さようならニックス’22

41勝31敗の昨シーズンから急降下。何が起きたのか、よくわからないシーズンでもありましたが、そもそも昨シーズンが出来すぎであり、5割くらいが適正かなーと思ったけど、大きく下回ってしまいました。そこにあったのは何だったのか。どうしようもなかった気もするし、プランの失敗だった気もするし。

◎ケンバの失敗

今シーズンのニックスを語るうえで避けては通れないケンバ。一向に浮上しない成績のスケープゴートにされ、出場機会を失った元オールスターですが、ケンバで出場した37試合の成績を見てみると16勝21敗と今シーズンのニックスの勝率とほぼ同じです。ケンバが原因のように扱われたけど、本質はそこではなかったわけです。

それでもディフェンスをベースにしたチームにおいて、ケンバという弱点は目立ってしまいました。ローズがいない中でスターターをアレック・バークスにしたように、フィジカルに守れる選手を使いたがった傾向は明らかでした。

守れないケンバが悪い!

・・・いやいや、ケンバが守れないなんて当然でしょ!

ポイントはここになってしまいます。ケンバが悪いっていうけど、そういう選手を獲得したのだから戦術面を調整する必要がありました。それが出来ないシボドーが悪いってことになるわけですが、これもまた微妙で

シボドーが戦術を変えられるはずがないじゃん

正直、これもわかりきっていたことです。昨シーズンが「出来すぎ」なのは、言い換えれば「ハマりすぎ」でもありました。そんなにハマるかねってくらいハマっていたわけですが、元ブルズを集めるクセは変われないシボドーらしさでもあります。かといって

ケンバをミニマムで獲得できるのに、スルーするのは不可能

これもまた真実です。自分がGMだったら「シボドーには扱えないから」なんて理由で獲得を見送る判断は出来ません。だからもう不幸な事故としか言いようがない。

ケンバがディフェンスを向上させればよかった
シボドーが戦術を調整すればよかった
そもそも獲得しなければよかった

全て事実なんだけど、現実味がない話です。強いて言うならばケンバの代理人は止めるべきでした。ニックスがガードに求める能力を捉えていれば、他のチームを進めたはず。ウィザーズだったり、レイカーズだったり、クリッパーズだったり、バックスだったり、何よりもシクサーズだったりさ。他の選択肢を用意すべきでした。

それぞれの立場から見て、出合頭の事故のようだったケンバ問題。誰が悪いってことはなく、不幸な事故だった。そして今の成績はケンバの責任ではないけども、期待に満ち溢れたシーズンの開幕で大きな躓きとなり、勢いがそがれたのは事実でしょう。

ところで、ケンバの件は仕方ないにしても、ニックスはPGをどうするつもりだったのでしょうか。昨シーズンのプレーオフでスターターのペイトンを試合開始直後だけ起用し、すぐにベンチに座らせた時点でペイトンが出ていくのは既定路線だったはず。ドラフトでグライムスを指名したのは見事でしたが、ローズとクイックリーで過ごすつもりだったのか。ゲームメイカータイプ不在で問題ないと思っていたのかどうか。

何よりもフォーニエを獲得し、ブルロックが移籍を選んだ時点で、ガードディフェンスを考えておいてしかるべきだったのに、どういうプランだったのかは非常に気になります。スケープゴートにされたケンバですが、そもそも・・・ね。

◎フォーニエとランドル

「フォーニエ獲得したのに、ケンバまで必要なの?」というのがシーズン前の感想でしたが、それはフォーニエという補強がポジティブなものだったからでもあります。ブーチェビッチとのコンビに加えて、フランス代表でみせたクラッチの強さといい、タフショットを決める選手を好むシボドーにも合っていれば、ランドル中心の形を進化させられる選手だからでした。

実際に開幕からフォーニエとランドルのコンビプレーは可能性を感じさせてくれました。

ハイポストやミドルポストでボールを持つランドルに対して、その周囲をオフボールで動き、ハンドオフにピック&ロールを使って崩していくフォーニエの動きは、昨シーズンからの積み上げポイントでした。

〇ランドル⇒フォーニエのアシスト 1.7
〇ランドルのパスからフォーニエの3P 41.5%

実際にランドル起点のフォーニエは一定の成果を残しています。まぁブルロックも同じくらいだったんですけどね。シュート能力が高くエースキャラのフォーニエは、ブルロック以上にアクションしてパスを引き出していきました。

ところが、これがランドルの気難しさを表面に出してしまいました。

昨シーズンのランドルはポストから小気味よくサイドにパスを出していくのが印象的でした。今シーズンはスタッツ的には「ランドルのパスから3P」が増えているのですが、フォーニエのように「パスを引き出す動き」をする選手に供給するのが、なんだか受け身のプレーみたいになり、あるいは特定のプレーをするために視野が狭くなってしまった印象があります。要するに「気持ちよくパスを出していない」ようにみえたわけです。

昨シーズンはブルロックにしろ、バレットにしろ、外に開いて「待っている」シューターだったので、ランドルに選択権がありましたが、フォーニエとのコンビは良い感じなのに、なんだか煮え切らない。見ている方の勝手な印象ですけどね。

それ以上に問題があったのは「パスの受け手としてのランドル」でした。要はランドル⇒フォーニエはコンビとして成立しているように見えていますが、フォーニエ⇒ランドルは成立していない。パスを出した後のランドルの動きが遅いため、ギブ&ゴーが成立しませんでした。

〇ランドルのロールマンプレー
2.2回 ⇒ 2.4回
EFG57% ⇒ EFG51%

一応、増えてはいるのですが確率が落ちています。ちなみにリーグトップはブーチェビッチの6.7回なのでランドルの3倍もロールマンとしてパスを引き出しています。

ランドル中心の形を進化させるコンビプレーではあったが、ランドル本人は進化しなかった

こんな印象でした。もっとギブ&ゴーをすれば、ランドルもイージーな得点チャンスが生まれたと思いますが、自分が主導権を握る形でないとリズムを作れないランドル問題って感じです。狙い通りの形は作れたけど、狙い通りの結果にはならなかったような雰囲気でした。

また、勝負強いシュートでマジックを勝たせてきたフォーニエですが、シボドーは試合終盤に起用するのを嫌がりました。残り3分5点差以内の試合は35試合ありましたが、そのうちフォーニエがプレーしたのは23試合に留まっており、殆どシュートを打っていません。シュート打たせないなら起用する意味もないんだけどさ。

フォーニエはコンビプレーを増やしてくれたけど、ランドルにとっても、シボドーにとっても必要なプレーではなかったような気がしてしまったのでした。

◎ランドル大好き

そのランドルを重用し続けているシボドーですが、今シーズンの成績は散々でした。昨シーズンと比較してみましょう。

〇ランドル
得点 24.1 ⇒ 20.3
2P 47.4%→46.0%
3P 41.1%→30.7%
リバウンド 10.2→10.0
アシスト  6.1→5.0

一応、20点を超えているし、3Pが悪い以外はそこまで悲観するスタッツではありません。ところが、これをゾーン別にするとちょっとビックリ。

見事に真っ赤っかです。得意としていたペイント近辺のシュートが決まっておらず、実は3Pだけじゃなくてミドルレンジが全然だめでした。トータルの2Pが1%くらいしか下がっていないのはゴール下のアテンプトが増えているからです。相手チームがどこまで考えたかはわかりませんが

ランドルの好きなゾーンで自由を与えられなかった

そんな対抗策が見えて取れます。昨シーズンよかった部分なので警戒され、その警戒を乗り越えることが出来なかったわけです。確かにフォーニエとのコンビによってシンプルさが失われ、自分主導でなくなったことがランドルにリズムを失わせた面が大きいものの、それだけでなく、必要な変化・進化を作れなかったシーズンだったと言えます。

しかし、一番の問題はランドル本人ではなく、明らかに効率の悪いランドルを平均35分も起用している事です。

活躍した翌年にプレーを研究されて止められるのは、ランドル以外にも頻繁にあることです。これに対してアプローチを変えたり、チームのバランスを変えて対応していくのが通例です。ただ、あまりにもランドルに拘っていたシボドーなわけで「そんなにランドルが好きなの?」という疑問。

同じことがバレットに発生しても「チームの未来を担うバレットだからいいんだよ」となるのですが、勝ちたければアプローチを変えるべきだったし、成長を求めるならばランドルじゃないでしょ。ってことで、実はやっぱり

昨シーズンに勝ちすぎてしまい、方針が曖昧になってしまった

そんな印象を受けてしまうのでした。昨シーズンが5割ならば「もっと成長をしようぜ」の方針だったと思いますが、4位になったことが「勝ちに行くシーズンだ」と欲を出してしまったのかな。

◎勝てなかったこと

振り返ってみればペイトンとブルロックがいなくなったことで、ガードディフェンスが下がり、ゲームメイクもないからアプローチも変えられませんでした。ただディフェンスが悪くなったところはケガ人も含めたチーム全体のコンディション問題でもありました。

実は昨シーズンってミッチェル・ロビンソンを除けば、割と健康だったんだよね。それがローズ、ギブソン、そして何よりノエルが離脱したのが全体を低下させてしまいました。ルーズなランドルをノエルやギブソンがかなりカバーしていたのがなくなり、スターターのディフェンス力がかなり落ちてしまいました。

一方でベンチメンバーは立派なスタッツを残しています。

〇ディフェンスレーティング
クイックリー 104.7
トッピン   104.3
ギブソン   103.7
グライムス  105.0
シムス    104.9

セカンドユニットで相手が弱いという面もありますが、動ける若手たち中心になるとディフェンスは改善していました。ハードワーク&ハードワークって感じですが、スムーズな連携でローテも出来ています。運動量ベースな守り方なので、スターターの機動力不足が逆に際立っていました。

ドラフトでグライムスを連れてきたのはスカウト力すげーなと思うし、シムスも頑張っているし。実は若手たちはディフェンスが様になってきているので、ここまでコンディションに左右されなければいけなかったのか不思議でもあります。

足りないものを嘆くよりも、上手くいっているベンチメンバーをもっと活用すればよかったんじゃないのか。ランドル好きすぎたことに反して、若手が育っているのは面白い現象でした。

◎RJバレット

そんな中、単なるロールプレイヤーと化していたバレットは、シーズン途中から化け始めました。簡単に言えば「オレが主役やるぞ」とアピールし始めた。ランドルに付き合い切れなくなったのかなんなのかわかりませんが、急激に主役キャラになってきたのでした。

〇FGアテンプト
~12月 13.4本
 1月~ 19.8本

シーズン中にアテンプトを1.5倍にするとか、なかなか見ない変化です。1月以降は平均24点を奪っており、急速に主役キャラに躍り出ました。これはこれで勝てなくなった一因でもあるのですが、バレットがやる分には未来に繋がるから許容しよう。

というのもEFGやTSは軒並み昨シーズンから落ちており、TS51%とか、なかなか酷い数字です。ラビーンよりも10%くらい低いので、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる状態。ちなみにランドルは更に0.6%くらい低いので、このエース2人で勝つのは簡単じゃないよね。

それでも19本もアテンプトがあるのは才能だし、3P乱打しているわけじゃなくて、しっかりとドライブして打ちまくっています。自由を失ったランドルに反して、自由を手に入れたようなバレットになっており、好き勝手にドライブしていきます。

ただ、しっかりとバレット用のプレーコールも用意されていて、コーナーからオフボールでトップにカットしていく形でパスを受け、スピードに乗ったままリングにアタックするのは、シンプルながらフィジカルとスピードの両方が乗っかっていて効果的。ポストアップやフェイダウェイもあるので強引にでも打ち切ることが出来ています。

パスセンスには課題のあるバレットの良さを存分に使うならば、ハーフコートオフェンスよりもアップテンポに仕掛けていくべきだし、こちらも運動量ベースの戦い方が似合っています。ってことで、バレットが主役になるほど、ランドルとの相性が怪しくなってきました。昨シーズンはコーナー担当のロールプレイヤー化していたので気にならなかったけど、急激に主役になるならば、インサイドは効果的に空けて欲しいし、攻守に運動量で勝負したい。

◎レディッシュ

シーズン中に謎のトレードでレディッシュを獲得したニックス。不公平なスティールでしたが、これでバレットの対角に位置するウイングを手に入れました。ザイオンを手に入れるための下準備なんて話もありますが、それは置いといてエースキャラが出来るウイングを手に入れたのは未来へと繋がります。

しかも、今シーズンはクイックリー、トッピンがしっかりと成長しています。クイックリーはより周囲を見てのプレーが出来るようになり、アタッカーだけでなく、PGとしての能力を上げてきました。トッピンは細身の身体でも精いっぱいの奮闘を魅せるとともに、スピードとシュート力を使ったプレーを自分の形にし始めています。

そこにドラフトではディフェンスに優れ、インテリジェンス溢れるグライムスを指名しており、実に興味深い若手ユニットを形成しています。

前述の通り、ベンチメンバーは機能しており、それもシボドーらしい攻守にわたるハードワークが強く意識づけられてきました。ディフェンスをベースにして、エースアタックから展開していくオフェンスシステムも明らかに進展しています。

「ランドルを好きすぎる」というのは「こんなに若手たちが伸びてきているし、戦術的にもフィットしているのに、ランドルに拘るのは何故?」という疑問でもあります。

ランドルがロールプレイヤーにもなれるタイプだったり、シックスマンとして暴れるならば、並行していくのもありですが、まずムリなので、どこで若手と主役を入れ替えるのかを考えなければいけません。プレーオフに出れない成績ならば、デッドラインで動いても良かったよね。

ネガティブなシーズンにもかかわらず、バレットを中心に若手の成長と、レディッシュ&グライムスの獲得。シムズも出てきたね。そんな状況ならば立派に前を向くことも出来ます。

ランドル、フォーニエ、バークス、そしてローズあたりを放出して切り替える気持ちがあるのかどうか。まぁローズとかノエルはベンチスタートでも頑張るから、そのままでもいいけどね。

◎よくわからないシーズンだったね

総括するとこんな感じです。

昨シーズンに躍進したぜ!
   ↓
よし補強が進むぞ。ケンバだろ、フォーニエだろ、成績アップだ!
   ↓
補強してレベルアップしたけど、肝心のランドルがついてこれないじゃん
   ↓
ケンバを下げたけど、やっぱり勝てないじゃん。どうしよ
   ↓
でも、若手たちはちゃんと成長しているよ

昨シーズンに勝ちすぎなければ、若手の成長中心のシーズンになっていた

気がするんだよね。皮肉なもんだよね。若手で勝って調子に乗ったホークスなんて例もあるから、何が正解かはわからないけど、トータルでシンプルに見えれば、この先は若手中心にチーム作りを進めればOKって感じでした。

ただ、10位でも勝率5割を超える魔境入りしはじめたイーストなので、若手が成長したからと言ってプレーオフ返り咲きは簡単な話ではありません。上手くベテランを絡めて、良いチームを作っていかないと、いつまでも才能だけを評価されることになってしまう。

でも、若手たちにどのようなベテランを合わせるのが正解なのかは、全く見えていません。若手の方がサポート役のチームだったからね。どんなチーム構成を作っていくのか、若手で構築してやり直すのか、それとも現状のスターターから再構築するのか。

1年を棒に振ったのか、それとも良い準備期間になったのか。今のところ前者の様相ですが、救いなのは個人がしっかりと伸びている事なのでした。

さようならニックス’22” への8件のフィードバック

  1. 書かれている通りランドルがすべてだったと思っています
    高額契約更新したのにランドルの体たらく 不満たらたらな仕草
    マークが厳しくなるのは分かっていたはずなのに
    このチームの為に戦おうとしないリーダーでは勝てるものも勝てません
    願わくばとっとと放出してRJを中心に若手メンバーで戦いたいとこですが
    上手く放出できるかどうか…
    シボドー就任前にアトキンソンにしておけば良かったのにと
    つくづく思います

    1. 対策されてランドルの個人スタッツ下がるのはいいんですが、あの態度は涙

      ロビンソンの契約が悩みどころです。
      ギャホード程度の契約が妥当、それ以上だとキープしなくていいかなと思います。
      今結構評価あがっているので、マブスとブロンソン←→ミッチャンのサイトレないかな。
      好きな選手ですが、今の時代だとチームを勝利に近づけるためのビッグかどうかはちょっとクエスチョンです。
      ブロンソンが来てスタートPGが埋まれば2ndはデュースがやれそうですし、IQもいますし。
      ローズは壊れないようにプレッシャーのかかる10-15分だけ救世主的な出場で。。

      1. スタッツ下がってディフェンス悪くなるのはね。

        ブロンソンのトレードはありそうですよね。
        マブスはサラリー払えない。ビッグマン欲しい。
        ニーズは合う気がします。

    2. 思えばアトキンソンの噂がありながら、シボドーにしたのは育成よりも勝利だからでしょうね。
      結果的には育成になってきていますが、シボドーって厳しいタイプなのに、なんでランドルの態度には甘いんでしょうね。

  2. ほとんどの人が気にもしないけど、ペイトンのゲームメイクとディフェンスが無くなったのが、去年との1番の違いなのでは?
    結局去年のプレーオフ惨敗したのも、それが原因な気がします。
    数字に出ない活躍、をもっと信じてほしかった。

    1. それは大きいと思います。
      明らかに1人だけ違う判断を混ぜていました。

      が、結局は残していても起用しないから意味はなかったような・・・

  3. 昨年勝ちすぎてしまった。まさにそういうことですね。。。

    ランドル←→ブログトンって噂を見ました。
    指名権出しすぎなければ大歓迎です!

    1. それってペイサーズ的にはサラリー処理ですかね。
      ペイサーズだからグライムスを要求しそう

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