JBAテクニカルレポート オフェンス編

<04, 日本の戦い – オフェンス – >
1 ) オフェンス PPP
ラマス HC が重要なアドバンススタッツとして強調してきたオフェンス PPP [Point Per Possession=攻撃権 (ボール保持) 1 回に対する得点期待値] は、大会 3 試合で 0.896の全体 9 位となった。
2019W杯と比較すると 0.799から大幅に上がり、仮に100回のオフェンスを行った場合、約10点多く得点できるようになった

ラマスはPPP(要するにオフェンスレーティング)を重視しているそうです・・・当り前じゃねーか。他に何を気にするんだってんだ。気にした結果としてオフェンス力が上がったわけじゃなかろうに。

それはそれとして得点力が大きく向上したオリンピックでした。この点も踏まえて

ラマスをヘッドコーチに迎えたことは、おおむね成功だった

と思います。さすがに日本代表がここまで得点力を上げるとは想像もつかなかったもんね。

それもファジーカスを外しながら、WCよりも上であることは特筆すべきポイントです。ディフェンスを捨てていたようなWCから、ギャビン・エドワーズでより現代らしいバスケに近づけ、結果も残せたわけです。相手もスペイン、スロベニア、アルゼンチンだしね。

PPP 上位 8 チームが決勝トーナメントに進出したと言うことができる。ディフェンスPPP については後の章で触れることとなるが、ディフェンス PPP よりもオフェンス PPP のほうが、チーム成績との相関関係が高いと言うことができるだろう。

今回、特に重要な一文なのですが、PPPの向上とオフェンス重視の姿勢はホーバスをチョイスする流れに繋がった気がします。

ラマスは世界大会で PPP 0.896 を達成しました。
ホーバスに変更して、この数字を超えることが出来るのかどうか。

【追記】
アジアカップの日本は平均96.0点で参加国トップでした。PPPはわからないけど、得点力は確実に向上したように見えます。その一方で優勝したオーストラリアは81.8点で9位でした。

2 ) ファストブレイク

ファスブレイク (以下、FB)における平均得点は 17.3点で大会 4 位

“ 総ポゼッションにおける FB の割合 ” においても2019W杯の 17.5% から 18.1% と向上し、大会全体では 3 位

速攻の回数と得点を増やすことに成功したオリンピックでした。これは極めて狙い通りにシフトしたことを示しており、得点力アップは絵に描いたように上手くいったわけです。だからよりホーバス・・・

しかし、肝心のPPPは参加国中10位と酷く、特にターンオーバー率が21%もありました。つまりは「強引に速攻に持って行ったのでミスが連発」ってことです。ここで判断が分かれます。

速攻は得点力アップなんだから、もっと増やす路線で突き進む

or

強引なトランジションはリスクも大きいので、丁寧なハーフコート能力を上げて選択肢を増やす

バスケ協会としては前者をチョイスしました。それ自体は否定しませんが、やっぱり弱点過ぎるハーフコートの改善を目指さないと先がない気がします。いくらトランジションの効率が良いと言っても、所詮はオフェンス全体の18%です。

トランジションを目指すのは良いけど、それをメインに据えるのはリスキーです。結果的にWindow3でオーストラリアに大敗し、台湾に大勝する大味なバスケになっていることも否めません。イランのスローダウンに勝てない事実もあります。今のPPPを知りたいよね。

スピードのある攻撃を確率の高いシュートに結びつけたことは評価されるべきだが、不用意なパスミスなどは減らしていくことが今後の課題であり

しかしながら、日本のオフェンス全体の PPP0.896 と比較すると、FB での PPP 1.106 は遥かに期待値の高い数字であり、FB を出せば出すほど全体のオフェンス PPP も平均得点も上がると言うことができる。つまり、速いトランジションを意識し FB を増やそうとすることが正しい選択であったことは間違いない。

ターンオーバーの多さを「不用意なパスミス」としており、トランジション増がもたらすリスクとは捉えていません。また、「トランジションを増やすのは正しい」として、そこに注力していますが、

オリンピックで4番目に多かったのに、さらに上を目指すのでしょうか?

オフェンス全体の30%をトランジションに出来るなら良いですが、そんなわけはなく、むしろ低すぎたハーフコートを改善すれば、今のトランジションでも十分に戦えるという判断も出来ます。

このあたりがレポートの内容に合意できても、結果に合意できない事項です。

PPP上位 2 チームのスペイン、ドイツは FB の割合 (%Time) が 9.1% と低いことがわかるが、その理由として 次の 2 つの可能性を考えることができる。

一つは「より確実な状況でなければトランジションでシュートしない」考え方でゲームを展開していた可能性。2 つ目が「トランジションではドラッグスクリーン (トランジションでのピック&ロール) を使ってプレーをクリエイトすることを優先し、ゴールに向かって速く走るよりもドラッグスクリーンのための “ スペースに走る ” ことを優先する」スタイルであった可能性である。
ピック&ロール (以下、PNR) についてはまた別の章で分析をするが、大会においてスペイン、ドイツがピック&ロールを使う割合がそれぞれ 40% (大会 2 位)、39.5% (大会 3 位)であったことを考えると、2 つ目の理由で FB での攻撃が少なかったと考えられる。

逆に PPP が最下位のナイジェリアの %Time は 22.1% と最も高く、少々難しいシチュエーション、ショットであっても、早いテンポでシュートに結びつけようとするスタイルだったことが分かる。

実際にスペイン・ドイツというハーフコートの成功例と、ナイジェリアという速攻の失敗例が挙げられています。どちらかというとナイジェリアになってしまう危険性の方が高そうなのですが、どうなんですかね。

3試合しかなかったオリンピックで平均を言ってもねぇ。速攻の回数を見てみると、アルゼンチン戦が最も多く、同時にターンオーバーをしてはカウンターになるので、PPPは最低です。逆に速攻が少なかったスペイン戦に高確率で決めており、見方によっては

速攻が少ない方が(堅実な選択をした方が)得点期待値は上がる

なんていう捉え方も出来ます。これはJBAが間違いという意味ではなく、アドバンススタッツよりも各試合の反省をすると、むしろトランジション増は良いことばかりではないことがわかるはずです。

テクニカルレポートの内容は良いのですが、結論(高校バスケ・ホーバス路線)ありきで分析しているように見えます。どっちが正解かは別にしてね。

正直、速攻については大成功しましたが、大成功したにもかかわらずWCと比較して、たった1,7点の得点力アップです。ならばハーフコートのPPPを0.03くらい上げる方が効果がある気がしたのでした。

次のページも、まだまだ速攻の話が続くよ。

JBAテクニカルレポート オフェンス編” への5件のフィードバック

  1. 戦術を変えてもラマスの時と問題点がたいして変わってないような…
    オーストラリア戦のゾーンオフェンス、ドライブからターンアラウンドパスミスだけは見たく無かったです。

    1. 問題点は戦術ではない部分ってことでしょうけど、それは短期間では改善しないのも事実です。

      むしろ減っていたターンオーバーが復活し、それに見合う対価を得ているのかどうかですね。今のところ、得ていないと思ってます。

  2. 渡邊のコールプレーが2回…まじか笑
    W杯の時と比べて渡邊のハンドラーアタック(ラマス「ユータ、ドライブドライブ」)が極端に減ったのは残念だったなぁ(その代わりDFに力割けたとは言える)

    1. ビックリですよね。事前のトレーニングマッチは渡邊ばかりだったのに。
      次回に出てきますが、これがオリンピック時の最大の問題でした。

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