さようならペイサーズ’22

サボニスとさよならしてハリバートンを手に入れたペイサーズ。再建という事で、過去を振り返っても仕方がないのですが、カーライル体制の問題もあるので、ざっくりと見直してみましょう。

◎充実していたはずのオフ

昨シーズンに新人HCを迎え、見事に失敗したこともあって、経験豊富なリック・カーライルをHCに据えたペイサーズは、その他にもなかなか充実した補強をしました。唯一の失敗というか苦しかったのはサムナーがシーズン全休のケガを負ったことで、ロスター枠も考えて放出したことかな。

昨シーズンに獲得していたルバートに加え、ドラフトでドゥアルテを指名。4年生の即戦力とポテンシャル枠のアイザイア・ジャクソンというドラフトで若手も充実させました。ウイングにはクレイグを加え、ブログドン、ホリデー、ラムらの中堅からベテランも揃え、層の厚いロスターを作ったのでした。

しかし、TJウォーレンの離脱に続いて、TJマッコネルも長期離脱。例年通りターナーも欠場し、頼みのブログドンも長ーく欠場しました。主力が軒並みいなくなり、最終的にランス・スティーブンソンを戻すなど、今年もまたケガに泣いたのでした。

層が厚いチームのはずが、ケガ人に泣きまくっているわけで、層の厚さってなんなんだろうね。酷使された選手がケガせずシーズンを戦うケースも多いわけでして。最近はコンディショニングの下手なチームは勝てないわけですが、勝っているチームはエースが休んでも勝つもんな。

◎前半最強!

今シーズンのペイサーズは成績に見合わず、オフェンス力の高いチームでした。最終的にタンクしたこともあって25勝程度ですが、それでもハイレベルなオフェンス力を作っています。それも前半が強いんだ。

〇オフェンスレーティング
1Q 113.8
2Q 117.0
3Q 105.6
4Q 111.2

超前半型のチームでしたが、言い換えれば「先行するけど逃げ切れない」チームでもありました。思い出すのはカーライルの前チームであるマブスで、あちらも先行逃げ切りのチームでした。特にプレーオフではドンチッチが序盤に3P連発して、そこから逃げ切れるかどうかの勝負を挑んでいたよ。

つまりはカーライルスタイルってことでもあります。そしてマブスよりも逃げ切れなかったペイサーズなのですが、時にラベートがいると何とか逃げ切れる可能性が高まっていたので、そこら辺も含めて

頼るべき絶対的なエース不在が、後半の逃げ切りを許さなかった

単純にペイサーズとマブスの差を考えれば「ドンチッチがいるかどうか」と見ることも出来るし、スローダウンしたときにオフェンスパターンが少ないのは、マブスが抱えていた悩みでもあるしさ。カーライルらしい悩みなのかもしれません。

これらのことはシーズン前半には「課題でもあり、可能性でもある」空気がありました。だって、序盤に飛び出すだけのオフェンス力はあるのだから、試合トータルでバランスをとれるようになれば解決するじゃん。致命的に悪いわけじゃないので、修正される可能性は十分にあったよね。

ところが、それが出来なかった。特にケガでウォーレンを欠いたことでPFのところが手薄になりがちだったことでディフェンス力不足ともいえるし、TJマッコネルをはじめとしてPG陣のケガが多くゲームコントロールしきれなかったともいえます。いずれも「先行逃げ切り」には必要な要素でした。

キャブスが勝利するにつれて自信をもって戦うから粘り強くなったのとは逆に、ペイサーズは勝てない事で粘りもなくなっていった気もします。開幕ダッシュしていれば違うメンタルで戦えたのかもね。頑張ってれば最後に勝てるという自信と、頑張ってても最後に負けるという不安。キャブスとペイサーズは対照的だった気がします。

◎守れない

一方で顕著に守れないシーズンでもありました。かつてはディフェンスのチームだったのに、この2年間でリーグ最低クラスのディフェンス力に落ち込んでいます。

〇ディフェンス
レーティング 115.3(28位)
被FG 48.1%(30位)
被3P 37.2%(29位)

下にはロケッツとブレイザーズがいましたが、被FGの悪さは致命的だったといえます。ペイント内をシンプルに攻略されたのですが、こちらはターナーがいれば劇的に改善するのでシーズンの半分を欠場してしまったことが悔やまれます。ウォーレンやターナーがいなくなりディフェンスは延々と安定しなかったです。

この点を除くとペイサーズディフェンスの問題点は、実はオフェンス面にあった気もします。

昨シーズン途中までホークスを率いていたACロイド・ピアースのオフェンスは、パスを繋いで多くの選手が絡む魅力がある一方で、シュートミスからカウンターを食らいやすく、トランジション負けすることが多く出てきてしまいます。しかも、このオフェンスをスローダウンできないという困った欠点もあり(それもエース不在が理由かもね)、一旦ミスが出ると怒涛のように失点してしまいます。

かつて強かったころはディフェンスからのカウンターこそが最大の武器でしたが、今はオフェンスからのカウンターこそが最大の弱点になっているのでした。

そんなわけで来シーズンに向けてペイサーズの課題は、オフェンスであり、そこからのディフェンスでもあります。おそらくそれは「サボニスが・・・」は全く関係ないというか、むしろサボニスがいれば組み立てられたわけで、実際にサボニスがいるとディフェンスレーティングも108.7まで下がっているからね。ゲームを作って、しっかりとしたオフェンスをして、リスクを減らせるかどうかが大事になりそうです。

これをカーライル体制で実現できるのかどうか。オフェンス力には可能性もあるだけに、バランスを取れれば良い結果も出そうだし、取れなければ今シーズンよりも酷くなるぜ。

◎ハリバートン

オフェンスは良くても勝てないチームが次の核に指名したインテリジェンスのハリバートンですが、ペイサーズに来てから期待通りの美しいスタッツを残しています。

35.9分
17.5点
FG50%
3P42%
9.6アシスト
3.3ターンオーバー
1.8スティール

20年ドラフトでNO.1のPGだと感じたハリバートンですが、その印象以上に素晴らしいPGでした。特に3Pだけでなく2Pの確率も高く、正しいチョイスでドライブからのフィニッシュに結びつけられています。9.6アシストには文句のつけようもありません。

高いゲームメイク能力に高確率のシュート力。読みの良いディフェンスも含めてクリス・ポール以来の高精度PGかもしれません。もっと身体能力に溢れて、得点力orアシスト力の高い才能豊かなPGはいるけど、スマートなプレーぶりって意味ではレアだよね。クリス・ポール同様にプレーオフで勝てない問題も起きそうですが、それは今の時点で考える事じゃないし。

これまでサボニスというポイントセンターで構築されていたペイサーズのオフェンスは、普通のPG中心になって様変わりしています。3Pラインからペイントの間あたりを使ってプレーメイクしていくサボニスに対して、ハーフラインから3Pラインまでの間から仕掛けていくハリバートンなので、ペイサーズはより広いスペースを使うようになりました。

そこにドゥアルテやヒールドが絡むので、ドライブと3Pが混じるアップテンポなパスゲームになってきています。そんな事情もあって、インサイドにもスピードが大事になってきた匂いもしており、サボニスのチームでは役割が小さかったルーキーのアイザイア・ジャクソンは、広いインサイドをスピードで攻略する仕事を任されるようになっています。

ホリデー兄、クレイグ、ラムといったアウトサイド中心のウイング陣もデッドラインで放出されましたが、そこからジェイレン・スミスやブリセットらのPF系ウイングが活躍の機会を手に入れているのは、上手くハリバートン中心へとシフトしていっている証拠でもあります。

そんな事情もあって、実は美しい個人スタッツのハリバートンだけでなく、再建チームとして負けまくっているペイサーズなのに、オフェンスはチームとして改善しているという恐ろしい数字もあります。

〇オフェンスレーティング
オールスター前 110.4
オールスター後 115.8

〇アシスト
オールスター前 24.5
オールスター後 27.5

しっかりと負けながら、若手を起用していき、それでいてパスゲームを浸透させ、オフェンス力が上がっている。

なんとも恐ろしい現象が起きているわけですが、勝率を落としているのは、それだけ守れていないって事なので、来シーズンも同じでいいわけではありません。ただ、再建の第一歩としては極めてスピーディーに踏み出すことに成功したことは事実です。シーズン中にトレードしただけなのに、オフまで待たずに、ちゃんと前に進んでいるってのは珍しいかもね。

◎恒例の若手たち

ここ数年は負け続けているペイサーズなわけですが、それはそれで毎シーズンのように謎の若手たちが登場してきます。代表格がブリセットなのですが、今はいなくなった選手もシーズン終盤になると突如として台頭してきていたんだよね。オールスター以降の成績を見ていきましょう。

〇ブリセット
12.9点
6.8リバウンド

〇ジェイレン・スミス
13.7点
FG52%
7.9リバウンド

〇アイザイア・ジャクソン
11.7点
FG57%
6.1リバウンド
2.4ブロック

〇ビターゼ
11.8点
FG62%
5.1リバウンド
1.2ブロック

まずは空いたインサイド側のポジションに、そもそもの有望株達です。ブリセットは違うんだけどね。他の3人は1巡目指名達なので、しっかりと活躍してほしいわけですが、こう見るとみんな成績を残しています。ビターゼなんか怪しいイメージしかないんだけど、なんだかんだとさ。

一番は2.4ブロックのアイザイア・ジャクソンで、まだまだ粗削りなものの、このスタイルにフィットしています。チームとしてはディフェンスを何とかしたいので、どこまでディフェンダーとして伸びるか。そしてスミスはジャクソンよりも少し完成度の高い選手としてリバウンドでの貢献が目立っています。ビターゼはスタイル的にも、ターナー復帰したら不要かも。

まぁここら辺は「謎」ではありません。もともとロスターにいた3人とトレードで手に入れたスミスだもんね。なお、サンズがシーズン前にオプション行使していないため、スミスはオフに完全FAなので残留するかも不明です。

〇ワシントン
11.0点
3P41%

ドラフト外ルーキーのワシントンは今シーズン47試合に出ており、再建モードになる前から出番はありました。191cmながらアシスト力は怪しく、その代わり高確率の3Pを使った得点力を発揮しています。シューターって感じではなくハンドラータイプです。

〇テリー・タイラー
9.7点
2.4オフェンスリバウンド

もう1人でてきたのが196センチのガード・・・なんだけど、完全にインサイド担当やっていることもあるドラフト外ルーキーです。リバウンドの強さが買われて起用されていましたが、ちょっとディフェンスは取れなくなってきた。要するにハードワークしまくるタイプです。

総じてインサイドはスピードが大事になってきました。それがディフェンスの穴にも繋がっているので、やっぱりどこかでバランスを取らなければいけませんが、非常にわかりやすいシフトをしています。

ハリバートンがサイズのあるPGということもあって、ウイングタイプを並べるユニット構成も出来そうなだけに、ここからどんなロスター構成にしていくのか。割と柔軟に組めそうだし、既にそれなりに選手層を作ろうしています。

◎ドラフト

ドラフトは順位が決まったらYoutubeライブしたいです。

上記の通り、インサイドはスピードのある選手が欲しく、それでいてアイザイア・ジャクソンがすでにいるのでバンケロ、ホルムグレン、ジャバリ・スミスの誰でもイケます。この場合、ターナーをトレードするのかな?

一方で「ドンチッチがいない」事を考えるとアイビーをエースとして迎える選択肢もあります。ブログドンが売りに出される可能性があるらしいですが、それはアイビーを欲しいからなんじゃ。順位も考えてね。

他にもAJグリフィンのようなウイングでもいいわけで、実は選択肢が多い。そう考えると「1~3位なら4位+指名権と交換」という選択肢も出てきます。そんなことも含めて、順位が決まってから考えよう。

◎バウンスバックか滞留か

経験のあるHCを迎え、勝ちに行ったシーズンで思うように勝てず、エース放出で再建モードへ。手に入れた若手有望株を育てつつ、タンクして上位指名権を目指す。

絵にかいたようなシーズンを過ごしているペイサーズ。しかもハリバートン中心のスタイルが、スタイルとしては見えてきているというのも強みです。これで絵に描いたように1位指名権とか手に入れれば最高なんだけどね。ペイサーズって1位を指名したのは何年前なんだろうか?聞いたことないよね。

これだけ順調なら評価の高いドラフト1位を手に入れたら、来シーズンは再浮上したいところですが、イーストの状況を見ていると、かなりハードルが高いよね。落ちてきそうなチームがないんだよね。そう考えると、もう1年じっくりと育成して、指名権狙うかも。

いずれにしても大きな転機となるシーズンでした。思えばポール・ジョージを失った直後から今のチームが始まり、見事にオールスターまでオラディポとサボニスを引き上げました。そこから再浮上を狙ったけど、どうにも上手くいかない2年間を経て、大きな決断を下したね。

経験のあるHC、堅実なウイングの補強、即戦力ルーキーの獲得と、かなり前向きな改革を行ってきた中で勝てなかっただけに、早めに決断したことは良かったのかもしれません。全てはロッタリーという運に左右されるのもNBAですが、どうなるんでしょうかね。

・・・そういや即戦力ルーキーのドゥアルテのこと触れずに終わってしまった・・・。

さようならペイサーズ’22” への7件のフィードバック

  1. ひたすらに怪我に悩まされたシーズンでしたね
    来シーズンは補強を勝ちに行くのかもう一年様子見するか…
    個人的にはハリバートンターナーのコンビは見てみたいですね
    多分ターナーのキャッチミス連発するでしょうけど笑

  2. ペイサーズは歴史上1位指名をしたことは一度もありません。
    最高順位は2位で、直近だと1988年ドラフトのリック・スミッツですね。
    なお、そこから今まで一度も10位以内の指名をしたこともありません。
    次のドラフトは30年以上ぶりの上位指名権ということになります。

    ロッタリーに一喜一憂するなんて今まで味わったことがないのでちょっと楽しみですw

    1. あ、なんだか自分間違った情報挙げちゃってます?解釈の違いで許してもらえます?抽選順位のことは心臓が止まりかねません。

    2. 失礼しました。
      1989年に7位指名していますね。ジョージ・マクラウド……誰だと思って調べたら、ドアマット時代のダラスで主力だったこともあるくらいの選手のようです。
      当たり指名ができるといいなぁ……

      1. なんか指名権の話だけで記事に出来そうですね。
        バスケット・カウント用に考えましょう!

  3. 今現在のスタメン、(ハリバートンを除いて・ヒールドは置いといて)来シーズンの元気なセカンドチームが今プレイオフ順位争いをしているチーム相手に嫌がる試合をしているなあ、と笑いながら観戦してます(で結果は負けなのですが)。欠場中のドゥアルテ、決して内心安穏とベンチに座っているわけでないと思っています。
    INDファン大御所様のツイッター情報からでは、最後の1桁ドラフトピックはダントツの1989年前で7位のようです。←これはNBAはINDにクジを配慮すべきでしょう!

  4. タイリースの状況を選ばないスキル。これは守れるチームにおけば、その確実性がより勝利に結び付くハズです。ターナーもそうですが、キングスに出した兄デーがいたらかなりフィットしたでしょうけども。キングスは兎に角タイリース本人以外でオフボールで動くのがヒールドだけで、そのヒールドもどんとんハンドラー化していった。ピュアなムービングシューターでディフェンダーの兄デーの様な選手を獲得すべきだと感じましたね。ハンドラーを整理してその辺の補強がポイントの様に感じます

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