勝負弱いデローザンのこと

今シーズンもまたエリミネーションマッチで活躍できなかったデローザン

20点
FG 5/21
FT10/11
3アシスト
2ターンオーバー

FG24%に終わったグリズリーズ戦のデローザン。今シーズンで最もFG%が悪かったのは12月27日のペリカンズ戦で25%でした。つまりはシーズンで最悪のFG%に終わったことは事実なわけです。それが事実かどうかは別にして、

少なくとも「勝負弱い」というレッテルを覆せなかった

これは間違いないのでした。たった1試合での出来事ですが、これまでのキャリアを振り返ってもデローザンについたイメージ通りになってしまったことは、残念なことであり、FAとなるオフの契約にも関わってきそうです。

スパーズはデローザン抜きには考えられないし、3年くらいは活躍してくれそうなので再契約を目指すでしょうが、逆にデローザンは放出してFA戦線から有望株を捉まえ、チームを作り直すっていうのも考えてしまうかもしれません。

そんなことはさておき、今日の結果が悪かったこともあって「勝負弱さ」について考えてみましょう。

◎シーズンが良かった

まず、そもそも今日の結果を「勝負弱い」と表現するのは、それだけ「シーズンが良かった」ということであり、デローザンによってスパーズは勝っていた事実があってこそです。他の選手が良かったかといえば

〇デジョンテ・マレー
10点
FG4/17
11アシスト

マレーもFG23%に沈みました。それもデローザンと違って2Q序盤のグリズリーズが弱いメンツだったときに活躍した上での数字です。デローザン以上に勝負弱い部分がありましたが、そもそもマレーだと「勝負強い選手ではない」くらいの否定で終わるはず。でもデローザンは活躍しているからこそ「勝負弱い」とされる。

〇今シーズンのデローザン
21.6点
FG49.5%
6.9アシスト

特にミドルを多用しながらFG50%近くの確率を残す選手は激レア。シーズン中は「異常なミドルの確率」があるのに、今日もまたミドルが決まりませんでした。普通は期待されないはずのミドルなのに、デローザンについては「神レベル」に決めて欲しくなる。

だから、まぁ、勝負弱いっていうのは「普段のレベルが高い」ってことなので、なんともいえないんだよね。ちなみに本日はレブロンとADはFG41%でした。インサイド担当のADがこの確率だと、勝負弱いっちゃあ勝負弱いんだよね。デローザンだって20点はとっているわけでして、なかなか難しい。

◎何が悪かったのか

とはいえ、いくらなんでもミドルを外しすぎ。ファールされているのにノーコールだったりと不運もあったけど、ハードなマークを振り切れなかったです。多くのシュートがタフショットになっていたので、あまり良い条件で打つことが出来なかったわけだ。

また、何故か左サイドばかりになりました。ポストアップ系統は左サイドが多いのですが、それ以外は割とバランスの良い打ち方をしていたはずが、随分と偏ったもんだ。

同じサイドに偏っていたシュート

何故、こんなことが起きてしまったのか。左サイドが多いだけでなく、右サイドのエルボーが多いことから、常に左へドライブしている傾向が伺えます。

どうもグリズリーズのディロン・ブルックスは右手側を中心に守っているっぽいです。結果的にはドライブをさせないことに繋がっていますが、普通に考えるとステップバック系統のシュートを止めるためにやることが多い守り方です。

つまりデローザンは「ミドルシュートを最大限に警戒されていた」そんな気がするわけで、実際、シュートチェックが多いからフリースローをゲットしまくっているので、FG%ほど酷かったわけじゃないんだよね。

まぁそれにしても外しすぎなんだけどね。1回目のドライブで謎の転倒していたから、どこか痛かったのかもしれないし。いずれにしてもビックリするくらいミドルレンジ封じの策にハマってしまっていたね。

少し見方を変えるとアンチ現代なミドルはプレーオフなんかになると「止めにくい武器」として重宝されることがあります。でもそれは「3Pかゴール下」を徹底しているからこその武器であり、デローザンほどミドルが多いと止めやすいって事にも繋がります。つまり

オフェンスで武器が足りないから対策されやすい

こんなことがあるのかも。各チームのスカウティングに効かないと分からないし、この2年で1試合だからなんともいえないけどね。

今日のvsブルックスでいえば、3Pがないから離されて守られるスタートになっていました。だからドライブからのジャンプシュートは常にブルックスが目の前にいてチェックに飛んでくることに。

これが3Pまで止めるような守り方をされると、ドライブを始めたところで身体半分抜け出し、ブルックスをシールドしながらのスネークドリブルなんかが出てきます。デローザンはフィニッシュまでのパターンが少ない選手ではありませんが、どうやっても常にチェックされていることに変わりはありません。

◎少なすぎたアシスト

でも、オフェンスパターンの問題で言えば平均6.9アシストなのに、今日は半分以下の3つになったことが問題でした。なんでこうなったのか。パス数を見てみましょう。

〇パス数
平均 37.6本
今日 34本

パス数だけでいえば標準的でした。ちなみにデローザンの37.6本で6.9アシストは驚くくらい「少ないパスでアシストを稼いでいる」ことになっていて、同じ6.9アシストの選手だと

ベン・シモンズ 64.1
ウォール 52.7

普通はこれくらいのパス数になります。30本台でデローザンの次に多いのが39.6本で5.2アシストのルバートで、同じく5.2アシストのレナードが35.3本です。アシスト効率が極めて高いデローザンは、1本のパスで決定機を作っているともいえます。

そしてデローザンのパスからどんなシュートが生まれているかというと

〇デローザンのパスからシュート数
2P4.7/9.1
3P3.4/8.7

〇今日
2P1/9
3P3/8

つまり、デローザンとしては通常通りに近いパスを出していたし、通常のシュートが生まれていました。しかし、3P3本(ケルドン・ゲイ×2)しかアシストは記録されず、特に2Pの悪さが際立ちました。

デローザンのミドルが止められていた問題だけでなく、パスを出した後のスパーズが決められなかったことが大きく、それはグリズリーズディフェンスがよりデローザンに集中できたともいえます。

勝負弱かったデローザンですが、それって実はデローザンだけじゃなくスパーズのチームとしての問題だったんじゃないかっていうね。ゲイは決めたけど、若手たちがいつもの力を発揮できなかった。

なお、マレーが11アシストを記録していますが、試合の大半でマッチアップしていたモラント相手には2アシストしかなく、殆どがベンチメンバー相手の時で、スピードでイージーに振り回していたから増えたアシストでした。スターター同士だと2人共アシストも少なかった。

次にデローザンのパスからうまれた2Pを分解してみましょう。決まったのはロニー・ウォーカーがパスを受けてドライブした1つだけなので、ほぼ外れたとみていいよ。()内はパス数

ゲイ 3本(9)
ウォーカー 2本(5)
マレー 2本(9)
ケルドン 1本(6)
パートル 1本(3)

ちょっとよくわかんない数字になったな。何がいいたいかというと、満遍なくパスを回しており、そのうえでチームメイトは決められなかったってことです。

この中で特に問題だったのはパートル。今日はほぼほぼバランチューナスに完封されてしまいました。元ラプターズの対決でしたが、あまりにも差があった両者の関係性は、ドライブするチームメイトにもマイナスに働いていた感じです。

ってことで「勝負弱いデローザン」っていうか「勝負弱いスパーズ」なのか「経験不足が響いたスパーズ」なのか。

ゲイが20点でなんとかかんとかしてくれたことで最後まで分からない試合になりましたが、やはりスターターにもう1人はそれなりの選手が欲しかった。つまりはオルドリッジだ。オルドリッジがいれば、デローザンのスタッツもここまで悪くなかったかもしれないのでした。

そう考えるとFAをどうするのかって悩むね。来シーズン勝つためにベテランを補強すべきか、チームを成長させて未来を作るために、若手スター候補を求めるか。

◎「勝負弱い」こと

ここまでの「勝負弱い」というのは、「プレーオフに弱い」という意味で、大事な試合でステップアップするようなタイプの選手ではないって事です。これに関しては、今更どうしようもないと思うので、シーズン通りの力を発揮してくれればOKって思っています。というか、シーズン通りだと神確率だからな。

でも、デローザンという選手に関して言えば「プレーオフに弱い」ということだけでなく「クラッチタイムに弱い」ってのも問題になってきた部分でした。両方合わせてイメージが悪すぎ、そして今シーズンも払しょくできなかった。

スパーズに移籍してきたばかりの頃、試合終盤にデローザンに託すと、ちゃんとプレーメイクしてくれるのだけど、自分で強引に打ち切ることは少なく、パスアウトしてしまうのが、かなりもどかしい問題でした。「決めきってくれないのかよ」とね。でもちゃんとパスは出しているからこそ。

しかし、最近のデローザンはそうでもなく、直近で見たニックス戦ではブルロックのディフェンスに大苦戦し、ボロボロの状態だったけど、試合終盤になるとブルロックを突破して得点を積み上げました。あれもチームの問題で負けたしな。

〇残り5分5点差以内
4.4点 FG45.2%

〇残り1分5点差以内
1.5点 FG46.4%

今シーズンのデローザンは終盤でも関係なく高確率で決めています。残り1分のシチュエーションでトータル28本打って13本も決めています。むしろ勝負強く決めてくれているくらいです。ちなみに5年前はFG30%切っていました。

残り5分からの4.4点はリラード、SGA、ビールに次ぐ4番目に多い得点数でもあり、気が付いたらリーグ全体で勝負強い部類に入ってきています。

そのため、試合単位で見た時の「勝負弱さ」は実はかなり改善されています。プレーオフでそれを証明することが出来ず、今日もまた失敗しただけさ。「だけ」なのかは証拠がないからわからんけど。

〇今日の残り5分
6点 1アシスト
FG1/3
FT4/4
0ターンオーバー

そして今日も試合終盤にしっかりと6点を取っています。FGはあれだけど、その分ファールドローしていたので、この数字は否定できない。

しかし、スパーズは他に点を取ったのが7点のゲイだけでした。同じく13点ながらグリズリーズは4人が得点しており、特にベインとバランチューナスがオフェンスリバウンドをねじ込んでいるのが大きかったです。

ということで、実は

デローザンは勝負弱い選手ではないが、スパーズは勝負弱い

ってのが現状であり、それは今日も同じだったのでした。

◎まぁでもね

なんども言いますが、なんだかんだといっても結果が全て。スパーズが勝っていれば評価を覆せたかもしれませんが、デローザンのミドルが決まらなかったのは事実だし、それで接戦を落としたわけだし。キャリア全体のイメージから根付いた評判を力強く覆すことは出来ないのでした。

でも、中身を見れば改善傾向にあるし、スパーズがチームとしてグリズリーズディフェンスに抑え込まれた方が問題でした。グリズリーズはベイン以外のベンチメンバーが酷いディフェンスレーティングを記録しており、ベンチメンバーの時間帯のみ攻略できたけど、スターター相手にはぐうの音も出ないほど抑え込まれたスパーズでした。

これで2年連続プレーオフに進めなかったスパーズ。45年ぶりらしいですが、現行の課題は明らかです。

マレー、ケルドン、ロニー・ウォーカー、パートル、そしてヴァッセル

みんな良い選手なのだけど、「変化をつけられる」選手がいません。サンダーのストロングスタイルみたいなパターンばかりで、ほぼ全てをデローザンに頼っていました。そしてホワイトの不在ね。

足りないのはジノビリ成分。1つの武器が強力じゃなくても多彩な武器を備えている選手の方が、対策の打ち合いとなるプレーオフでは活躍するもの。デローザンもミドルという武器に頼りすぎなんだけど、今日はスパーズで積み上げてきたプレーメイク力を周囲が封じられたことで発揮できなかった感じもあります。

ってことで、一体どんなオフにするのか。デローザンとの再契約を前提にしても、新たな要素をいろいろ加えないと、勝負強さは改善しないかもしれません。

勝負弱いデローザンのこと” への8件のフィードバック

  1. 結局SASがRS後半に失速したのも、過密日程による疲労やホワイトの離脱だけじゃなく、ここで言われているような課題こそが原因として大きい気がします。
    対策されると「対策の対策」がない。
    これこそ経験を積んで引き出しを増やしていくしかないのかもしれませんが。特に自前でドラフトした若手中心でやっていくのなら。

    1. これまでは若手のベースアップでしたが、人数も揃ってきましたし、次のステップは考えないといけませんね。
      来シーズンに同じメンバーでも、全く違うアプローチ始めたら面白そうでもあります。

  2. デローザンにとっては、
    リングの可能性がない
    ゆかりのある土地ではない
    年俸も多分そこまで高くない
    SASに魅力を感じてない限り、再契約するメリットはあまりないように思えます

    他のチームがデローザンに高額出すかどうかはわかりませんが、、
    LALのセカンドエースにはなって欲しくはないです

    1. スパーズならエース扱いなので、よっぽどリングに拘らない限りは、プレーしやすい環境のはずかと。

      とはいえ、今回の決断はキャリア最後に向けて何をするかなので、それだけで残留は決めないと思いますが

  3. 大変面白い考察をありがとうございます。
    デローザンはシーズン中にもブルックスにはやられていた印象でしたので、そこに対する対策を期待していたのですが、ダメダメでしたね…

    本文とは関係ないのですが、ラプターズ時代はバランチュナスのポジショニングの悪さにイライラすることも多かったのですが、今日のバランチュナスは良いところにいることが多くてビックリしました。

    1. バランチューナスはもっとファールしちゃう選手でしたが、デローザンへのチェックも近づきすぎずに対処してましたね。こちらも成長したんだなー。

  4. デローザンのおかげで勝てた試合も多いシーズンでしたが自分はデローザンの再契約には前向きではありません。デローザンのC&S確率もよくないのでデローザンが変化をつける立場にならないといけない、若手がハンドルする機会も減るし、若手も増えて移行期に入っていると思うのでデローザン再契約は微妙かなと。デローザンがいなくて勝てない試合が増えるかもしれませんが若手が役割増えて変化をつけられる選手になれるかなと思っています。

    1. そもそもキャッチ&シュートを狙わないので、サポート役としては微妙なんですよね。理想はベンチからシックスマンになってくれることですが、その前にスパーズは主役を手に入れないといけないし、忙しいオフです。
      再契約が簡単なチーム構築ですが、本当にそれで良いのかは意見が分かれるでしょうね

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