U17雑感まとめ

何試合か見たので雑感を書いていきます。今回は八村世代以来の世界大会へと進みました。昨年U19がWCに出ていますが、あれは予選を勝ち進んだわけではなく、コロナ特例だったので、本当に久しぶりの・・・八村世代以外では初めての・・・世界大会です。

中心となる川島は2mながらシュートも上手ければ、ドライブもあるビッグマンで、将来的にはウイングプレイヤーとしての活躍が期待されます。ちょうどホーバスが欲しそうなタイプなので、生まれるのが5年遅かったのか、それとも日本レベルなら18歳で代表に入るくらいじゃないとNBAには進めないか。

アジアで無双した川島ですが、WCでは世界の壁を様々な形で味わう事となりました。大事なことは、この経験をどう生かすかなのですが、これがまた「川島の問題なのか・・・」という日本らしい悩みも出てきてしまった印象です。

まずは、川島のプレーを中心にして、エースキャラに起きた問題をチームレベルで考えてみましょう。

◎ガードのカバーリング

日本の平均身長189センチに対して、ドミニカは192センチでしたが、平均して大きいだけで、日本の方が2ḿ前後のビッグマンは豊富で、高さで分がある相手でした。2戦目のスペインが220センチのセンターやらいて平均2mと大きかったこともあり、ドミニカが小さい印象は強かったです。

しかし、川島へのパスすらも阻む守り方をしてきたドミニカに対して、コートの中央付近でボールをもらおうとしている川島へのパスが阻害されているので、川島が持てないどころか、チームとしてボールムーブしませんでした。

似たような傾向はスペイン戦でも見かけられ、どうもオンボールプレーをしたがる川島が、チームのジャマをしていました。これがアジア予選だとスムーズにパスが入っていたので、わずかなディフェンス力の差が日本のオフェンスプランを大きく崩しました。

加えて1on1をしても抜くことは出来ず、パスをなかなか貰えず、貰っても抜けず。悪循環に陥っていました。

しかし、それだけプレッシャーをかけて来るならば、裏のスペースを使えます。シュータービッグにとってストレッチしてスペースを作り、ゴール下にダイブするのは重要な要素なわけで、このU17代表はしっかりと共通意識をもって、裏のスペースにパスを通していきました。

が、これで裏に抜けても、ドミニカはガード陣が高速ヘルプで潰しに来ました。これが早い早い。もちろん、狙っていたからですが、川島がキャッチした瞬間にブラインドサイドから飛び掛かってくるのでタジタジ。

さて、これを川島のスキル目線で見ると、足りない要素は
・パサーの質
・キャッチからフィニッシュまでのスピード
この両者が揃って、初めて高速ヘルプに負けない裏抜けになります。でも、パスの質にしろ、川島本人にしろ、ドミニカの足に完敗って感じでした。本人だけでなくチームとしての連携を改善させるので簡単ではありません。

個人のスキルと連携はセット

どういう形でパスを引き出して、どういう形のフィニッシュに持っていくかって事ですね。少なくとも2mの高さでイージーにやれていたアジアの戦いとは違い、あるいは裏に抜ければカバーが来ないという常識とは違い、ドミニカという小国でさえ、戦術的ディフェンスで高速ヘルプしていました。ガードがゴール下のカバーに来ているんだもん。

ここまでだったら、いつも通りの終わり方です。

ところが、3試合目のリトアニア戦になると、見事なまでに裏抜けが通り始めました。それも川島だけでなく、他の選手も大胆にゴール下のスペースにダイブするプレーが増えていき、3試合の中でアジャストできたことを示しました。

もっともリトアニアにはドミニカほどの高速ヘルプがなかったことも関係しています。こうして対戦相手によってアジャストできないと難しいわけですが、それはそれとして1試合目で苦しんだ部分を3試合目でアジャストしていたことは、とてもポジティブにみてあげましょう。

◎コーナーのないスペイン戦

2試合目のスペイン戦は川島問題の象徴的な試合でした。いや、何でも川島に結びつけるのは良くないね。日本全体の問題ですね。U17だけじゃなくて。

明らかに日本よりも大きなスペインの高さにズタズタにされたのですが、インサイドに飛び込んでも高さで潰され続けており、ここでも川島の1on1は通用しませんでした。オンボールプレーの危機だ。

しかし、本当の問題は川島の1on1ではなくて

高さのある相手にインサイドで潰されている

というシンプルな事実です。コーナーまでディフェンスを広げるパスワークがないので、高さで潰されてしまいました。しかもスペインの方はコーナーまで広々と使っており、どちらが高さのあるチームかわかりません。

それはガード陣に大きな責任があるとはいえ、川島もポイントセンターとしての能力は低いことを示しています。これは別に批判じゃないよ。ただ、コートの中でプレーするタイプじゃないって事だ。

でも、日本の問題としてはコーナーを上手く使えない。それ以上にウイングエースを上手く使えないというのがあります。実際、ウイングから点を取りまくれるタイプの選手って見ないよね。エースはサイドに置かれない。

そして外国人頼みのBリーグじゃないけど、チーム全体で連動する気持ちは薄く、基本はエースに持たせることにあります。だからスペインは川島レベルのタレントがいっぱいいるけど、特定の選手が目立つわけじゃないし。

ところが、これもリトアニア戦ではいろいろと解決してきました。もちろん、突然コーナーまで上手く使えるわけでもなければ、川島がポイントセンターになるわけでもありません。ただ、エースの川島がウイングのポジションにスライドする機会が増えました。

それまでコートの中央でボールムーブを止めていたのが、サイドに動くことでオープンショットが増えました。また、トランジションでサイドを走り切り、ガードからの素晴らしいパスでダンクのフィニッシュをすることも。ちょっとビックリしたぜ。

川島の適正ポジションはウイング

ハンドラーとしてはパス能力がなく、ビッグとしては力強さが足りないけど、シュート力が高く、ドライブも出来るタイプの選手なので、正しいのはウイングに置いておき、キャッチ&3Pを狙う機会を増やすことと、カットプレーなどオフボールでの動きを増やすこと。フィニッシュ専門にしたら輝きそうです。

ちょうど、今日はホルムグレンがサマーリーグデビューしましたが、理想はこんな感じだよね。まぁ「日本のホルムグレン」であって、NBA行きたいなら「2mのホルムグレン」じゃダメなんだけど。ポクになったら・・・



また、ドミニカ、スペイン戦と気になっていたのは、ハイポスト近辺でポストアップでボールを貰いたがること。それがボールムーブ求めていれば、ガードを助けてあげることもなく、何よりもせっかくサイズとシュート力があるのに、ギャップとスイッチを使って打たない事でした。

これもまたリトアニア戦になると、シンプルなピック&ポップの3Pが混じり始めました。ガードにスイッチさせてしまえば川島の3Pをブロックするのは、ほぼ無理なので、積極的に活用すれば、もっと楽に3Pを打てていたはずです。

結果的に、個人として最も多くの点が取れたリトアニア戦でしたが、それは1on1が減り、チームメイトとの連携が増え、シンプルなシュートが増えたことが関係しています。

個人技で打開して何とかなったアジアの戦いと違い、チームメイトと連携してシュートに行くことが大事な世界の戦い。そんなに個人技マックスでやる必要はないし、自分の武器であるシューティングの強みをしっかりと使えることが大事です。

そんなわけで、かなりネガティブに始まった川島のU17でしたが、チーム全体が修正することで、川島も良いプレーになりました。これを継続することと、こういうことが大事というのをガード陣も認識して、個人戦術力を上げる事でしょうかね。

◎気が付いたら

ドミニカ戦はプルアップジャンパーを守れない(守る気がない)日本のディフェンスを読み取られて、ハンドラー陣に打たれまくりました。殆どの得点がハンドラーでしたが、彼らが決めた事よりも「打たれ続けた事」に大きな問題がありました。

ドミニカは30のFGを決めましたが、そのうちアシストが付いたのは9つだけ。ほぼほぼハンドラープレーでやられてしまいました。

また、速攻を出してもドミニカのガード陣の見事なディフェンスによりボールを失っており、スピードのレベルが2つくらい違ったし、「止めきる」スキルに差がありました。

続くスペイン戦は前述の通り、コートを広く使う戦術力で完敗しており、その上で高さでボコられたので手も足も出ませんでした。インサイド陣が「普段は対戦しないレベルの高さで・・・」はともかくとして、ガード陣も苦しんでしまうのは高さだけの問題ではありません。

それに比べてリトアニアは、高いんだけど、日本が慣れているポストアップからのプレーメイク中心で、そこに収縮する早さのある日本ディフェンスはそれまでよりも守りやすそうでした。まぁボコられていたけどさ。

面白かったのは、八村と渡邊が登場しただけでなく、今回の川島の奮闘もあって、ウイングはそこそこ戦えている事です。普通に川島くらいのサイズとシュート力を持つ選手は多くない(スペインにはいっぱいいそうだな)ので、その特徴は活かされています。

でも、サイズで戦えそうなガードが戦術で負けています。これはもう日常的な戦術の差って感じでした。何故か日本のガードは3Pも少ないし、ワイドに展開するパス能力もない。

ホーバスジャパンのWindow3もテーブス以外はゲームメイクしていませんでしたが、特にBリーグMVPの藤井は、あまりにも酷かった。それはおそらく藤井が酷いのではなくて、Bリーグでは求められない要素を、国際試合で試されるからです。国際試合の方が輝く西田ってのもいるしね。

どういう方向に伸ばすかは、個人個人違っていいんだけど、様々な戦術に対応できる選手じゃないと、特定のチームでしか生きられない選手になってしまうからね。日本の高校3年、大学4年はちょっと長すぎる・・・。

◎順位決定トーナメント

さて、これを書いている間にフランス戦が行われていました。全き気が付かなかったし、まさかリトアニア戦が終わって半日くらいで始まるとはね。

で、ボロ負けしました。フランスは強い。仕方ないさ。高さ以上にスピードでボコられているな。ドミニカとリトアニアの両方の良さを使われている感じ。トランジションが全く止められない。

ハーフコートオフェンスはリトアニア戦に続き、かなり改善されてきています。こういう戦いを繰り返せば、個人レベルも上がりそうですが、それは日常的にやるべきことですな。

U17雑感まとめ” への1件のフィードバック

  1. 高校バスケを見ていて最近思うこと…全てがとは言わないが…

    福岡第一は全国優勝しても、アンダー18などの代表ではイマイチ。大学でもイマイチ。
    福岡大濠は全国優勝できなくても、アンダーでは中心。ユニバーシアードでも主力。
    なぜだ?留学生の影響か?
    留学生いるチームのメンバーで世代別代表で活躍する選手ってどんくらいいたかな…?

    留学生頼りのバスケじゃ、日本人のガードは国際レベルの力はつきにくいんだろうなぁ…富永は留学生いても関係なく自分で点取りまくってたから別だな。河村はすごいとは思うけど。
    逆に留学生のおかげで日本人の長身選手がウィングやシュータービッグ化できたり、留学生に対抗しようと伸びたりする面もあるのかな…

    むむむ…留学生は良いのか悪いのか…

    その昔、女子でもビッグマン擁するゴリゴリインサイドの桜花は強かったけど、桜花のガード陣は大学では意外とイマイチだったりして、でもビッグマンいない昭和学院とかのガード陣の方が大学では活躍したりして…そんなこともあったな。

    そろそろカリーやアービングみたいな留学生が見たい!!

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