アンドリュー・ウィギンズは何が変わったのか?

『カナダのマイケル・ジョーダン』の異名を携えて14年のドラフト1位でNBAにはいった男は、その前評判通りの活躍を見せ新人王に輝いた。7-0のウイングスパンを生かして、インサイドにドライブすればリングへとボールを届けていった。

翌年にはタウンズが加入し、W新人王としてウルブズには偉大なる未来があるはずだった。3年目のシーズンにはキャリアハイとなる23.6点を記録しているが、この時はまさか5年後でもこれが「キャリアハイ」のままだとは思わなかった。

転機が訪れたのは3年目が終わったオフのドラフトだった。トレードでジミー・バトラーがやってくるとウィギンズの立ち位置は「3番手の男」へと格下げされてしまった。ここからウィギンズは低迷期にはいってしまう。常に「物足りない選手」であり続けてしまった。

バトラーがウルブズを去ってからのウィギンズは、たまにスーパースターだった。オールNBAチームを選ぶ記者がユーモアで「サンダー戦のウィギンズ」といったくらい特定の試合でのみ活躍する選手になってしまった。ザ・不安定なプレーぶりには、この時点でウィギンズにはスターになる未来が見えなくなっていた。

ただ、この頃にはプレーの変化も出ていて、ハンドラー役を任されることも出てきた。ウルブズでの最後のシーズンはキャリアハイの3.7アシストを記録しており、リバウンドも5.2でキャリアハイだった。22.4点も含めて一定の結果を残していたが、ウィギンズ以上にチームがダメだった。

そしてウォリアーズへと旅立つことになった。

◎不安定なシュート

今シーズンのウィギンズはキャリア最高の3P39.3%を記録しており、表面的には3P能力を向上させたものの、プレーオフではワイドオープンを外すことも多く、ファイナルでは30%を下回ってしまった。

それ以上にフリースローは63.4%と低く、驚くことにキャリア最低である。8年目のシーズンでキャリア最低とはどういうことなのか。ウィギンズはルーキーシーズンから変わらず

シュートに安定感がなく、オープンショットのミスが多い

こんな特徴を持っている。最も改善しやすいスキルがルーキー時代と大差ないというのは、おそらくスキルよりもメンタリティの問題なのだろう。イップスというレベルではないものの、同じ動作を繰り返すのは得意分野ではなさそうだ。

同時に「たまにスーパースター」になっていたこととも関係しており、決まる時と決まらない時の差が激しいだけでなく、意外と勝負強さは発揮したりする。ものすごく気分屋だが、自分が主導権を握っている時はスーパースターである。

そして、この印象は「バトラー後」に強く残っている印象でもある。

それまではリーグを代表する若手有望株だった。なんせ3年目で23.6点である。間違いなく逸材だったが、バトラー加入だけでなく、ティーグも加わりボールを持つ機会が減った上、ギブソンを起用してインサイドに侵入しにくくなってしまうと、3P担当のようになってしまった。3年目で6.6本あったフリースローアテンプトは3.8本まで減ったのである。

〇3年目のウィギンズ
23.6点
2P7.3/15.6
3P1.3/3.5
FT5.0/6.6

改めてキャリアハイのシーズンを見直してみると、ウィギンズという選手はバトラーに近いスコアリングバランスである。フリースローのアテンプトが多いだけでなく、3Pが少なくて、インサイドアタックが重要なタイプ。ただしミドルも多い。

『カナダのマイケル・ジョーダン』の異名通りのオールドスクールなシュートバランスで、ちょうどスプラッシュ革命もあってリーグ全体として不要になってきたタイプのエースだった。ウィギンズを消したのは、実はウォリアアーズ王朝だったのかもしれない。

ちょっと面白いのはバトラー加入から狂ったウィギンズだが、シュートバランスはバトラーに近いこと。ファイナルでハードワークが光ったように実は似たものタイプなのかもしれない。

シュート力の重要性が高まる役割への変化からウィギンズは崩れた

ウィギンズがいなくなってもダメだったサンダースのウルブズなので、ウィギンズの責任ではなかったし、ルビオとディアンジェロを並べ、シューティング重視にも見えた戦い方もウィギンズにはあっていなかったのだろう。

◎ウィギンズは変わらない

ウォリアーズに来ると、例によって「素晴らしいプレイヤーだ」とお世辞のように誉めらていたが、スタッツは何も変わっていなかった。だから「ウォリアーズに来て変わった」感はなかった一方で、今から振り返れば「元々そういう選手だった」として褒められたのならば理解も出来る。

しかし、このチームでファンから求められているのは「デュラントの代役」だった。あるいは少なくとも「イグダラの代役」だったため、やはり物足りなさばかりが残ってしまった。何もデュラントクラスに活躍して欲しかったわけでないが、1on1スコアラーとしての期待があっただけに、思うような方向には進んでいなかった。

1年前のプレーインで敗退したのはドレイモンド・グリーンの責任だった。それは「カリーばかり見ている」ことで起きた機能不全であり、それだけウィギンズは信用されていなかった。

それが1年経って・・・やっぱり信用されているとは言い難かった。1on1担当はカリーだったし、ベンチから出てくるプールの方がハンドラーとして優れていた。

シュート力の足りないウィギンズはチームオフェンスの中で輝かせるためには難しいシューターだし、ハンドラーとしてはパス能力が低い。ウォリアーズのスタイルではセカンドエースになるどころか、サードエースとしても怪しかった。

〇プレーオフのウィギンズ
16.5点
セカンドチャンス 3.7点
速攻 1.8点

だからプレーオフでは得点の1/3がセカンドチャンスか速攻だった。トランジションも含めれば、もう少し割合が増すだろう。ファイナルに限って言えば、18.3点のうち7点がセカンドチャンスか速攻で、5.4点が3Pだったので、1on1担当としての得点は6点くらいしかないと思っていい。

デュラントでもイグダラでもなく、ハリソン・バーンズって感じだった。ウィギンズはそんなに変わっていない。少なくともスコアリングの面では。

◎ディフェンダー

ウルブズにいた頃のウィギンズは良いディフェンダーではなかったし、それ以上にオコギーが指名されたように他のディフェンダーを用意されていた。今思えば、ツービッグの体勢なのだからウィギンズはガードディフェンダーをやっても良かったくらいだが、ポジション通りの起用だった。

ちなみにウルブズでの最後のシーズンはディフェンスでも良い成績を残している。バトラーがいなくなり、コビントンが加わると少しスモール気味になり、ウィギンズの意味は強くなっていったが、これまたうまく扱えないチームであった。

話はそれるが、タウンズ中心のオフェンスに置いて、3P担当のコビントンになるとインサイドにスペースが空き、そこをウィギンズが活用していた頃は可能性を感じさせるチームだった。わずかな期間ではあったし、肝心のタウンズがケガで離脱してしまって苦しんだが、この時のバランスは非常に良かった。

3Qまでは、そんなインサイドを使うウイングだったウィギンズが、4Qになるとハンドラーになっていたのも良かった。あのシーズンにタウンズがケガしなければ違う未来もあったかもしれない。19-20シーズンのウルブズでは22.4点を取っていた。

ウィギンズという選手はケガが少なく、非常にタフなのだが、物凄くタイミングの悪い選手でもある。まぁ優勝したのだから全てが報われたが。

7-0のウイングスパンを持ち、ガード並みのスピードと、センターにも負けないフィジカルを持つウイング。これだけ聞くと初めに期待したくなるのがディフェンスである。もしも、ウィギンズが初めからディフェンダーとして活用されていたら、もっと早くに開花していたかもしれない。

ただ、ヘルプディフェンダーとして勘がいいわけではないし、そもそも3&Dの時代ではウイングを守っていると、相手が何もしないことも多い。だからウォリアーズに来て最大のメリットは「ガードを守れ」になったことかもしれない。

〇17-18シーズン
vsポール・ジョージ
4試合合計42失点

〇18-19シーズン
vsポール・ジョージ
4試合合計40失点

vsデュラント
4試合合計37失点

〇19-20シーズン
vsブッカー
4試合合計 23失点

ウルブズ時代の各シーズンで、ウィギンズが最も多く点を取られたマッチアップ相手である。凄まじく優れていたわけではないが、こうやってみると頑張っている。ただ問題は、このレベルの選手相手のマッチアップが少ないことで、ポール・ジョージやデュラントのようなウイングエースでなければ、マッチアップしなかったことだったのかもしれない。

それに比べて今シーズンの上位はドンチッチ、アンソニー・エドワーズ、ポール・ジョージ、レブロンと続き、ドノバン・ミッチェルやクリス・ポールと幅広い相手が並ぶ。ウィギンズはポジション関係なく相手エースとマッチアップするようになった。なお、ヨキッチやタウンズにはボコられている。

そしてプレーオフではモラント、ドンチッチ、テイタムとマッチアップした。それぞれ3Pを決められたが、かわりに2Pを抑え込んでいる。(モラント以外)わかりやすく長所が発揮されたわけだ。

どんな相手にでもエースキラーとして機能した

これは言い換えればウォリアーズが「どんな相手でもウィギンズを信じた」ということでもある。シュートの不安定さがオープンショットのミスだったことに比べると、ディフェンスは常にハードに行くのが大事であり、そこにウィギンズの良さがあった。

強い相手と競り合った方が本領を発揮できるタイプなのかもしれないし、役割を明確化してあげることで自分の仕事に集中したともいえる。

ところでウィギンズのディフェンスで最も脅威なのは、長くて大きな腕を使ったハンドチェッキングであり、何度もボールに手を出してくるのでオフェンス側はウィギンズと正対するのにリスクが発生していた。この武器はハンドラーを守るからこそ、より目立つようになった武器である。

その一方でボールに触るディフレクションはウォリアーズに来て下がっている。毎シーズンなぜか安定して1.7だったが、ウォリアーズでは1.4に減っている。

そしてチャージドローは殆どない。ドライブコースを読んで先回りするのは皆無に近く、やるならブロックショットで止めている。だからドレイモンドやルーニーといったヘルプディフェンダーがいないと成立しない。タウンズは17-18シーズンだけ17回もチャージドローしているが、他は3回程度と少なく、ここの相性もあったのかもしれない。

◎スモールで輝く

ウォリアーズを優勝へと導いたのは、ひとつめはカリーだが、2つ目はウィギンズだった。特にプレーオフのスモール戦略になると、その運動量とハードワークは際立ち、オフェンスリバウンドの強さも何度となく見せてくれた。

ちなみにウィギンズのオフェンスリバウンドは、これまたルーキー時代の1.6が最高で、今シーズンは1.2に留まっている。プレーオフは2.5とジャンプアップしたが「もともとオフェンスリバウンドに強かった」タイプのウイングである。なお、ディフェンスリバウンドは弱い。

だからスモール徹底になって増えたのは必然だった気もする。出来る限りインサイドが空いている方がウィギンズの強みは生きる。それはタウンズでも実行できる戦略だったので、つくづく勿体ないが、今はエドワーズがそれをやろうとしている。ディフェンスリバウンドも強いし。

中を固められると厳しいシュート能力でもあるので、スプラッシュが外に広げてくれることも含めて、ウィギンズは自分の能力を発揮しやすかったのかもしれない。さらにスモールになるのだから、相手ビッグマンとのスピード差も使いやすい。

ただし、何も関係なくスモールにしてしまうと、ディフェンスリバウンドの弱さが出てしまう。というか、エースキラーに適しているのに、スモールのビッグ役では成立しない。これもカリーがディフェンスリバウンドを取ったり、そもそもドレイモンドがPGディフェンスするウォリアーズの特殊性かもしれない。

◎難しいがフィットさせた

ウィギンズはウォリアーズに来て間違いなく伸びた反面で、実はウルブズ時代から持っていた能力に過ぎなかったりする。個人としてみた時に劇的に変化したとは思えない。そして現代的なスキルセットではなく、エースとしては使いづらい。

ディフェンス・ハードワーク・ペイント内の得点は素晴らしかったが、これを成立させるには、戦術的な課題が多く存在している。ある意味でウォリアーズもウィギンズをフィットさせるのには2年を要したともいえるし、細かく戦術変化させるのが難しいから、プレーオフはトランジションマックスだったのかもしれない。

いずれにしてもオリジナルのウォリアーズ戦術におけるハリソン・バーンズっぽかった。ディフェンスの良いハリソン・バーンズだった。だからこそ大いにハマったし、オフェンスの主役ではなかった。

ウォリアーズに来てオールスターのスターターにはなったけど、他のチームでエースを出来るとは思えない。ウォリアーズを出ていった後のハリソン・バーンズっぽさもある。

ただ、ウィギンズは間違いなくウォリアーズに来たことで「やりがい」を感じている。ただ優勝しただけでなく、自分に対して明確な役割が定義され、苦手な分野ではなく、得意な分野で勝負している。弱点が解消されたとはいえず、長所が活用されているのだ。

そしてオフには契約延長の話をするらしい。おそらく今度は「適正価格」になるだろう。マックス契約という価値は、ウィギンズ本来の仕事をぼやかしていたかもしれない。チームの中での役割が何か。マックスサラリーは払えないけど、エース以外の選手に払えるマックスサラリーにはなるかもしれない。

アンドリュー・ウィギンズは何が変わったのか?” への6件のフィードバック

  1. ウィギンス覚醒!MAXは適正価格!っていう人が結構いますが、どこまで本気なんだろうといつも思ってました。別にこういう選手だろと思っていましたが、数字でみると能力的な成長というよりも単純に役割定義というだけですかね。能力・役割みても年20Mくらいな気がしますが、どうなるでしょうねー。

  2. ウォーリアーでMAXでウィングでドラフト一桁でオールスターだと、どうしてもKDになることを期待しますが、今回の記事でそもそもタイプ違いとはっきりわかりました。今後の世代交代で新チームの軸にはなれないような気もしますが、安く長期で囲い、良いロートルとして残ってくれると嬉しいですね。

  3. いつかのPGウィギのようにハンドラーとして開花したらイグダラ役もできそうですよね。パスが下手とはいえプールやGP2と比べたら素質ある方だと思うので来季もGSWで頑張ってもらいたいです。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA