ニックスはどこで間違えたのか?

◎フィズデイルの終焉

5年間の低迷を経て、次にHCになったフィズデイルはゼロベースからのスタートとなり、「カルチャーを作り直す」として、ある意味でやりやすい環境になりました。実はこの時代は従来と異なり、少しだけ成功の道筋がありました。

①若手の成長を目指しつつタンクしていた
②サラリーキャップを空けて大物FAの加入を狙った

負け続けていたので、ニリキナ・ドットソン(17年)、ノックス・ロビンソン(18年)とドラフト指名しており、ポルジンギスとのトレードでデニス・スミスもいました。GMスティーブ・ミルズに選手を見る目がないってのは事実ですが、ノックスなんかは割と充当に育てていました。ムディエイなんかも活躍しまくっていたね。

ドラフトそのものは下手だけど、他のチームで上手くいかなかった若手を集め、競争原理が働く中で、そこそこ頑張って活躍させていき、再建ロードを進んでいたのが18-19シーズンでした。そして、ちゃんと負けたのでドラフトは4位でRJバレットが加わります。

ある意味で、このシーズンは唯一の健全なるシーズンだったかもしれません。3年後のために投資ができていた。

そして空けておいたキャップスペースを利用し、19年のFA市場でデュラントやカイリーを狙っていたとされますが、チームが弱すぎるから簡単に振られてしまいました。そりゃそうだ。とはいえ「若手を鍛えるシーズン+大物FAで浮上を狙う」のコンボは方針としては悪くありません。

で、大物FAがとれないならば、継続して「若手を育てるぜ」路線を続ければOKだったのですが、

大物が取れないなら中物FAで勝ちに行きたがる

というクセが出てきてしまいます。ランドル、モリス、ペイトン、ギブソンらを補強し、中物FAを使って勝ちに行く戦略は当たり前ですが上手くいくわけもなく、フィズデイルは解任されました。どう見てもフロントの問題なのにね。

なお、モリスがエースとして君臨した結果、トレードで指名権を手に入れるというウルトラCをやったので、ある意味でタンクに成功したとも言えます。

ということでフィズデイル時代の終焉が示しているのは、カーメロ時代に見えていたチームの特徴をいったんは捨てて、王道の再建に進んだんだけど

「若手の育成」に時間を費やすのが嫌すぎて、1年しかガマンできなかった

ということでした。ファンからしたら20年くらい待っているのに、オーナーは1年しか待てないから、中途半端に中途半端を重ねていくのでした。

◎再建方法

ここでニックスから話をそらし、一般的な再建方法を考えてみましょう。近年の再建に成功したチームといえばホークス、マブス、グリズリーズあたりの①王道路線と、クリッパーズ、ブルズあたりの②トレード路線、そしてラプターズやヒートのような③カルチャー路線として、大きく3つに分類してみましょう。

①ドラフトで超有望株を手に入れる
②若手と指名権を駆使したトレードでオールスターを手に入れる
③チームカルチャーを重視して選手を育てる

当たり前ですがニックスに③はありません。だから無視しましょう。

①はドラフト重視路線なわけですが、成功しているのは「超大物」を手に入れたパターンだけです。指名権を集めまくっているサンダーはどうすんじゃい!!ってね。

②はクリッパーズのように継続したチーム作りをしながら、どこかで大きく動く形です。レナードをFAで獲得するとトレードでポール・ジョージも獲得して一気に動きました。SGAや指名権を放出しまくっています。ブルズもトレードのラビーンとブーチェ、FAのデローザンのチームになっておりドラフト組はいません。

再建が永遠と進まなかったサンズは①エイトン、②クリス・ポール、③HCと全部を組み合わせた印象もありますな。

ニックスは②路線です。大都市なのと過去の経緯を考えれば、これしか出来ない気はしますが、フィズデイル時代の終焉は②にフロントが失敗したために①を捨てるという謎のコースでした。

ところが、現状では「①も捨てない」ために、クイックリー、トッピンらを放出するのは良しとせず、だからといってドラフト時には平然と指名権を放出していきます。今起きていることは

手元にいる若手は放出したくないけど、トレードとFAで即戦力が欲しい

というどっちつかずの状況です。ここが一番、煮え切らない部分でもあり、その結果として発生しているのはノックスのようにトレード価値がなくなってからの放出案件でした。

クイックリーやトッピンも大してトレード価値はないでしょう。グライムスはそれなりですが、試合に出ないなら同じようになっていくよ。

「今」なのか「3年後」なのか「5年後」なのか。タイムラインが設定されておらず、全部を取りたそうにして失敗してる状況でもあります。

またニックスは再建期があったにもかかわらず「サラリーキャップを活用したトレード」がありませんでした。例えば18-19シーズンは最終的にデアンドレ・ジョーダン、カンター、マシューズ、ノアの4人が18Mを上回るサラリー構成になっており、単に再建で若手の成長を待てないだけでなく

再建に向けた準備期間を設けていない

というのも目立っています。要するに総じてトレードが下手ですね。

では、今回の趣旨に行きましょう。ここまでは「ニックスの特徴」を振り返るための前フリです。シボドーの就任でプレーオフに進むことになったニックスが、翌シーズンに低迷してしまった理由、つまり「どこで失敗したのか」を考えていきましょう。

次は原因をあげてみよう ⇒

ニックスはどこで間違えたのか?” への4件のフィードバック

  1. セカンドラウンド進んだのは11-12じゃなくて、ベテランをたくさん入れた12-13ですよ!!11-12は1stラウンドでヒートに負けてます

  2. マーブリーとフランシスとかの時代にネームバリューだけで選手獲得するようになってからずっとダメな感じですね。まだパット・ライリーの作ったディフェンスマインドが残ってる時にシボドーが引き継いでいたらなぁって
    思いますけども。

  3. ランドルってそんなに評価低い選手ですかね?「自分起点じゃないとダメ」かつ「ディフェンスお荷物」系の27歳中堅・ミドル多目であるものの、個の打開力は確かで、要はHCの使い方なんじゃ無いかと。本人の成長余力はもう残ってないですが、ブランソンとのハンドオフとか、ボールを交換し合う形の攻め方覚えられればまだ何とかなる気がするんですよね。いや、シボドーじゃ無理か。

  4. フィルジャクソンを贔屓するつもりは全く無いですが、ニックスファンとしては、フィルジャクソン就任時は、いつぞやのネッツのようにドラフト指名権ほとんど放出済&全盛期過ぎたベテランとの高額長期契約でサラリーキャップ大幅超過状態でした。
    フィルジャクソンはドラフト指名権は放出しなかった(微妙な長期契約はいくつかありましたが)し、短期契約のベテランで勝負したり(ローズ1度目の加入の年)と、将来の負の遺産は残さなかった。
    フィルジャクソン退任時には負の資産は改善されていたので、そこだけは功績かと思っています。
    その後その資産を活かせたとは思えませんが・・・残った資産はバレットぐらい。
    あとトライアングルに合う選手がいないのにトライアングルにこだわったりは駄目でしたが。

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