超スモールと超ビッグ

レイカーズとラプターズの雑談

土曜にレイカーズ、日曜にラプターズをみましたが、両極端なチーム構成をしていて面白い対比になりました。レイカーズにはADが、ラプターズにはヴァンブリードがいないことで起きた現象ではありますが、何が起きていたのかを雑談していきましょう。特にラプターズはこの戦い方をされると変なことも起きそうなので、プレーオフでも使うのかどうか。

◎スモールとビッグ

レイカーズはレブロンをセンターにするスーパースモール。この肝となるのはレブロンとウエストブルックの特殊性で、サイズがなくても関係なくフィジカルに守れるオールラウンダーによって、スピードの優位性を作る戦い方でした。この賛否はいろいろとあるのですが、そこは主題じゃないので無視しましょう。

ラプターズはPGシアカム、SGバーンズ、SFサディアス・ヤング、PFブシェイ、Cバーチという超変態ビッグラインナップで終盤勝負を挑みナゲッツを倒しました。サイズが合ってもスピードを守れる選手達で構築しつつ、全員がヨキッチにも対応する特殊性によって成立した形ですが、スリーガードのナゲッツに対して高さという強みを使って127点を奪いました。

超スモールと超ビッグ。両極端でしたが、それぞれ「小さくてもフィジカルに守れる」「大きくてもスピードで守れる」ことを使ったわけですが、唯一の違いはレイカーズは他の選択肢がないからなのに対し、ラプターズはヨキッチ対策とナゲッツの小ささという相手を見た対応だったことです。渡邊だけでなくミハイルーなんかも起用されていないので、もう少しガードタイプを増やすことも出来たけどしなかったよ。

また、これだけ両極端にもかかわらず、両社はともに「ファイブアウト」というホーバスな流行系でした。NBAでは流行していないけどね。言い換えれば別に小さい選手を使わなくてもやれる戦術だってことです。両極端なのに、似たような選手配置(ポジショニング)で戦った両チームの対比はすごかったよ。

ちなみにどっちが日本代表に近かったかというと、それは超ビッグのラプターズ。相手センターのヨキッチを無効化するためにブシェイやバーチ、アチュワをコーナーに配置してインサイドから追い出しました。そしてアチュワが3P4/6も決めたことは、この試合のキーポイントでした。

◎ハンドラーアタック

レブロンとウエストブルックのいるレイカーズの方がハンドラーアタック中心に見えて、50点を奪ったレブロンは3P6/9をはじめ、フェイダウェイを駆使しており、ハンドラーアタックではあるけれど、アウトサイドシュート中心の組み方になっており、ドライブは少なめでした。ドライブからのコーナー3Pが少ないことが気になったレイカーズですが、すっかりカリーみたいになっているレブロンのシュートが最重要ポイントでした。生かすところ違わない?

14点のペイント内得点があったレブロンですが、速攻が8点、セカンドチャンスが6点なので、ハーフコートでインサイドを攻めこみまくったわけではありません。フリースロー8本あるので、もちろん攻め込んではいるよ。でもシューター的な点の取り方の方が目立っていました。

一方でビッグのラプターズはシアカムとバーンズのドライブ中心となっており、ほぼハンドラーアタックって感じです。ペイント内はそれぞれ18点ずつ。「抜ききる」ドライブは殆どなかったものの、コースに入られてもスピンからのフック系を決めていったのでした。デボン・リードのディフェンスはしっかりと追いかけていたけど、シアカムの高さフィニッシュに完敗。

ちなみに「高さで勝った」一方でペイント内失点が56点もあったように、ディフェンス面ではヨキッチの強さに完敗しています。いろいろと気持ち悪い試合でした。

似たような戦術構成の中で、よりインサイドを攻めこめたのは、小さくてスピードがあるレイカーズではなく、超ビッグのラプターズだったことになりますが、ドライブ&キックアウトもラプターズの方が多かったというか、シアカムとバーンズにはレブロンのようなプルアップ3Pはないので、ドライブから始まるのが結果的に徹底されていました。

そんな事情もあり、実にシンプルにわかりやすくなっていたラプターズ。ハンドラー任せな一面は同じなんだけど、ハンドラーが何をするのかを待ち、それによって動きを変えていくレイカーズのサポートメンバーに対して、ほぼほぼキックアウトを待っているラプターズのサポートメンバーの方が仕事がわかりやすかったです。

そして最大の差になったのがオフェンスリバウンドの差。もちろん、高さのあるラプターズの方が強いのはわかりやすいけど、サポートメンバーたちは「キックアウトパスを待ち、オフェンスリバウンドに飛び込む」ばかりやってました。単純すぎて逆に困っているサディアス・ヤングなんて例もあったけど、単純だから全員に徹底されていたし、単純だから対応策がとりにくかったナゲッツって感じです。

ニック・ナースを「天才」っていうのは、この単純すぎる計算式で勝てると決断できるとことなんだよね。いうなれば「高い選手で勝つよー」なんだけど、ポジション概念を吹っ飛ばしてでも採用する作戦じゃないよね。

◎奮闘するスモール

ラプターズとレイカーズのどちらが「選手が頑張っていたか」と聞かれたら、それはレイカーズだよね。50点のレブロンはもちろん、リーブスとスタンリーのファイトは素晴らしく、ホートン・タッカーは時にセンター役としてコンタクトプレーを繰り返し、ウエストブルックはポルジンギスにパスを出させないくらいのディフェンスをしていました。

当然、小さいからこそハッスルしないといけないわけですが、よりポイントだったのはオフェンス面でした。

初期配置コーナーからはじまり、スポットシューター、バックドアカット、スクリーナー、スリッププレー、ポップ3Pと次々に動いていくオースティン・リーブスは豊富な運動量で見事なオフボールムーブをしていきました。小さいリーブスがかき回すことでレイカーズのオフェンスは初めて意味のあるものになっていきました。

ここにハンドラー仕事もするホートン・タッカーもインサイドへのカットプレーを連発しながら、キックアウトも繰り出し、見事にオフェンスを動かしていきました。リーブスとホートン・タッカーの運動量とコンタクトプレーに対するファイトは素晴らしく、またディフェンスの死角をしっかりと使いまくっていました。

レブロンからのパスも含め、ファイブアウトによる広いスペースを活用する連動性は高く評価して良いものです。もちろん、ウエストブルックがレイアップを外しすぎだったり、レブロンの3P次第になっている問題はあるのですが、オフェンスとしてはここまで見事に連動させるのは簡単ではありません。

なお、これらはリーブスとホートン・タッカーが8割を占めており、他にはモンク、ウエストブルック、スタンリーが少しずつやるだけで、明らかにコマ不足です。コマ不足であり、地味な名前が連なるラプターズが誰が出ても同じようにハードワークしていたのとはチーム全体の共通意識が違いました。

共通意識が違うっていうか「ラプターズはシンプルだから誰が出てもバランスが崩れない」し「レイカーズは難しいからリーブスとホートン・タッカーの重要性が際立っている」でした。普段はラプターズも難しいこともするのですが、そこでもチーム全体の共通意識があるし、そういうタイプの選手を集めているのでした。そこがレイカーズと最大の違いだよね。地味な名前が多いし、その中に渡邊雄太もいるし。

ハンドラーのDJオーガスティンよりも、運動量のガブリエルの方が良い補強になっているもんね。もっと若手のハードワーカーを集めるべきだったレイカーズ。難しいことをやっているし、鮮やかな連携も感じるけど、それを続けるには向いている選手が足りなすぎる。

ところで、管理人がホーバスの台湾戦とオーストラリア戦を評価していないのは、いうなればレイカーズのような連動性がなかったからです。こういうオフボールでの合わせが増えてくれば高く評価しますが、今のところハンドラーアタック次第って感じ。それをやるのはレブロンでもウエストブルックでもなく、富樫と西田だよん。

ホーバスがやっていたことはラプターズに近いのだけど、小さくてスピードのある選手を活用するならレイカーズみたいなことをやらないと難しいだろうね。でも、そのレイカーズも勝てないというジレンマ。レイカーズにいないタレントなんだから、日本にはもっといないよね?

◎天才HC

本来はツービッグでディフェンスを固め、レブロンのドライブとADのポストアップを起点にして、パッシングの展開から決めていくのがヴォーゲルでした。それはレブロンとADの負担は大きい一方で、この2人から始まるだけでチーム全体へと連動していくパスゲームです。なぜ、これをしないのかは、イマイチわかりません。

その一方で超スモールの布陣にしておきながら、オフボールカットを積極的に取り入れ、インサイドのスペースを有効活用するオフェンスへと変化させ、高い連動性を表現できているのはスゴイ話です。勝ててないからファンの不満はあるでしょうが、管理人的には「勝てていないけど、なかなか面白いオフェンス」です。

とはいえ、選手の人数は足りないし、レブロンのプルアップ3Pも多いし、試合を通して面白く見れるわけじゃないんだよね。とにかくリーブスとホートン・タッカーは継続してみていく価値のあるプレーをしているし、小さい選手でもインサイドアタックをどうやってしていくのかを体現してくれています。

特にリーブスはフィジカルもサイズもないし、特殊なフィニッシュスキルを持っているわけでもない。カルーソに比べれば身体能力もシュート能力も低いけど、カルーソ以上にディフェンスの死角を突くのが上手い。素晴らしいお手本なんだけど、そういえば天皇杯ファイナルではディフェンスがガチガチにペイントを固めていたから、リーブスが入り込む隙間はあるのかな?

与えられた戦力の中で、最大限の結果を出すヴォーゲル

そんな印象を抱く試合でした。ただ「最大限の結果」は出ていなくて「最大限の内容」だったね。優勝した時も理想を追ったスペシャルな戦術というよりは、現実的で相手に合わせた対応の戦術でしたが、今のレイカーズには「相手に合わせた対応」をするほどの選手層はないので、気が付いたら理想を追い求めている感じです。

なお、マジック時代のヴォーゲルも理想を追いかけていたね。あの時はルーキーのジョナサン・アイザックの離脱から崩れたけど、アーロン・ゴードンをスターにしたいチーム事情も含めて、実はオフボールでの見事な連携をしていたんだ。なので、ちょっとマジック時代に戻っているヴォーゲル。DJオーガスティンを手に入れたのは、そんな事情もあるのかな?

さて、ヴォーゲルについては、そういう戦術的な語り口をできるのですが、ニック・ナースについては意味が分からん。優勝したときは、レナードをオプションとして使っていたわけですが「高度なチーム戦術と強烈なオプション」という二元論の中で、いつ、どこで、どっちを活用するのか、という計算式が極めて優れているHCでした。

そのレナードがいなくなってからは、ディフェンス面での奇策を多く用いて、カウンターアタックを得点源としつつ、高度なチーム戦術を使って戦いました。

それがここ2年間は試合の前半には謎の個人技推しを頻繁に取り入れ、チーム戦術が不十分な試合が多く、だけど試合の後半になると前半をフリにして見事に修正してきます。このバランス感覚は常人には理解不能で、レナード時代同様にナースにしかわからないバランス感覚で結果を残そうとします。

なお、昨シーズンに勝てなかっただけでなく、今シーズンはこの計算式が狂ってしまうことも多いです。そんなことを差し引いても、いろんな対応をしてくるナゲッツ相手に0ガードシステムで勝利を掴みに行った試合はあまりにも衝撃的。どう考えても成立しない0ガードシステムどころか、なんだったら3PF&2センターみたいなユニットで勝ちに行くんだぜ。

非常識と思える戦い方でも、常識では理解できない計算式を成立させるニック・ナース

しかも、普段は「ヴァンブリードを酷使しすぎだろ」という起用法だったのに、そのヴァンブリードがいなくなったら超ビッグラインナップなんだもん。意味わからないよ。平均失点108.5点のナゲッツから、PGなし、3P39%程度で127点も奪えるならば、もはやガードなんて要らないんじゃ・・・。ヴァンブリードの酷使を辞めろよ。

ラプターズはプレーオフに進むわけですが、キャブスの3ビッグ以上の超ビッグラインナップというオプションを持つことになりました。ヤニスやエンビードがいるイーストにおいて、理解しがたいニック・ナースの采配はどんな現象を引き起こしてくれるのか、非常に楽しみに感じた試合でした。

超スモールと超ビッグ” への1件のフィードバック

  1. ラプターズのプレイオフを観たくなる試合でしたね。これだけ分かりやすく変なことしてくれると、次のゲームは何してくれるのかな?とプレイオフも楽しめそうですね。

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