いまいちな開幕スタート
ペイサーズはプレシーズンを1試合観ましたが、分厚い戦力というオフの時点でわかっていたことは感じさせた一方で、スターターのプレーに迷いが多く、どうも怪しい匂いが。
そして開幕してからもピストンズ、キャブス、ピストンズと格下相手に3連敗。予想できたスターターの悪さと予想できなかった悪さが混じっていました。なお、その後ネッツとキャブスに連勝しています。ていうか、5試合で3チームとしか試合していない。
◉ペイサーズの強さってなんだ
2年前はドアマットだと予想されていたペイサーズでしたが、オラディポのブレークと、そのオラディポがケガで離脱しても変わらぬ強さを発揮した昨シーズンでもありました。その強さを印象でいえば
ディフェンスが良い
チームケミストリーが抜群
分厚い戦力
こんな感じです。おそらく満場一致の内容で、特にケミストリーという意味ではリーグ最高。その一方で「オフェンス力は低い」みたいな印象もありそうなわけですが、ケミストリーがあってオフェンス力がない、というのは少し計算あわないんだけどね。
だから実はディフェンスが良いってのが最も重要な事でした。そしてここはサディアス・ヤングの移籍によってインサイドのキラーディフェンダーが足りなくなる可能性があります。ペリメーターは概ね問題ないですが、欲を言えばオラディポ&コリソンのスティール力は不足気味。
そんな印象ではなくてデータ的なところでペイサーズの強さで重要な要素を取り上げていくと違う一面も出てきます。
リーグ4位のFG%と5位の3P
実はペイサーズは高確率で決めていくチームです。ターンオーバーも10位と多くはないので、確率良く堅実にシュートを決めていけるオフェンス力を持っていました。ディフェンスのチームと思われがちですが、オフェンスでも自分たちの形をもっていました。
ちなみに似たような数字が多く並ぶのがスパーズです。スパーズ型オフェンスのペイサーズといってもおかしくないのです。
〇得点 108.9(22位)
〇試合のペース 98.6(25位)
オフェンス力がないように感じたのは単純にペースが遅いからです。そこそこ得点は取れるのですが、そのためにかなりじっくりとオフェンスを組み立てています。あっさりと打たない(打てない)ターナーってのも大きく関係していそうです。
ベンチメンバーの得失点差がリーグ首位
〇ベンチメンバー +1.8(1位)
〇スターター +1.6(11位)
普通に強いレベルのスターターと、かなり強いレベルのベンチで構成されているペイサーズは印象とデータが一致しています。もっとベンチは離しているかと思いましたが、やっぱりオフェンス力が足りないので、突き放すような得点差に出来ませんでした。
ちなみに2年前は意外にも得失点差がマイナスです。その時の首位はもちろんラプターズ。そのラプターズは昨シーズンはスターターの得失点差が首位です。シーズン中からバックスよりもスターターは強かったわけです。
ペイサーズには単に「ベンチメンバーが強くて、スターターがそこそこ強い」ということよりも、充実したベンチ陣を活用し対戦相手と試合展開に応じてメンバーを入れ替えつつ、チームのケミストリーが崩れないという特殊な能力がありました。それが結果として出ているのが
クラッチタイムに強い
というペイサーズファンにはお馴染みで、一般的にはそんなに知られていないデータがあります。レーティング差+13.3というとんでもない数字をたたき出し、リーグ2位のクラッチタイムでした。ちなみに首位はクリッパーズ。両方とも試合展開に応じて・・・、という戦い方です。
ちなみにレーティングが良いのはこの両チームですが、勝利が多いのはナゲッツとシクサーズでした。両チームともに柔軟な選手起用は確かに強いけど、失敗することも多いという事です。
ディフェンスが良いというデータは割愛しますが、ペイサーズの強さは印象度とデータが一致している内容だけでなく、高いFG%とクラッチの強さなんてものも重要だったという事です。そこにはベンチの有能さを活用する戦略があったね。
◉偉大なブログドン
ペイサーズで初めに感じる違和感はスターターのプレーが悪いこと。この「悪い」というのも厄介で、ブログドンやサボニスがいるから表面的には悪くないのですが、データでは表せない悪さがあります。
〇マルコム・ブログドン
得点 22.6点
リバウンド 5.8
アシスト 10.2
ターンオーバー 2.4
凄い数字をたたき出しています。20点、10アシストしながらターンオーバーが3を切るという超優秀なブログドン。ちなみにアシストの上位を並べると
〇アシストとターンオーバー
レブロン 10.8(4.0)
ウエストブルック 9.8(3.6)
ハーデン 8.6(5.6)
ドンチッチ 8.4(4.6)
ウエストブルックの数字が逆におかしいですが、アシストも得点も多い選手はターンオーバーも多くなります。ハーデンは多すぎですが、レブロンとドンチッチの数字はこれだけの負荷がある選手としては優秀な数字です。つまり、ブログドンはオールNBAクラスのプレーをしています。
まだ5試合なので偶然なところも大きいですが、10アシストしながらターンオーバーが3以下というレベルのプレー効率は15-16年のクリス・ポール以来の数字です。
優秀なアシスト数を記録するブログドンですが、開幕したばかりだけに、たまには出てきそうなスタッツに過ぎない気もします。普通は「単にチームが好調だから数字が良いだけ」と捉えたくなるわけです。
ところがペイサーズは不調。全然良くない。ブログドンが素晴らしくてチームがダメというアンバランスな結果になっています。
〇ペイサーズのFG 43.9%
〇ブログドンのパスからのFG
2P 10.2/26.5本 47.2%
3P 1.8/6.8本 26.5%
昨シーズンの数字は見る影もなく、FGの悪さが目立ってしまっているペイサーズ。それは66.2本のパスから10.2アシストという効率的にアシストを稼いでいるように思えたブログドンにも響いていて、パスは出せどもシュートは決まらず。チームメイトが外しているけど10アシストを超えているわけです。
ちなみにレブロンはじめアシスト上位は全体的に同じです。どうにもチーム全体のリズムが生まれていないような「戦術○○」型のオフェンス。そうペイサーズは何故か戦術ブログドンになっています。
ハンドオフを駆使してプレーメイクしてくれるサボニスがいることでギリギリ成立している戦術ブログドン。でも本来はシンプルにボールを動かして、ディフェンスが読んでいない普通のプレーを繰り返していくのがブログドンの良さです。今ではブログドンがプレーに絡んでくることはバレバレ。
プレシーズンからブログドンはトップからのパス回しに困っていました。両ウイングに出したところで、特に何もなくボールが戻ってきてしまいます。ビッグマンの2人は大いに絡んでくれるものの、自分でドライブするタイプではないだけに、必ずブログドンが貰いなおす必要がある。
大活躍するブログドン。それはブログドンらしくないし、ペイサーズらしくない。だからペイサーズのスターターは怪しい。大いに怪しい。
◉ウイングの役割は何か?
これまでのPGコリソンは効率的なプレーをする選手でしたが、一方でプレーメイクを周囲に任せるタイプでもあります。よくいえば「テンポ良くボールを動かしてリズムを作る」悪く言えば「特に何もしないでボールを動かす」
似ていると思われたブログドンが全く違う結果になっているのは、オラディポとボグダノビッチという2人のエースがいたウイングがジェレミー・ラムとTJウォーレンに変わったこと。両者ともにプレーメイカーとしての能力はいまいちです。
〇ラム
18.7点 1.3アシスト 7.0リバウンド
〇ウォーレン
12.8点 0.4アシスト 2.8リバウンド
どちらも個人としては頑張っており、特にラムはリバウンド数がビックリ。だけど2人合計で1.7アシストに留まっており、プレーメイクはブログドンにおんぶに抱っこ状態。
その一方で2人はシューターとしてはいまいち。本来はプレーメイカーに頼ったとしても、そこから出てくるパスを決めるウイングならば効果的なのですが、どっちもシュータータイプではありません。
〇3P
ラム 28.6%
ウォーレン 8.3%
問題外のウォーレンということもあって、ブログドンのアシストが伸びていないともいえます。
ウイングの役割は何か
PGに求めるプレーは何か
リズムよく回してウイングに勝負させるゲームメイクではなく、かといってPGのパスを効果的に決める役割のウイングでもない。だからバランスが悪いペイサーズのオフェンス。
ブログドンのプレーは素晴らしい。素晴らしいけど、それがチームとしての結果に結びつくプレーになっていません。じゃあブログドンが悪いかというと、そもそもそういうプレメイカーじゃないわけで・・・。難しいんだよね状況が。
◉分厚い戦力
スターターが多少困ったところで問題ないのがペイサーズ。分厚い戦力によるベンチの強さで圧倒して勝利を掴みます。勝負どころが2回あるのがクラッチタイムの強さでもありました。
ところがどうしたことか、ベンチメンバーをあまり起用しません。20分以上出ているのはホリデー兄だけ。
〇スターターのプレータイム
ブログドン 36.2
サボニス 34.1
ターナー 31.6
ウォーレン 33.9
ラム 31.6
ほぼスターターに限っています。そんなに機能していないけど、何とかスターターユニットを形にしたい感じ。何がそんなに良いのかわからないのですが、結構な信頼です。
15分のプレータイムながら相変わらず4アシストを記録しているマッコネルもいるので、ブログドンに頼りすぎない形も構築できるはずが、その手段は択ばないマクミランHC。
ここまでベンチのプレータイムはリーグ25位と下位になっています。加えてそのベンチメンバーも機能していなかったりして。
〇ベンチメンバー
得点 21,4点
FG 32.8%
3P 33.3%
ダメなベンチ陣。FGの低さが際立っています。そして得点は最下位。ちなみに得点は最下位なのにアシスト数は10位、ターンオーバーは3位と優秀な数字です。変なの。
分厚い戦力が売りのチームだったはずが、起用もされなければ結果も残せていない現状。チームの長所が失われているのでした。
〇レーティング
オフェンス 103.2
ディフェンス 104.3
ただ唯一残すことに成功しているのがディフェンス面。2勝3敗のチームにしては守れています。ウォーレン、ホリデー兄のディフェンス力が目立っていましたが、ルーキーのビターゼもリムプロテクターとしてキャブス戦で結果を残しました。
ディフェンスに難のあるラムをスターターに置いているのには疑問もありましたが、前述のとおりリバウンドをしっかりと奪っており、インサイド側をカバーする意識の高さを感じました。
〇速攻での失点 8.4
そして驚くべきことに速攻での失点がリーグ最少です。何が驚くって試合中はかなりのトランジションディフェンスがあるのに、抑えてしまうことが多いから。とてもじゃないけどリーグ首位とは思えないくらいの試合内容なのですが、確かに止めるシーンが非常に多かったです。
基本的にビッグマン2名体制のチームなのですがトランジションに強いペイサーズ。単にディフェンスが良いのではなく、強固なディフェンスからのカウンター速攻のカルチャーを作り直せれば、得意のラッシュが復活するかもしれません。
ちなみに得意のクラッチタイムの成績は悪いです。
◉らしさってなんだ?
今シーズンもらしい戦力を整えてきたペイサーズでしたが、素晴らしいスタッツを披露するブログドンとは対照的にチームとしては強みが失われてきました。エマージェンシーな状況です。
ただ、コメントにもあったのですが、そもそもマクミランのチームはオフェンスが悪い。システム的なオフェンス力を導入しようとしては失敗しており、選手同士の組み合わせやコンビネーションに頼っている印象です。
そして、それは時間がかかるのも事実。2年前は順調なスタートをきったイメージがありますが、5勝7敗から始まっています。オフェンス構築に時間がかかりがちなマクミラン。
同時にこういう状況から始まってチームを整えていった実績を持っているマクミランなので、「まぁ何とかするだろ」くらいの印象があるのでした。少なくともディフェンスを強固に構築することで有名なダンバーグACがしっかりと仕事をしている感じなので大崩れはせず、その間にオフェンスとローテを固められれば、ペースも掴めるはず。
明らかにマズいペイサーズですが、ダメでもダメなりに戦った開幕5試合だったともいえます。むしろ多くの新戦力を集めたのだから時間がかかっても致し方ないもの。
2年前はオラディポがスターに成り上がり、昨シーズンはサボニスがMIP候補にもなりました。既にブログドンが数字を残しており、その能力に応じたオフェンスを構築できるのか。しばらく時間をおいて確認してみましょう。
ちなみに2年前のスタートはハイスコアゲームの早いペースで始まり、守れない状況でした。特徴は
・10人ローテの分厚い戦力を活かした走るオフェンス
・ミドルレンジを高確率で決めていくペイサーズらしい流れ
・3Pとゴール下という流行部分にはどっちも弱い
・ボールは回すがアシストが少なく、連携面に伸び代がある。
・最低レベルのディフェンス
これが大きく変わっていったわけです。今シーズンもまた変化してペイサーズの新しい形を作るのでしょうかね。昨シーズンと考え方が同じ戦力だけに「ペイサーズらしさ」を求めてしまうわけですが、
そもそも「らしさ」ってなんだよって話です。
新しいペイサーズらしさを作っていく。プレーオフで勝てなかったチームなのだから進化しないと置いていかれるわけで、ポジティブな変化を求めないといけないのでした。
今のブログドンはオラディポとコリソンの役割を一手に受けている状態なので、オラディポが戻ってくればスーパーブログドンから普通ブログドンになると思います。良い意味で。
確実なチョイスで3Pをあまり打たず高確率というチームなので三男は重用されない。良くも悪くもそれもらしさですが本当にもったいない。
我慢強く使って欲しい。
戦力が分厚いからこそ色々試して欲しいけど頑固なマクミランですからね。それでケミストリーを構築してくれるんでしょう。
なんだかんだで今年のチームも楽しみです。
オラディポがどのレベルで回復しているのかわからないのは不安です。再発しないようにマクミランには気を使って欲しい。
ブログドンがアシスト増やしていること自体はポジティブなので、普通とスーパーの間くらいでお願いします。
今シーズンもよろしくお願いします。
ウイングについては、オラディポが健康で戻ってくるなら……というところに期待するしかないんじゃないかと思いますけど、それならミニオラディポっぽくなってるホリデー三男を使ってほしいのは私も同感です。
ただ、ペイサーズの(ダン・バークの)チームディフェンスに慣れていない新加入選手で、中核となるべきサラリーの人間であるラムとウォレンを優先的に使っていきたいというのはシーズン初めのマクミランの起用法らしくて納得感はあります。みんな契約が2年以上ある選手たちなので、気長にやるんじゃないでしょうか。
プリチャードもマクミランもそれが許されるだけの信頼は築いたと思いますので。我慢できるのはスモールマーケットの特権かもしれません。
キャブス戦はリーフが信頼を失ってしまう試合でしたね。
ストレッチして決められないなら使いようがないのは致し方ないかと。
その分ビターゼのプレータイムが増えたので、ライバル心を持って奮起してほしいのですけれど。
リーフはペイント内のムーブは小器用なんですけど、大きくはないアスレチックタイプにもフィジカルで負けてしまうのはちょっと問題。ディフェンスも問題。
オフ中は釣りの写真ばかりInstagramに上げていたので、ターナーとヨガをやるといいんじゃないですかね……。
ホリデー三男、サモナー、リーフと若手たちが停滞していることが気になるんですよね。サモナーは停滞していないか。
本当は育成こそがペイサーズな気もするので、その要素がなくなるとスーパースターだけは自前で作り上げる必要があるだけにね。
ペイサーズは伝統的に勝負強い絶対的なエースとセンターを核にしてチーム作ってますね
独特の採用基準がありそうですね。ポール・ジョージは勝負強くはなかったけど・・・。