2匹目のブレット・ブラウン

スパーズのACにパッシングマスターがやってきた!

戦術の流れで触れたように「トラスト・ザ・プロセス」と言い張って、弱かったシクサーズは、その弱さとは裏腹に現代バスケへの進化においてキーファクターでもありました。3Pとトランジションのバスケにおいて「パッシング」の重要性を明確にしたのです。

そしてベン・シモンズというトランジションマスターを加えたとたんに50勝へとジャンプアップしました。戦術に合わないエンビードの存在も逆にポジティブでしたが、ブレット・ブラウンに率いられたチームは17ー18シーズンを境に一気に強豪チームとなり、一気に変貌しすぎてベースメントが足りず5シーズン後にも似たような勝率でウロチョロしています。あのままシモンズ戦術で突っ走っていたら、どうなったのか。

いずれにしてもブレット・ブラウンというHCは「試合中の適切な采配」においては能力が低いものの、「トランジション&3Pのためにパッシングチームを作る」ことに秀でており、それでいて選手が急激に入れ替わっていっても50勝のチームを作り続けたのだから「選手に合わせた戦術構成」も出来ていました。これらの能力は

HCとしては微妙だけど、ACとしては有能

というケースに該当しがちです。「しがち」ってだけで本当にそうなのかは知りません。そんなブレット・ブラウンは新シーズンをスパーズのACとして迎えることになります。試合中というかシーズン通して変化するのが好きで、近年は異常なスモールラインナップを好むポポビッチの下に、『パッシングマスター』がACとして加わるのは楽しみです。

◎パッシングマスター

シモンズとマッコネルを連れてこようぜ!

なんて言いたくもなりますが、デジョンテ・マレーをトレードしたものの、まだまだガードだらけであり、マクダーモッドというシューターと、シューター見習い中のヴァッセルがいて、そこに運動量センターのパートルにシュータービッグのザック・コリンズなので

ブレット・ブラウンの戦術で再建するには適したロスター

なんて風にも感じます。どこかでネクスト・シモンズをドラフト指名する必要性はありますが、再建は1年目なので「戦術のベースを作りこむシーズン」だと思えばポジティブに感じます。そして万能ながら未完成過ぎるソーハンが、パッシングオフェンスにマッチすれば夢も広がります。っていうか、そもそも

パッシングオフェンスって、どんな特徴があるんでしょうか。

シモンズ色が濃かったシクサーズでは、ギブ&ゴーとハンドオフが盛んにおこなわれていました。当時、個人での突破力に欠けていたエンビードもパスのために連動するオフェンスだったことで、フィニッシュ力の高さを存分に生かしていました。

サリッチ、コビントン、JJレディックがスターターにいて、その後、ベリネリやイリャソバを加えた布陣は、旋風を巻き起こしましたが、重要なことは、それぞれがいい選手である反面、オンボールプレイヤーとして個人技に優れるタイプではなく、パスを貰ってから時間を使うことなく、次のアクション(シュートorドライブorパス)のジャッジをするタイプが揃っていました。

キャッチ&アクションのジャッジが早いオフェンス

当時のシクサーズはシモンズの存在によって忘れてしまいますが、20勝レベルのチームだった前年からパスワークとジャッジを磨いており、そこに戦術を体現するルーキーが加わったことで一気に進化したわけです。

〇ボールを持ってから2秒未満のシュート
51.1本(1位)
EFG60。0%(10位)

オンボールで2秒以内のアテンプトは、王朝ウォリアーズさえも上回り、リーグで唯一の50本台を叩き出しました。逆に2秒以上は30.3本だったので、シュートの6割以上が素早いジャッジから放たれていたことになります。

そして21-22シーズンで、この「2秒未満のアテンプト」が最も多かったのがスパーズです。デローザンがいなくなったことで44.8本⇒52.3本と大幅に増えたわけですが、そこにはオンボールでどうにかしてくれる選手が足りないという事情もありました。

ところが「2秒未満のアテンプトが多い」にも拘わらず、スパーズのパス数は288本と300本にも満たない数字になっており、連続したパス交換からプレーを構築出来ているわけではありません

なお、「2秒以上のアテンプト」は40.3本もあり、17-18シーズンのシクサーズと同等なわけでもありません。リーグ全体のスピードアップとファールドローが少ないスパーズの事情が絡んでいます。

ブレット・ブラウンに期待するのは、スパーズに多くのパス交換をもたらし、個人技ではなくコンビプレーで崩す素養を作り上げることと、「キャッチ後のアクション(ジャッジ)の質を上げること」にあります。それは普通は能力マックスでガムシャラアタックが多い若手中心の再建チームと違い、少しばかり大人な課題であり、スパーズらしさも感じます。

マレーのいなくなったスパーズには「個人技で何とかしてくれる」選手が揃っているわけではないだけに、パッシングマスターによって判断の質とコンビプレーを向上させていくことは、このチームが目指すべき方向性にも合致しているのでした。

スパーズになかったパッシングを加え
スパーズが重視してきた判断の質を向上させる

ブレット・ブラウンをACに加えたのは、今オフ最大の補強だったかもしれません。

次はポジション別に考えてみよう ⇒

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