プレーオフ①ジャズvsグリズリーズ

ゲーム2

先勝したのはグリズリーズ。「プレーインの勢いそのままに」といえば、それまでですが、グレードアップしているモラントがエースの仕事で勝利をもぎ取りました。しかし、そこにドノバン・ミッチェルはおらず。ジャズとしてはスーパーエースがいれば勝てるって信じているし、一方で今年もまたスーパーエースがいないとプレーオフでは勝てないのか。

◎プレーオフディフェンス

両チームともクリーンなディフェンスを展開するものの、本日はレフリーのコールがかなり軽かったこともあって、両チーム25個ずつのファールがありました。シーズン平均はジャズが18.5、グリズリーズが18.7なので、かなり多かったことになります。

プレーオフディフェンスといえばそれまでですが、間違いなくクリーンに守りに行きました。その中でジャズの方が「ファールで止める」しかないシーンが多くなり、グリズリーズの方が「予想外のファールコールに困った」ような感じです。特にバランチューナスがゴール下を決めた時に、振り回したわけでもない腕がゴベアの顔に入ったとしてオフェンスファールになったのは、かなり可哀そうでした。

この対比には違う面もあって、ジャズの方が「シーズン通りの守り方」に感じ、グリズリーズの方が「シーズン以上のプレッシャー」に思えました。プレーオフディフェンスをしていたのはグリズリーズであり、プレッシャーがかけられないジャズは不安要素があります。

〇ターンオーバー
ジャズ 12
グリズリーズ 11

それでもターンオーバーは少なく済みましたが、ジャズの方がキックアウトがホームランになるケースが多く、やっぱりプレッシャーに困っていた感じです。プレッシャーによってパスが乱れ、それが3P成功率を落としている気がします。

ただ、今日はドノバン・ミッチェルがいたことで違いを作れ、ジャズらしいボールムーブが帰ってきました。それは後述。

グリズリーズとしてはファールコールのアンラッキーもあり、次第に守れなくなっていったのは致し方なかった。でも、それに負けずにオフェンスで打ち勝ったわけですが、その点でジャズのディフェンスの方が問題ありました。

基本的にブルックスに対してオニール。個人で怖いのはモラントよりブルックスと踏んだわけです。この判断は3Pはある程度無視して良く、ドライブへはカバーが出来るモラント対策に比べると、ブルックスを個人で止めた方が楽なので、理解できるチョイスです。

〇ペイント内得点
ジャズ 58
グリズリーズ 62

しかし、結果を見るとゴベアで強力に塞げるはずのペイント内でボコボコにされました。これ以外にフリースローが38本ありますが、3Pファールドローも多かったジャズに比べると、グリズリーズは(ボーナススローも多かったが)インサイドに攻め込むことで得たフリースローでした。

特にモラントには20点を奪われており、ゲーム3以降もインサイドを攻略され続ける可能性があります。ドノバン・ミッチェルはまだ足が痛そうなので、モラント対応させるのは酷。コンリーが止めることになるのですが、普通にスピードでも抜かれていたので、かなり対策を強化しないといけません。

また、ゴベアがプレーオフモードでマズいプレーが多かったです。ゴベアあるあるですが、「立っているだけでも強力」なのに、なんとしてでもブロックしようと手を出しすぎるケースがあり、そんな時はセンターにパスを通されたり、オフェンスリバウンドを取られたりします。

ってことで、ジャズはペイント内を攻略されているけど、大事なことは「ガマンして対応し、確実にリバウンドを取る」ってことになります。フェイダウェイ系を意地でも止めに行くプレーを考えることで崩されまくっている印象がありました。4ブロックはお見事なだけに、立っているだけで自分は強いと思い出さないといけません。

一方のグリズリーズは見事なカバーリングでインサイドの弱みを封殺していました。素早い収縮でゴベアを捉まえきっています。ならばジャズはコーナーにパスアウトという手段が残っていますが、ゴベアからそんなパスがスムーズに出てくることはなく、コンリーが1本ゴベアへのアリウープと見せかけて見事なキックアウトをしたくらいで「どっちのパスか」がわかりやすくなっていました。

この点についてはドライブしたドノバン・ミッチェルからもキックアウトが出てこなかったし、どうも4歩くらいドライブするとプレーレベルが落ちていたので、足の痛みが影響している気がします。

ってことで、ゴール下を抑えながらも、キックアウトにも対応していたグリズリーズのディフェンスを誉めるしかないのですが、それを攻略したのはコンリーによる見事なパスでした。

ゲーム1に続いて、消えてしまいそうだったゴベアにワンステップのダンクを生み出すパスを何度も通したコンリー。他の選手と違ったのは、ハーフスピードのアタックから自分にディフェンスを寄せて、カバーの人数を減らしたことです。ということは、グリズリーズからしてもコンリーにおびき出されると苦しかったわけだ。

「連携を消す」という対応が増えている今回のプレーオフですが、コンリーは「消せないパス」で見事にゴベアとの連携を成立させました。これはクリス・ポールがゲーム1でエイトンに通したパスと似ているかもね。パスコース警戒されているのに、通してしまうスキル。

ゲーム3以降もコンリーに対してグリズリーズがどうするかは注目の対応です。思い切ってコンリーに打たせる方が良いんじゃないかってね。ただ、その時でもゴベアには複数人で対応する必要があり、そうなると3Pが火を噴くわけです。

総じてグリズリーズのディフェンスの方が印象的でしたが、それを上回ったジャズオフェンスでもありました。

◎守らせてもらえなかったブルックス

しかし、早々に3つのファールトラブルに陥ったエースキラーがこの試合1つ目のポイントでした。試合序盤はグリズリーズのディフェンスが目立っており、今日もジャズが苦戦しそうだった所を、ドノバン・ミッチェルのアタックがグリズリーズに守らせない形を作っています。

スパーズ戦でデローザンに対して、間を空けて右手側を守り、ジャンプシュートに踏み切ったところでチェックに飛ぶことでミドルを封じたブルックス。

ウォリアーズ戦でカリーに張り付き、シュートモーションに入ることすら許さないハードチェイスを見せたブルックス

プレーイン2試合で「エースキラーとしての有能さ」を見せつけることになったわけですが、この2人への対応が全く違う守り方だったのもブルックスの価値をあげています。ジャズならクラークソンがカリーを追いかけるでしょうが、デローザンならオニールになるでしょうし、相手に応じてディフェンダーも変えたいのが普通。

vsドノバン・ミッチェルではデローザンのように間を空けたら3Pをねじ込まれ、カリーのように追いかけたら簡単に抜かれるのはわかりきっていただけに、ブルックスは距離を測る立ち上がりでした。

しかし、その立ち上がりでスクリーン利用で触られたと判断した瞬間にシュートに行きファールドロー。そしてスクリーンを使う瞬間に飛びあがっての4点プレーで早々にファールトラブルになってしまいました。チェイスするブルックスとしてはスクリナーをかわしにいく動きをしただけなのに、その時点でシュートモーションに入っているドノバンの上手さでした。

その後、イングルスへの明らかなファールで3つ目になりましたが、グリズリーズはこれにチャレンジしたので、ブルックスのディフェンスがかなり重要だと踏んでいたわけです。

後半になるとさすがに落ち着きそうでしたが、今度はスクリナーのゴベアに対してのファールをコールされてしまいました。つまり3つがスクリーン関連でのファールなので、ミッチェルの守りにくさが際立っていました。

距離感が難しいため、1試合目で対応するのは難しかったのでしょう。ゲーム3からアジャストできるのかどうかってことになりますが、一方でドノバンはまだ50%って感じなので、止めきるチャンスもありそうです。

なお、以降はドライブに対してダブルチーム作戦に出ました。1人では止められないので、スクリーンがあったら逆サイドのガードがカバーに来る形。それはシンプルに間を割られるのですが、本調子じゃないから抜ききれなかったり、抜いてもその後のフィニッシュが怪しかったり。

そんなわけでチャンスはありそうなディフェンスでした。でもケガだけはさせないでね。

ちなみに、終盤にロッカーに下がったドノバン。戻ってくるとブルックスに密着されますが、自分はコーナーに行って実質的な4on4にすることで、コンリー→ゴベアのプレーを生み出しました。足が痛いから、こんな対応も出てきそうなので、実はドノバンよりもコンリーをどうするかの方がグリズリーズには重要な気がします。

ドノバン・ミッチェルはオンボールプレーをしなくても、こういうチームオフェンスの論理性で済ましてしまうことがあるから、上手いし、チームに与える影響が強いのでした。

◎ドノバンの復帰

そのドノバンですが、本日は3回ほど目立って済ませたようなプレーぶりでした。前半は2Q序盤にベンチに引っ込んだら、そのまま出てこず、後半は4Qにロッカーに戻っていたので、ケガとの闘いでギアを上げ続けるわけにはいかない雰囲気です。

〇ドノバン・ミッチェル
25分
25点
3P5/10
0アシスト

3Pは決めまくったけど、アシスト0はこの2年間で初めてです。それくらいドライブからの打開がなかったし、横断パスもなかったので、試合勘についても怪しかったです。

初めに働いたのは試合開始4分で5点しかとれていなかったところから。ここまでは確実にグリズリーズディフェンスが効いていて、ロースコアの展開になりそうでしたが、コンリーの交代によってメインハンドラーになると、前述の通りスクリーンを使いながらブルックスをおびき出し、ファールトラブル+3P攻勢によってジャズペースに持ち込みました。

1Q12点でしたが、ジャズの初めの18点のうち12点がドノバンでした。ってことで、今日も重たくなりそうだったジャズの3Pアタックがスーパーエースによって雰囲気が変わり、しかもグリズリーズはファールトラブル+ドノバンへの警戒になったことで、個々から急激にマンマークが苦しくなりました。

結局、前半はこの後2点しかとっていません。それでもジャズのオフェンスは流れるように機能し、3P10/19もあって、前半だけで74点でした。主としてバランチューナスもファールトラブルになったことで、グリズリーズのディフェンスが弱まったことが原因です。

あと、ティルマンを使わずJJJでゴベアを止めに行ったんだよね。スピードでオフェンス面のメリットもあるから悪くない判断だったけど、成功はしなかった。

2回目の働きは、20点ビハインドのグリズリーズが猛反撃に出た3Q序盤。ファールトラブルだったこともあってブルックスが元気だったので、明らかにエナジーが違うアタックをしていたグリズリーズ。

それをプルアップ3P2本で勢いを止めに行きました。まぁなんとか勢い止めましたが、交代と共に止めきれなくなり、2点差まで追いつかれています。戻ってきたら少し押し戻して、43-29と大差になった3Qです。

そして6点差で始まった4Qになると、ドライブ&ワンで開始2分で再び13点差に。あとはあまり働いておらず、自分にマークが来るからコーナー待機していたくらい。

しかし、ジャズオフェンスはドノバン抜きでも機能していました。さすがに20点差を追いつくのにエネルギーをつかったグリズリーズはタンクが底をついてきた感じで、これ以上は抗えませんでした。それは仕方がないし、追いついただけで見事。

ということでドノバンが働いた3シーンはいずれも「ジャズオフェンスが苦しそうな時間帯」になりました。グリズリーズ優位の時にだけ働き、あとはチームメイトがなんとかしたよ。

◎負けてもモラント

ある意味、局所的に苦しかったジャズに対して、ずーっと苦しかったのがグリズリーズ。早々にブルックスとバランチューナスがいなくなり、どうすりゃいいねん。しかも前半で20点差になってしまい、これを追い上げるって簡単な事じゃないよ。追い上げたら、また突き放されるしやってらんないぜ。

そんな中で輝き続けたモラント。いやー、素晴らしいね。本当に素晴らしいね。カリーには悪いけど、踏み台になってくれたおかげで、ニュースターが生まれたよ。

〇ジャ・モラント
43分
47点
FG15/26
FT15/20
7アシスト

本当にプレーインから別人のモラント。ウォリアーズ戦の前には「ウォリアーズに勝てる気がしませんがどうすればいいのでしょう」みたいなファンの質問もあったけど、見事にステップアップしてハイスコア連発です。本日も7アシストとパスよりも自分で点を取りに行く姿勢が明らかに。

まぁこれはこれで、チームオフェンスどうするんだってのもありますけどね。アシストするような形には出来ていないって事だ。ジャズはそこまでマンツー重視じゃないから、チームメイトが決めろってのもあるんだ。

シーズン平均5.9回のフリースローのモラントですが、今日は何と20回もフリースローラインに立ちました。3P能力ではドノバンとは差がありますが、ここまでインサイドに侵入できる能力は他に若手だとザイオンくらい。ディフェンスを抜いていく能力はピカイチ。それを得点につなげるパターンが増えてきました。

これなんか殆ど何もせずにコンリーを抜いています。「鋭いクロスオーバー」ですらない。何で抜けるんだってくらいイージーモード。

しかもモラントは全力アタックじゃないから、ここからさらに左右にムーブしてきます。ちょっとエグすぎた。3P時代に3Pではなく得点を獲れるので、ちょっと次元の違う点の取り方です。

前後に体を振るので、前に出たドノバンがついていけずファールになるシーンもあり、ちょっとどうやって止めればいいのかわかりません。これまでは「シュートミスを狙え」で済んだのですが、高い集中力ゆえ決めまくってくるから、何をすればよいのかわかりません。

シーズン平均26.9(リーグ3位)のアシストから、113.3(リーグ15位)の得点だったグリズリーズですが、今日は20アシストで129点です。

だから傾向と対策が全く効かない。チームオフェンスで華麗に得点してきたけど、リーグ平均程度の得点力だったグリズリーズがスーパーエースで強引に得点しまくったゲーム2でした。

シーズンでこれをやったら死んじゃうけど、PGがハイスコアでチームオフェンスを作ってくるのだから、レブロンやドンチッチ、リラードみたいな活躍度です。レブロンはさておき、このクラスのスターより一段階下だと思われいたモラントが一気に序列を覆していくようなプレーオフなのでした。

〇コンリー
20点
15アシスト

一方のジャズのPGはプレーオフで初めて、シーズンでも1回しか記録したことのない15アシストでした。ドノバンが作ったスペースを活用してパスで得点を生み出しました。「ドノバンが作った」が大事な反面で、スペースがあってもドノバンはここまで効率的に得点は生み出せないので、見事にコンリーで141点まで積み上げました。

グリズリーズの新旧PG対決が注目されているシリーズで、次はメンフィスに行きますが、「コンリーみたいなPG」になっていく流れだったモラントが、ここにきて違う道を進んでいるのも面白い所です。つまりはドノバンとモラントが組んだら面白そうなんだよね。

プレーオフ①ジャズvsグリズリーズ” への2件のフィードバック

  1. モラントは素晴らしいと思っていましたが、ここまで素晴らしいか・・・
    プレーインからモラントとブルックスはどうしたのでしょう・・・別人か?ファンながら二人の急変ぶりに驚いています・・・JJJは何思う・・・
    ゲーム3以降はコンリー・ゴベアのP&Rと3Pをどうにかせねば!!(ドノバン君は大人しくしておいて!!)と思う反面、これだけオフェンスうまくいってれば、ジャズの3Pが落ちれば勝てるんじゃね?と甘いことも思っています。
    まだまだ楽しめそうで、プレーインに感謝!!!

    1. モラントはステップアップするにしても3段飛ばしなので、ビックリですね。そしてブルックスに至っては、なんでそうなったのか不思議です。

      ジャズとの結果以上にチームとして身震いするような強さを身につけようとしてますね。

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