2017 ファイナル第5戦 データ編

第5戦をデータで振り返ります。お互いの良さも相手への対策も出た最終戦に相応しい試合でした。もし第6戦、第7戦があっても好不調の波があるだけで、同じ様な試合になったと思います。どこかでウォーリアーズが勝ったはずです。

高確率だったキャブスのシュート
FG53%
3P46%

非常に高確率だったキャブスのオフェンス。試合をみていた限りではJRスミスは例外として、そんなイメージはありませんでした。

ウォーリアーズ
FG51%
3P37%

キャブスにら劣るがこちらも高確率だったウォーリアーズ。こちらもデュラントは例外として、そんなイメージはありません。

データをみると62-52というペイント内得点がもたらした高確率でした。キャブスではレブロンとトリスタン・トンプソン。確かに終盤のレブロンはヘルプが来なくてダンクしていた。ウォーリアーズではカリーが6本のレイアップを決めていた。あとはデュラント。

さて、このペイントでの得点は第1戦を思い起こさせる。しかし、あの試合では両チームとも極端に低いFG%だった。特にウォーリアーズはそれを嫌がって、第2戦からアウトサイドシュートに切り替えていた。

ペイント内が多かった1つは速攻が良く出たから。キャブスはスティールからの速攻がよく出て25点。ウォーリアーズはキャブスのピックアップミスから18点。

前半はウォーリアーズのブレイクパスを奪って速攻するなど走る前に止める作戦だったキャブス。速攻で上回れたのだから作戦勝ちだった。
さて、一般的にペイントの得点が多く、確率の高いシュートセレクションはオールドスクールでは正しい選択であり、勝利に近いはずだ。3Pの確率も上回ってるし。

 

しかし、より得点したのは確率の低い3Pを多く打ったウォーリアーズ。キャブスの24本に対し38本を打った。第4戦で決められまくった3Pをウォーリアーズが打たせなかった、とも言える。46%も決められていたら当然ではある。

キャブス3P数
アーヴィング 12本→2本
ラブ 8本→3本

決まったのはアーヴィングの1本だけなので、徹底して打たせない事に成功している。特にラブに関しては前の試合でワイドオープンが5本もあったため、徹底してマークしている。デュラントやグリーンが外までマークするわけだからインサイドで得点されるのは仕方ない。

なお、アーヴィングはそもそも打つタイミングが難しすぎるから対策したのかわからない。第4戦もマークされているのに打っていたし。
キャブスもウォーリアーズの3Pを警戒してミドルレーンを空けるシーンが頻繁に。イグダラアタックは試合の流れを変えました。

お互いに3Pを警戒したが故のペイント内得点だったといえる。そしてFG%が低くても3Pを多く打った方が勝ったのだから、互いの選択が正しかったといえる。



ラブのスタッツからみる特性

ひとつ興味深いデータがある。ラブのディフェンスレーティングは非常に悪かった。

チーム 126
ラブ 142

30分出場の数字なのでディフェンスが出来ない選手だ。ところがラブが出ている時間は速攻での失点は9点、ペイントは28点とこの試合としては少ないのだ。チームメイトよりも守れていたラブ。
つまりラブがいるからインサイドを攻め難い。でも、そんな時間の方がウォーリアーズは得点していた、という事になる。アウトサイドの方が効率が良かったというわかりやすい例。

ちなみにこれは偶然です。ラブはファールトラブルで前半出場時間が短く、4Qはフル出場。その4Qでウォーリアーズはアーリーオフェンスしないでゆっくりとした展開を選んでいます。当然、外のシュートが増えたというだけです。でも外のシュートの方が効率的だったのは事実。

ちなみにクワイ・レナードがいる方がスパーズは失点が多い事例もあり、細かい対策が行われている実例。



ウォーリアーズのコントロール

これまでキャブス側が考えるべきと指摘してきた試合のテンポ。しかし、この試合では意外なコントロールが起きていた。

ポゼッションペース
前半 113
後半 90

後半に異常なくらい落ちています。それはウォーリアーズ側のアクションが原因。それはトランジションを辞めた。マイボールになっても走らないウォーリアーズの面々。アンチスモールライナップみたいな流れ。

 

その理由は大きく2つ。

1つは11点リードした事。リードを守れば勝てるのでリスクをとる必要はない。

 

もう1つは前半のミスへの懸念。

キャブスのスティール
前半6 → 後半0

ウォーリアーズのターンオーバー
前半8 → 後半5 (うち4つがオフェンスファール)

つまり勝っているのにミスを招きそうな早い展開は不要という事。デュラントがもたらす余裕がそこにはあった。実際にスティールされなくなるのだから読みの正確性が光る。



結果として、後半は3本全て外したグリーン以外シュートを打った全員が50%以上の成功率でした。

目立ったのは、何度も打てる場面で打たないイグダラ。微妙にボールが回り打てる時でも、シチュエーションが完璧ではないと感じたら躊躇なく打たない。やり直す。

ちなみにこれはキャブスも同じで後半のベンチメンバーはシュート2本のみ。
お互いに徹底して打たせるべき選手にやらせた戦いは、遅いペースでも高確率で決め合うレベルの高い戦いとなった。でも、本来はこの展開はキャブスペースなので、前2試合で得点できた自信がウォーリアーズにはあったと思う。

前半はグリーンやパチュリアをドフリーにしていたキャブス。そしてジェファーソンをドフリーにしていたウォーリアーズ。
普通にやれば普通に決まる選手達だが、行われているのは50%は超えなければならない高確率合戦。中途半端は絶対ダメなのだ。



暴走しないグリーン

パチュリアが引き続きやらかしたのとは対照的にグリーンは暴走しなかった。怪しかったのはラブにやられまくった後くらいで、それはレフリーやキャブスではなく自分に対する怒りだったと思う。だから暴走にはならない。

FG30%ではあったが44分出てターンオーバーは0だった。第4戦で触れた(批判した)データと比較してみる。

ボールタッチ 92 → 75
パス 66 → 60

チームの潤滑油であるはずのグリーンが多くボールを持ちパスしない状態が第4戦。それは大きく改善された。フリーにされても安易なプレーにならず、自分の仕事をこなした。



デュラントとレブロン

MVPのデュラント。レブロンを超えてNo.1プレーヤーになったか、みたいな話もあるけど10年前ならそんな議論もわかるけど、現代は単にウォーリアーズが強かっただけ。チームと個人は別の話。力的には何年か前からレブロンと同格、得点能力ならデュラントの方が一段上だった。(ケガ多過ぎてNo.1とは言えない)

10年前って第3戦みたいな試合が多かったイメージです。最後はエース対決でどちらが勝利をもたらすか、みたいな。そういう対決に弱かったからレブロンはコービーを抜いたと言われなかった。(代わりにスタッツ面で負けてるとも言われない)

さて、この試合でもいつの間にか41点も取っていたレブロン。前半は確かに凄かったが後半は記憶にないよ。第2戦、第3戦もそんな感じだった気がする。

レブロン
前半 9/15 ペイント内10点
後半10/15 ペイント内20点

こうみると後半も凄いのだが、実はリングに近い位置からのシュートしか入らなかった。最後は抵抗しなかったウォーリアーズがダンクさせていた点も大きい。ペイント外は全部外した。

 

デュラント
前半 7/10 ペイント内6点
後半 7/10 ペイント内6点
3P63%

デュラントは前後半通じて広範囲から決めている。チーム戦術の違いがあるので一概には言えないが、同じ様にインサイドを空けるオフェンス戦術の中でヘルプをさせない位置から、あるいはマークを抜き切らないで決めているかは、影響力が違う様に感じた。

いざという時に止める術があるかどうか。デュラントに対して出来ることはなかったけど、レブロンにはダブルチームすれば良い。

それは第4戦でアーヴィングがやったことでもある。どのタイミングで打たれるかわからない状況はディフェンスからすると厄介だ。
ちなみにこの試合ではレブロンのパスからアーヴィングとラブが決められなかった。(3/15)ビック3の関係性はキーポイント(第4戦は9/13)だったので戦略的にも難しかった。

この2年くらい勝負強さを身につけてきた感のあったレブロンだけど、シリーズ通してそんなシーンはなかったね。



アーヴィングとクレイ・トンプソン

第4戦にアーヴィング無双されたトンプソン。ファールトラブルもありマークをかわる場面もあったが、アーヴィングの故障もあり見事に確率を落とさせた。

トンプソンのディフェンスデータ 被FG%
トータル 36%
3P 0%
2P 42%

レブロンやラブとのインサイドでのマッチアップもあったが、よくシュートを落とさせた。ファールが多かった前半ならば理にかなっているが、後半にわざわざトンプソンに挑んだチョイスは理由を聞きたい。この試合だけではなくシリーズ通してトンプソン相手よりグリーン相手の方が決めていた気がするよ。(データはない)

そんなわけで自身の役割を果たしたクレイ・トンプソン。なお、この試合も3Pは決めるけど2Pは外した。ウォーリアーズらしさを最も感じる選手でした。



JRスミスとイグダラ

共にチーム構成における5人目の選手。とんでもない3Pを決め続けたJRスミスの活躍がなければ試合は大差だったはず。

JRスミス
25点
3P7/8

攻守に効いていたイグダラは20点なんだけど、スタッツにない活躍ばかりなのが惜しい。上述の通り難しいオフェンスコントロールをリードし、あらゆる場面にチェックに現れ、流れを引き寄せるトマホークダンクを決めた。

もしも第7戦までいけば再びMVPとったのではないか、という活躍だった。

2人が活躍したことで、お互いのチームカラーがしっかりと出て、締まった好ゲームになった印象がある。そしてスタッツ的にはJRスミスなんだけど、試合の中心にいたイグダラに軍配が上がった。



そんなわけで両チームとも良いスタッツが並び、ここから勝因を探るのは難しいデータだった。一方で試合をみるだけでは出てこない面もあり、楽しい試みでした。
とにかく3Pを打った方が勝つ、という戦術的流行が続くのかが来シーズンへの各チームへの課題になりそうです。

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