サイモンズとヌルキッチ

テリー・ストッツと別れを告げ、再出発を決めたブレイザーズ。人気者ビラップスなだけに、どんなHCっぷりを見せるかと思ったら、わりと無策な「みんな、頑張れ」スタイルでした。開幕前から誰もがサボらないディフェンスを重視すると言っていたけど、単なるファイティングスタイルって話ですよ。

〇ディフェンスレーティング
昨シーズン 115.3(29位)
今シーズン 114.0(29位)

数字の上では1.3も改善していますが、29位は29位。下にはロケッツしかいない状況なので、何一つ改善していないって事になります。こうなってくるとHCの責任は重いぜ。ウソついたのかって話さ。

しかも、今シーズンに関してはリトルの成長があり、ナンスやスネルの獲得もあって、ヌルキッチ&コビントンも含めてフロントコートはそれなりに充実していたのだから、頭が痛い。まぁ昨シーズンもデリック・ジョーンズがいたけど、それをパウエルに交換して失敗なんだけどさ。ブルズで奮闘しているのを考えるとね・・・。

ってことで、マカラムやリラードの離脱もあって、その責任があいまいになっているけど、試合内容がこれといって改善していないことがブレイザーズの問題です。結局はリラードに頼る形、オフェンスで打ち勝つ形に変化がなく、「リラード中心のオフェンス」を綺麗にかたどっていたテリー・ストッツがいなくなった分だけ、負けているって感じです。

〇リラード離脱後 6勝4敗

12月を2勝11敗と負けまくった後、リラードが離脱したら6勝4敗と勝ち越しているから驚き。じゃあ例によって「リラードが守れないからだな」なのでしょうか。

〇ディフェンスレーティング
12月 118.0
 1月 113.0

改善したといってよいのか謎の数字です。いずれにしても113ってのはディフェンスで勝っている事実はありません。ただし、明確な差もあって

〇ペイント内失点
51.1 → 45.0

〇速攻での失点
15.2 → 13.7 

カウンターからの失点が減り、同時にハーフコートディフェンスの機会が増えたから、ペイント内失点が減った感じです。前述の通り、インサイドにはディフェンスのタレントがいるので、ある意味で必要最低限だけ守れている感じ。なお、別に「守れている」わけではなく、12月が酷すぎるだけだよ。

〇パウエルのディフェンスレーティング
オンコート 117.7
オフコート 108.5

その点ではリラードの離脱よりもパウエルが離脱したことの方が、ディフェンスの改善って意味では大きくなっています。1月は3試合しか出ていませんが、レーティングは驚異の132.6なので、マジでパウエルがいなくなったことでディフェンスが改善したよ。

もちろんパウエルの問題も大きいのですが、それだけでなくパウエルが離脱したことで、コビントン、リトル、スネルの出番が増えたことが大きいです。なお、ナンスも離脱しているので、ナンスがいれば、もう少し守れるかもね。

ってことで、ディフェンスは改善したわけですが・・・いや113は改善したとはいえないぞ。「マシになった」程度の話です。問題はそこではなく、リラードだけでなく、オフェンスのために起用されていたパウエルがいなくなっても、得点が取れているって事です。

もっと守れるようになって良かったけど、そもそもチームディフェンスが整備されていないから、個人で強引に守れている雰囲気のブレイザーズ。そんなディフェンダーが増えても、オフェンスで打ち勝てているのが1月の勝ち越しに繋がっています。リラードは戻ってきてもいいけど、パウエルは戻ってこない方が・・・。

◎サイモンズ

その中心にいるのは言うまでもなくサイモンズ。1月の成績はリラードと比較してもいいレベルでした。まさか、ここまで成長するとは夢にも思わなかったぜ。

〇1月のサイモンズ
25.7点
FG49.4%
3P43.3%
7.4アシスト
2.3ターンオーバー

このスタッツの驚くべき要素をピックアップしていきましょう。

①ターンオーバーが少なく、アシストを稼いでいる

まるでリラードのようです。自らのアタックで崩してアシストするタイプではないので、ミスも増えないってのが大きい。また、リラード同様にシュートで終わることが多いから、これもターンオーバーを減らします。うん、まぁ、要するにリラードなわけです。だからこそリラードがいなくなっても、オフェンスで勝てているわけです。

②3Pの確率が高い

平均6.4本打っているプルアップ3Pが39%も決まっています。12月まではこんなに決まっていなかったので覚醒した感じですが、打ちやすいのは何だろうね。リラードの如き、高確率のプルアップ3Pによってチームオフェンスは構築されています。

③FG%が高い

リラード以上の結果を残しているのがFG成功率。2Pが62%も決まっています。48.5%のリラードよりも高確率であることが、勝率の違いを作っているといえます。

リラードのようなプレーをし、リラードよりも2Pの確率が高い

リラードを上回っているかどうかはわからないけど、この2Pの確率は違う選手としてリラードのようにふるまえているわけでした。うーん、ぶっちゃけ、この確率が延々と続くとは思えないので、一過性な気もします。

それでもサイモンズの好調さだけで片付けるのはちょっと違うんだ。ってことで、ヌルキッチの話に移っていきます。

◎サイモンズ&ヌルキッチ

サイモンズと共にスタッツを大きく伸ばしたのがヌルキッチ。ある意味で「リラードのような活躍」をしているサイモンズで現状維持をし、ヌルキッチの分だけチームは改善したような状況です。

〇1月のヌルキッチ
17.8点
FG47.8%
13.6リバウンド
4.0アシスト

プレータイムも伸ばし、得点、リバウンド、アシストの全てが向上したヌルキッチ。ナンスがいないこともあって、より中心的な役割が与えられました。もともとナンスとヌルキッチの違いは、プレーメイクへの参加数、スクリーンの回数にあります。ヌルキッチが長くコートにいてくれることがサイモンズの得点力アップに繋がっています。

〇スクリーンアシスト
回数 4.7 → 5.9
得点 10.7→14.8

もともとヌルキッチのスクリーンから生まれる得点はリーグトップクラスでしたが、1月になるとさらに伸ばしてきました。平均14.8点の多くはサイモンズのためのスクリーンになっているはずです。つまりはサイモンズにとっては「ヌルキッチとのプレータイムが増えた」ってのが大きい。

〇サイモンズ&ヌルキッチ
8.9分 → 30.6分

まぁわかりやすい。ヌルキッチがいれば、サイモンズのプレーレベルが上がる。スクリナーって大事。楽に打てるシーンを作ってくれる選手がエースを輝かせるよ。

一方でヌルキッチのスクリーンアシストが増えた事と、サイモンズのFG成功率がリラードよりも高いことは「リラード&ヌルキッチよりも効率的なのはなぜか」という疑問も出てきてしまいます。1つの答えがナンスの欠場ではあるのですが、サイモンズの2Pを分解してみましょう。

〇サイモンズの2P
8フィート以内  58% 19/33
16フィート以内 65% 13/20
24フィート以内 50% 6/12

97本アテンプトの3Pに対して、
1/3程度のアテンプト数がある8フィート以内が高確率な事と、
同じく1/3程度のアテンプト数がある8~24フィートのショートレンジ・ミドルレンジくらいが確率良く決まっています。

個人的にリラードにはミドルレンジゲームを思い出してほしかったのですが、まさに3P&ドライブよりも2Pジャンプシュートを効果的に決めている雰囲気のサイモンズです。なのでリラードの数字も並べてみましょう。

〇リラードの2P
 8フィート以内 51% 84/162
16フィート以内 39% 20/51
24フィート以内 47% 26/55

284本の3Pに対して、8フィート以内が162本あり、3P&ドライブがメインになっています。ショートレンジ・ミドルレンジも少なくはないのですが「多様性の話」で書いたように、このミドルレンジを攻略して欲しいのです。あと3P減らしてもいいと思っている。

サイモンズの高確率は好調な部分も大きいですが、リラードとの比較で言えばサイモンズの方がスピードがあるのに、サイモンズの方がゴール下まで行かずに打つ選択をしている様子です。

そしてゴール下についてはヌルキッチが加点してくれました。要するに個人としてみたらリラードの方がスマートオフェンスしているし、それ自体は悪くないのですが、ヌルキッチとのコンビで考えたら、ミドルレンジを攻略するサイモンズと、ゴール下で得点するヌルキッチになっています。リラードが目立ちすぎていたともいえるんだ。

◎ポイント・ヌルキッチ

そんなわけでヌルキッチとの関係性はサイモンズの方が上手く構築出来ています。これをパス数から追ってみましょう。

〇12月までのパス数
リラード  53.8本
ヌルキッチ 39.4本

リラード⇒ヌルキッチ  9.2本
ヌルキッチ⇒リラード 16.8本

リラードは全体に満遍なくパスを出し、その中でヌルキッチはマカラムについて多いターゲットです。一方でチームで2番目に多いパス数のヌルキッチから見ると、パスの半分近くがリラードへのパスになっています。エースとしてのリラードをヌルキッチが助ける形です。

〇1月のパス数
サイモンズ 60.8本
ヌルキッチ 45.8本

サイモンズ⇒ヌルキッチ 20.8本 
ヌルキッチ⇒サイモンズ 19.4本

まずヌルキッチ目線で見ると、パス数そのものが6.4本増えました。そのうちサイモンズへのパスは(リラードよりも)2.6本伸びています。つまりサイモンズとのパス交換が増えたという事実だけでなく、他の選手へのパスも3.8本増えたわけです。

このヌルキッチのパスから多くの3Pが生まれるようになりました。サイモンズ以外へは満遍なくパスを振っていますが、ポストからのパスのため効果的な3Pに繋がっています。

〇ヌルキッチのパスから3P
12月まで 4.8本 28.8%
 1月以降 7.3本 48.5%

実はヌルキッチのパスから3Pだけで1試合平均6.6点も増えています。リラード離脱してもチームのオフェンス力が維持できているのは、単にサイモンズが点を取っているだけでなく、ヌルキッチを中心にしたパスワークからの得点が増えたことが大きいのです。

ポイントセンターとして機能するヌルキッチ

この要素はハークレス&アミヌ時代にもあって、当初はパスミスの多かったヌルキッチでしたが、次第に起点として機能するようになり、特にリラード&マカラムではなくて他の選手のカッティングを引き出せるようになったのが大きかったです。合わせる方の成長って話もあるのですが、エースの個人突破だけでなく、他の選手でもプレーメイクできるようになっていったのさ。

パス数の話に戻ると、ヌルキッチからリラードorサイモンズのパス数には2.6本の差しかありませんが、リラードorサイモンズからヌルキッチへのパス数には、なんと11.6本もの差があります。それだけヌルキッチを経由するオフェンスが増え、チームのボールムーブはスムーズになりました。ポイントセンターとして機能している理由は、ヌルキッチのパス能力だけでなく、サイモンズがリラードよりもボールを手放してくれることが関係しています。

〇ヌルキッチへのアシスト数
リラード  1.4本
サイモンズ 2.7本

また、当然のようにヌルキッチへのアシストが増えています。7.4アシストは見事なサイモンズですが、そこにあるのはヌルキッチが決めてくれることでもあります。サイモンズのスタッツは出来すぎは出来過ぎだけど、チームオフェンスそのものが改善しているからこその出来すぎなのです。

〇12月までと1月の差
パス数 272.9 → 281.1
アシスト 22.5 → 22.7

んー、でもパス数だけを見ると、チームとしては劇的に改善したわけじゃないんだよね。ほぼサイモンズ&ヌルキッチの関係性で解消した形です。それだけ2人のプレーメイカーでオフェンスの起点を作れたわけだ。

〇キャッチ&3P
12月まで 23.5本
 1月以降 28.4本

+8.2本のパス数に対して、+4.9本ものキャッチ&3Pが生まれました。それだけヌルキッチとサイモンズから効果的なパスが出ているという事です。「ミドルレンジを攻略しろ」というのは、チームの3Pを増やすことにも繋がります。リラードは自分で決めてしまうけど、そうじゃなくてミドルレンジゲームをすることで、チームメイトの3Pを増やしてほしいんだよね。

サイモンズとヌルキッチ。2人のコンビプレーが増え、その結果、チームメイトの3Pが増えた。ブレイザーズに起きている現象は、リラードがディープ3Pを得意技にしたことから始まったプレースタイルの変化にも関係してきます。そしてビラップスが選手任せにしているというか、どんな狙いを持って各個人にオフェンスの役割を与えていくのか不明瞭になっている気もしてきます。

テリー・ストッツはホワイトサイドにさえもパスを仕込むほど、ポストからの展開に拘っていました。なかなか成功しなかったわけですが、リラードが離脱したことで、ヌルキッチの輝きが増し、過去のトライアルが実を結んだ印象もあります。

なお、リラード&ヌルキッチについては、ここ数年のヌルキッチに離脱時期が長かったことが根底にある理由なんだけどね。

◎プレーを見直せるか

「ミドルレンジを攻略しろ」を今シーズンのキーワードにしている管理人ですが、ブレイザーズはイマイチそれが出来ていないチームです。ヌルキッチのポスト起点が増えたことで、攻略し始めましたが、マカラムが戻ってくると更にその印象が強くなりました。「3P&ドライブ」のリラードと「ドライブからのジャンプシュート」のマカラム、それぞれの役割がわかれ、それが固定化され過ぎていた印象もあるぜ。

いずれにしてもサイモンズで勝てていることは、サイモンズ個人の成長を喜ぶだけでなく、チーム全体が効果的な3Pを打てている事や、ヌルキッチへのパスを増やすことの効果的な一面を感じます。

ただ、もともとビラップスはヌルキッチのプレーメイクよりも、動けて3Pもあるナンスの方を重視している傾向もあり、果たしてこれが今後の改善に繋がるのかどうか、不安が残ります。

再建の初年度だと考えた時に、何も初めからトップクラスに返り咲くことは求められていませんが、シーズンを通して新しいチームの形を作っていけるかどうかが大切になります。しかし、それが見えてこなかったのが問題であり、皮肉にもリラード離脱から光明が見え始めたわけです。

正しく進化していく事が出来るのかどうか。一過性のもので終わってしまうのか。少なくともヒントを示してくれているサイモンズとヌルキッチでした。

サイモンズとヌルキッチ” への2件のフィードバック

  1. パウエルは相変わらず守備難なんですね… ラプターズ時代はうまいこと守備難が隠れていたような気がするのですが、それもニックナース・マジックだったのでしょうね。

    1. パウエルは対人守備は悪くないけど、チームディフェンスド下手って感じです。

      ラプターズは好調な時しかプレータイムを伸ばさなかったし、チームとして攻略されそうならば、ベンチに下げちゃってた気がします。

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