さようならテイタム’22

◎5年目の積極性

5年目のシーズンはベンチにオプションとなる選手を多く揃えるロスターで始まり、それが上手くいかずにホワイトの獲得から起用する選手が絞られていきました。勝ち始めたのはトレード前ですが、プレーオフの勝利は主力を絞ったことと、なによりも主力が健康だったことが大きいです。

またホーフォードが加わっただけでなく、グラント・ウィリアムスが主力になったことで、コートを広く使う形が強まりました。ロバートがいる時はゴール下で強力にフィニッシュし、いないときはファイブアウトの形になることは、テイタムのプレーにも大きな変化が加わりました。

〇ゴール下のアテンプト
昨シーズン 326本(5.0本)
今シーズン 425本(5.6本)

〇3Pアテンプト
昨シーズン 485本(7.6本)
今シーズン 651本(8.6本)

〇フリースロー
昨シーズン 340本(5.3本)
今シーズン 469本(6.2本)

テイタム自身がペイント内のショートレンジやミドルを打つことに変化はなく、その確率も40%前後と大きな変化はありませんが、ゴール下・3P・フリースローのアテンプトが大きく増えています。懸念だったシュートチョイスが大きく改善してきたと言えます。

「ゴール下か3Pか」なんて、今や子供でも知っているバスケの常識ですが、その常識に今になって近づくというのはタフショット・テイタムらしさでもあります。

ただ、このスタッツで特に重要なのは「ゴール下での得点が増えた」ということです。フリースローも含めて従来のテイタムには感じなかったフィニッシュの強みが出てきました。その理由がなんなのかはプレーオフの連戦で見えてきた部分があります。

①マッチアップ相手が小さくなった

これまでPFのポジションだったのがSFになっただけでなく、ガードもブラウンとスマートなので全体のサイズ・フィジカルに強みがハッキリしました。結果的にテイタムは、従来よりも小さい相手とマッチアップする機会が増え、インサイドへの押し込みパターンが増えました。

この事を逆説的に感じさせてくれたのはバックスでした。テイタムを上手く抑えていたバックスでしたが、ホリデーやジョージ・ヒルがマークになると止められませんでした。ファイダウェイを武器にするテイタムなのでサイズのない選手は止めにくく、さらに今シーズンの進化はドライブ時に強引にでもリングに向かって飛ぶことにありました。これをブロックしきれない選手はテイタムを止められませんでした。

そしてマシューズとウィギンズは見事なまでにテイタムのアタックを止めました。フィジカルとサイズで負けない選手は、そこまでテイタムの怖さが出てきませんでした。その代わりウィギンズは3Pを食らいまくったのですが、それは後述します。

②ダンクとレイアップ増

次にダンクとレイアップの本数が増えました。チーム全体で大きく広がったことによりインサイドヘルプが減ったことと、ポジション変更による速攻増が効いています。

〇ダンク 59本 ⇒ 82本
〇レイアップ 326本 ⇒ 440本

両方含めると1試合平均で6.0本から6.9本に増えています。シンプルなフィニッシュへ持っていけることが確率をあげたわけですが、面白いのはブロックされる回数も増えている事です。

〇被ブロック 62本 ⇒ 83本

ディフェンスをかわすよりも、向かっていく姿勢が強まった

ダンクやレイアップ増と共に、ブロックされる回数が増えたことは、それだけ直接リングに叩き込むプレーを選択していったという事です。ジャンプシュートに逃げているわけではないものの、スキルを使う事が多かったテイタムが、よりフィジカルな部分でフィニッシュを目指すことが増えてきました。

プレーオフの24試合でもテイタムは29回もブロックされました。1試合1回を超えており、プレーオフキャリアで最も多くなっています。しかも、スイープしたネッツに8回も食らっており、ブロックされるほど勝率が高かったとも言えるのです。

スタッツ的には悪くなった一方で、リングに強くアタックすることにメンタリティが変化したのでした。

◎3Pで稼ぐ

このプレーオフでは10点に終わったバックスとのゲーム3を除いた23試合で3Pを決めました。24試合中13試合で40%を超えており、アグレッシブにリングにアタックするようになった一方で、得点を安定的に稼いだのは3Pでした。プルアップ3Pの成功率上昇は、テイタムの不安定さを解消してくれる武器となりました。

〇3P
勝ち試合 40.1%
負け試合 36.7%

勝ち試合と負け試合で大きな差がなかっただけでなく、ファイナルでは50%を超えた3試合はすべて負けています。これまでは3Pが決まるかどうかという点がキーになっていましたが、今シーズンはむしろ3P以外のプレーがどれだけ混じるかが大切でした。

ファイナルではウォリアーズに3P以外をシャットアウトされてしまい、逆にバックスはマシューズが3Pすら打たせないディフェンスでチームは敗退しています。

〇テイタムのパスから3P
ファイナル 27/54

またファイナルはテイタムのパスからの3Pも高確率で決まっており、実はドライブの重要性は高かったです。いかにしてドライブから展開するのか。パス能力を磨いてきたテイタムの成果も出ています。

3Pに関しては今シーズンになって「オフボールのポジション調整」が加わりました。オフボールでは立っているだけのことも多かったテイタムなので、非常に大きな変化でした。特にホワイトとのギブ&ゴーはタイミングもあっており、「ドライブ⇒キックアウト⇒オフボールで3Pへ移動」という流れは、従来のテイタムにはなかった【動きなおす】能力が備わっていました。

〇キャッチ&3P
昨シーズン 1.9本 45%
今シーズン 3.3本 38%
プレーオフ 3.3本 47%

ルーキーシーズンにコーナー担当だった頃は多かったキャッチ&3Pは、年々減ってきましたが、今シーズンになって復活しました。そしてプレーオフになると超高確率で沈めています。オンボールプレイヤーに変貌していたテイタムが、オフボールでの仕事を思い出したことは、選手としての完成度を飛躍的に高めました。

3Pの安定感が増したのは、単にシュート能力が向上したのではなく、パスを受ける前の動きの改善によって、オープンショットが増えたことが関係しています。プレーオフでも警戒されているはずが、平均5.4本のオープンショットを放っており、以前よりも簡単にシュートを打って得点を稼ぐようになりました。

チャンピオンリングを手に入れるには、タフショットを決める能力も大事だけど、オープンショットを増やし確実に決める能力も大事。ここが足りなくて勝てない選手が多い中で、テイタムのセルツがファイナルへ進み、カリーのウォリアーズが優勝したことは、再びシュート力の重要性を思い起こさせる結果になりました。

◎もう1歩はあるのか?

リングに強くアタックし、オフボールでフリーになってシュートを決める。4年かの積み重ねに加えて、新たな武器を備えた事でファイナルまで進んだテイタムですが、最後はウォリアーズに・・・いや、ウィギンズのディフェンスに力尽きました。これが次の課題になるのでしょう。

大切なのはマシューズやウィギンズに勝つだけの個人能力ではなく、このタイプをかわしていくオフボールの質を向上させることにある気もします。特にvsウィギンズでは3Pを決めまくっており、もっと多く打てるシチュエーションを作る方が大切でした。

〇vsウィギンズ
マッチアップ回数 256回
3P 9/21
2P12/35
アシスト 18
ターンオーバー 8 

マシューズには3Pすら打たせてもらえず、vsウィギンズの53点よりも少ない37点(245マッチアップ)でしたので、それよりはウィギンズ相手の方が点を取れました。ただ、致命的に2Pの確率が悪かった。

3Pは40%を超え、アシストも稼げているので、この2つをもっと増やすことが大切でした。特に3Pを増やすべきでしょうね。そうすればドライブの怖さも増す。ある意味で

今シーズンのスタイルを熟成させていく

ことが今後の課題になりそうです。チームとしてもテイタム&ブラウン以外でのプレーメイクには課題があり、ホワイトの融合も含めて、まだまだ取り組める課題は残っています。そんな中でのファイナルだったのだから、もう一歩の改善を進めていくしかないでしょう。

過不足の大きな選手であったテイタムが、1つのスタイルを作り上げることに成功したシーズンでもありました。それは勝ったから言えることであり、負けていれば違う課題になったかもしれませんが、少なくとも初めてエースとしてプレーオフで勝てるチームにしたことは偉大なる進化でした。

アシスト能力を高め、ハンドラーとしてプレーメイクも身に着けた3年目・4年目でしたが、5年目の成功を考えると、やっぱりテイタムはウイングであり、オフボールでシュートを打てる選手になることと、ドライブから強くフィニッシュに行くことが重要だったと思います。

オフボールの質を高め、より鋭いドライブでフィニッシュに持ち込めるかどうか。それが来シーズンの課題です。

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