クレイ・トンプソンを思い出そう

そろそろ帰ってくると噂のクレイ・トンプソン。っていうか、この記事をアップしたときには帰ってきてるかもね。2度にわたる大ケガを経ての復帰なので、ムリをさせてはいけません。ムリをさせてはいけないのだけど、スキルフルというか、シュート力最強の選手なので余裕でフィットしそうな期待を抱かれています。

そんなクレイ・トンプソンがどんな選手だったのか、思い出してみよう企画です。

◎カリーより優れたシューター

『史上最高のシューター』は疑う余地もなくカリーですが、クレイはカリーをも超えたシューターです。うーん、この表現は難しいよね。もう少しブレークダウンしてみると

史上最高にシュートが上手い選手 ・・・ ステフ・カリー
シューターとして完成度が高い選手 ・・・ クレイ・トンプソン

こうかな。クレイが「史上最高のシューター」なのかはわからないけど、ポジション概念としての「シューター」としてはカリーよりもクレイの方が上って感じがします。じゃあ管理人の考えるシューターってなんじゃい。

シューター・・・シュートを打つために練られた動きをする選手

わかりやすいのはJJレディックかな。ボール貰ったら打つ。打つために動く。ここを突き詰めることで生き残ったシューター。カリーの凄みはシューターとしてもオフボールの動きがメチャクチャ上手いことですが、そんなこと関係なくタフショットでも決めてしまう変態シュート能力があるし、シュート以外のハンドリング能力も高いので、違うことやれてしまうじゃん。

クレイも時に1on1をしますが、そんなに上手くないというか、1on1そのものも「どうやってジャンプシュートを打つか」で練られている感じなのです。シュートが全てで、そこにハンドリングやパス能力をセットしていった感じがする。

ちなみに全然関係ないし、レベルもシュート力も何もかも違いすぎますが、管理人はクレイの動きを研究して、自分もそういうプレーをするようになっていきました。ハンドリング出来ないし、軽やかなムーブなんて皆無。「いかにしてシュートを打つか」に特化した動きをまねるのは面白いよ。

では、まずはこの点について、少し数字を探してみましょう。なお、今回は18-19シーズンのクレイのスタッツから探します。もう3年前だぜ。

〇3Pアテンプト
タッチ2秒未満 6.7本
タッチ2秒以上 0.8本

0ドリブル 6.2本
1ドリブル 0.7本
2ドリブル以上 0.7本

3Pの殆どはキャッチ&シュートか、ワンフェイク・ワンドリブルからになっています。ちなみに今シーズンのカリーは2ドリブル以上が5.5本、2秒以上が6.0本あります。2人の3Pの打ち方には雲泥の差があるってことです。

また、これに付随して(?)いうと、カリーへのアシストばかりしているドレイモンド・グリーンですが、それはカリーとドレイモンドのコンビプレーが多いということでもあります。でもクレイの方は割と満遍なく、誰からでもパスを貰います。ある意味でクレイの方が誰にでも合わせるスキルの高い選手です。

〇ドライブからの得点 2.1点

ドライブもしますが、1試合に1回程度ってことになります。今シーズンはカリーが4.9点取っていますが、それだけでなくプールも5.0点とカリー並みにドライブで結果を残していることを考えると、クレイとプールを重ね合わせるのはちょっと違います。

あくまでもシューター。動いてボールを受けてシュートを打つ。シュートを打つための動きをしていくクレイ。時にスポットシューターとしてパスを待つってこともあるしね。

◎アンストッパブル

クレイは時にカリーよりもエグイ爆発をします。まぁ有名なので、書いても仕方がないので、ここでは動画を張り付けましょう。11ドリブルで60点とったとか、1Qで37点取ったとか。いろいろしているカリーに比べると、点を取るプレーに特化しているのでディフェンスが対応しないと延々と打ち続ける。

大事なことというか、思い出しておくべきことは、爆発の事実以上に

極めてシンプルに点を取る

ってことです。だから少ないドリブルで点を取るし、短い時間で点を取る。シュートが当たりまくっているのはもちろんだけど、普通はもっとプレッシャーを強められるわけで、違う点の取り方が求められるんだけど、クレイは延々と同じパターンでも繰り返せてしまう。

また、もっと大事なのは、このシンプルさがウォリアーズに帰ってくる事です。時にしつこい時もあるカリーに比べて、シンプルだからこそディフェンス側は気を抜けないのがクレイ。ダントーニロケッツのスイッチングディフェンスが必要だったのは、カリーがいるからじゃなくて「クレイとカリーがいるから」だったような。

だから、僕らは再びディフェンスについて悩むことになるかもしれません。3年の月日を経て忘れていた「シンプル過ぎて難しすぎるクレイ」への対応策を。

〇タッチ数 46.3回
〇ポイント/タッチ 0.465

極めて少ないタッチ数で点を稼いでいるクレイ。ちなみに今シーズン20点以上の選手で最高なのはブッカーの0.453、次いでデローザンが0.450です。0.4を超えるのは他にラビーンとデュラントの2人だけ。ブルズとデュラント(タッチ数が多い)えぐいな。

◎トランジションの鬼

タッチ数が少ないクレイだけど、その少ないタッチのために走り回っているのもクレイ。

〇オフェンス平均移動速度 4.84

4.57のブッカーだって動いている方だけど、クレイはマジで動きすぎ。これだけ動いても平然としているスタミナと、ブレないシュートフォームこそが最大の武器です。でも、それって3年のブランクで一番の不安要素になるかもね。

確かにシュートは上手いし、シュート力そのものはケガの影響は小さいかもしれない。でも、運動量×正確性は別の話さ。試合勘だったり、慣れの問題も含めて、ケガの影響というか、ブランクだな。

〇ウォリアーズのトランジション
21-22シーズン 19.4点
18-19シーズン 23.8点

現在好調のウォリアーズですが、かつてと比較すると明らかにトランジションでの得点が減っています。1つはデュラントがいなくなったので、個人技ドカーンがなくなったこと。もう1つがクレイの存在ですが、クレイの場合は単に個人で走って得点してくれるだけではありませんでした。

現在チーム3位のリバウンド数を稼ぐカリー。つまりはリバウンドに参加することが多いカリーなので、トランジションの先頭を走る機会は少なく、基本は遅れて参加します。前を走るのがクレイ。そしてトランジションでも関係なく3Pを決めてくるクレイへのマークは強める必要があります。

クレイが前を走ってトランジションを決めるのはもちろん、走ってコーナーへ移動するだけで遅れて走ってくる選手には真ん中のゾーンが空きます。特にトランジションで3Pも打つカリーには絶好のスペースだ。ここが足りない感じの今日この頃。

〇トランジション
18-19シーズン
クレイ 4.4点
カリー 5.2点

21-22シーズン
カリー 4.0点

そんなわけでクレイがいなくて、トランジションの得点が減ったカリー。クレイが戻ってくれば相乗効果で増えるんじゃないか疑惑。疑惑というか期待。トランジションで無双しているクレイの存在感はチーム全体に波及します。

◎アンチ3Pシューター

「シューターだけど3Pシューターではない」のもクレイ。動き回って、ボールを持ったら即シュートに行くわけですが、決して3Pばかりを狙うわけでなく、コートのどこからでも踏み切ってジャンプシュートに行きます。

〇エリア別アテンプト
ゴール下 215本
ペイント 140本
ミドル  448本
コーナー3P 135本
他の3P   464本

ダンカン・ロビンソンが3P301本に対して、2P65本であることを考えれば、2Pの方が多いクレイのスタッツは3Pシューターではありません。特にミドルの多さが目立っており、どこからでも打つタイプのジャンプシューターです。

〇ウォリアーズのミドル
21-22シーズン  8.4本
18-19シーズン 19.6本

そして先日触れたように、今やリーグで4番目にミドルが少ないチームになったウォリアーズですが、かつてはリーグで2番目に多くミドルを打っていました。チームは好調でもクレイ不足な今シーズン。

ウォリアーズに足りなかった武器が帰ってくるのかもしれません。多様性が武器になるのか、多様性が足を引っ張るのかはわからないけど、どこからでも決めてくるシューターなので、違うタイプのプレーが混ざることになります。

では、クレイってどうやってミドルレンジのシュートを打っているかというと、スクリーンを使って狭いスペースでも平然と抜け出してのジャンプシュートを打ってきます。一方で今のウォリアーズはスクリーン専任みたいなセンターは少なくなっており、そこには不安もあります。ボーガットとか、パチュリアとかさ。どーすんだろ。

でも一番相性が良かったのはウエストだったし、ビエリッツァも3Pシューターではないシューターだったヒールドとのコンビが良かったので、そこは楽しみでもあるよ。

全体的にウォリアーズが失っている強みを戻してくれそうな要素が多くポジティブなのですが、ウォリアーズ側がクレイを活かせるのかは不安も結構あるよね。

◎ディフェンス

クレイをスターにしている重要な要素がディフェンス。足腰の強さを生かしたベーシックな守り方を得意とし、ドライブを止める能力が高く、そこからしっかりとボールを奪いにも行けます。「ウォリアーズで唯一、チームディフェンスをしていない」とも言われますが、エースキラー役として機能しています。

ただ、ちょっと面白いというか特徴的なのは、イグダラ、ドレイモンド、そしていざとなったらデュラントと他にもディフェンダーがいるので、全ての相手に向かっていく必要がありません。ガードコンビなので主としてガードエースを担当しますが、マッチアップ変更してポストアップを守ることも出来、どちらかというとオールラウンドな担当でもあります。

ある意味で、ここが復帰に当たって最大の懸念事項になっており、スキルベースのシュート力と違い、フィジカルベースのディフェンス力を発揮できるのか不明です。ウォリアーズはガード相手のディフェンダーが欲しい状況なので、クレイに求める役割はディフェンスだと思います。

ところで、クレイは「シューターなのにディフェンス力が高い」というレアキャラです。例えばカリーもディフェンスの読みが素晴らしく、ハンドチェックも上手いのですが、どうしてもフィジカルな戦いで負けるため、1on1で弱みを見せます。他のシューター達も似たような感じです。なのにクレイは、どちらかというとフィジカル面の強みで守り切れるタイプです。シューターなのに、フィジカルな対応が出来る。

この理由をちょっと考えてみましょう。

シューターはシュートが上手い。当たり前ですが、トレーニングを超えたセンスの部分ではあるものの、シューターは体全体を連動させるのが上手い選手が多いです。大きく動きながら、繊細なシュートタッチをもち、自分が思うようにボールを放つことが出来る

筋肉ゴリゴリだと、筋肉がジャマをすることもあるので、体全体がスムーズに連動するためには、太すぎる筋肉はNGって感じかな。

〇クレイ・トンプソン
198センチ
100キロ

クレイはサイズに対して、そこそこ重い方です。なお、ジョー・ハリスも同じサイズだからシューターとして珍しいってわけじゃないけどね。足腰強いし、体幹強いし、ちょっと珍しい。

で、ここで前述の管理人がクレイのマネをしていた話をします。個人的に考えたクレイの特徴は自分に合っていたので。

クレイは「体全体でシュートを打つ」というよりも、肘から先だけで打てるタイプです。オフバランスでも決めまくるシューターには珍しいけど、そもそもクレイはオフバランスはあまり上手くない。上手くないっていうか打たない。

観ている限り、上半身と下半身の動きが分離していて、下半身は「上半身を正しくセットするため」にだけ使っている。ドライブや激しく動いたオフボールムーブの後でも、下半身全てを使ってリングに対して正対し、体全体を止めようとしている。

「シュートはひざが大事」と教えられた人も多いと思いますが、それって下半身の力を上半身に伝えるわけで、シュート力の高い選手はそういう選手が多い。でもクレイは違うように見えるんだ。ってことで、管理人はそれをマネしてみたら、安定したシュートが打てるようになりました。体育館に行ったら上半身だけでシュートを打つのがルーティンです。

何がいいたいかというとクレイは強靭な下半身で自分をコントロールし、パワフルな上半身でシュートを打っている。だからフィジカルの強さを持ったディフェンダーでもある。むしろ「ディフェンダーらしい身体なのに、シューターをやれている」ようなイメージです。

◎さぁこいクレイ・トンプソン

ということでクレイ・トンプソンを思い出してみよう企画でしたが、実は管理人はクレイをマネするくらい観察しているっていうね。意外かな?

マジでクレイのマネはいろんな発見があって面白いよ。カリーを真似しようと思っても天性すぎてムリだけど、クレイは体の使い方が論理的に工夫されている気がします。出来るだけ同じ動きをするようにしているとも思うんだ。即興性ではなく、再現性。そんな動きをしているぜ。

みんなクレイ・トンプソンを思い出そう。特に自分のプレーを改善したい人は思い出そう。

いや、もう思い出す必要はないのか!

クレイ・トンプソンを思い出そう” への2件のフィードバック

  1. カワイラプターズが優勝した年が、もう3年近く前であることに驚きを隠せません…。
    クレイについて当時を振り返ると、「OKCにいてくれれば、、、」と何度思ったことか(笑)

  2. 重心の低さを感じさせる動きというか、あのどっしり感がガードの選手には珍しいような気がして好きです。体格もほぼフォワードだし。
    ディフェンスに関しては、感覚ですが、手で守るイグダラ、脚で守るクレイといった感じ。
    またおっしゃる通り、ディフェンスの完成度がシュート力以上にクレイ・トンプソンという一選手としての価値を左右しそうですね。
    今日は申し分なかったのではないでしょうか。
    クレイ、復帰おめでとう。

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