ウエストファイナルを振り返ろう

さようならマブスに行く前にシリーズを振り返ってみましょう。なんだか不思議なシリーズでしたが、総じてウエスト全体が何とも言えないプレーオフでもありました。一番の問題はサンズの謎の失速でしたが、ひょっとすると経験不足のチームが多い中で、ウォリアーズの経験値が見えないアドバンテージをもたらしたのかもしれません。

◎限界だったブルロック

ファイナルが始まる前でプレーオフ通算500分もプレーしていたブルロックの限界が目立ったシリーズでした。限界じゃなければマブスが勝っていた・・・とは言いませんが、エースキラーとしての役割を担い、クリス・ポールの存在を消し切ったブルロックが、あまりにも無様に抜かれていたことは、マブスがここまで勝ち上がってきた理由を消し去ってしまいました。

ゲーム1の時点で既にその傾向があり、カリーの速攻に対して、ほぼ何もせずスピードで置いて行かれていました。その後、ゲーム2の大逆転劇では、後半になると信じられないほど、あっさりと抜かれまくり、そしてゲーム3では3P0/7とオフェンスも完全にストップでした。

他の試合はともかく、ゲーム2に関してはブルロックがまともに守れていれば、マブスが逃げ切った可能性が高いです。最終的にウォリアーズが勝ったにしても、もう少し見ていられるシリーズだっただろうなぁ。

〇ブルロックのDIFF
カンファレンスファイナル +9.0
セカンドラウンド △3.7

〇ブルロックの被FG%
カンファレンスファイナル 54.5%
セカンドラウンド 46.3%

こんな感じでした。DIFFが狂ったように悪化しています。ここが狙いやすくなったことが大きく、ましてやFG55%はマズいです。あまりにも限界だったぜ。ちなみにベルタンスで+7.9だからさ。

さて、ここに同じくディフェンスでチームを支えてきたフィニースミスを加えると、その優秀性も見えてきます。マブス全体が苦しんだ中でフィニースミスがいたことで、なんとか形になった気もします。

〇フィニースミスのカンファレンスファイナル
DIFF △4.0
被FG  42.6%

オフェンス面も厳しかったブルロックですが、最終的に3P40%を超えており、やっぱりディフェンスだったね。

ところで、この問題には違う要素もあります。というのも、ブルロックが疲れていただけじゃなくて、純粋に「カリーが苦手」ってことがあります。というのも、去年もヤング相手に振り回されていたよね。アジリティ系統が苦手過ぎる。

ファーストラウンドでもクラークソンがブルロック相手にFG65%と決めまくっており、アジリティで左右に振り回しまくるカリーの対処をするのが向いていなかったかもしれません。

◎MVPカリー

そのカリーが新設されたカンファレンスファイナルMVPに選ばれました。文句なしの成績・・・ってほどでもないけどね。

〇カリー
23.8点
FG44.4%
3P43.9%
7.4アシスト
6.6リバウンド

グリズリーズとのシリーズがFG41%、3P33%と抑え込まれていたこともあり、カンファレンスファイナルは気持ちよくプレーしているように見えました。ただし、平均得点は下がっており、アシスト数が増加しました。PGっぽいスタッツだよね。

セカンドラウンドでは「このハイペースでプレーするのは限界なんじゃ」と見えてきましたが、見事に復活したのは驚きだし、ちょっとマブスのミスかなー。

〇vsブルロック
FG48.3%
3P41.2%

〇vsフィニースミス
FG21.4%
3P20.0%

シリーズの大半でマッチアップしていたブルロック相手に無双し、たまにマッチアップしてくるフィニースミスに困っていました。ちなみに今年もブルックス相手にはFG30%切っていたよ。

なお、総合のFG%が低くなった理由はクリバーを引き出した時のドライブ成功率の悪さにもありました。

〇vsクリバー
マッチアップ数 31回
2P 4/13
3P 2/4
アシスト 6

ビッグマン引き出し作戦は、マブス側が「3Pを打たせない」守り方をチョイスし、ドライブは出来ましたが2P成功率が非常に低かったです。ってことは、ここはマブスの方が完全に上回っていたわけです。まぁアシストされまくっているから、一概に成功したとも言えませんが。

言い換えれば、ウォリアーズ側はこのドライブ&アシストが際立ったシリーズでした。カリーのパススタッツはわかりやすく状況を示しています。

〇カリー
パス数 45.8本
アシスト 7.4本
2Pに繋がったパス 10.8本59%
3Pに繋がったパス  4.6本39%

インサイドへのパスが多く、それも60%近い確率で決まりました。ここを止められなかったとみるか、3Pを止めたとみるか。マブスの評価は難しいですが、カリーは正しい選択を取り続けたシリーズでした。そりゃMVPだわ。

難しいのはマブスは「カリーを止める」ことを優先し、平均24点に抑えた事です。個人としての得点は少なかったけど、効率よく決めた上でアシストも量産したわけで、マブスの戦略は「狙いは成功」したけど「結果は失敗」したことになったのでした。

◎オフェンスのシリーズ

ハイペースのバスケをしながらディフェンスで勝ってきたウォリアーズと、ディフェンダーを重視して勝ってきたマブスの対戦が、何故かオフェンスのシリーズになりました。マブスが限界だったというなら、それはそれとして、ウォリアーズも守り切れていないんだから面白いよね。4勝1敗なのにさ。

〇オフェンスレーティング
ウォリアーズ 120.3
マブス    112.2

両チームの特徴は3Pにありました。ただし、その中身は成功率とアテンプト数という違いがあります。

〇3Pアテンプト
ウォリアーズ 30.6本
マブス    44.6本

〇3P成功率
ウォリアーズ 38.6%
マブス    36.8%

高確率だったウォリアーズですが、ナゲッツ戦36.0本、グリズリーズ戦39.5本というアテンプトに対して、マブスとのシリーズでは3Pを打たせてもらえませんでした。これが結果的に高確率の2Pに繋がり、オフェンスで圧倒することとなりました。

キッドが用意した「3Pを優先的に止める」形は機能した一方で、それが仇となった感もあります。もう少しドライブを守れていれば、ここまでの惨状にはならなかったでしょうが、守れていたとしてもインサイドはゆるかったでしょう。

〇2P
ウィギンズ 10.0本 56%
ルーニー   6.8本 71%
クレイ    7.2本 58%
ドレイモンド 6.2本 61%
プール    4.8本 83%

カリーこそ45%に終わりましたが、特にウィギンズとルーニー、そしてクレイが高確率で決めていきました。プールがエグイですが、トランジションが多かったのも事実で、ドレイモンドもね。

ウィギンズ(29%)とドレイモンド(33%)の3Pを考えると、守り方を間違えてしまった感が満載です。かといって、手段を変えるほどの余裕もなかった。何が正解なのかは結果でしか語れませんが、ただ頑なに3P優先だったキッドの拘りは気になるものでした。

一方のスティーブ・カーは3Pを打たせまくりました。これがゲーム4の敗因になったものの、そんな日もあるさ、ってくらいで済ませましょう。ただし、ゲーム2の大逆転勝ちがなければ、これと同じことをゲーム3でも出来たかは疑問です。

ウォリアーズのディフェンス戦略を継続させたゲーム2の逆転劇

ここはシリーズの肝でした。ゲーム2のマブスは3P45本打って47%も決めており、ウォリアーズのディフェンス戦略は失敗しています。ゲーム1で空けられたブロンソンがプルアップを高確率で決めただけでなく、ブルロックとフィニースミスが堅実に決めてくれました。ドンチッチはまぁいいか。

そして29%に終わったゲーム3を挟んで、47%、41%と以降はしっかりと3Pを決めたマブスでした。そう考えるとウォリアーズのディフェンス戦略は5試合中3試合で失敗しています。ヤバくね?

アップダウンが激しかった一方で、マブスの主力たちはトータルで3Pを確率良く決めました。

〇3P
ドンチッチ 34%
ブルロック 42%
ディンウィディ 45%
フィニースミス 44%
ブロンソン 41%

ウォリアーズのディフェンスは、メリット・デメリットを見極めて、かなり戦略的に守ります。ひらたくいえば「こいつには打たせて良い」とか「この選手は、この守り方に弱い」と個別の対応と、チームとしての対応の両方が混じります。

ルーニーはドンチッチに対しては、割と距離を詰めステップバックを打たれないような守り方を優先。その時周囲はカバーリングの体勢に入り、かわりに誰か1人を空けます。
ルーニーはブロンソン相手には距離を空け、プルアップ3Pを打つように促し、ドライブを嫌がりました。その時周囲はカバーよりもシューターをケアすることになります。相手によって変化していく。

そしてゾーンを好んだシリーズでもありました。ここにはマブスにポスト役がいなかったことも関係しており、ハイポストを経由して振り回される危険性が低かったことから、より外を追いかけやすい3-2気味のゾーンにしています。いずれにしてもターゲットを絞っていました。

〇マブスの3P
クリバー 26%
ベルタンス 21%
ニリキナ 27%
グリーン  0%

ここまで決め続けていたクリバーやベルタンスが止まったことが、ウォリアーズの守り方に正当性を生み出した感もあります。ベルタンスが活躍して大量リードを得たゲーム2と、クリバーが活躍して勝利したゲーム4というのは、このことと相関関係があるように見えました。

ディフェンスを変えることはあっても、頑なに基本路線の戦略を変更しなかった両HC。どちらも成功したとは言えないシリーズでした。ただ、3Pを止めに行ったマブスは、3Pの本数を減らすことには成功したけど、ウォリアーズは高確率で決めたことが、随分と大きなオフェンスの差になったのかもしれません。

そして、この事実はセルティックスにとってはプラスかもしれません。マブスのように「空けられる選手」がいないのが今のセルツの強み。ターゲットを絞るウォリアーズのディフェンス戦略は何を狙ってくるのでしょうか?

◎フィル・ジャクソンの教え

スターター4人+クリバー、ディンウィディの実質的に6人ローテだったマブス。パウエルとベルタンスさえ5試合トータルで50分に満たないプレータイムでした。似たようなことはスターター+プールのウォリアーズにも言えました。

ただ、少しだけ違ったのは「+1人」の考え方。OPJが離脱したこともあり、ムーディー、クミンガ、JTAが試合ごとに起用され、そして最後はビエリッツァがシリーズを決めることとなりました。

ジョシュ・グリーンとニリキナの使い分けこそあったようななかったようなキッドでしたが、戦う選手が決まっていたのと、何かを起こしに行くカーの違いがあったのでした。

これって昔どこかで読みましたがフィル・ジャクソンの教えだそうな。出番がなかった選手を突然起用して、エネルギーをもたらす。何かを期待しているようなあやふやな采配なのですが、それを日常的にやっているから、選手も堂々とプレーするそうな。

その一方で、ウォリアーズはGMマイヤーズの考え方自体が「多様性」だったりします。いろんな武器を持った選手を集めたい。まぁ今シーズンはそんなに多彩には集められていないけどさ。

逆にキッドの戦い方は「同じ形の反復」にもみえました。繰り返し行う事で判断の一元化を目指しているかのよう。似たようなタイプの選手を集めているしさ。そんな違いもあったカンファレンスファイナルでした。

こられはセルティックスにも言える事なので、次回はセルティックスの話だ。

話し出したらキリがないから終わりにしましょう。あっさりと終わったカンファレンスファイナルでしたが、同時に戦略的にも比較的アッサリしていました。全てはゲーム2の大逆転により、ウォリアーズ側が対処を変える必要がなかったことに起因する気がします。

ドンチッチのベストゲームともいえたゲーム3。せめてここで勝っておけば何かが変わったのかもしれませんが、この試合が3P決まっていなかったことも、戦略を変えるに至らない要因でした。インサイドを攻略されても変えなかったキッドの選択と共に、同じ形でぶつかり合ったような5試合だったのです。

ウエストファイナルを振り返ろう” への1件のフィードバック

  1. お疲れ様です。
    マブスのディフェンスは徹底して3Pを止めろでしたね。
    インサイドの高確率もそうですが、OR取られまくった原因も守り方にあると思っているので、Game3あたりで変えてみて欲しかったです。
    わざわざ自らスプラッシュの重力を作り出さんでも…

    PO前に思っていたのですが、2ハンドラー体制ってガードエースに対して脆いですよね。ウイングとガードがクロスマッチになるというか。
    自分もブルロックはスピード系ガードに強くないイメージだったので、ガードエースばかりの今年は苦労するだろうなあと思ってました。
    結果だけみるとカリーのマークをフィニースミスにしてればよかった感がありますが、チーム編成的にインサイド仕事もしてほしいのが苦しかったですね。
    ミカル最強!
    まあ、サンズはサンズでガードが相手のウイングを守るところの問題(DRとか)が大きそうなので、完璧なチームは難しいなあと感じます。

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