今季のキャブスを振り返る

キャブスの今季を振り返ります。ウォーリアーズ同様にキャブスも優勝だけが唯一の成功というチームです。しかし万全で臨んだはずのファイナルではウォーリアーズに圧倒されてしまいました。という事は失敗なシーズンでした。
そんなわけで基本的に貶します。



スーパーチーム
ファイナル後になってレブロンの発言が物議を呼びます。ウォーリアーズがスーパーチームで自分はそんなチームでプレーした事ないとか何とか。
ヒート時代もそうではありますが、そもそもキャブスもスーパーチームです。デュラントの移籍はサラリーキャップのルール内で行われた正当なものですが、感情的な面でサンダーを筆頭に他の28チームにはブーブー言う権利はあると思いますが、キャブスだけはありません。
シーズン中にコーバーを獲得しました。かなり不公平なトレードですが、これはトレードですから理解出来ます。しかし、マブスの不可解なウェイブによりデロン・ウイリアムスとボーガットを短い契約期間、不当に安い金額で獲得した事はルールの抜け穴感があります。
キャブスはチャンスを利用しただけなので批判される事はありませんが、それをしておいてデュラントの事はどうこう言えないな、と思っています。



ビック3はアメリカ代表クラスのスター揃いでトンプソンは史上最高レベルのオフェンスリバウンドをとる選手です。
スーパー度では引けをとりません。しかしファイナルではウォーリアーズの方が遥かにスーパーでした。それはキャブスの抱える今季の問題点でもありました。



ディフェンディングチャンピオン
チームを去ったのはデラベドバとモズコフ、モー・ウイリアムスと戦力的には痛くもかゆくもありません。ただ昨季から舵を切ったようにモズコフがいなくなった事は、インサイドゲームを放棄する事を意味します。それはハッキリとした意思表示でした。
プレイメイカー不足が問題にはなりましたが、デリック・ウイリアムス、デロン・ウイリアムスを獲得した事で解消すると共に、コーバーの加入で3P攻勢に磨きをかけました。ボーガットのケガがなければ信頼できるビッグマンも得られたため、残念な面もありますが元々オマケみたいな契約でした。
ディフェンディングチャンピオンとしてスーパーなスターター陣で順調に8割近い勝ち星をあげていったキャブスでしたが、1月から不安定な状態に陥ります。その結果としてベンチ陣を強化して更にスーパーになりました。



オフコートレーティング
レブロンがコートにいないと負けてしまうキャブスですが、絶対的エースがいるチームならそんなものです。しかしキャブスの2年前からの数値の変動は問題があります。この3年間のビック3それぞれがベンチにいる時間帯のレーティング推移は次の通り。
レブロン △6.9 → △5.4 → △8.5
アーヴィング △2.8 → 5.9 → △1.1
ラブ △1.5 → 1.9 → △1.0
つまり昨季は2年目と言う事で個人への依存度が下がり改善されていたが、今季になり悪化している。ベンチメンバーが充実し、成熟度が高まったはずなのに、である。
昨季はアーヴィングとラブが不在でもチーム力を落とさずに戦えていたのがPG不足というチーム事情はあるにせよ、3人のうち1人でも欠ければ弱体化するという機能不全に陥りました。3年目を迎えて成熟するどころかチームとして退化しています。
これはプレイオフでの快進撃を考えればシーズン中に適切な補強が出来たと言えます。一方でシーズン前のプランニングが酷かった事も事実。弱かったベンチメンバーをシーズン通して成熟させ、ファイナルでも活躍したウォーリアーズとの差はプランニングにあったといえます。



ケビン・ラブの復調
26.1得点 (4位)
FG45.7%
11.2リバウンド(3位)
4.4アシスト
キャブスにくる前年、25歳のケビン・ラブの成績はリーグ最高のPFになるだろうと思われた。ESPNではリーグ7位の選手としてランキングされていた。デュラント(ケガ)の8位より上にいたのである。
それがキャブスでは良さを潰されてしまっており、今シーズン前のESPNパワーランキングでは28位まで落ちています。これでも高く評価してくれている方です。
若くしてリーグ屈指のスタープレーヤーは、レブロンとプレーする事で2年の間に16点、9リバウンドのロールプレーヤーになりました。
そのラブが今季はフィットしていきます。12月までは平均22点11リバウンドを稼ぎました。大きかったのは3Pが40%を超える確率で決まった事でした。元々シュート力に定評のある選手でしたが、よりシューター的なポジションになりました。
しかし1月に入り失速します。シュートの不調も大きかったですが、前提として打つ本数が減りました。そしてケガで欠場していきました。
同時にチームも極端に崩れていきました。ラブが躍動する時がチームが強い時、というのが如実に現れますが、それはラブ本人の問題というよりもチーム設計としてボールがくるかどうかです。
ラブがパスをもらう相手はレブロン・アーヴィング・その他でほぼ三等分されます。
パスからラブがシュートを打った本数と確率
レブロン 5.1本 45.9%
アーヴィング 4.0本 38.8%
その他 3.8本 44.7%
アーヴィングからのパスで大きく確率を落としている事がわかります。しかも12月までと1月以降では10%近く差があります。ラブの不安定さはアーヴィングが引き起こした現象でもありました。






ビック3が1人でも欠ければ機能しない上に、ビック3の間でも連携が取れていないキャブス。それはチーム戦術不足である事をハッキリと表しています。
全くの新しいチームとなった1年目はある程度仕方なかったと思います。しかし2年目に改善された内容を3年目で崩壊させてしまっているのが今季のキャブスでした。
その間にあったことといえばHCの交代劇です。思えばデビット・ブラッドはレブロンとの関係性で解任されたわけで後任にルーが就任しています。
HC交代で良くなったしブラッドよりもルーの方が優勝に近いHCである事は疑いようはありません。しかし、戦術的な側面ではどうだったのか、という話は別です。レブロンの意向を組みすぎのルーではオフェンスパターンが単純化、というかレブロン化し過ぎておりチームで見た時の機能性を失った可能性があります。
思えばファイナル中にスティーブ・カーがウォーリアーズのディフェンスの良さを質問された際、自分ではなく前HCマーク・ジャクソンの成果と答えていました。成果を引き継いで機能性を保持した事が伺えるコメントです。
昨季のキャブスは実はブラッドの遺産がチームを助けていた可能性もあります。



アイソレーション
キャブスが昨季から大きく変わった点にアイソレーションを多用する事が挙げられます。元々多かった印象ですが3年目にして更に増えました。チーム戦術不足とアイソレーションの多用には関係性がないとは誰もいえないでしょう。
アイソレーション
昨季 8.9% リーグ5位
今季 11.9% リーグ1位
今プレイオフ 15.7%
キャブスよりも遥かにワンマンチームと考えられるロケッツは9.4%で5位、サンダーは7.7%で12位。ウエストブルックがボールを長く持つサンダーだけど実はチーム設計の中でプレーさせています。
デュラントを擁したウォーリアーズは5.7%で27位。しかもウォーリアーズはデュラントが加入して、むしろアイソレーションが減りました。
ちなみに昨季から減ったのはポストアップ、スポットアップなのでHC交代の影響がハッキリと出ています。
個人のプレーに占めるアイソレーションの割合では、アーヴィングが6位、レブロンが7位で共に20%以上になっています。特にアーヴィングは昨季の倍近くアイソレーションをしています。
その結果として個人への依存度が高くなりチーム戦術を失い、さらにはラブの確率を落としています。
但し、アーヴィングは得点率も大幅に伸ばしており、アイソレーションから得点する確率はデュラントの上を行きます。効率性の面では良いオフェンスになっている事は間違いありません。



オフェンス重視
平均得点 104.3 → 110.3
平均失点 98.3 → 107.1
そんな批判したくなるスタッツのキャブスですが、オフェンスに舵を切った成果はしっかり出ました。伸ばした得点以上に失点が伸びただけです。
この評価は難しいです。ウォーリアーズとの試合でみれば明らかにディフェンス力不足でした。しかしオフェンスで上回りウォーリアーズに唯一の黒星をつけたのも事実です。
問題だったのはアイソレーションオフェンスでレブロンへの負荷が大きいのに、代役となるディフェンス要員をとれなかった事です。しかもデュラントの存在はシーズン前からわかっていた問題でした。
デリック・ウイリアムスはディフェンスの良い選手ではありませんが、マッチアップするだけのサイズと運動能力は持ち合わせていましたが使われませんでした。
ランス・スティーブンソンは契約のためのワークアウトまでしましたが見送られました。まぁ活躍するなんてラリー・バード以外見抜けなかったでしょうが。
昨季のウォーリアーズ同様にSFからPFのベンチ不足で、レブロンへの負荷が大き過ぎ、同時にラブのオフェンスパターンを制限する形になりました。
オフェンス重視は評価できる面もありますが、いくらなんでもディフェンスを疎かにし過ぎました。



キャブスとクリッパーズ
勝率、FG、リバウンド、アシスト、ターンオーバー、オフェンスレーティング、試合のペース
キャブスとクリッパーズは多くの数値で似たような成績を残しています。違うのはクリッパーズの方がディフェンスが良い事、キャブスの方が3P中心に攻めている事です。
アイソレーション率も1位と2位です。
両チームに共通しているのはスターターは強力だけどベンチの結果が悪い事。そして戦術に乏しい事です。クリッパーズはベンチ良い選手を連れてきては失敗を繰り返しています。
多分、同じくらいの強さだと思います。ただ、ファイナルで当たったら経験値とレブロンの差でキャブスが勝ちますが。
HCのタイプも似ていて戦術はないけど、人望はありチームをまとめるのは得意なタイプ。



誰もレブロンを止められない。HCですらも。
ファイナル中の公式サイトに気になるコラムが掲載されました。それは「レブロンは本当はウォーリアーズのようなチームバスケを望んでおり、チーム状態を考えて今のようなプレーになっている」といった内容でした。
おそらくそれは事実だと思います。しかし、3年目を迎えたキャブスは全く逆の方向にベクトルを向けました。しかもそれはレブロンが望んだHC交代であるし、レブロンがアーヴィングにやらせた結果でもあります。
よく「レブロンはチームを強くするために敢えて周囲に任せている」と褒められる事があります。事実ではありますが「任せる」といってもチームプレーのなかで託す事と、自分がプレーに関与しない事は違います。レブロンは後者を選ぶ事が多くあります。
ジョーダンはトライアングルに参加せず、逆サイドで待ちトライアングルが成功しなかったパターン時にフィニッシュします。
コービーは試合の序盤は強引なシュートは控えて、自分にマークを引きつけて味方にシュートを打たせます。
どちらもチームプレーには関与しています。
普段からパスを回すレブロンは良い意味で味方に任せています。しかし時に放置するようなプレーをするならベンチに座って味方に任せるべきです。要はチーム戦術として任せているのではなく、丸投げ状態です。
この辺りはレブロン批判ではありますが、本質的にはHCが采配として調整すべき事項です。
ウエストブルックはレブロンに近い選手で、自分で得点もするし、アシストもレブロンより多く出します。ただミスが多いだけです(そしてそれは重大な欠点でもある)
自分がコートにいる間はプレーに関与し続けます。でもウエストブルックは34分しか出場していません。14分は味方に全てを託しています。それはHCの采配です。
同じようにチームメイトの成長を促すならウエストブルックパターンの方が遥かに仲間を信頼している事になります。



同じスーパーチームでありながら、ウォーリアーズはチーム戦術を遂行し、キャブスは個人で対抗し負けました。しかし、それはHCのタイプとしてもチームのプランニングとしても当然の結果ではあります。
キャブスの目標はウォーリアーズに勝つ事なのだからシーズンを通してチーム戦術を導入してこなかった事には弁解の余地はありません。ファイナルだけをみればウォーリアーズが強かった、で良いですがシーズン全体でみればその成長には大きな差がありました。キャブスが伸びなかった以上、レブロンがチームを成長させようとしたという意見は間違っています。



来季へ向けて
そんな酷いキャブスですが、裏を返せばこれだけ反省点があってもプレイオフであの強さなわけです。反省点を受け入れる度量があれば更に強くなれる余地があります。カーメロとかポール・ジョージとかはその後の話です。
◯HCの交代
まずは戦術面に強いHCに変えるべきです。レブロンとの関係性で無理ならば、アシスタントコーチを迎え入れるべきです。
フィル・ジャクソンやラリー・バードもこの手法をとっていました。自身はメンタル面やプレー選択を担当し、チームの戦術はアシスタント任せにする手法です。
◯レブロンがやりにくいシステムの導入
レブロンがトップでオープンな形から展開するオフェンスは効果的な反面、相手には対策する余地を与え、自分達にはレブロン頼みのシステムになってしまっています。
チームとして戦うためにはレブロンの能力だからこそ出来るシステムは避けるべきです。同じ事をデュラントは我慢してシーズンを過ごしました。
2点とも今になればヒートのスポルストラが有能だった事がわかります。レブロンどころかパット・ライリーの助言も撥ね付けました。
◯アーヴィングとラブのコンビプレー
アーヴィングがまともなパスを供給してあげる事が大切です。ウルブズではルビオのパスからシュートを量産していました。同じようにテンポよく2人でパス交換する必要があります。
ただし、ラブの成功率が不満なら即トレードすべきです。42〜47%くらいがラブの個人能力です。今更これ以上上がる事を期待するならトレードした方が早い。バトラー?ポール・ジョージ?カーメロ? ボールハンドラーばかりだ。ラブよりガマンしてくれるのか?
◯チーム戦術に適したプランニング
アウトサイドから得点出来る選手を揃えたのは、レブロン頼みシステムとしては悪くないプランニングでしたが、結果的にレブロンは不満を漏らしました。
何がしたいのかとどんな選手を集めるのかはセットです。ロケッツを見習う必要があります。
この点でGMは契約延長されませんでした。ビック3だけでなくサポートメンバーも豪華なスーパーチームを作った実績は見事だと思いますが、機能はしていません。仕方ないのかなと思います。
またビラップスが後任の1人として上がっています。ピストンズはスター不在のビック5でしたから、より良い構成に舵を切るかもしれません。
◯スーパーチームの維持
新しくスターを連れてくるよりも今のチームを維持する事が大切です。特にコーバーとデロン・ウイリアムスはベンチとしては有能でした。デロンは意外な程にガマンしてプレーしてましたが、これまでにない充実感を得られたのだと思います。マブスの解雇なので不当に安い26万ドルしか払っていませんが、本来は900万ドルです。安く契約してくれるでしょうが、2人で1300万ドルくらいは必要でしょう。
問題はサラリーキャップの空きがない事です。JRスミス、シャンパート、フライで3000万ドルは使い過ぎです。デロンとコーバー残せるなら高いJRスミスを放出したいところ。(引き取り手いなそう)
デリック・ウイリアムスも残した上で、PFとCの控えをとりたいところです。PJタッカー、イリャソバでSF兼任にするか、タージ・ギブソン、スペイツ、デドモンあたりでインサイド専任にするか、この辺が現実的かな。ケガのルディ・ゲイに賭けて、ベンチの攻守両面をレベルアップさせる手段もあります。



いずれにしても3年間で常にレブロンの意向を忖度しなければならないチームになってしまいました。これが最大の問題点です。更にスターを連れてくるとしてレブロンに意見できる選手が必要です。
既にアイソレーション大好きな2人を抱えているので、変にスターを連れてくるよりも必要なタスクを実行する選手を揃える方が好ましいです。
幸い改革をするだけの理由がファイナルにはありました。メンバーよりも戦術・意識改革をしたいところです。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA