書くことがないロケッツです。書くことがないというか、書き出すとサイラスの悪口だらけなるのですが、別に最下位のチームのHCをバカにしたって、勝っていないんだからそりゃそうじゃん。ということで書くことがない。
しかし、思い返してみると悪口を書きたくなる理由は、単にジェイレン・グリーンをエースにしなかったことだけでなく、シェングンの素晴らしさを主力にしないとか、ガルバがなかなか試合に出てこないとか、クリストファー<<<KPJになっていることとか、いろいろ含めてルーキーたちの扱いにあります。
ロケッツのルーキー4人は全員が素晴らしかっただけに、残念だったわけですが、今回はそんなルーキー4人にフォーカスして「さようならロケッツ」としていきましょう。普通に4人中心のチームにしていれば、物凄く前向きに過ごせたんだけど、現状を見ると来シーズンもKPJ、テイト、ウッド、マシューズを好んで起用するんだろうな。ロケッツには5位指名権でも勿体ないくらいだ。
◎ジェイレン・グリーン
最下位のチームでエース扱いされないドラフト2位
これって過去にいたのかな。なかなか苦しい立場にいたグリーンですが、その非凡なる得点能力は存分に感じさせてくれました。意地悪な見方をすれば得点力を発揮できないと、存在感は薄くなるのですが、その理由がボールを持つ回数が少ないとか、点を取るシステムが出来ていないって事なので運が悪かった。
全てを変えたカニングハム
チームを躍進させたモブリー
強豪チームのスターター・バーンズ
ファンタジスタ・ギディ
ある意味でルーキーらしくない活躍ポイントを持っていた他の選手に比べると、純粋な得点力が売りのグリーンはルーキーらしいルーキーでした。だから足りない要素もハッキリしているし、それは今後伸びていくのは間違いないでしょう。
グリーン最大の武器は、なんといっても身体能力。去年のアンソニー・エドワーズがフィジカルの強さと、鋭角な切り返しに特徴があったのに対し、グリーンはスピードと跳躍力を強みにしますが、このスピードのあるランニングから跳躍に繋がる動きのスムーズさが素晴らしく、殆ど踏み切った感触がなく浮かび上がっていくイメージです。
おそらくグリーンと同じようなスピードを持つ選手はいるでしょうが、これほどまでに跳躍への動きがスムーズな選手はいません。横の速さから縦の速さへの移行がスムーズ。驚くほどにスムーズだからヘルプディフェンダーが踏み切るタイミングが非常に難しい。
また、現代版エースらしくルーキーながら高いシュート能力も魅力です。これだけの身体能力を持ちながら、やっぱりシュートへの動きのスムーズさが素晴らしく、総じてグリーンの良さは
体の使い方が上手く、動作と動作に切れ目がない
相当柔らかい筋肉がついているんでしょうね。
3Pは34%ですが、これはオープンショットの確率が高くないことが関係しており、プルアップで34%はルーキーとしてはハイレベルな合格点だし、3~6ドリブルからの3P36%、7ドリブル以上38%と
自らクリエイトしてのプルアップ3Pが高確率
そんな特徴もあります。ここからチームとしてキャッチ&3Pが増え、個人としてシュート力を安定させれば40%を超えてくるでしょう。それはそれでグリーンのハンドラープレーが増えないって事なので問題あるか。いずれにしてもエースキャラとしては、なかなかシュートの上手いルーキーでした。
一方で弱点も明確でした。2P49.7%でしたが、これはシュート力不足でも高さ不足でもなく、フィニッシュパターンに問題がありました。同時にスピードがある割にはゴール下まで飛び込み切れないことが多く、1on1スキルにも課題が残っています。
・フィニッシュパターン不足
・1on1のパターン不足
・適切なコース取り等の戦術力不足
最後はロケッツ全体の問題なのでグリーンの責任ではないのですが、スイッチ誘導して狙う相手を定めるとか、ヘルプディフェンダーの位置を調整してからドライブするとか、そういう戦術力がなかったです。
前者2つについては、これまでは身体能力で抜くことがイージーだったし、フィニッシュもシュート力と跳躍力があればどうにでもなったのでしょうが、NBAレベルだと派手なハイライトプレー以外のところでスキル不足が出ていました。相手との駆け引きをしっかりと行って逆を突くドライブをし、フローターやフィンガーロールなどリムプロテクターを外しながらのフィニッシュを身に着ける必要があります。
またステップバック3Pは79本打って25%と、これが3P全体の確率を下げた部分もあります。こちらもNBAじゃなければステップバックすらも必要なかった可能性があり、ルーキーとして学んだことを、オフの間に大きく改善してほしい所です。
どれも致命的という弱点ではないし、多くのスーパースターもルーキーの頃は苦手としていたことが多いものばかりです。「スキル」的な問題が多いのだから、しっかりとトレーニングすれば改善していくでしょう。あとはとにかくケガをしない事です。
非凡な才能を見せてくれたグリーン。ただ、メインハンドラーが少なく、パス能力を学ぶところまで辿り着いたと言えるのかも疑問です。他にPGを置き、このままスコアリングガードとして特化した成長をさせるのか、それともコンボガードとしてパス能力も磨かせるのか。ここの判断に迷う所でもあります。
◎クリストファー
グリーンとは違う得点力を見せてくれたのがクリストファーでした。この選手がいるからこそKPJをPGに置くよりも、グリーンとクリストファーのコンボガードにした方が面白そうに見えもしました。面白くて、ちょっと不思議なガードを連れてきたと捉えています。
安定したプレータイムに恵まれなかったこともあり、クリストファーは3P30%とシュートには課題がありました。大学でも30.5%だったのでグリーンに比べると3Pの完成度は低いです。
一方でドライブを仕掛けるタイミングやコース取りは駆け引きもあって面白く、点を取りに行くガードタイプなのに、チームオフェンスの中に違和感なく溶け込めています。ボールをコネコネして仕掛けるのではなく、オフボールで動いてパスキャッチから仕掛けるまでの流れが良いのが特徴です。得点に特化しているものの、点を取りに行く状況判断の良さがあります。
またゴール下でのフィニッシュパターンも持っており、ブロックをかわしていく上手いレイアップを見せてくれます。8フィート以内のショートレンジが59.7%でグリーン(54.0)を5%も上回っており、身体能力で劣ってもフィニッシュスキルと戦術力で確率をあげています。
3Pの確率さえ向上させれば、確率の高いスコアラーとして、またグリーンの相棒となるコンボガードとしては適切なタイプになれそうです。ガードが両方とも主役タイプだと機能不全起こすからね。クリストファーはボールを手放してからもプレーに参加してくるので丁度良い気がするよ。
一方でクリストファーの弱点はゲームメイク能力になります。これくらいスキルを持っているのに、オフェンスを組み立てるのは苦手に見えるってのも珍しいね。まぁこれもロケッツの問題なのか、クリストファーの問題なのか、いまいちわからない部分もありますが、PGとしてみたらゲームメイクできないし、SGとしてみたらシュート力足りないし。だけどグリーンをエースとして置いてハンドラーさせるなら、その相棒として面白いタイプなのがクリストファーです。
若いクリフとファーなので、まだまだじっくりと経験を積ませる必要があります。そういう意味でもしっかりと試合に出して欲しかったよね。あとさ、グリーン以上にクリストファーにとって「テイトがジャマ」に見えることが多いんだよね。テイトが真ん中のスペースを使いたがるから、ドライブしにくくなるんだ。この辺はテイトが間違っているというか「育成のためには間違っている」なので、サイラス問題なんだよなー。
◎シェングン
管理人絶賛のシェングンはトルコからやってきたポイントセンター。スーパースキルのヨキッチというよりはコンビネーションを生み出すサボニスタイプで、トップから左右へとボールを動かしていき、ハンドオフやスクリーンで起点を作りつつ、ポストへとポジションを移してフィニッシュに絡んでいきます。3Pも積極的に打ちますが、25%しか決まっていないだけでなく、頻繁にエアボールします。
シェングンの良さの1つめはイマジネーションが豊富なことと、それを実現するために絶え間なくプレーに絡むこと。例えばハイポスト近辺で中継役としてパスを出した後に、ボールマンへスクリーンに行くこともあれば、逆サイドのシューターにスクリーンに行くこともあり、同じようなプレーパターンから違うチョイスをするので、マークマンは逐一、異なる対応をさせられます。
スクリーンから続けて自らがポップしてシューターポジションに入り、スイッチが発生したらポストアップし、マークがズレたらゴール下にダイブと、個人の動きがディフェンスのリアクションに応じて連続して繋がっていきます。活躍しているのは確率と運動能力の高いウッドであっても、シェングンの方が多くのアクションを起こしており、とめどなくオフェンスが流れていきます。
決まったプレーコールの中で、個人の強みを生かすことが多いアメリカバスケではなく、状況に応じて変化していくチーム戦術のユーロから来た選手らしさが溢れており、センターながらロケッツで最もイマジネーションのあるプレーメイカーになっています。
シェングンの良さ2つ目は、これらのチーム戦術を構成する選手であるだけでなく、ポストアップからの個人アタックも豊富なパターンを持っている事です。ちょうどロケッツという事でアキーム”ザ・ドリーム”オラジュワンの後継者の如き、ドリームシェイクを教え込まれてもいます。
ペイント内で平然とバックチェンジをするハンドリング能力に、パスフェイク・シュートフェイクを駆使してディフェンダーを動かしていくシェングンは「ドリームシェイク」の後継者として大きな可能性を感じさせます。
現段階ではビルドアップされているわけでもないし、スピードやフィジカルが卓越しているわけでもないけど、身体をいれるのが上手く、マッチアップ相手に「守らせない」対応をします。特に印象的なのはリングに背中を向けた状態で、左右へ身体を捻るフェイクを用いて、タイミングを外し、ブロックから遠ざけるフックショットを左右どちらの手でも自在に放つことです。
3つ目の武器は、これらのポストアタックからマジカルなパスを出せること。フェイクをいっぱい用いてディフェンスと駆け引きしていますが、その中でチームメイトをしっかりと視界に収めており、そこになかなかファンキーなパスを出していきます。
つまりシェングンはチームオフェンスを作ることも、個人で仕掛けることも出来るルーキーであり、そこに「魅せる」プレーも混ぜてくる万能性を持った選手なのです。どう見ても未完成だし、NBAレベルの身体能力には苦労しているのに、これだけの引き出しを持っているルーキーというのは、なかなか目にできません。まぁ今シーズンは他にもいるんだけどさ。
NBAどころかアメリカバスケに初めて挑戦する選手がこれを出来ていることだけでもすごいのですが、オラジュワンとのトレーニングでも通訳がついているように、シェングンは英語すら理解していません。圧倒的な個人技で黙らせるならまだしも、言葉さえ困っているのにチームオフェンスを作ってしまえるのだから、大いなる才能を評価したくなるのでした。
◎ガルバ
スペインからやってきたウスマン・ガルバはシェングンのようなスキルもイマジネーションもないPFタイプのビッグマンです。ケガもあって出場機会は少なく、24試合239分しかプレーしていないので、まだまだ未知数の選手です。ただ、スタッツを36分換算するとウッドやシェングンよりも優秀なスタッツを残していることもわかります。
〇36分換算のガルバ
12.5リバウンド
1.5スティール
1.7ブロック
オフェンスをクリエイトするシェングンとは違い、ディフェンスやハードワークでの貢献が持ち味であることがわかります。生粋のロールプレイヤータイプのガルバなのですが、ウッドとシェングンの控えセンターみたいな役割を与えられ、コートの中央でプレーしているので、なにも良い所がないようにも見えてしまいます。
本来はPFタイプとしてゴール下での奮闘と、それなりの3Pを持っており、コーナーやエンドライン担当としてボールに絡みつつ、スクリナーとしてチームメイトをフォローするのが適正なのですが、ロケッツにそういうシステムがないので非常に苦労しています。
ちょっと面白いのは、ガルバは19のアシストを記録しているのですが、チームメイトからガルバへのアシストは13しかありません。本来はインサイド担当のガルバに合わせるのが普通なのですが、チーム内の仕組みが足りておらず、逆にガルバ本人はそこそこのアシスト能力を示しています。
NBA選手としては小太りにも見えるガルバは、現代ビッグマンとしては驚くようなジャンプもスピードも見せていませんが、見た目よりもアジリティが高く、何よりも大きな手と長い腕を使って、オフェンスの細かい動きに反応していきます。サイズは6ー8ですが、ウイングスパンは7-2もあるらしく、ハンドチェックの上手いビッグマンという少し変わった特徴があります。
そのためフィジカルに戦うインサイドを守ることも出来れば、ペリメーターディフェンスにも期待が持てます。「期待が持てる」というのは、まだ1流のガード相手に守っているのを見たことがないからです。こないだのスパーズ戦でデジョンテ・マレーがかなり嫌がっているシーンは観たぞ。
この長い手と反応力を生かしたスティール、ブロック、リバウンドが持ち味になりそうなガルバなので、ディフェンス面で中心的な役割を果たせます。献身的に走りもするので、トランジションゲームにも参加しますが、フィニッシュ力は課題だらけなので、まだ時間はかかるね。
大事なことはシェングンと全く違うタイプであり、異なるスペースを使うから連動することができるし、お互いの良さを引き出しあえる関係性がみえることです。ザ・ロールプレイヤーではありますが、強力なロールプレイヤーになれる可能性を持ったガルバは、シェングンの相棒として最適にもみえてきます。
◎4人のルーキー
それぞれ足りない部分もあるし、アメリカバスケへの慣れだったり、NBAクラスのプレーへの慣れだったり、いろんな要素があるので、プレータイムの問題などをクレームしていっても仕方がないのですが、大事なことはグリーンとクリストファーは並べることで威力を発揮しそうだし、シェングンとガルバは異なるスペースを使い互いの弱点を補えそうなことです。つまりは
4人のルーキーは、それぞれ違う武器を持っているが、相性の良さそうなカルテットだった
ロケッツが良かったのは面白い組み合わせで選手を指名した事だったし、残念だったのは4人の連携を深めることをシーズンプランに入れてくれなかったことです。結局シーズン通して4人が同時にコートに立つことはありませんでした。
才能豊かな選手を集めてきたときに、特にそれがハンドラータイプだと「チームとして機能しない」ことが悩みになります。その点でロケッツはクリストファーとガルバは主役タイプではないし、わき役としてボールのない所で頑張れる姿勢を示していました。だからこそ残念だったわけです。
「まだ1年目だから」と思うかもしれませんが、NBAでは才能を示せないことは罪です。もしもロケッツが1位指名権を手にしてホルムグレンを獲得したら、ガルバはプレータイムがないままスペインへ帰ることになるかもしれないし、アイビーが加わったらクリストファーにはチャンスが巡ってこないかもしれません。
そうなる前にユニットとしての連携を作り、チームの中で輝く個人としての武器を明確に見せて欲しかったのです。いや、正しくは「ユニットとして輝くような連携を作って欲しかった」というHCへの不満です。
4人も1巡目指名ルーキーがいたところで、大して機能しないのは普通の事です。ロケッツの4人もそんなケースとして忘れさられることでしょう。だからこそ勿体ない1年であり、面白いカルテットは簡単に解散しそうだなーとも感じてしまうのでした。あー、勿体ない。
「まだ1年目だから」と思うかもしれませんが、NBAでは才能を示せないことは罪です。
↑金言ですね。
OKC、POR、そして今回のHOUとさようならシリーズを拝見しましたが、丁度OKCの過去から未来を見ている気分になりました。HOUは未来というとちょっと言い過ぎかもしれませんが。
サイラスは自分がHCになった際に契約したテイトとウッドが本当に好きですよね。もともと、ハーデンとラス体制の時に呼んだHCなので仕方ないのもあるのですが、ゴードンの重すぎる契約に中途半端に勝ちに行ったせいで(しかもそれでいて最下位)ルーキーには申し訳ないシーズンでイライラしました。因みに、シーズン前半はガベージタイムにクリストファーやガルーバではなく自分の時に呼んだヌワバを使っていたので、何のために指名したのかわからないくらいでした。3/27のブレイザーズ戦から8試合の間ウッド、ゴードン、シュルーダー欠場でルーキー4人のプレイタイムとボールに触れる機会が増えた途端に軒並み全員活躍してるのを観て、凄く楽しいシーズン後半でしたが同時に、このHCはルーキーたちの1年を無駄にしたと感じました。来年もHCが変わらないとドラフト次第ではグリーン以外は下手するとシェングンですらあまり使われなさそうで悪夢です。
ロケッツはトレードで来る選手が口を揃えて「若手の成長を助けたい」と話すのですが、ボストンから来た23歳のフェルナンドまで同じことを言っていましたね。GMの差し金だと思いますが、そのくせ若手のプレイタイムにこだわっていないのが変なのですけど。
あと、KPJのキャッチアンドシュートの3Pが48%まで成長したことを宣伝しておきます。役割を変えれば丁度いいのに。