「最近の戦術の流れを教えてください」というコメントに対して、どこから話すべきか難しいのですが、初回として具体的な数字を見ることで戦術そのものよりも「何故、そんな戦術が必要になるのか」という原点を捉えてみましょう。つまり、スタッツの変化を見ながら、時代の流れを振り返ってみましょう。
20年前のNBAは、こんな順位でした。
キングス 61勝
レイカーズ 58勝
スパーズ 58勝
マブス 57勝
ネッツ 52勝
ピストンズ 50勝
ウルブズ 50勝
ワイルド・ワイルド・ウエストの傾向が強い中で優勝したのはレイカーズ。コービー&シャックの時代です。本当はキングスこそが勝者って話もあったシーズンでした。では、この時の平均得点上位を見てみると
マブス 105.2点
キングス 104.6点
レイカーズ 101.3点
マジック 100.5点
ウルブズ 99.3点
ソニックス(サンダー) 97.7点
ウォリアーズ 97.7点
ウォリアーズが21勝ながら得点だけなら7位になっていますが、それ以外は上位チームが並びます。100点を超えるチームは4つしかなく、90点を下回るチームが3チームありました。
それが20年経って、最低のチーム(サンダー)でも103.7点となっています。20年の間にリーグ全体が大きくオフェンスへと傾いたわけです。
ただし、10年前の11-12シーズンでも100点を超えるチームはナゲッツ、スパーズ、サンダーの3チームしかありませんでした。だから、ここ10年で急激にオフェンスへと傾いたことになります。
10年間で起きた大きな2つの要因は
①スピードアップ
②3Pの増加
となりますが、この2つが一般化されるにつれて、違う手法での得点力アップも目立ち始めました。ということで、10年間のスタッツ変化を見ていきましょう。
〇平均得点
12-13 98.1
13-14 101.0
14-15 100.0
15-16 102.7
16-17 105.6
17-18 106.3
18-19 111.2
19-20 111.8
20-21 112.1
21-22 110.6
なだらかに平均得点がアップしていた流れの中で、2回ほど大きなショックがありました。
1回目は15-16シーズンに前年から2.7点もアップした事です。この流れをけん引したのは、15年に初優勝したウォリアーズと追いかけるサンダーでした。
〇14-15シーズン
ウォリアーズ 110.0
クリッパーズ 106.7
・・・
サンダー 104.0
〇15-16シーズン
ウォリアーズ 114.9
サンダー 110.2
キングス 106.6
14-15シーズンは110点を超えたのがウォリアーズだけで、それも2位のクリッパーズですら106.7点しかないので、大きな差があったわけです。
翌15-16シーズンにウォリアーズは更に得点を伸ばし73勝するわけですが、そこにサンダーが110点で猛追しました。3位のキングスは前年のクリッパーズと同じくらいなので、この2チームが突出していたことがわかります。
では、この2チームだけで平均得点が大きく上がったかというと、そうではなく、むしろ下位チームに大きな変化がありました。
〇平均得点最下位
14-15
ニックス 91.9
15-16
レイカーズ 97.3
なんと最下位の得点が5.4点もアップしました。戦術の変動は弱いチームの方が発生しやすいって事です。
「100点」は最低ラインの得点になった
15-16シーズンは劇的な変化がもたらされたシーズンだったと言えます。10年前は100点取っていれば勝てるチーム側だったのに、このシーズンから100点は最低基準へと移ってきました。僅か6年前の話です。何が起きたんでしょうね。
下位チームのオフェンス力そのものは急激に向上しないし、3Pがバカスカ決まるわけでもありません。っていうか、アテンプトが増えるほどシューターもいなかった。
だから、より重要なのはスピードアップでした。「弱いチームは走る」という構図が出来てきたわけです。既にトランジションの重要性は認識されていった頃だったので、再建チームはあからさまなチャレンジが可能になっていました。
ペースアップの事情もあって平均得点に価値はなくなり、レーティングで語るようにシフトしていったわけですが、当時のオフェンスレーティングで最低なのはシクサーズでした。シモンズ&エンビード前夜のシクサーズはブレット・ブラウンの下で、素晴らしいパッシングゲームを作り上げており、ウォリアーズとは違う意味で現代バスケの流れを作ったとも言えます。
〇シクサーズ
【14-15シーズン】
オフェンスレーティング 94.9(30位)
ペース 96.45(7位)
パス数 326.4本(4オ)
【15-16シーズン】
オフェンスレーティング 98.4(30位)
ペース 98.44(6位)
パス数 329.3本(4位)
「トラスト・ザ・プロセス」の源流はNBAの変化に大きく関係しています。なお、その後トラストしなかったんですけどね。
戦術的な変化である「試合のペースアップ」は弱いチームでも可能でしたが、シュートの正確性は即座にアップしたわけではありません。それでもそこはNBAなので僅か2年で正確性も追いついていきます。
管理人さんは最近欧州サッカーは観られてますか?
何年か前はCL優勝のマドリーについて、少しだけ言及されてましたよね。
今季優勝のウォリアーズとマドリーは似通った点があるように思えました。
7GAME(はいかなかったけど)と90分トータルでのマネジメント、強烈に止めにはいかないけど防ぎにいく守備、決定力、トレンドとの逆行
また、あるフットボールジャーナリストが勝者のメンタリティという抽象的なものを逃げずに言語化したいと言っていましたが、管理人様にもうかがってみたいです。
もうサッカーは全く観てません。
勝者のメンタリティはメンタリティもあるけど、NBAならアジャスト力、柔軟性ですね
2Pの効率そんなに上がってたんですね…面白い変化でした。
アンストラクチャーの概念が完全に浸透した影響ですかね。2ポイントもゴール下とミドルの確率、本数がどのように変遷したかなども気になります。
バスケットの理想的なシュート条件が解明されてから、Noahなどに代表されるようなシュート分析ツールがアメリカで普及して、アウトサイドのシュート向上がやりやすくなりましたよね。その結果、距離が毎度微妙に変わるミドルより、基本ラインで同じ距離で打てる3Pのほうが、万人に向上しやすいって考えがアメリカで浸透しましたね。
外への警戒がものすごく強まった影響か、確かに最近のNBAの試合見てると、簡単なゴール下のシュートかダンクを見る場面は明らかに増えましたね。それが2Pの確率上昇につながったのでしょうか?
トランジションDFでも外への意識が強くて、えっ…って感じるようなゴール下フリー場面も多いですね。
次はどうバスケットが変わっていくのでしょうか、それが楽しみです。
DFに何かしらの革命が起こると面白いですね。
バスケットボールリファレンスはボックススコアで何でも計算するので、公式スタッツとはアドバンスドスタッツの数値が異なることが多々ありますよね。リファレンスのGlossaryページでPossを見ると近似計算でしかないですが、公式スタッツはプレイバイプレイを用いるのでキレイに整数だったりします。