アメリカが負けたこと

今大会もアメリカは敗退。実は今大会って楽なグループリーグにはいり、2次リーグではリトアニアに負け、準々決勝でイタリアにこそ勝ったものの、ドイツに負けたってことで、3位決定戦にこそ進むけど、強豪国だとイタリアにしか勝っていない感じです。

カナダとアメリカは共に豪華戦力なのに苦しい戦い方をしてきましたが、共通するのはNBAのHCが指揮を執っていることです。ただ、両チームの悪さは全く持って異なり、カナダは謎のプレーコールが多く、SGAを活かす形を採用していなかったのに対して、アメリカはスティーブ・カーお得意のスモールラインナップを使って、選手個々がアタックしやすいオフェンスをしていました。

「もっとパッシングゲームすればいいのに」とは思うものの、なんだかんだと点は取れており、オフェンスは個人技アタック中心でも点を取れており、そこまで問題視することはありませんでした。ここがカナダとは大きく違うよ。

一方でディフェンスは戦略性がないというか、永久に狙われ続けるリーブスを使い続け、永久に狙われているけれどカバーも用意しなかったとか、オブストにボッコボコにされているブロンソンを継続的にオブストのマークにして4点プレーを食らったり、あるいは決めまくっているオブストを警戒しなければいけないはずがオフボールのスクリーンに対して「ファイトオーバーで追いかけろ」だったりと、自分たちがやられている弱点を放置し続けました。

ドイツ戦もリトアニア戦も、アントマンのディフェンスを除けば、相手のストロングポイントを消す手段に乏しく、しかも自分たちの弱点をさらけ出し続けてしまったわけです。選手層が薄くて何もできないならばともかく、世界最高の戦力層を誇るアメリカには似つかわしくない戦い方でした。

これは相手に応じたアジャストが足りなかったということだし、選手個人よりも適切な選手を配置しなかった起用法の問題です。

◎スティーブ・カーの問題点

ドイツ戦では残り27秒4点ビハインドでタイムアウトをコールせず、アントマンとJJJの連係ミスと続くディフェンスでファールゲームに行くのか意思疎通がとれていないなど、FIBAルールへの順応に多少の課題はありましたが、これだけをもって批判するのは難しい。

一方で前述のとおり、試合中のアジャストに問題があったし、特にディフェンス軽視の起用法は自分たちで自分たちのクビを締めてしまいました。

「名将スティーブ・カーなのに・・・」と言いたくなる采配でしたが、ちゃんと思い返してみると開幕8試合のウォリアーズなんて、そんなもんだよね。

ウォリアーズの場合、チーム戦術のベースは決まっており、広いスペースを守り、カバー&ローテをポジションレスに繰り返していくスモールディフェンスを志向していますが、それは固定化されたルールだけでなく、選手の個性をお互いに理解しての対応と、イグダラやドレイモンドみたいな気の利いた対応でピンチを埋めてくれる選手に頼った部分もあります。逆にダメな選手はダメなので、開幕どころか3年いても戦術を身に着けられなかったワイズマンのようにリタイアする選手も多いしさ。

シーズンは82試合もあり、本当の勝負はプレーオフ。このフォーマットにおいて短期的な決断はせず、戦術と相互理解を深め、チームとしてベストな戦い方を模索していくのがスティーブ・カーのやり方。ウォリアーズファンだって「デッドラインで補強しても戦術を理解できないしさ」っていうくらいなので、そもそもが寄せ集めとは作り方が違うスティーブ・カーのスタイルでした。

弱点を弱点として使われても、その弱点をどうやって克服していくのか。1試合の中でやられても82試合で改善すればOKというスタイルでもあるので、致し方なかった気もするよね。

また、ニック・ヤングの頃から「困ったらシューターを並べて穴を広げる」のもスティーブ・カーあるある。結局は初期のようにイグダラで全てを埋めていくのが一番強かった印象だしさ。

ということで、考えようによっては「スティーブ・カーらしかったな」という感想もあります。悪い采配だったけど、それは短期決戦というか、寄せ集め軍団とHCの相性問題かもしれません。

ちなみに以前に書いたんだけど、新任HCが早々にクビになるケースでも、それぞれ当初は何かしらの良いアイデアをもって取り組めており、長くなったら次のアイデアが不足して終わるケースが殆どです。スティーブ・カーが優れているのは長くなるほど強くなることなので、NBAのHCとしては優秀だよね。

ACやってたティロン・ルーの方が代表には向いているかもね。同じように試合中にいろいろと実行するスポルストラも・・・といいたけど、スポルストラは「とりあえずやってみる」から失敗することも多いんだよな。HCって難しいよね。

アメリカが負けたこと” への6件のフィードバック

  1.  ご無沙汰しております。

     ”30年経ってもストロングスタイルを続けてしまった”とのご指摘の通りですが、もっと長期でみれば、88年にサボニス中心の旧ソ連に負けるまでは、NCAAのスターでほぼ構成されており、かつ当時のストロングスタイルでした。従って現在はだいぶ丸くなったようにも感じられます。私が年を取ったからでしょうが。良くも悪くもNBAは米社会を象徴しており、今後のアメリカ社会がそう大きく変われないが、しかし世界情勢にあわせ徐々に変化しているという時代の変遷を鏡のようによく映していると思います。
     ところでシュルーダーは今大会を機にIQを向上させ、グレードアップでこそうですか?(ちょっと非現実的なような?)

     長々と書いてすみませんでした。

    1. シュルーダーは代表になると割と改善します。各チームに加わっては契約延長されないように、長くあることで何か起こすんでしょうね。

      アメリカについては昔はわからないのですが、今みたいに事前情報がないならばストロングスタイルで良かったんですよね。
      今回はストロングじゃないロスターだったのに、結局はストロングなのが残念でした。

  2. いつも楽しく拝見させていただいてます。
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    例えば大きく”次のページへ”ボタンをつくるなど、ページ遷移のデザインを変更して頂けないでしょうか?

    1. 本当はそうしたいのですが、アップしてから1ページずつ作業する必要があります。
      割と予約投稿してることも多くて一律に対応できないんです。

      スマホでみてると不便ですよね

  3. アメリカ代表の中でも個人的にすごい良いなあと感じたのはキャムジョンソンでした
    以前whynotさんも仰っていたようにハリバートンとの相性が良いと感じましたし、要所要所でのスイッチディフェンスの適切な動きやオフボールでのポジショニングやスクリーンで味方を活かす働きかけなどもっとプレイタイムを割いても良かったのでは?と考えてしまいます
    アメリカ代表のセカンドユニットのハリバートン主体のオフェンスを観て、「あぁ、ネッツにこういうガードが欲しい…」と思うとともにクールッツの記事も後押ししてまたあのころのネッツのベンチリアクションのハイライトを見返してしまいました

    1. キャム・ジョンソンを使わずにガードだらけにするの意味わかんなかったですね。そもそもロスターに加えないならともかく、役に立つことを知ってて選んで使わないのは、もう何がなんやら

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