ヨキッチとシモンズとカニングハム

初めてのチャンピオンリングを手に入れたナゲッツ。当然のようにファイナルMVPはヨキッチ。このプレーオフを通じてヨキッチの万能ぶりが発揮されましたが、その一方で

ヨキッチがファールトラブルになってもナゲッツはナゲッツだった

これもまた事実です。ヨキッチがいなければナゲッツは平凡なチーム・・・にはならないわけですが、だからといって「初めからヨキッチがいなかったら」同じことが出来たのかという疑問も沸いてきます。

ナゲッツはオフボール能力に優れた選手をドラフトし、オンボールプレーを減らすことで見事なチームオフェンスをくみ上げましたが、そんなチームに後から加わったアーロン・ゴードンまでもがカットプレーの権化に変身し、さらに華麗なるアシストまで実行するようになりました。

〇平均移動速度 3.89(15位)

ナゲッツはあれだけオフボールとカットプレーを組み合わせているにもかかわらず、プレーオフではセルティックスと並んで「最も動かないチーム」でした。ポジショニングとタイミングの良い動き出し、ディフェンスの逆を取る動きというインテリジェンスでした。

〇パス数 282(3位)
〇キャッチ&3P 20.6本(13位)

それだけ動いて多くのパスを回し、でもキャッチ&3Pは打ちません。なんともヘンテコチームなのですが、ヨキッチの特徴をチーム全体でも示しているような形です。3P決まるのに打たず、ドライブしてパスを散らすヨキッチのめんどくささは対戦したチームしかわからないだろうね。

そんなわけでMVPヨキッチは、なんでもできる選手であり、スピードやジャンプ力がなくとも、チームメイトも相手のことも観察し、どんな点差であっても冷静な判断力によって、適切なプレー選択と状況判断を繰り返していきましたが、そんな要素は何故だかチームメイトにも波及しています。

ヨキッチを活かすためにチームメイトにはオフボールのポジショニングやカットプレー、シュート力が大事ですが、それは「ヨキッチ中心のチーム」です。なのに、何故かヨキッチとプレーしていくとヨキッチに合わせるのはもちろん、

チームメイトもヨキッチみたいなプレーを始める

ヨキッチのようなパスを出すことが増え
ヨキッチのように動かずにプレー判断を行い
ヨキッチのようにスペーシングとカットプレーを繰り出し
ヨキッチのようにメンドクサイ(誉め言葉)

ヨキッチは世界最高の選手ですが、その「最高」度合いが「至高」なのは、どうも歴代の世界最高とは違うから。

ジョーダンやコービーは勝負強さと負けん気の強さを武器に、自らの得点とディフェンスでチームに勝利をもたらしましたが、それはわかりやすく「個人技と試合を決める能力が世界最高」でした。相手を徹底的に打ち負かす個の強みは、時にチームから離れた存在としてこそ機能した面もあります。

続くレブロンはむしろ完成されたバスケットボールプレイヤーとして「最強の身体能力によるオールラウンドなプレーが世界最高」で、レブロンから始まるオフェンスは戦術レブロンと表現したくなるほどに、レブロンの能力を中心に作られました。

個人能力では3人に及ぶべくもないカリーが特別だったのは、チームという単位で考えたときに「5人のうちの1人として機能する能力が世界最高」でした。シューティングという1つの武器だけど、それ以外をチームメイトに助けてもらいつつ、圧倒的なシューティングにディフェンスが集中するからチームメイトを楽にもしました。

ヨキッチは「インテリジェンスと万能すぎるスキルで世界最高」でしたが、そのインテリジェンスは1人で発揮しきれるものではなく、チームメイトとの相互理解も重要です。そして気が付いたら

チームメイトそのもののプレーを変えてしまう世界最高

なのでした。ヨキッチに合わせるだけなら理解できるけど、ヨキッチのようなプレーをしていくってのは、どういうことなんだ?

ヨキッチのもたらす影響力は至高すぎました。1on1でいえばジョーダンやコービーはもちろん、レブロンにも勝てないだろうけど、試合における1on1では無類の強さを誇っているヨキッチ。選択肢が多いほどに輝くプレイヤーは、選択肢を増やすのに慣れてくるチームメイトのプレーを変えてしまうのでした。

ヨキッチとシモンズとカニングハム” への2件のフィードバック

  1. クリスポールの影響力はまた違うものなんですか?
    世代や立場が違うために挙がらなかっただけでしょうか?

    1. クリス・ポールがチームメイトを変えてしまうってのは見た記憶がありません。

      ビールと交換されるくらいだし。。。

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