって上手くいきませんでした。
スピードはあってもジャンプシュートがない
ガード陣に共通した課題はここでした。スピードでは山本はワンランク上だし、1on1なら宮崎と安間も負けていませんが、本橋が持っていた「駆け引きからのジャンプシュート」がないので、世界の舞台では得点力を発揮できなかった日本のPG陣でした。
おそらくWリーグでやる分には差を作れるのでしょうが、普通にゴール下のブロックショットがある世界大会だと、スピードだけで振り切ろうとすれば、ひっかかってしまいました。
面白いことに、男子の長年の悩みに近づいていったわけです。
ディープ3Pがない
20歳の平下は林の穴を埋めようと奮闘しました。それはポジティブに観てあげよう。ただ、どうしても「普通のシューター」に見えてしまう部分も多く、ディープでも打ちまくっていた林に比べると、特殊な武器という雰囲気はありませんでした。
結局のところ、普通のバスケをしていると個人能力で負けるシーンが目立ってしまいました。総合力に秀でていなくても、アシスト女王の町田と、特殊系の林という組み合わせの方がオフェンスとしては形になっていたわけです。
ただし、これらはホーム開催のオリンピックで、相手がわりと戦いやすい国ばかりだったことも忘れてはいけません。オリンピックで実質的にはベルギーとフランスに勝っただけなんだよね。何故かベルギーに強い日本。
日本には特質系のシューターを使った3P作戦は必要!
だからといって、そこに頼り過ぎてはいけない
ディフェンス面の奮闘も含めて、若い選手たちが次に繋げていくために、ギャンブル的手法ではなくて、総合力を試した面では、勝利を掴み取れなくても一定の評価はすべきでしょう。
赤穂、ステファニー、東藤は1on1しないのか
ただし、それは3人のオールラウンダーが結果を残せることで初めて「意味があった」と評価できることです。これだけ3Pが決まらないならば、そしてPGがアタックできないならば、違う手法で得点を取りに行く選手が必要でした。
パリ、そしてロスへと繋げていくには、この3人がオフェンス面で引っ張れなければ、3Pシューターを増やし続けるしかありません。
ぶっちゃけアメリカスタイルに馴染めそうになかった町田よりも、赤穂やステファニーこそがWNBAに挑戦すべきなんだけどね。チャンスがあるのかは知らん。東藤はロールプレイヤーとして重宝されそう。
◎戦術力不足
男子はアジアカップ途中から、非常にわかりやすくなったというか「3P打っとけばいいんだろ」オフェンスへと変貌し、面白くもなんともない戦術だけど、迷いのないプレーになっていきました。そして女子では逆の現象が起きているのは間違いありません。
今大会では「個人の戦術力不足だなー」というシーンが多く登場しました。それは「個人の」と銘打つくらいなので、チーム云々ではなく個人レベルの話なんだけど、「駆け引きよりも思い切りの良さ」なホーバスでは目立ちにくかった要素です。
スクリナースキルが低く、ツーメンゲームになっていない
男子で頻出している要素が女子にも出てきました。スクリーンをかけているのに、ディフェンダーに簡単に避けられ、全く止めらていない状況でリングにダイブして、何も起こらないってシーンがよくありました。ポップ3Pも同じね。
同時にハンドラー側もスクリナーを使ってからのプレーパターンが少なく、ほぼダイブするセンターにパスを出しており、たまに自分でドライブして失敗って形です。いやいやツーメンゲームって「起点を作る」だけであり、本当はいろんな展開があるんだぞ。
その結果、中途半端なパスになってミスが連発されています。
PG中心のオフェンスしか出来ない
ウイングからの仕掛けが少なすぎる
もっともっとウイングから仕掛けるべきだったし、「PG陣のシュートが決まらなければ大いに困る」という時点で何だか変でした。一般論としてはね。
で、これ自体はホーバスの時と何一つ変わっていません。ただ、町田も本橋もいなかったし、難しい3Pを打っていく林もいなかったから、オリンピック時よりも厳しくなりました。
でもさ、常にPGにタレントがいるわけないじゃん。ルビオいなくてロレンゾ・ブラウンを帰化させでもしないとさ。
しかも、今は赤穂とステファニーがいる。このウイング陣に積極的に仕掛けさせるプレーパターンを作れないってのが、日本バスケで続いている戦術的問題です。男子だけじゃなくて、女子もだったね。
オールラウンダーを好んで起用したが、オールラウンダーを使えるオフェンス戦術ではなかった
まとめるとこうなるわけですが、恩塚が一番まずかったことは「ホーバスのやり方に引っ張られた」ってことです。タレントの質によって、やるべきことは変化してくるじゃん。パリを目指すならばカウンターオフェンスよりも先に「ウイングを有効活用する」ことを目指さなければいけませんでした。
カナダ戦の後半からステファニーをポストアップさせる形が増え、そこからオコエの3Pに繋がったし、赤穂のエンドラインカットプレーも増え始めました。もっと意図的に実行していればセルビアには勝てたんじゃないかってね。
ポジティブに観れば、試合をこなすごとに修正できました。相手は強くなっていったけど、ぼんやりと形は見えてきたし、ガードが潰されるシーンも減ってきた。ただ、やっぱりオフェンス面については
「誰が点を取るべきなのか」が不透明過ぎました。
若手を中心に選んだ中で、ステファニー、オコエ、赤穂、東藤に点を取らせる手法をもっと追求すべきでした。このままだと、再び林に頼ることになりそうです。でも、それは警戒されているでしょ。
いつも楽しく拝見しています。(Youtubeも)
素晴らしい分析ですね!有難うございます。
僕は大学までバスケやってて、NBAも観てるし、、経営コンサルティングも長年なってますが、こんな分析はとてもできません。。
いえいえ、大学までやってて、コンサルやってるなら、やれますよ。
バスケというよりも、ビジネス分析みたいもんですし。書くのはちょっと難しいですけど。
町田は8月上旬のインタビューでW杯参加の懸念点として、コンディションと恩塚バスケへのアジャストの2点をあげていました。
プレイオフでは早々に負けW杯まで1ヶ月の間があったので、プレイタイム少なめのセカンドユニットだった町田なら、ホーバスが熱心に求めれば出ていた可能性もあるかなと思います。
林は4月上旬に疲労骨折で離脱しており、それでW杯参加がノーチャンスかというとすごく微妙で、やはり恩塚バスケにアジャストする機会がなかったからノーチャンスになったのかなぁと。
恩塚も熱心に求めても良かったと思うんですよね。
1カ月あるならコンディションくらいどうにでもなりそうだし。
あとホーバスの方が、超長期合宿するから、実は町田には厳しかったかも。