さようならホーネッツ’22

遂にプレーイン敗退組の話になってきました。ここからは間に合わなくなります。さようならヴォーゲルも書き終わっていないしさ。

18-19 39勝43敗
19-20 23勝42敗
20-21 33勝39敗
21-22 43勝39敗

ボレゴがHCに就任してからの4シーズンです。ケンバが移籍してから3年でケンバ時代の勝率を上回るところまできました。6年ぶりの勝ち越しとなったシーズンなので、非常によく頑張ったと言えるでしょう。

ただ、実はシーズン終盤が11勝4敗と大きく勝ち越しており、シーズン全体でみると「思ったより勝てない」ような雰囲気が続いていました。32勝35敗の時点では厳しく見えていたけど、見事にラストスパートを決めたのでした。その勢いのままプレーインでも勝ちたかったですが、勢いに任せ過ぎてしまった気もします。

シーズン前にボレゴはラメロについて、こんなことを語っていました。

「このチームはオフェンス面であらゆる才能を持っていて、その多くはラメロから始まるんだ。彼は素晴らしい本能を持っていて、勘も良いし、力もついてきている。勝利に繋がる時間とスコアの状況に応じた選択をすることが、彼の次のステップになる」

https://basket-count.com/article/detail/89874

ラメロだけでなく、ホーネッツ全体に言える事であり、そしてプレーインの負け方はまさに「勝利に繋がる時間とスコアの状況に応じた選択」が出来ずに大敗した形です。チームとしての成長はしたものの、メンタリティの部分についての成長に大きな課題があったシーズンでもありました。

◎ラメロとブリッジス

今シーズンの「成長」において最も重要なのがこの2人です。共に20点オーバーに加え、総合的なスタッツを大きく伸ばしました。

〇ブリッジス
20.2点
FG49%
7.0リバウンド
3.8アシスト
1.9ターンオーバー

〇ラメロ
20.1点
FG43%
6.3リバウンド
7.6アシスト
3.3ターンオーバー

ブリッジスは20点オーバーの選手の中でポルジンギスと2人だけターンオーバーが2を下回っている選手です。それくらい堅実に得点を積み上げてくれましたし、アシスト面でも貢献できるようになっており、急激にエース感を漂わせてきました。もともとハイライトなダンクやフィジカルなディフェンスが持ち味でしたが、今では個人技アタックのできるウイングとしてオフェンスの貢献度が高まっています。

ラメロも20点を超えてきましたが、3P39%と精度を上げており、アグレッシブさに正確性が伴ってきたと言えます。またアシスト/ターンオーバーも2年目としては非常に優れた数字だと言えます。

ヘイワードが例によって欠場することが多かったですが、19.3点のロジアーも含めて20点トリオが結成されたホーネッツは急激にオフェンス力を上げることに成功しました。

〇チームの平均得点
102.9 ⇒ 109.5 ⇒ 115.3

得点は4位まで上がっており、2年前はリーグ最低レベルだったオフェンスが、今ではリーグトップへと向かっています。ボレゴの描いたオフェンス戦術は形になったといってよいでしょう。当初から良いトライアルをしていましたが、それが結果として示されたのです。

また30点オーバーはブリッジスもラメロも9試合となっており、以前のように爆発的に稼ぐ試合と不調の試合が繰り返されていた印象が薄まり、安定感も出てきました。ブリッジスの方は「パスが来ない」ことで点が取れないことはあるし、ラメロは「3Pが決まらない」で困るパターンもありますが、総じて毎試合しっかりと戦えるようになったのが、チーム全体の成長に繋がっています。

ただしブリッジスは3Pが1本も決まらない試合が13試合もありました。その間のチームは3勝10敗と大きく負け越しています。

一方のラメロは7試合で3勝4敗と意外とチームに与える影響が小さいのですが、確率ではなくアテンプトが10本以上の試合は4勝7敗とこちらも目立っています。

ブリッジスが決めないと負ける
ラメロが打ちすぎると負ける

前者はエースとしての責任かもしれませんが、後者はなんなのか。これがホーネッツの抱えている問題をわかりやすくしているものかもしれません。繰り返しますがラメロの3Pは39%です。確率は高いのに10本以上打つと負けるわけです。試合の流れを読む能力が足りないのでした。

◎ウイングチームへの変貌

昨シーズンにラメロとヘイワードが加入するまで、ホーネッツはかなり小さいチームでした。グラハムとロジアーを並べ、ベンチからもガード陣が登場してきます。ハンドラーを有効活用するのが好きなボレゴの特徴だったのですが、この2年で同じくハンドラーを重視しながらも、サイズのある選手が増え、さらにウイング補強をしました。純粋なハンドラー仕事だけでなく、リバウンドやディフェンスの強みもあるガード陣も含め主力を並べると

ラメロ
ロジアー
コディ
ヘイワード
ブリッジス
ワシントン
ウーブレ
マクダニエルズ

他にガードとしてボークナイト、イシュ、アイザイア・トーマスがいたので、ビッグにはなりませんでしたが、それでも好みのタイプを集めながらもサイズアップに成功したと言えます。「小さくないスモールラインナップ」を採用できるようにもなっています。

また、ウーブレの獲得と昨シーズン終盤からのマクダニエルズの成長によって、ディフェンス面での強みも出てきました。個人としてみたら、守れる選手が多く揃っており、トラップディフェンスを駆使し、ローテーションもしやすい戦術を作ってきています。約束事が用意され、それをこなす連携も改善傾向にあります。

その点ではオフェンス面での特徴が強かったチームに、安定をもたらすようなシーズンにもなりました。プラムリーとハレルを迎え、あとカイ・ジョーンズもいるので、センターにも比較的動けるタイプを求めています。ディフェンスはポジションレスを進めています。

〇ディフェンスレーティング 113.1(22位)

しかし、個人のディフェンス力に対してチームとしては守れませんでした。リムプロテクターの重要性もありますが、それにしても悪い数字なんだよね。結局はロジアー、イシュ、アイザイアの誰かはコートにいて、そこをフォローしきれていないというのもありますが、基本ラインがアグレッシブすぎて、

リスクを取りすぎる戦術設計とゲームコントロール

単純に守れないなら話は簡単ですが、ホーネッツのウイング陣はしっかりと走るし、献身的にカバーもします。ローテもするし、ウイングを揃えた甲斐のあるディフェンスをしています。しかし、リスクを負ってでもボールを奪いに行くし、トラップ系のディフェンスも好みます。

〇被3P 38.7本(29位)

試合のペースが速いこともあって、スペースを消すことが出来ず、またダブルチーム⇒インサイドカバー⇒外が空くは多いです。ちなみに30位はバックスなのですが、こちらもインサイドを優先してカバーします。似たような守り方でのやられ方なのですが、全体的にアウトサイドを追いかける時の読みの悪さはあります。パスより先に動くのはコディくらいかな。つまりはイグダラ先生が足りないわけで、これはウォリアーズファンはウーブレに対しての感想を持っているかもね。

また、前述の通りラメロが3P打ちまくると負ける理由も、滅多打ちからのロングリバウンドでカウンターというパターンが多くなるからです。

〇速攻での失点 13.9(24位)
〇トランジションでの失点 21.2(27位)

総じてリスクをとるのはいいけど、リスクを取りすぎる。それをカバーするために走ってはいるのですが、さすがにやりすぎってくらいにリスクを取ってしまいます。ボレゴにも問題があるし、ラメロにはもっと大きな問題がある。この点はロジアーも同じ。それが全面的に放出されたプレーインの3Qだったしね。

ディフェンス力の強化に動いたシーズンだったと思いますし、それは印象としては成功したシーズンでもありましたが、あまりにもリスクを取ってしまう戦術設計と、ゲームコントロール能力不足によって、「極めて不安定なディフェンス力」という図式を覆すには至りませんでした。

◎ボレゴは何を思う

冒頭のボレゴの言葉通り、ラメロからオフェンスが始まるのに、あまりにもゲームメイク能力が低く、そこは大して改善しなかったシーズンでした。それがホーネッツ全体としての感想にもなっています。

3Pを打ちすぎること、あるいは、3Pを打たないとハーフコートを作れないこと、これらはロンゾにも共通する課題であり、プレシーズンでホーネッツにいたリアンジェロは単なるシューターになっていました。ボール3兄弟はそういうプレーを教え込まれてきたので、そう簡単には改善しないかもね。

ロンゾについては課題は継続しているというか、ペリカンズでもブルズでもエースを支える役割として「3Pシューターであり、エースへとつなぐパサー」のようになって改善もしています。いうなれば自分で点を取る能力がNBAレベルでは物足りないので、違うところに活路を見出して、ディフェンス力のあるPGとして機能し始めています。

ラメロはなまじ点が取れるので、ロンゾのようにディフェンスに注力することもなく、プレースタイルを変更しないどころか、よりアグレッシブに点を取りに行ってます。能力があるから、リスクヘッジが上手くならないっていうね。

かなり頭の痛い問題なわけですが、試合中にラメロがやりすぎるとボレゴはタイムアウトをコールしたり、一旦ラメロをベンチに下げることがあります。だから「ボレゴがゲームを学ばせている」という図式です。

・・・というところまでなら、単なるラメロの問題なのですが、ラメロも2年目だし、それ以上に

ボレゴの4年間はラメロ関係なく、似たような課題を持ち続けています

ただ初めの2年はサイズがない中でスピードに活路を見出していたから許容できたんだけど、この2年はウイングも強化したし、ディフェンス勝負でも勝機を見出せる上、ブリッジスの個人技アタックもあるのだから、そこまでリスクを取らなくていいんじゃないかって思うわけです。

また、問題を加速させるのがベンチのPGとしてイシュを使ったこと。さらに今はアイザイア・トーマスを起用しています。どっちもロンゾのように積極的に行くタイプじゃん。ちなみにアイザイアがゲームコントロールする選手に見えるほど、ホーネッツはアグレッシブです。

だからさ。そもそもボレゴはちゃんとラメロに教え込む気があるのかって疑問も出てくるわけです。4年目だからさすがにね。

1年目のシーズンはトニー・パーカーがいて、短時間の起用ながらゲームをコントロールする担当でした。今もヘイワードがいるので、ケガが響いたといえばそれまでですが、控えのPGには落ち着いたタイプを置くべきだと思うよ。上手い下手よりも、落ち着きが欲しい。そういう時はジョージ・ヒルを呼ぶのがあるある。

いずれにしても4年目のボレゴは相変わらずの戦略性の高さやアイデアの豊富さをもたらしていましたが

「勝利に拘る」ために、リスクとゲインを天秤にかけて試合をコントロールする

とか、そういう部分が足りておらず、ラメロの問題なのか、ボレゴの問題なのか、ちょっと考えてしまう事もありました。もう少し妥協すべきだと思うぞ。

そしてプレーインではヤングを狙ったプレーを中心に見事な作戦でワイドオープンを作るんだけど、そのシュートをミスしてしまうことが多く、一方でタフショットやディープ3Pは決まってしまったりと、内容と結果が一致しない展開にもなっていました。戦略を練り理想を追い求めるのが大事なのか、目の前でやりやすいプレーで妥協すべきなのか。

ボレゴは何を思うのか?
5年目のシーズンは理想を追い求めるだけじゃ満足しないよ。

◎アンバランス

さて、課題はあれどラメロとブリッジスを中心にしたチームで5割を超えたわけで、そこにワシントン、マクダニエルズ、ボーグナイト、カイ・ジョーンズと若手もまだまだ伸びていく状況です。そう考えると5年目は更にステップアップしてもらえるわけですが、ちょっとそうもいかない事情があります。

4年目のブリッジスはシーズン前に4年60Mの契約延長をけりました。本人としては大正解のチョイスでしたが、ホーネッツからすれば、もう少しオファーを引き上げてサインさせておけばよかったよね。当時は4年92Mのロジアーに対して、ブリッジスの評価はチーム内では高くありませんでした。現在がどの程度の評価かわかりませんが、平均20点オーバーの若手なのでマックス近い要求をしてくるでしょう。

3年目のワシントンも契約延長が可能です。ブリッジスの失敗があるので、適度なラインで手を打つか、活躍が物足りないから放出するかを考えるタイミングとなります。つまりは2人のウイングについて将来像を見つめ直すことに。

違った。マクダニエルズ(2巡目指名)も3年目が終わりました。来年の契約もあるみたいですが延長するかどうか考えないとね。ってことで若手のウイングを整理するオフになります。もちろん全員と再契約してもいいけど、その先にラメロもいるからな。

ちなみに今シーズンのサラリー順に、来シーズンのキャップヒット額を並べると

ヘイワード 30M
ロジアー  21M
ウーブレ  13M
ハレル (FA)
プラムリー  9M
バトゥーム  8M(笑)

最後のは冗談ですが、実はラメロ、ブリッジス、ワシントン、コディの4人を足してもロジアー1人分もなかったサラリー。それが分厚い選手層を可能にしていたわけですが、いよいよブリッジスがあがるので、ロスターを上手く揃える必要が出てきます。なお、コディの契約も切れます。

ヘイワードに大きな額を払っており、ロジアーも25-26までの契約があるので、実はそこそこ身動きが取れない。ちゃんと必要なところに補強をしてチーム力を向上させていきたいわけですが、そうなると全員を残すのは簡単じゃないよね。とにもかくにもブリッジスの契約次第では、大きな動きになります。

そういえばウエストブルックって話があるとか。考えようによってはヘイワードかロジアーとのトレードなのかもしれません。なんせサラリーが高いとはいえ、ウエストブルックは来シーズン限りなので、その先が一気に楽になります。どうせヘイワードはケガしているんだし、ガードのところは変更したいわけで・・・ラメロの暴走は止まるけど、別の暴走が始まるかもね。

いずれにしても、いよいよホーネッツは「サラリーと戦力のバランス」を問われる時期に入ります。かつて「スターターでケンバが一番安い」という意味不明なアンバランスさを達成したように、このチームのオーナーは変わった金銭感覚と選手評価の軸を持っています。

ボレゴの1年目は不良債権処理に困っていた時期で、補強が出来ないからこそ再建へと進む必要がありました。何が起こるのか、神のみぞ知るのかな。

◎課題克服と常勝へ

ホーネッツは強くなりましたが、その強さは「勢い」にもみえてしまいます。不安定さを抱えたまま、より強い爆発力を持ったチームになってきたわけです。だから大味な試合運びになってしまいプレーオフで勝てるチームとは言い難いものがあった。なお、似たようなウルブズはそれでも勝ってしまったけどね。

この課題に立ち向かうのであれば、ロスターも一部見直す必要があるでしょう。センターにコストをかけすぎないでウイングを揃える方針は良いと思うけど、そのウイングを有効利用するゲームメイカーがいないと厳しいぜ。

じゃあそのゲームメイカーにラメロがなれるのかどうか。むしろ3Pが決まりパス能力の高いラメロのアタック能力を信じるならば、相棒となるビッグマンが欲しくなるよね。そうするとウイングが多いチーム構成を見直すことにもなるしさ。

個人的にはPGをいれてラメロをウイングに回したい。ヘイワードとブログドンをトレードとかさ。これが一番ハマる気がしますが、ディフェンス戦術の不安を解消できるかどうか。

ひとまず5割を超えるまでステップアップしてきたホーネッツですが、だからこそ次のステップを考えるオフになりそうです。


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