グリフィン、ネッツへ

オールスター休暇ってことで、ブログもお休み中。というか、まだオールスターを観れていません。エンビードとシモンズの欠場という事件も起きた当日ですが、それ以上に衝撃だったのはブレイク・グリフィンのネッツ入りが決まった事。かねてより噂されていたものの、こんな補強がまかり通ってしまう現行ルールはどうにかして欲しいものです。

2年62Mと高額な契約が残っていながら、あっさりとバイアウトしてしまうピストンズが最大の問題です。2巡目指名権1つとかでもいいからトレードするなら、相手側にはサラリー負担もあるし、それなりに負荷を背負ったうえでの強化ですが、バイアウトでミニマム契約されちゃうと何でもありだよね。せめて「バイアウト後の選手は、そのシーズンのプレーオフには出場できない」くらいのルールが欲しいところです。

グリフィンには自由に選ぶ権利があった上にロスター枠の関係でオファーが多かったとは思えず、ネッツが最良だったのかもしれませんが、他のチームを選んでほしかった気持ちはあります。ネッツに入ったところで主役の一部にすらなれないわけで、それで優勝を目指すってのが本望なのかどうか。カズンズみたいにケガしていたなら別ですが、そもそも元気でしょ。

同時に今シーズンの特徴として各チームがビッグマン不足に困っているので、グリフィンの需要は大きかったはずです。より主力の位置づけになれるチームもあったはずなのにさ。各チームの問題点のまとめという視点も含めて、そんなことを触れていきましょう。

◎ビッグマン需要

オフの主役はピストンズでしたが、ビッグマン(ウイング含む)を多く集めていきました。当時は「買い占めて他のチームに売るんじゃないか」なんて噂も出たくらい。実際にトレードの連続で中間搾取なんかもしていました。

この事情が関係していたのかどうかは定かではありませんが、シーズンになってからタフスケジュールだったこともありケガ人も多く、ビッグマン不足のチームが多発しています。

【ウエスト】
レイカーズ(本当は不足してはいない)
キングス(いるけど頼りない)
ウォリアーズ(ケガ多発)
ブレイザーズ(ヌルキッチ)
ナゲッツ(控え不足)
ロケッツ(ウッド)
サンダー(元々少ない)
ウルブズ(元々少ない)
スパーズ(元々少ない)

グリフィンに対してはレイカーズ、ウォリアーズ、ブレイザーズが興味を示していたといわれています。ロケッツやウルブズを選べとはいいませんが、ウォリアーズやナゲッツを選んで優勝を目指したなら、カッコ良かったかもしれません。個人的にはエイトンの代役としてサンズってのもアリだと思いました。

いずれにしても各チームが「高度な戦術をやれるビッグマンが欲しい」という思いに駆られていました。言い換えれば多くのチームがそこに困っているわけです。この流れが出来ているのは、どちらかというとディフェンス面の問題で、リムプロテクターがいないと勝てないのがわかっているから欲しいのだけど、多くのビッグマンがオフェンス能力に乏しい、なんていう事情もある気がします。

ウエストはADとヨキッチがカンファレンスの中心的存在になっているので、ここをどうやって対処するのかは、必ず準備しないといけません。その上でレナードやポール・ジョージを守れる機動力も欲しくなるから、単にビッグマン不足と言ってもデカい選手を連れてくるのでは話にならないのでした。

【イースト】
バックス(控え薄)
ラプターズ(不足)
セルティクス(戦術との相違)
ヒート(バトラー)
ニックス(ケガ)
ホーネッツ(元々少ない)
ウィザーズ(元々少ない)

イーストではネッツのほかにヒートが興味を示していたといわれています。アデバヨと共存可能かつ代役が出来そうなのがターゲットになった理由でしょうが、バトラーのコンディション問題がある中で代役的に欲しかった事情もあると思います。これが最近の変わったところだよね。なぜかバトラーの代役がグリフィンっていうポジションレス時代。

バックスはミニマムですら契約できない状況らしいですが、他にもラプターズ、セルティックスと有力チームがビッグマンに困っていたので、別にネッツじゃなくてもよかった気がします。同時進行でドラモンドの話が出ており、ラプターズやセルティックスはドラモンドの方が向いていそうなことも関係していたのかな。

セルティックスは「テイタムの個人技がなぁ」とか「ケンバがイマイチすぎる」とかいろいろ問題はあるものの、本質的にはタイスとトリスタンを並べたビッグマンの不器用さが本質的な原因だと思います。未だにホーフォードが恋しくなりますが単なる能力差ではなく、万能なビッグマンがいることでドライブを楽にしたり、パスアウトが機能したりとメリットは大きい。

昨シーズンはタイスにヘイワードをつけたので、なんとかカバーできていたけど、2人も役割が固定的なビッグマンを並べるのは苦しい。グラント・ウィリアムスの成長がいまいちなのかもね。ってことでグリフィンを手に入れればいろいろ解決しそうでした。まだドラモンドが残っているし、タイプ的には3Pラインの外でボールを持ちたがるグリフィンよりもポストになるドラモンドの方が良いし、ディフェンスやトランジションもあるのでターゲットが違うのかもね。エインジはトレード出来ないかも。

まぁいずれにしても、グリフィンの動向は各チームで「弱点を補える補強」だったと思います。+α だと考えればデメリットもある選手ですが、確実な戦力アップが狙えました。リーグのパワーバランスを変えられる可能性がある案件でしたが、ネッツに収まってしまったのでした。

◎センターをやれ

デアンドレ・ジョーダンとジェフ・グリーンを5番で使うネッツなので、グリフィンも5番に収まるのが自然です。ジョーダンと同時起用の時だけ4番になりますが、ガードの方は人数が足りているため、そんなに長時間にはならないと思われます。

センターをやるのを嫌がっている傾向の強いグリフィンですが、ネッツではデュラントが「5番もやるよ」と言っているくらいなので、グリフィンも断らないでしょう。ピストンズではセンターではなかったものの、プレーそのものはグラントに譲るシーンも多く、サポートキャストに徹する気がします。

さて、そんなグリフィンはそもそもピストンズに移籍した頃からドラモンドとの併用には問題がありました。現代的にはPFとしてやっていくのが難しくなっているのです。

〇平均移動速度 3.58

今シーズンのグリフィンはリーグで2番目に動かない選手です。1位はレブロンで3位はハーデン、4位がデアンドレ・ジョーダンなのでネッツはトップ4のうち3人を抱えることになります。動かない選手問題はネッツが抱える重要な課題になるかもしれません。

基本的に「動かない」の上位に入ってくるのは、移動距離の短いPG(速攻に走らないタイプのガード)か、ペイント内専門のセンターです。一部の例外としてカーメロのような選手もいますが、移動距離が長いウイングの選手が「動かない」のは大きな問題があります。

パワー&フィジカル系統の選手であるグリフィンに運動量を求めれば、パフォーマンスの低下やケガのリスクが上がります。ただでさえ、シーズン後半にケガをすることが多い選手なので、「ウイングなんだから運動量を上げろ」は難しい要求でしょう。

ロブシティ時代はクリス・ポールの超絶遅いペースが、リーグ内で目立つほどではなかったものの、ウォリアーズ王朝が訪れて3P&トランジション時代になってから、『PF』というポジション概念は死語になりました。これは「PFタイプの選手がいない」のではなく、PFだろうがSFだろうがSGだろうが、トランジション・3P・ドライブの全てが出来て当然になったことが大きいです。

ビッグラインナップを好むチームもあれば、スモールラインナップを好むチームもありますが、1人のリムプロテクト専任の選手を抱えていたとしても、もう1人のビッグマンはペリメーターでも守れる選手であるのが通常です。ウイングは運動量とディフェンス力が大事になってきたよ。

ということで、グリフィンがウイングをやるのはムリがあります。かつては出来たかもしれませんが、時代の流れで必要とされる能力が変わってきたから、グリフィンでは対応できなくなってきた。代わりにウッドのようにセンターとしては弱くても、スピードのミスマッチを生かしてセンター役になれる選手も出てきています。

パワー&フィジカル系の選手で運動量に欠けるのがグリフィンですが、ドライブや3Pなどを含めてビッグマンとしてスキルが高いのは売りの1つです。現代的にグリフィンが最も生きるのはセンターなので、ネッツ移籍で適正ポジションになることが期待されます。

なお、ドラモンドも「動かない」選手ではあるものの、グリフィンよりは動きます。動く範囲の狭いオフェンスではそこまで数字は変わらないものの、ディフェンスではかなりの差が生まれてきます。

〇ディフェンス平均移動速度
グリフィン 3.36
ドラモンド 3.66

ドラモンドのこの数字はコビントン、カイリー、ブッカー、ホルムズ、テイタムなどと同じ水準で、基本はビッグマンを相手にしながら、ペイメーターまで追いかけることが出来るタイプです。

オールスイッチやセンターもアウトサイドまでチェイスするタイプのディフェンスを好むチームはグリフィンよりもドラモンドの方が適しています。ラプターズやセルツね。ネッツはディフェンスはあまり考えなくて大丈夫だから。

なお、グリフィンはチャージドローの奪取率がリーグ1位です。昨シーズンが6位、2年前が3位とコースに入るディフェンスを得意としています。

〇チャージドロー 0.55

この点でもペリメーターを追わなくてよいリムプロテクト役のセンターとして集中させた方が役に立ちそうなので、ネッツのディフェンスが良くなってしまう驚異も秘めているのでした。

◎戦術ハーデン

グリフィンの弱点はFG%が低いこと。3Pもイマイチですが、それ以上に2Pが44%しか決まっていません。余計なタフショットを打つことが多いので、その点でもセンターにした方がメリットが出そうです。

かつてのロブシティではクリス・ポールのパスからアリウープを連発していたわけですが、これがなくなってからのグリフィンはかなり苦しんでいます。自分でプレーメイクしていくと効率が落ちるのは普通ですが、それにしてもグリフィンはエースキャラとしては物足りなかった。

ネッツで注目されるのはダントーニ&ハーデンによって、スペースが保たれたうえでの魔法のパスが出てくることで、グリフィンの押し込みプレーがどこまで増えるかです。

〇ダンク数
20-21シーズン  0(20試合)
19-20シーズン  5(18試合)
18-19シーズン 37(75試合)
17-18シーズン 46(58試合)
16-17シーズン 68(61試合)
15-16シーズン 34(35試合)
14-15シーズン 84(67試合)
13-14シーズン 176(80試合)
12-13シーズン 202(80試合)

クリス・ポールがいれば1試合2本くらいのダンクは決めていたのですが、年々順調に減っているグリフィン。この数字が回復するのかどうかは選手生命とネッツの戦績を左右します。決まらないなら3番手のセンターになってしまうかもしれないのでした。

リバウンドがそんなに強くないグリフィンなので、オフェンス面での活躍に乏しければ、ジョーダンとの差別化が難しくなります。どっちにしろ運動量が少ないならブロックが強烈でリバウンドを稼ぐジョーダンの方が有能だ。

ということで、ハーデンとの相性次第で大きく変わってきそうなグリフィンの未来。試合を観なくてもハイライトダンクの数を確認すれば、その調子がわかるかもしれません。なんせ今シーズンはゼロだからね。

◎ヤニス、エンビード、アデバヨ

プレーオフの事を考えると、グリフィンが加わったことでヤニス対策が進みました。ヤニスを止めることが出来る貴重なディフェンダーなので、必要な時にエースキラーに出来ます。ここはネッツにはいなかったタイプの選手であり、イーストを勝ち進むことを考えれば欲しかった選手でもあるので、良い補強になったといえるでしょう。

その上でエンビードをどこまで止められるかは注目です。センターやるのを嫌がっていたこともあって、マッチアップの回数が少なく、どう出るのかわかりません。高さでは劣るものの、パワー負けせず、スピードでも上回れるだけに、ディフェンスに徹すればエンビード対策になりそうです。

一方でアデバヨとのマッチアップになると、振り回されやすいタイプでもあります。ある意味、ヒートが一番戦いやすそうなので、組合せ的にはキーポイントになるかもしれません。まぁ守れなくてもオフェンスで上回る作戦だけどさ。そんなわけでグリフィンについては、

ディフェンスに比重を置いた役割をこなせるか
オフェンスはダンクを増やして確率の良い選手になれるか

これが出来てしまうと、かなり強力な補強となります。出来なければ「層が厚くなった」どまりですが、それだけでもネッツとしては十分なんだよね。

優勝を目指して加わったネッツで、これまでにない自己犠牲の精神に徹することが出来るのか。突然のミニマム契約の補強で強くなり、ヒール感が強まったネッツですが、優勝は近づいたのでした。

グリフィン、ネッツへ” への7件のフィードバック

  1. グリフィンのリムプロテクターとしての能力がここまで高いとは知りませんでした。大変興味深かったです。
    若かりし日のリム周りのド派手な押し込みはとても魅力的な選手だったので、ぜひネッツで復活してほしいです。

    1. リムプロテクターとしては能力低いのですが、個人相手のディフェンスでは力を発揮しています。ただし、パワーファイター限定ですが。
      なので、ディフェンス面ではセンターじゃないと難しく、でもブロックやリバウンドはジョーダンの方が上っていう。

      ヤニスやエンビードはジョーダンだけでは止められない上に、グリフィンは相性も悪くないと思うので、マッチアップ対応の意味でも使えるということでした。

  2. 「バイアウト後はそのシーズン年俸の1/2とか1/3が最低額」とか、「それ以下ならPlayoff出場不可」とかにして欲しいかも。MAX契約→トレード出来ずバイアウト→ミニマム……はなんかモヤっとしますよね。

    契約やトレードの重みに欠けるとゆうかなんとゆうか…(選手の選手生命とかもあるから難しですけどね)

    来シーズン?から2ウェイ契約もPlayoff出場可にする(&出場日数も増やす)を検討中だとか。スーパーMAX契約だった選手が2ウェイ契約とかになるとかあるのか??

    シルバーさん&選手会 どーお考えなのかなぁ〜

    1. 選手会はプレー機会を守る意味で現行ルールを優先すると思います。
      オーナー側はメリットをとるか、デメリットを取るかなので、基本はメリットを取るのでしょう。

      なので、リーグが率先して動かない限りは、現行のままでしょうね。

      1. 確かにそーですね〜。『メリットがある限りデメリットがあってもメリットを求める』と判断する方がいいっちゃいいですかね。勉強になりますねー

  3. ドラモンドさんはどうなると予想されていますか?
    さすがに見返りなし(バイアウト)ってのはCLEは選択しないと考えています。
    個人的にはBOSが一番の鉄板候補。
    願望ではトレードでWASあたり。(ベルターンス&トマブラorイシュ・スミスなど)

    1. ドラモンドはサラリーが高すぎ、かつキャップスペースがないチームばかりなので、簡単には成立しません。
      出来るだけギリギリのタイミングで相手チームが引き取るくらいしか、トレードは成立しないでしょう。

      キャブスにバイアウトのメリットはありませんが、デメリットもないので、ドラモンドのプレー機会を守る意味では、トレードが決まらなければバイアウトもあるかなと。
      ベルタンスと交換できればウィザーズはありがたいですが、キャブスは契約年数の長い選手は欲しくないと思います。ちょうどよいトレードを探すのに難航してそうですね。

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