スペインvsプエルトリコ

順調な初戦を飾ったスペインは中南米の強豪との第2戦

ルビオとガソル、2人のプレーメイカーを抱えて長く代表でプレーする選手による連携もあるスペイン。個人技もチームのケミストリーもあるのが最大の特徴。イバカもミロティッチも不参加だけどさ。

ルビオなんて北京オリンピックから出場しているからね。当時17歳でファイナルのスターターという衝撃を全世界に。ガソルだけでなくルディ・フェルナンデスなんかも残っているし、そこにエルナンデス兄弟もいて・・・。

しかし、試合開始からスペインの見事なプレーをディアズを中心とした粘り強く、そしてクリーンなディフェンスで防ぐプエルトリコ。見事な3Pで先手を奪うことに成功します。

野球で有名な国だけにアメリカ的な鍛え方が一般化しているのでしょう。決してチームで収縮して何とかしているわけではなく、個人のところは個人で踏ん張り、踏ん張るからこそスペースを使ったプレーが出来ています。

オフェンスでも基本的なピックを使いながら、ドライブコースを選び、飛び込めんで複数の選手がよってくればキックアウト。流れるようにオフェンスが動いていきます。

苦しむスペインですが、経験豊富な代表は慌てることなく、しっかりとボールを繋ぎ、自分たちのリズムじゃなくても変わらぬプレーを続け、負けていたって普通の選手ローテで1Qを過ごしていると、プエルトリコの3Pがアンラッキーに外れたところでベンチメンバーのスペインが追いつく展開に。慌てない。

一方で追いつかれても積極性は忘れず、ファイトしまくるプエルトリコがルーズボールへのダイブ、3人に囲まれながらのオフェンスリバウンド、小さなPGまで果敢にゴール下での勝負を挑み、スペインからファールを引き出して1Qは21-17とリードして終わります。

とにかくハッスルプレーとアグレッシブな姿勢が印象的なプエルトリコ。素晴らしい内容でした。ディフェンスでパス1つにギリギリまで手を伸ばしてパス回しの鮮やかなスペインの特徴に対抗しています。

◉ハッスル・アグレッシブ!

ロケッツのGリーグチームに所属しているプエルトリコの13番ロドリゲスは公式サイトによると180cmで両チームの中で明確に小さいですが、その小ささを感じさせない果敢なアタックを繰り返し、スペインは後手を踏んでしまいます。

http://www.fiba.basketball/basketballworldcup/2019/player/Angel-Rodriguez

かといって何も問題なく自分たちのプレーを続けるスペインはハッスルするプエルトリコに対してボールを走らせまくっています。スペインの各選手は労力を惜しまず走っていますが、あまりにもハッスルするプエルトリコなので半分くらいしか動いていない雰囲気。

スペインがロドリゲスに慣れてきたと思ったら、連続でロング3Pを決めてきたロドリゲス。華麗なパスでイージーシュートを作るスペイン。2Q序盤はお互いの特徴が出ている面白い展開。

スターターが戻ってきたところで、スペインが逆転に成功します。ロドリゲスが作ったリードを守り切れなかったとみるか、やられていても自分たちのプレーで離されなかったスペインと観るか。

さて、ファジーカス問題みたいなことをよく書きますが、ガソルにも同じ問題があって、ちょっともうNBAのセンターとしては遅すぎてディフェンスが課題。なんだけど、ちょっとレベルが落ちるからかディフェンス3秒がないからか、遅い感じは全くありません。

一方で苦しんでいるのがアシストパスを貰ってもショートレンジが決まらない。シュートの正確性を欠いているガソル。数シーズン前から出ている傾向。3Pも決めるガソルなのでシュートが下手って事はないのだけど、インサイドの攻防の中でちょっとずつ体のブレが出ると耐え切れない感じ。もともと確率は高くないけどさ。

〇18-19シーズンの2P確率
ガソル 48.7%
イバカ 58.7%

10%違いってのは苦しいね。そして前半のガソルはFG1/6と散々。何やってんだか。

でも、それが目立つって事は、それだけスペインのパスゲームが優位性を生み出してきたって事。決めきってくれれば大きなリードになっていたかもしれませんが、それでもスペインの流れってのがハッキリしだした2Q後半。

でも、ここから再び素晴らしかったのがプエルトリコのハッスル!

ルビオのワンパス速攻が出ても諦めず3人で追いかけるとフアンチョのゴール下をギリギリで打たせる前にカット。
スペインがシュートを決めたと思ったら、即切り替えて3人が走り速攻の形をつくりファールを貰う。

スペインよりも弱いことはわかっているけど、だからといって負ける気は毛頭ないから、自分たちが上回れる走力と球際のしつこさを繰り返し、止められようが何だろうがアグレッシブなアタックを辞めないプエルトリコ。ファンになるぜ!

そうして最後は普通にミドルを決めきるんだから素晴らしかった前半のプエルトリコ。でも、それをテクニカルに上回っていたスペイン。前半は36-35で1点リードのスペインでした。

◉決めたガソルとスタミナ

後半の立ち上がりも同じ。見事なパスプレーとオフボールで逆サイドのゴール下フリーを生み出すスペインだけど、諦めずにブロックに行くプエルトリコに阻まれ、そこからノーヘジテーションでトランジションに移行し、数的同数なら必ずアタックしてファールを引き出すプエルトリコ

回されても回されても必ず最後までチェイスしていくし、9番のPG185cmもスペインの2人と競り合いながらでもリバウンドをキープ。アタックしまくるからチャージングにもなるけど、それをしないと一気に持って行かれそう。

しかし、スペインはガソルが3Pとポストアップからのフックで8点リードにします。前半決まらなかった部分がちゃんとフィニッシュできるとリードを奪えるって事だ。

だから何だとプエルトリコ。ガソルにブロックを食らおうが、ルビオに速攻に走られようが、俺たちはアグレッシブにハッスルするしかないとばかりにトランジションの連続を仕掛け、そしてガソルだけじゃなくスペイン全体の足が止まり始めます。おいルディ・フェルナンデスよ。34歳なんだから走れ!

10年前のルディ・フェルナンデス

追い上げるプエルトリコに対して、またもガソルが3P。そしてロドリゲスのドライブをブロックして速攻へ。8点リードに戻します。

速攻に走るスペインに対して追いかけたロドリゲスが驚異的なスピードでカットするも、フォローに来ていたのはスペインの2人。遂にここにきてプエルトリコにも疲労が。

ハッスルしまくるプエルトリコにスペインがスタミナを奪われ、ハッスルしまくったプエルトリコは動きが悪くなる。でも、両チームともにベンチメンバーも同じように戦えるのでフルメンバーチェンジです。「国際試合は1人20分~25分」というラマスの言葉が思い出されます。

でも、思い出すと前半はロドリゲスの2本のロング3Pが決まって互角だったわけで、ベンチメンバーならばスペインの方が2枚くらい上手です。しかも、もうガードが怖いのも織り込んだので、インサイドにボールがはいってもロドリゲスを離さないし、ピックに対してもハンドラー優先で守ります。

3Qを21-10で終えたスペイン。ハッスルしまくるチームに苦労する展開は変わらないものの、しっかり沈めたエース・ガソルとお互いの疲労が出てきた中でハッキリした層の厚さで上回りました。

◉諦めるわけないだろ

スペインは試合開始からビハインドでも変わらぬパスゲームで組み立てており、それは全く変わらないものの、プエルトリコからすると二桁ビハインドでパスゲームをやられると劣勢感が強まってしまいます。

諦めず最後までチェイスし、そこから休むことなく全員でカウンターに行き、それをしっかりと決めないと追いつけない。エネルギーが必要なんだ。

ファールで止めるシーンが増えてきたプエルトリコは3分で5ファールになります。追いかけきれていないことによるファール。

ということで試合開始からの素晴らしい内容の中で予想されたことではありますが、どうしてもスタミナが先にキレることになったプエルトリコ。 それでもガソルのゴール下に185cmのPGが意地でもファールしてイージーにはさせず。諦めない。 諦めないけど追いつけない。

ハッスルプレーに負けじと動いたスペインだからこそ起きたプエルトリコのスタミナ切れは、パスゲームでもっとプエルトリコを走らせたスペインの戦いぶりなのでした。

10点以上点差が離れ、しかも疲労困憊なプエルトリコ。だからといって諦めるようなチームならば、こんなにハッスルしていないわな。

左コーナーからの連続3P、ルーズボールへのダイブ、チャンスと見るや果敢に仕掛けるダブルチーム

ルビオとガソルによってコントロールしていくスペインに対して「コントロールなんてさせるか」とばかりにアクションしていく。チャレンジしていくよ。

マジで超ファンになるぜプエルトリコ。スーパーハードワーク。勇猛果敢。アグレッシブ。だけどしっかりと戦術がある。

ハードなディフェンスを繰り返し、ルビオを大いに困らせ、ルディを空気にし、残り2分で6点差まで追い上げてきました。ルビオとガソルをベンチに下げなかったのは失敗だった気もするスペインだけど、あまりにも見えない圧力をかけてくるプエルトリコに決断出来なかった感じかな。

最後まで勇敢にたたかったプエルトリコだけど、だからといってこの時間と点差でオフェンス力の足りないチームに追いつかせるほど甘いチームじゃないよスペイン。ガソルとルビオはフリースロー外したけど。

ってことで、大興奮の試合でした。

◉プエルトリコを呼ぼう!

いやー本当に素晴らしいプエルトリコ。これでイランと互角だったこと、ていうか負けそうだったことが信じられないくらい。初戦の状況が振り切った感情を生み出したのかもね。

個人的に日本の初戦は「可もなく不可もなく」として、予想された内容で予想された結果が生み出されたと思っていて、それは決してネガティブな面だけではなく、自分たちのプレーを貫いたってことです。貫いたら負けるよねってのをこの時点で嘆いても仕方がないし、貫こうと思えるくらいのチームにはなっているってことだ。

W杯ブラジル大会の話としてテストマッチで良い結果を生んでいたザックジャパンについて、南アフリカ大会を率いた岡田監督がザックに対して

「日本人はW杯本番になっても同じプレーをするから気をつけろよ」

みたいなことを伝えていたらしく、それを聞いたザックは

「本番になってより高い集中力とハードワークをしないはずがないだろ」

と考えていたら、見事に岡田監督の言った通りになった、という裏話があります。つまりテストマッチで培った自分たちのよい部分を全くそのままの形で再現しようとして、「本番でそれじゃあダメだろ」ってことで粉砕されたって話です。どこまでが事実かはサッカーブログじゃないので知りません。

今回のラマス・ジャパンも同じ、と言いたいわけじゃなくてプエルトリコをみると「本番だからこそもたらされる違い」ってのが何なのかを知ることが出来た印象です。バスケの場合は走る距離が短く、ひとつひとつのスピードが上なので、いつも以上の動きをしてしまうと逆を取られることがあります。

気持ちよりも戦術の方が大切なので、アンバランスになってはいけないってことです。プエルトリコは決してバランスを崩したわけではありません。ちゃんと何をするのか判断し、全員が動いているのにフロアバランスは保たれていました。

そこに積み重ねられたのがハードワークであり、カウンターに行く一歩目の速さであり、リバウンド時に体を張る姿であり、スペインにフリーが出てしまっても諦めずに高速チェイスしていくハッスルプレーでした。

果たしてこれはWCという舞台がもたらす特殊な事情なのか。それともプエルトリコが常日頃からやっていることなのか。

割と後者に思えるのが9番のブラウンと13番のロドリゲスという小さなPG2人がみせたアグレッシブなアタックと、広い範囲をカバーしまくる高速ディフェンスでした。去年、走れないノビツキーをフォローしていたデニス・スミス&ヨギ・ファレルコンビを思い出してしまったよ。

こういう選手をBリーグに呼んだら、日本のバスケ感みたいなのが大きく変化してくる気がします。

ブラウンはイスラエルにいるので無理でしょうが、ロドリゲスはGリーグにいる26歳だからサラリーで上回って呼べるんじゃないかなー。スモールガードが持つスキルってのが何なのかはとっても面白いし、ガードだってカバーディフェンスしまくる時代さ。

スペインはルビオとガソルのコンビが売りにして、ちょっと不安。シュート力の部分がね。これがガソル兄ならしっかり決めそうだし、かつてのようにナバーロがいるなら得点を託せるのだけど、あくまでもルビオとガソルのプレーメイクからチャンスを作る必要があります。

でもベンチメンバーは高いシュート力とパススキルを持ったLLILLなんかもいて、そっちの方が良いくらい。なんでユニットの合わせ技がちょっと難しいって事です。もちろん、それはフランス、セルビア、アメリカなんかを見据えた時の話。

とりあえず無事に連勝スタートとなり、次戦はイランとの実質的な消化試合。セカンドラウンドがセルビア、イタリアっていう死の組み合わせが予想されるので、しっかりと休養もとりつつこなしたいところです。

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