さようならエンビードとシモンズ’21

さようならシクサーズ’21 前編

シクサーズについて書くことは、ありそうでないのですが、ほぼ2人の話になるので、まずはここに集中したテーマにしてみましょう。

現状ではシモンズは残留し、シューティングの改善を図ることに一致しており、そこには「代理人のリッチ・ポールも合意した」なんていうきな臭い話もあります。代理人なんて関係ないじゃんって話ですが、口出しているからこうなってなんて話もね。

深読みすれば「シューティングの改善をアピールしておいて、他チームとのトレードを円滑に行う」になりますが、さすがにそんなバカなことはないので、いくつかの未来も考えながら、残留したときに向けてやるべきことはやるってことでしょう。トレードするのに怪我されちゃ困る、ってのが王道ですが。

今回は2人の4年間を考え直すのですが、別に書く必要もないのだけど、シモンズがトレードになってからでは切ないってことで書いてみます。あまり知らない人もいるかもしれないしね。ほぼ過去に書いた内容の再編集バージョンです。

ところで、まるで「シモンズのフリースローが敗因」みたいな雰囲気ですが、それは事実としても、ホークスに負けることをフリースローだけに求めるのは違うよね。いろんな要素があって、それらがクリアできないから接戦になり、接戦になったからフリースローが敗因になったのが正しい。

いずれにしてもフリースローは直さなければいけないのですが、他の部分について考え直してみましょう。

◎1年目 シモンズ仕様の『ギャンブラーズ』

シモンズがNBAデビューした2017ー18シーズンは、まだまだ再建も再建段階だったシクサーズにとっては勝率5割で良い形でした。この初期段階のシモンズとエンビードは悪くないコンビでした。パッシング&ポジションチェンジのブレッド・ブラウンの戦術にそっくり乗っかるシモンズが機能し、エンビードも合わせのゴール下に飛び込んだり、シモンズの合わせにパスを出したり。

しかし、シーズン後半になって補強を進めると、チームはトランジションゲームとシューターを中心にした布陣に変化していき、個人的に『ギャンブラーズ』と名付けたロスターになりました。

シモンズのトランジションゲームは威力を発揮し、シューター達に打たせるためのプレーメイクをしていったのですが、チームのスピードが上がるほどにエンビードのスタミナと運動量の問題が目立って行きました。加えて都合の悪いことにシーズン終盤にエンビードが欠場することが多く、よりシモンズ側に傾倒してしまいました。

プレーオフではヒートに勝ったものの内容はヒッチャカメッチャカ。復帰したエンビードがプレーについて行けずターンオーバーを連発。27ターンオーバーで勝つという摩訶不思議な試合がありました。ヒートの方がギリギリだったね。

セカンドラウンドではセルティックスに圧倒されていたのですが、ゲーム4ではTJマッコネルがスターターになり、一矢報いてシーズンが終わりました。このことは色々と重要な要素をはらんでいます。

【1年目のシモンズ&エンビード】
シーズン前半はコンビデビューでパッシングオフェンス
シーズン後半はトランジション&シューターのシモンズ寄り
エンビードのガス欠&運動量不足
TJマッコネルは必要不可欠

◎2年目 豪華戦力のスターパワー

ドアマットチームから50勝チームにジャンプアップした1年目から、一気に優勝を目指すことにした2年目が全ての元凶でした。開幕早々にウルブズで揉めていたバトラーを獲得し、さらにデッドラインでクリッパーズからトバイアス・ハリスを獲得します。

つまりコンビ2年目にして、スターパワーで押し切るチームが出来てしまったわけです。本来は苦しみながらもコンビを成熟させてチーム力を向上させるべきであり、2人に適したロールプレイヤーを見極める必要がありましたが、3段飛ばしで前に進もうとしてしまいました。

ただ、ここには難しい状況もあって、NBAいりしてから(高額サラリーを貰いながら)欠場しまくっていた2人なので、この時点でエンビードが4年目のルーキー契約最終年、シモンズが3年目となっており、翌シーズンから順番にマックス契約が待っていました。つまりは

豪華戦力を揃えるには2年目しかない

という状況でした。本当は少なくとも2年は過ごしてから考えたいところなのに、いきなり勝負の2年目になってしまった。なお、この頃のトバイアスは年15Mくらいなのでザ・コスパ案件な選手でした。バトラーが再契約しなかったこともあって、翌シーズンから倍額だよ。

現在のホークスはコリンズが4年目、ヤング&ハーターが3年目で、ボグダノビッチやガリナリにルーがいて豪華戦力にしていますが、まさに勝負所のシーズンなわけです。ホークスも2年後には今の戦力を維持することは不可能。サンズはちょっと違うけど、ミカル、エイトン、カム・ジョンソンとルーキースケールなのは大きいです。

関係ないけど、ウォリアーズもワイズマンに今年の2つの指名権で似たような状況が作れます。ワイズマンが素材過ぎるので2位指名権はウォリアーズには逆に不運な面もあったけど、今シーズンは上級生指名しようぜ。

ウルブズでブイブイ言わせていたバトラーですが、シーズン途中の加入だったからか、控えめな役割に終始し、平均18.2点と少なく、アテンプト数もシモンズの12.2本に対して13.6本とあまり打ちもしませんでした。そしてエンビードが平均27.5点と活躍したのですが、51勝31敗と前年からチーム成績は伸びず。

〇エンビードの18-19シーズン
27.5点
2P53.3%
3P30.4%
EFG51.6%
TS59.3%

理由はシンプルでセンターでありながら、極めて効率の悪い選手だったことです。フリースローもいれるとそこそこにはなるものの、ファールドロー狙いという違う問題もあります。TSで比べてもヤニス64.4%、KAT62.2%なんかに比べると見劣りします。

だからどうってことはないのですが、60勝するには無理があるってことです。この確率で勝てないKATってのはもっとすごいけどさ。

〇シーズンとプレーオフの得点
チーム  115.2 → 108.7
エンビード 27.5 → 20.2

プレーオフになって得点が落ちるのは気にすることではありませんが、シクサーズの場合はほぼエンビード分でした。EFG46.5%まで落ち、TS55.9%と大苦戦。っていうかアテンプトが減った。

プレーオフの戦いそのものはレナードの劇的なブザービーターによって負けたもののゲーム7まで進んでおり、もっとも充実していたシーズンだったと言えます。試合終盤の勝負はバトラーに任せることが出来、ディフェンス中心の考え方で通用しました。

一方で2年目にしてシモンズは居場所を失い始めます。トランジション勝負をしないでいける布陣では、シモンズの意味はなく、特に試合終盤での価値が急激に低下しました。それでもまだ「ディフェンス勝負」でもあったので、やることは十分にあったし、幸いにしてバトラーはキックアウトするタイプじゃなく、エンビードと共にファールドロー好きなので、3Pがないことが致命的にもなりませんでした。ここ重要ね。「キックアウト3Pよりもファールドロー」な空気感。

なお、違う問題もあって、シモンズよりもHCブレッド・ブラウンの存在価値がなかったです。だからさっさと解任すべきだったのですが、バトラーが残らなかったことで延命してしまった一面もあるのかもね。見事なパッシング&トランジションチームを作り上げたのですが、それってそもそもスターパワーとの相性が悪いんだよね。

そんなわけでスターパワーで押し込んだ2年目は「シモンズ&エンビードの問題を隠して好成績につながった」ともいえます。サラリー的に勝負をかけたことは理解できるけど、その中身はスターパワーだったし、HCの戦術とも不一致だったし。バトラー残るわけないと思っていたけど、その通りでした。でも、ヒートに行ってから大変身するから、それもまた意外。

【2年目のシモンズ&エンビード】
チーム全体がスターパワーで戦術の意味が薄くなった
エンビードの効率の悪さが隠された
シモンズのシューティング問題が隠された
戦術よりも個人技なのでシモンズの意味はディフェンスばかり

ある意味で、もっともコンビとしての問題が大きかったシーズンでしたが、もっとも結果を残したシーズンでもありました。それはやっぱり問題を隠して「オレ達は優勝できるチームだ」と勘違いさせた気もします。評価するのが非常に難しいシーズンでした。

◎3年目 ビッグラインナップ革命

オフにバトラーが出ていき、トバイアスと再契約すると、まさかのホーフォード獲得に動きました。てっきりシックスマンだと思っていたら、スターターに並べてきたのでビックリ。まじでブレッド・ブラウン不要じゃん。

チームは41勝30敗と成績を落としました。HCとロスターに乖離がある中で、思ったよりも勝ったくらいですが、実際にはホームで30勝4敗と異常に勝ちまくっただけで、アウェイでは勝率.316と酷かった。特にディフェンス面が顕著でした。

〇19-20シーズンのホーム/アウェイ
失点 104.7/111.8
被フリースロー 22.6/26.2
ファール数   19.7/22.1

わかりやすくファールコールされずに守れていたことに。得点も5.6点違いましたが、それよりもディフェンス力の差がデカすぎて。ホームコートアドバンテージに守れられていたことは、いろいろと問題を隠すことにも繋がります。とはいえ、ディフェンスのチームという面は変わらず。ビッグラインナップらしさ。

シモンズはJリッチとのコンビでプレッシャーディフェンスにより、キャリアハイの2.1スティールを記録。速攻での得点も3.8点とキャリアハイ。悪いことばかりではなく、ガードに専念することで違いを生み出せるようになりました。ところがこれが波紋を呼ぶ結果に。中断期間を経てバブルになると突如として「PFにコンバート」になりました。ちょっと意味が分かりません。プレーオフに出なかったこともあって真価が図れなかったのが残念。

また面白い現象もあって、シモンズのパスから生まれる3Pが11.5本もありキャリアハイでした。シューターを並べたギャンブラーズ時代よりも、セスとダニーにがいる今シーズンよりも多いのです。最も多くの3Pを打ったのはトバイアスとホーフォードなので、実はこれはこれで成立していました。

個人的には「ビッグラインナップなんてバカだな」と思っていましたが、一方で「シモンズとホーフォードは合う」ってのもあり、エンビードがいない時間帯にこの2人中心で行けばよかったと思います。結局はオフェンス力がないということでシモンズをPFに、ホーフォードをベンチにもっていき、プレーオフでの敗戦を「ホーフォードが悪い」とされてしまいました。そんなわけないのにさ。

〇エンビードの19-20シーズン
23.0点
2P51.7%
3P33.1%
EFG51.2%
TS59.0%

一方のエンビードもまた何とも言えず。前年からの効率の悪さは何も変わりませんでした。もっとも、ここもビッグラインナップ問題があるので個人の責任とも言い切れず。

プレーオフでは欠場のシモンズと情けないホーフォードがいるなかで「孤軍奮闘」とされましたが、むしろ1人になったことでエンビード問題がハッキリと出てしまった印象でした。トップやハイポストにいることが多く、そこから動かないのでチーム全体が動かない。シモンズスタートがなくてポジションチェンジが行われないオフェンスはセルツからすると怖くもなんともなかったです。

個人技主導の2年目の悪い部分ばかりが残ってしまった感じの3年目でした。とにかく動かないエンビードと動けないチームメイト。そこにシモンズがPFにされていたら、ますます動かなかっただろうに。

【3年目のシモンズ&エンビード】
ビッグラインナップでオフェンス問題が顕著になった
トランジションのないシモンズ
ホーフォードやJリッチとの相性はよかったシモンズ
運動量が少なくポジションを停滞させたエンビード

流動的だった1年目に比べると3年目はとにかく全体が動かなくなりました。さすがにブレッド・ブラウンはクビになるわけですが、2年目から引きずった悪癖が影響している気もします。勝負の2年目に失敗した後で、方向性を戻すことも出来たわけですが、ディフェンス優先のロスターにしました。

それはいいけど、そのロスターで終盤になって「オフェンスが問題だ」と言い出すのはいかがなものか。当たり前じゃん。だから3年目ってシモンズ&エンビードの問題も大きいけど、それ以前にフロントの迷走具合が半端なかった。

◎4年目 エンビード仕様

迎えた今シーズン。新HCにリバースを迎え、ACデビッド・イェーガーと共に2人らしいインサイド重視のプレーに切り替えてきました。その結果、エンビードはMVP候補になり、シモンズはキャリア最低の得点・リバウンド・アシストを記録し、プレーオフでは戦犯になったのでした。

詳しくは次回にしますが、とにかく「エンビード仕様の4年目」という印象が強く残っています。セス&ダニーがいて、ベンチにミルトンやコルクマズなのだから、シモンズ仕様に寄せることも出来たはずですが、それよりもエンビード側に徹底したことは、3Pの少なさにも出ています。

3Pアテンプト 30.1本(26位)

その一方で回復したスタッツもあって、必ずしもシモンズにとってマイナスばかりではなかったです。

パス数 308本(1位)

パスは回しているので、シモンズの意味はあったし、だけど基本は「ゲームを作る」ためのパスなので、得意分野ではなかったかもね。これが苦手なのはPGとしても問題があります。基本的にシモンズは自分が仕掛けてチャンスを作るタイプなので、PG1人は本当は避けたい。その点でセスがいたことはプラスになった面もありそうです。

〇8ft以内のシュート
シモンズ    8.6本
チームメイト 26.3本

〇8~16ft以内のシュート
シモンズ    1.2本
チームメイト 12.7本

シモンズは8ft以内のアテンプトがチームで最も多く、一方でシクサーズの特徴になってきた16ft以内のシュートはアテンプト数が著しく少ない選手でした。ゴール下ばかり打っているって事ですが、どうもシモンズは「決まるシュートしか打ちたくない」という傾向が強く、4年間変わってこないどころかさらに強くなってしまいました。

〇8-16ftのアテンプト
1年目 3.1本34%
2年目 1.7本34%
3年目 1.0本19%
4年目 1.2本39%

ドライブ能力はあるシモンズですが、距離を取られて守られるので抜ききるのは難しく、この距離を打つことで駆け引きできるはずが打たず。だから、実質的には「パスを回しているだけ」になってしまいました。HCが交代して、オフェンスは大きく変わったけど、それについてこれなかったことも問題です。

自分を変えることが出来ていないシモンズの4年間

でもシモンズ以上に弱点を克服できていないのがエンビードです。「以上」は言いすぎだな。でも、シモンズは今回のフリースローみたいに敗因になることは少なく、そもそも打たないという問題なのに対して、エンビードはいつまでたっても3P決められちゃうディフェンスが治らない。

ただし、オフェンス面については改善しました。これまでずっと「ストレッチさせるのが役割」と譲らず、運動量の少なさだけでなく、シュート効率の悪さが目立っていましたが、エンビード仕様のオフェンスになって劇的に改善しました。

〇前年からの変化
FG 47.7% → 51.3%
EFG51.2% → 54.5%
TS 59.0% → 63.6%

キャリアで初めてFGが50%を超えたエンビード。逆に言えば、これまでセンターなのに50%を下回っていたんだぜ。そっちの方が恐ろしいわ。アテンプト数を増やして28.5点を取りましたが、その一方で3Pのアテンプトはキャリア最少の3.0に減っており、自分が脅威を発揮できるゾーンでの勝負を徹底されたことがMVP候補に繋がっています。

エンビードが最大限に威力を発揮するのはローポスト。でもほっとくと3Pラインの外で突っ立ってるし、ポジション争いするのを嫌がるから、簡単に外まで押し出せます。そこで複数のスクリーンを用意してローポストに立たせる形を徹底したのは見事でした。イェーガーっぽいんだよな。

ローポストが良い理由は主に2つ。1つはドリブル1つでイージーショットにいけるので、ドリブルミスが出にくく、パワーで押し込みやすいこと。そしてそのワンドリブルが怖いからディフェンスはプレッシャーに出にくくもなります。これはある意味で「シュートか、ドリブルで押し込むか」の2択にしたことでプレーをシンプルにしました。

もう1つは視野が90度でよいことです。ボールを貰ってからの仕掛けが遅いエンビードは、周囲が見えていなくてヘルプにボールを奪われることが頻繁にあります。アシスト/ターンオーバー率は0.91と極めて低く、「パスを出せないけど、ボールを長く持つ」というなかなかの困ったチャンです。簡単に言えば視野が狭いわけだ。

これがハイポストだと180度どころか、後ろからも手が出てくるので360度を気にする必要があるけど、ローポストなら90度でいい。そしてホークスとのシリーズで最後に決定づけたプレーはハイポストから仕掛けたエンビードがガリナリにスティールされたことでした。その前にはハイポストからドライブしてコリンズにチャージドローもされています。普通は右にも左にもいけるハイポストの方が仕掛けやすいのですが、少し距離があることでエンビートはミスを起こしがちです。

これは実は両方ともコリンズがコースに入っているわけだけど、キレイに読み切られているし、パワー勝負できていないし。あとコーナーにパスが出てくるイメージもないしなぁ。ローポストの方がこういうミスは起こりにくいです。っていうか、なんで4Qでこれやっちゃんだろうね。

まぁ敗因の話は置いといて、要するにこういうプレーを減らして得意なゾーンで勝負させたことがリバースの成功だったし、それに答えてアベレージをあげたエンビードでした。シモンズが対応できなかったことに比べたらエンビードの方が違いを作りました。

一方で「ローポストアタックのエンビード」と「3Pがないシモンズ」は相性が悪かったです。だから二重の悩みなんだよね。逆サイドのエンドライン沿いにいるくらいしかポジションがなく、それってPGじゃないし、セスのおかげだし。

【4年目のシモンズ&エンビード】
エンビード仕様のオフェンスでMVP候補に
キャリア最低のスタッツが多かったシモンズ
ローポストアタックが効果的なエンビード
ローポストアタック時に逆サイドのゴール下にいるしかないシモンズ

まぁめんどくさいので、これくらいにしておきましょう。ここまでは序章です。4年間を説明してみただけ。ここからが本題です。

◎2人の弱点

4年が経過したことで2人共通する困った弱点が見えてきてしまいました。

弱点を改善する能力に乏しい

これがこのコンビにおける最大の懸念事項です。エンビードの方は改善している事項もあってベターなのですが、シモンズは得意のディフェンス力こそ強化されたものの、それ以外についてはルーキーシーズンとの違いがなんであるかを見極めるのも難しいです。

また、これはチームが戦術的に求めてこなかったという事実もあります。リバースは「選手の良い部分を発揮させる」タイプのHCなので人気者ですが、弱点を改善させるというよりも長所を使うから、こうなってしまうということでもあります。

でも弱点なんてどの選手にもあります。そこをチームで補ったり、戦術的に隠せばばいいわけです。ただたまに隠し切れない時もあるよね。話題になっているところで言えば「リラード×マカラムでは守れない」という部分だったりします。オフェンスは何とでもなるコンビだけど、ディフェンスに回るとコンビとして苦しい。なお、マカラムがチェイスディフェンスを向上させたことにより、周囲をディフェンダーで固めていると成功したんだけどね。

「エンビード×シモンズ」を成立させるには、何を隠して、どの弱点を改善しなければいけないのかを決める必要がありますが、4年間かけても決めてこなかったことが最大の問題であり、それを5年目で解決できる気がしないから、トレードしたほうが早い気がしてくるのです。では、実際にどんなケースが想定されるのかを考えてみましょう。

①エンビードの長所を生かす

・ローポストアタック中心のオフェンス
・エンビードはプレーメイカーではない
・運動量不足のエンビードのためにスローダウン

→シモンズが改善できなかったこと
・パスアウトからの3Pを打つ
・ハーフコートのプレーメイク能力

スローダウンさせてベーシックなローポストアタックをさせたら、エンビードはリーグ最強です。しかし、そのオフェンスは展開力に乏しいのでシモンズが助けないといけないし、パスアウトが来たら外から狙わないといけません。これが4年経ってもシュートを打ちすらしないのでは、エンビードを生かす気持ちがないと捉えられても致し方ないのでした。

②シモンズの長所を生かす

・トランジション&パッシングゲーム中心
・スペースをシモンズが活用することでアウトサイドシュートを不要にする
・ポストとのパス交換やスクリーンでギャップを作る
・インサイドに飛び込んで合わせるセンター

→エンビードが改善しなかったこと
・パスが来なくても何度も合わせのプレーに行く運動量
・スペース構築を意識したポジションチェンジ

イメージはヒートにおけるアデバヨ&バトラーですが、2人がインサイドを使って周囲のシューターに打たせる形は脅威でした(1年目)が、エンビードは3Pラインの外でもポストでも立ちっぱなことが多く、合わせのプレーが極端に少ない選手で運動量不足です。運動量そのものは当初よりはかなり改善していますが、インサイドの合わせに顔を出す頻度は落ちたと思う。

もっと2人がポジションチェンジとパス交換をしているのが理想的でしたが、パスは出しても「パス交換とポジションチェンジ」はしていないよね。

ところでディフェンス面でもお互いの長所と弱点が交錯して、毎シーズンのように「ディフェンスの良いチームだけど、大きな欠点があるから攻略される」ことになっています。今年はヤングのプルアップ3P以上にカペラへのアリウープでぶち壊されました。7試合で21本のアリウープは異常な本数です。

③エンビードのディフェンスを生かす

・ゴール下のリムプロテクトが最大の武器
・チェイスして運動量が増えると守れない
・チームでゴール下に誘導するシステム(ジャズ型)が好ましい

→シモンズの弱点
・サイズがあるのでピック&ロールに弱い
・自分で止めきる能力は高いが、誘導&ローテはイマイチ

シンプルに言えばエンビードをゴール下のリムプロテクト専門にするための工夫が欲しかったわけです。ところが、ガード相手にディフェンスしているシモンズは優れたディフェンダーだけどサイズが大きいので、どうしてもシンプルに剝がされてしまいます。自分で止める意識が強いから「エンビードに誘導」もイマイチです。エンビードの長所を使うのにシモンズの弱点が出てしまいます。

またそこからローテもしません。自分のマークを意地でも追いかける気迫は凄いんだけど、もっとスクリーンに対して大胆なディフレクションをすべきでした。ただ、ボールマンを守っていない場合は、シモンズが空いた選手をカバーできるので、いくらでも構築の仕様はあるのですが、エースキラーやらせるのは違うかな。

④シモンズのディフェンスを生かす

・どこでも守れてハイプレッシャーが可能
・スイッチディフェンスに適している
・オフボールスイッチ&ローテでチームの弱点を消す(スマート型)

→エンビードの弱点
・ショーディフェンスも苦手だし、スイッチしない
・オフボールローテや先読みディフェンスがない

シモンズはどこでも守れるので、マーカス・スマートみたいな組織ディフェンスをするのがベストです。セルティックスは極端なスモールラインナップでも守れたのは、マズいミスマッチになったらスマートがオフボールスイッチするからでした。シモンズもこれをやらせれば、強力なストッパーになれたでしょう(やれるかはしらない)

しかし、導入できなかったのはエンビードがゴール下しか守らないからでした。それならそれで、コーチングして周囲が連動していけばいいわけですが、そういう先読み能力がないから、後手後手になってしまい、ヤングにもやられればカペラへのアリウープも通されてしまいました。

エンビードは「立っているだけで強力」なので、現実的にどっちを選択するかといえばエンビード側ですが、優勝するチームだと穴を作らない・複数の守り方が出来る必要があり、シモンズ側のマルチディフェンスすることが多いよね。

こんな感じで攻守に片方の長所を取れば、もう片方の短所で困っている印象があります。これが4年前と大して変わらないなら、コンビとしての潮時な気もしますし、弱点を改善するにしても突如としては進化しないので、優勝したいならトレードってのは現実的です。

◎どっちを残すのか

問題はどちらを残すのかって事ですが、いうまでもなくエンビードになります。理由は「今シーズン活躍したから」です。本当にこれだけですが、違う理由としてHCがリバースであり5年契約したことも挙げられます。まだ4年もあるリバースが「エンビード中心」を選んだのだから、シモンズをトレードするのが自然です。

特にシモンズのシュートという弱点はわかり切っていたにも関わらず、パスアウト3Pが欲しくなるエンビード戦術を選択したのです。シモンズの長所を生かした方がエンビードをオプション的に活用できるのでバランスは良かったはず。

で、今は「シモンズのシュートを改善させる」といっています。仮にシモンズのシュートが改善したとして、どこまで意味のあるものになるでしょうか?
いきなり3P40%決まるわけはないし、肝心のフリースローは70%決まっても「本当にプレーオフでも決まるのか」というのはシーズン中にずっと気になるはず。ギャンブル性が高いので、さっさと選手を入れ替えた方がベターじゃん。あと単純に環境を変えた方が改善しやすい。

ところで、そんなことを無視したら、どっちを残すべきなのでしょうか?

個人的なイメージとしては
・エンビード中心の方が強いが欠点も多い
・シモンズ中心の方が弱いが穴が少ない

こんな感じです。だから優勝するにはシモンズの方がベターに思えます。

一見すると「肝心の場面でシモンズのシュート力が・・・」にも思えますが、それって実は「肝心の場面でエンビードの判断力が・・・」も同じです。シモンズが3P打たなくてもフリースローが65%くらい決まれば形にはなるわけだしさ。

ちなみにシモンズをトレードして誰を連れてくるか次第の中には、バトラーのようなエースキャラを連れてくれば、そもそも試合終盤にエンビードではなく、そっちの選手に託すことが出来ます。もしもシモンズを残したら、結局はエンビードに頼るので、問題が付きまとう事もトレードすべき理由になります。

もう少し、試合終盤にシモンズ中心で展開出来れば・・・
もう少し、試合終盤にエンビードからの展開力があれば・・・

これは両者に共通する課題でした。ちなみに1年目はシモンズ中心でシューターに託していましたが、やっぱりゲームメイクするTJマッコネルが必要だったよ。

◎両方残すなら

シモンズ&エンビードを両方残すならば、何が必要かを考えてみましょう。この2人が最も相性良くプレーしていたのは、4年前の結成当初でした。そこから離れていったというのは恐ろしい話ですが、コンビとして機能していたからこそ未来を感じて補強し、それがコンビとしての機能性を失わせていったのでした。

とはいっても、当時は5割でOKだったので、優勝目指すのにそれでいいかっていうと別の話ではあります。ちょっと当時の構成を思い出してみましょう。

【PG】
TJマッコネル
ベン・シモンズ

【SG】
レディック
ベイレス

【SF】
コビントン
TLC

【PF】
サリッチ
(シモンズ)

【C】
エンビード
アミール・ジョンソン
ホルムズ

さすがにあまり記憶にないな。この後でベリネリとイリャソバが加わって、ホルムズとTLCの出番が減るんだよね。ホルムズとアミールの使い分けを覚えていないですが、アミールがベンチのファーストチョイスになって、シモンズのスモール戦略に寄っていったと思います。確か。

当初のシクサーズがより機能性があった理由としては、シモンズのポジションにありました。PGとPF兼任ですが、PG時にはPFのサリッチとのパス交換が非常に多くありました。ちなみに今もトバイアスとのパス交換が多いです。

〇サリッチ
FROM 20.8
TO  16.7

サリッチはポジションチェンジとパッシングでシモンズとの関係性を作り、3PもカットプレーもありPFだったので、相性の良いコンビでした。これがシューターになってしまうと「パス交換」しないので、シモンズのキックアウト頼みになってしまいます。まぁイリャソバもパス交換してくれるけどね。

そしてPGマッコネル、PFシモンズになっても関係性は同じです。シモンズの良さ(マルチポジション)を活用するにはPGとPFにポジションチェンジとパス交換してくれる選手を揃えることは大切です。

そこでトバイアスを考えると微妙な一面もあります。基本的にトバイアスもいろいろやるので能力的には何も問題がありません。ただ、シモンズのポジションを「相手に応じてPGかPFで使い分ける」と考えたら、トバイアスの存在感は大きすぎ、シモンズはPG固定になってしまいます。

そうなるとハーフコートのゲームメイク能力不足やオプション不足が目立ってしまいます。シモンズはペイントタッチしてナンボの選手なので、マッコネルとダブルPGの方が良いし、ポジション入れ替えてくれるPFが欲しい。

PG・PFそれぞれにポイント系選手が欲しい

スターターでもベンチでもどっちでも良いですが、相手によって使い分けよう。これがラウリーなら使い分けなくても、PGやったりシューターやったりと自分でポジション調整してくれるので、なおさら良いかもしれません。

またPGには試合終盤のゲームメイク力が必要です。個人で得点を取る選手よりもゲームメイクが上手い選手が欲しい。
・エンビードのポストを使うのか
・シモンズのアタックから展開させるのか
・トバイアスの個人技を使うのか
・PGが自分で行くのか

こんなことを自分で選択させるシモンズスタートのオフェンスだと上手くいかないことが多く、エンビードにばかり渡してしまいます。1年目はそんなことなかったんだけどさ。

どうしてもシモンズには選択肢が少ないので、その弱点を隠すための「ディフェンスの状況を見てプレーチョイスできるPG」は1人必要です。これらの条件を整えた上で、シモンズ&エンビードのコンビでペイント内を攻略させるのがベストです。周囲はキックアウト3P狙おう。

シモンズは8~16ftのシュートを打つ
エンビードはゴール下に詰めるプレーを繰り返す

多分、これくらいで2人のインサイドプレーは強力になります。今は打たな過ぎてシモンズは怖くないし、エンビードはリングから遠ざけておけばOKになっていますが、もっと「シモンズにはカバーディフェンスが必要」と認識させればゴール下のエンビードが空くし、「エンビードをゴール下から追い出せ」を徹底されれば、シモンズがドライブするスペースが空きます。

そのうえでシモンズにはキックアウトから3Pを打たせるだけでなく、ハンドオフプレーや自分がスクリナーになるプレーもあります。いずれにしても、シモンズが1年目と比べて大きな問題なのが

シモンズからプレーの多彩さがなくなった

ということでなので、シモンズが最も多彩にプレーできる環境を整えてあげましょう。でもさ、ちょっとめんどくさくない?シモンズをトレードしたほうが早いぜ。

あと、あれだよね。微妙にビッグ3の弊害が出ているよね。2年目はビッグ4だったからいいけど、相手に応じて柔軟なラインナップを組めないとシモンズのマルチな意味が皆無ってのが、本当の問題なのかもね。だからシモンズを残すならトバイアスをトレードする・・・のは勇気がいるし、簡単じゃないでしょ。サンダーにケンバと交換してもらうってのはコレだ。

◎続く

うーん、ちょっと何書いているのか分かんなくなってきてしまった。2人だけを切り取ろうとするとムリがあるな。次回は、こんな2人の部分を切り抜いてシクサーズ全体の話になります。どうしてもシモンズ問題がフューチャーされてしまうので、そこを抜きにしたら、どうなるのかって話です。

シモンズとエンビードのコンビは面白いコンビだと思っていますが、両者を並び立たせるのに苦労するコンビでもあります。お互いの長所と短所が重なりあうので、どこかで妥協しないといけない。

ただ、それぞれの長所が活きるポイントを発揮できると「他のチームにはマネできない特別な戦術」になるはずです。それは非常に止めにくく、優勝が現実的になってくるはずです。

シモンズ&エンビード双方がペイント内で暴れまわる

これが出来たら、止めようがないと思うんだ。でも、出来そうにないなら「エンビードがインサイドで、○○がアウトサイドで」にするのが最も自然な形です。○○をシモンズにするには、相当な時間がかかるぜ。ムリでしょ。選手か戦術を変えた方が早い。

さようならエンビードとシモンズ’21” への10件のフィードバック

  1. そうそうそれなんだよ!と感じるような、読み応えがあって面白かったです。
    各チームのコンビを考察してみるのも面白そうですね。このコンビとこのコンビに課題あるけど入れ替えたら解消しそう、みたいな。

    私はエンビードがMVP級の成績残そうがシモンズ残す派なので、エンビードの価値が高まってる今が逆に売り時かな〜とか思います。
    COYをクビにしたTOR以上に猛バッシング受けるでしょうが。

    1. シモンズもファンにあれだけ批判されたらシクサーズにいるのが辛いんじゃないでしょうか。チームを変えてリフレッシュした方がメンタル的にもいいような気がします

      1. そう思うんですよね。
        別にクビになるわけじゃないし、環境変えた方が。

        ・・・地味な彼女になる田舎がいいですね。

    2. エースコンビについて考えるのは面白いかもしれませんね。
      意外とコンビネーションしているのは少ないですし。

      まぁエンビード放出はムリですね。フィリー的にもスコアラーの方が愛されそうだし。

  2. GSWがウィギンスとトレードで獲得したら面白くないですか?
    カリーはスクリーンかけてくれるし、
    パス交換が最も活きるオフェンスだし。
    ドレイモンドをセンター扱いのスモールにしたチームは見てみたいと思います。

    ワイズマン?要らないので
    ヴァッセルとかアイザック、ドートあたりのディフェンダーとトレードで。

    シモンズがドレイモンドに飲まれちゃってロールプレイヤーになっちゃうかなぁ

    そんなトレード案も可能でしたら後半お聞きしたいです

  3. よく聞きますよね。
    シモンズのウォリアーズ案。

    楽天のコメントやNBAの2chまとめのコメントでも何度か見た覚えが。

    本気か荒らしかわからないなぁと思っていたら、こちらのブログでもお見受けしたので良くも悪くも多くの方に見られて来てるんだなと勝手ながら、本当に勝手ながら昔からこちら拝見してる身としては思う次第でした。

    ウォリアーズにこれ以上、点取れない人間を入れる事に何の意味があるのか自分は理解不能ですが、シモンズウォリアーズ案の方にはそれは深い考えがありそうですね。

    オフェンス、というか点取るオプションが足りないからカリーにマークが一点集中したのがシーズンやプレーインの大きな理由の一つでもあるのに、カリーの次に点を取っているウィギンスを出してシモンズとは。

    しかもまだウィギンスはオンボールから点を取れてた選手です。

    こういった2Kだけやってろ案を見るとはの驚きでした。

  4. 初めてのコメントです。
    僕もシモンズは移籍した方がいいと思いますね。エンビードとの陰陽関係が変に拮抗してこんがらがってるってことですよね。
    シモンズ見てるとラビーンと印象が被ります。プライドが高くて、クールでニヒル?な感じなところが。
    もういっそ似てる者同士を組ませてみたら面白そう。CHIとコビー・ホワイト&サディアス・ヤングあたりと。指名権かサトランスキー付けてもCHIにとって悪くないんぢゃないかな。ヤング残せるなら残したいけど。
    GSWのウィギンスとトレードは無いと思います。PHIにとって利がなさすぎかなと。何か大きなエサがないと。

    1. ブルズは考えました。惜しいのは、若手ばかりって事ですね。
      ただ考えようによっては、これだけロスターが減るのだから、一気にブルズから引っ張る手段もOKかも。

      ウィギンズはポジション的な問題も含めて不要なので、あり得ないです。
      やるなら他のチームから誰か引っ張ってこないとダメですが、サラリーがあるのでサンダーやロケッツくらいですね。
      でも、そもそもウォリアーズもシモンズ欲しいかっていうと微妙だし。

      1. 確かに76もシモンズ以上に若くて経験値の浅いコビー・ホワイトに優勝を狙うチームのPGは任せられませんね。

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