チーム17点のうち14点を奪った1Qから試合を通して36点のレナード。ウォリアーズが止めきれなかったのは何故だったのか。
ゲーム4については何を書くか。イバカってのも1案なのですが、コメントもいただいたので、合わせてレナードに行きましょう。
昨年のレナードのトレードに際した記事のコメントへの返信で『レナードはリーグTOP5のプレイヤーではない、過大評価だ』 と仰っていましたが、今現在はどのようにお考えでしょうか?
えっ!?こんなこと書いてたの。「穴があったらなんとやら」ですね。
レナードがチームオフェンスの中で強力なフィニッシャーになるっての理解していましたが、「レナードがボールを持つと足が止まる」となるくらいに「個人で決めきる」選手だとは思っていませんでした。特にプルアップでも3Pをバシバシ決めるってのは予想外。
今や立派なリーグNo1プレイヤーです。優勝すれば。
ただし、正直に言えばレブロンみたいにキックアウトパスで組み立てるようなプレーが出来ません。あるいはハーデンやウエストブルックのように1人で戦術化してもいません。
それでもこれだけのフィニッシュ力で得点をもたらしてくれ、ラプターズに足りなかったプレーオフでの勝利をもたらしてくれる。レブロン達ほどチーム全体のオフェンス構築はしていませんが、それを補って余りある『ディフェンス力』と『スタミナ』にて「勝利」という目標を達成しています。
ディフェンスでの貢献度もまたレナードですが、プレーオフになってニック・ナースはレナードを完全なる『ヘルプ要員』にしています。直接マッチアップのドレイモンドには結構やられているので、そういうことなのだと思います。
攻守に評価の高い選手ですが、ディフェンスについてはエースキラーではない部分で活躍させた「チームの良さ」ってのも感じました。チーム戦術を形作るほどの影響力はないけど、戦術の中でチームに勝利をもたらしてくれています。
2017年のキャブスと2018年のロケッツならこのウォリアーズには勝つと思います、優勝には運も必要ですね。
2015年のキャブスもケガで沈みましたし、昨年のキャブスはイーストが苦しすぎてスタミナ残っていませんでした。ウエストも厳しかったけど。そういう意味での運は大切ですね。パチュリアによるレナードの件は別。あれは運ではないし、あれで楽になったし。
そこにもう1つ運の要素を加えると、ファーストラウンドのラプターズでは今のウォリアーズ相手でも3-1という結果はなかったと思います。あるいはセカンドラウンドがバックスだったら、そこで敗退していたと思います。
ラプターズもまた対戦相手の順番からステップアップ出来ており、そしてバックスとのゲーム3からは別のチームになりました。そんな運もあったかな。
◉囲まれないレナード
ゲーム3でダニー・グリーンとヴァンフリートが3Pを決めまくり、そしてガソルもカズンズとのマッチアップを制したことは、ウォリアーズディフェンスを悩ませました。
〇ゲーム3までのレナード
29.0点
FG43%
3P33%
この数字は得点こそ多いものの、プレーオフで圧倒的だったレナードの姿からは遠く、ウォリアーズディフェンスに苦しめられていました。それをチームメイトの3Pが救ったわけですが、見事にゲーム4は逆になったのです。
1本目のFGは、ラウリーのドライブに合わせたけどシュートまで行けなかったレナードが、この位置からポストアップを仕掛けてターンシュートを決めました。
画面上でカリーがダニーに密着マークしていることがわかります。通常ならばボールと逆サイドなので、もう少しインサイド側にはいってきます。ドレイモンドがヘルプに行ったときにシアカムを埋める役割です。
もうひとつはカズンズのダブルチーム。通常ならば、この位置から仕掛けますが、矢印の方向にいくそぶりをみせません。ガソルを嫌がっているわけです。
その結果、囲んでいるようでフィジカルなレナードのアタックをイグダラ1人で対応しています。カズンズは上の写真よりも足がガソルに近づいています。
恐らくこのプレーはチームとしてヘルプに行けば止められたはず。ただし、そこからキックアウトされるのが嫌だから収縮を遅くしたウォリアーズでした。
こうなるとイグダラといえどもレナードが外してくれることを祈るしかありません。その代わりパスコースはなくなっています。
総じてウォリアーズはレナードへのヘルプ意識はあるものの、シューター達を止めなければいけないことを強く感じるディフェンスになっていました。
その結果、14点の1Qですがペイント内で3つのターンシュートを決めており、そこにはマークが緩かった事情もあります。
また、もう1つのポイントはレナード自身もプルアップ3Pを積極的に打ったことです。ヘルプで固められるのを嫌がったわけです。
1本目に決めたのは、この状態から踏み切りました。マッキーニーが引きすぎているわけでもありません。イバカとルーニーの位置を観るとインサイドヘルプ寄りになっていますが、そんな時はドライブしたくなかったのか。ルーニーの方がドライブされたくなかっただろうけど。
そして後半開始直後、トランジションの流れからドライブ出来そうなのに3Pを選択しました。ここはフリーだからという判断ですが、それが次にも続くからハーフタイムの指示だった可能性があります。
その直後に再び3Pですが、ドレイモンドのディフェンスが悪いとは言えません。それでも強気にプルアップを選択しています。この2つの3Pでラプターズが逆転するわけですが、総じてターンシュートと3Pというシンプルな選択が多かったゲーム4です。
◉アイソと早めのヘルプ
同じく後半になり、この試合初めての気がするアイソレーション型です。ポイントはリビングストンの位置なのですが、ラウリーとシアカムのポジションからこれ以上はインサイド側に寄りにくくなっています。
それに対してダニーとイバカが同じポジションにいるので、カリーかルーニーが前に出る必要がありました。普通に考えれば待ち構えてのルーニーな気もしますが、ウォリアーズならカリー→ルーニー→ドレイモンドとポジションを変更していくローテーションがあるので、カリーな気もします。
結果的にはルーニーのところまではドライブせずにプルアップミドルをレナードは選択しました。3Pのところと似たような考え方な気がします。囲まれないことを優先。
ちょっと余談・・・
マッキーニーがレナードの一対一でやられてたので、トランディジョン重視のメンバーにするとディフェンスが崩れるのでは。
コメントで頂いた内容ですが、まったくもってその通りなのですが、一方でレナードがいる時間にトンプソンもイグダラもベンチにしていたってのも気になります。あるいはドレイモンドがレナードでも良かったのに、マッキーニーに守らせなければいけない理由が見当たりません。
管理人的にはスターターをマッキーニーにすることで、イグダラをベンチから登場させ、トンプソン、イグダラ、ドレイモンドのうち2人は常時コートにいるべきなのではないかと。
本題に戻ります。似たようなシーンですが、カリーの位置がドレイモンドです。ヴァンフリートをマークしているっていう。
早々にヴァンフリートを捨てたドレイモンドは高い位置でのヘルプで見事にレナードを潰しています。ルーニーはイバカにもヴァンフリートにも行ける状態です。
そう考えると上の時はルーニーではなく、カリーが早めのヘルプってのが正しかった気もします。なお、このシーンはファールドローに成功したレナードと、せっかく止めたのにファールで大いに悔しがったドレイモンドでした。概ね、ここはウォリアーズのディフェンスが勝っていたと捉えられます。
これで3Qに大きな差が付きましたが、前半の内容からレナードにスペースを与えればヘルプが遅いと判断し、そこに3Pも打たせることでストレッチを徹底したラプターズの気がしてきます。ハーフタイムの修正点だったわけです。
それは点差がついたことで4Qになると様相が変化します。
4Qになってレナードを止めないと追いつけなくなったウォリアーズはマークをトンプソンに変更しています。そして同じようなシーンが登場しました。トップから1on1を仕掛けます。
そして今度は高い位置でのヘルプでカリーが捕まえに行きました。要するにウォリアーズからするとチームディフェンスを変化させればレナード自身は「止めようと思えば止められる」わけです。
そして「止めるとダニーがフリーになる」ことでコーナー3Pに繋がりました。この時、イバカとシアカムが同じサイドにいたのは偶然な気がしますが、アイソで得点後にヘルプがきてのパスアウトは、非常にわかりやすい流れでした。
さて、ウォリアーズディフェンスについて触れると、マークをイグダラ→トンプソンにどんな意味があったのか。それは、おそらく個人のディフェンス力ではなく、
レナードを止める → 周囲のフリーが増える → イグダラの驚異のローテーションディフェンスでカバー
という狙いだったのではないかと思われます。これもゲーム1から少し出ていた内容で、イグダラがレナードのマークになることでヘルプが弱くなる傾向がありました。
しかもラプターズがレナードにパスをしないオフェンスをし始めたので、なんだか役割が浮いてしまったようなイグダラというシーンもあったゲーム1です。ゲーム4でもイグダラらしさで失敗したシーンがあります。
ラウリーとイバカのピック&ロールです。レナードは右端にいます。イバカにやられていたウォリアーズなのは、ゴール下ががら空きだからです。ちなみにガソルだとインサイドにはいってくるスピードがない。
ここではルーニーがラウリーを耐え切れませんでした。ドレイモンドもシアカムにひっついており、珍しくビッグマンコンビがチームディフェンスを失敗したことで、イグダラがレナードを捨ててヘルプに行きます。
それをみて3Pラインまで下がったレナードへラウリーからパスが出てコーナー3Pになりました。見事な2人の判断でしたし、イグダラの役割を考えるとラウリーとレナードのどちらを止めるべきなのか迷います。
そしてラウリーがドライブしたのでトップが空いたからダニーが埋めに行き、カリーが引っ張られてしまいました。本当ならカリーがレナードを埋めたかったわけですが、ゲーム3を考えるとダニーを空けるのもアレだし・・・。
そして最終番のアイソレーション。これ以降はスティールする必要があるのでこの位置でもダブルチームを仕掛けることになります。それはちょっと違う内容ね。
ここでは上記の通り、何回かヘルプで失敗しているので全てをトンプソンに任せました。
こんな感じです。もうカリーも潰しに行きませんでした。なお、トンプソンは止めるのですがファールドローをされてしまいました。これがゲーム4の細かいポイントになっています。
総じて周囲を止めるためにレナードの自由度が高まったわけですが、そこにラプターズ側の細かい修正と徹底が追加されたことが後半の内容に繋がりました。見事なニック・ナースの修正と、その中でファールドローも駆使しながら高確率で決めてしまうレナードでした。
非常に難しいチョイスではありますが、ゲーム5はゲーム4同様にヘルプを弱くしてトンプソンとドレイモンドにレナードを任せきる選択肢をとるかもしれません。あとはファールコールとの闘い。
「マイケル・ジョーダンをスーパースターにしろ」とはパット・ライリーの考え方で、ジョーダンを止めるよりも周囲を止めたほうが守りやすいってやつでした。
レナードに50点奪われるかどうかの戦いに持ち込むのも、1つの方法論ですし、レブロンに対しては似たようなことをしてきた4年間でもあります。
◉強引そうでいて
無理やりでも決めてしまう。それがスーパースターでありプレーオフを勝つために必要な事
なわけですが、ゲーム4のレナードをみると実はそれだけではないわけです。強引では決められないから、しっかりとチームオフェンスをしていたし、ディフェンスの状況に応じて選択しなければいけない。
その点でラプターズとレナードは素晴らしい判断をしていましたが、冒頭のとおりバックスとのゲーム2までは決してそんなことはなかったです。バックスとウォリアーズというヘルプとローテーションが鍛えられている両チーム相手になって初めて必要になった「強引ではないプレーチョイス」かもしれません。
ある意味「バックスに負けた2試合」がなければ、ファイナルはウォリアーズ優勢でゲーム5を迎えたかもしれないのでした。
これはゲーム4の2Qのシーン。ドライブしたレナードを3人で囲んだウォリアーズ。ガソルとシアカムがドフリーです。
レナードの選択はこんなサーカスショットでした。当然のように外れます。ガソルとシアカムを信じることが出来なかったレナード。
結果、強引なシュートが増えた2Qは無得点でした。それが強引ではない後半に繋がっています。このあたりの試合中の修正力でニック・ナースはファイナルへ進んできたともいえるのでした。
そして強引さをなくしたことが、史上4人目の「35点以上、ターンオーバー0」というモンスタースタッツに繋がったのでした。
◉コービーs・Detail
細部にまで気を配り、正しいプレーを選択しないといけない。
プレーオフでディティールに拘った選手個々の解説と、正しいプレーチョイスが何だったのかを指摘してくれるコービー先生のあるハイライトで今回は締めたいと思います。呟きよりも説得力がある。
※管理人がもっている唯一のユニフォームがコービーの8番です。
コメント取り上げていただき有難うございました!
最後のコービー件、自分の読解力ではメッセージが読み取れませんでした…お恥ずかしい…
次戦もブログ楽しみにしております。無理なさらず引き続き宜しくお願いします。
メッセージっていうか、コービーは正しい理論で正しいプレーを教えてくれるけど、自分は無理矢理でも決めてくれる選手だったなというだけです。
レナードへのパスしかり、ピックプレイでのイバカへのパスしかり、ラウリーが影で適切なプレーをしていることも後半の好調に繋がってもいるのですね。
また、GSWはシアカムを空けるとゲーム1になりかねないわけで。
となると、KDが戻らないとやはり厳しい。戻るかな。
確かにラプターズはレギュラーシーズンとplay-offとじゃー、play-offは賢くプレーしてる度合いがあがりましたね。play-offの負けが強くしたのかな。そんな対応力ってトロントには無いってイメージだったけど。
自分達がやられた事を相手にするような感じ。レギュラーシーズンは自分達がしたいこと度合いが強かったのに
いつも分かりやすい記事ですが、管理人さんの指摘ポイントが文章と画像との併用で、ヘルプの距離感や優先順位 誰が行く・行かないの微妙な距離感は分かりやすかったです。
ラプターズ側 ウォリアーズ側 両方の駆け・引きが落ち着いて考えられる。
オフェンスもしかり。レナード(ラプターズ)の戦略が読み取りやすいかったです。
チームオフェンスの為にパスしない とゆう事は確かに大事なのかな。テイタムはそーなりたいのかな。
レナードがしているプレーセレクトは、よくKDがしているプレーセレクトっぽく思えます。まーエースなので当たり前ですが。
仰られるように、レブロンやハーデン ラス君のよーに全ての指揮権を握る訳ではなく、一昔前のコービー的な。
ニック・ナースは『役割の徹底化』が得意なのかな。スティーブ・カーは打つ手あるのかなぁー
もうさすがにないのかな
サーカスショットも正しいチョイスのマンバ先生かっこいいです、私です。
レナードって凄い選手なのは知ってましたが、なんかイメージ薄かったですよね今年。あんまりレギュラーシーズン出なかったからかなぁ。でもあそこまで凄いとは…。使われ方としては、レブロンよりもデュラントに近いように思えますが、別に一人でなんでもできなくても勝ちゃえーねんって思ったので、ラウリーがいて、エースムーブができるってラプターズのチーム作りはきっと正しかったんでしょうね。
…PGとラスとでBIG3とかダメですかね。ダメですね。お金ないですね。しょんぼり。
いつも面白いブログをありがとうございます。
質問なんですが、レナードとデローザンのトレードが無かったととしてもラプターズは東の王者になりえたでしょうか?
レブロンのいない東であれば、デローザン率いるラプターズは十分に東の王者になれると思うのが私の考えです。
また、スパーズもエースレナードがいれば西の王者になれるのかなとも思います。
非常に大雑把な質問になりますが、管理人さんの考えがあれば何となくで大丈夫なのでお答えいただければ嬉しいです。
ここまでの試合見ててラウリーが影ながらの献身してる姿勢に感動してます
「めちゃくちゃ目立てなくていい、チームとして優勝出来れば」
と思ってると勝手に想像しながら試合を見てます
正直いまのGSWだったらMILの方が強いし、PHIと互角くらいだと思います。
TOR的にはカリーやトンプソンが決め続けてもペースコントロールすれば爆発的なランを防げることがわかってきたし、バトラーやヤニスみたいに攻守両面やリバウンドで試合の流れを変えてしまう怖い選手もいません。ペースコントロールはラウリーの上手さなのか、ナースの指示なのか、どっちもなのか分かりませんが、そう簡単に崩れることも無いでしょう。たぶん。
GSWとしてはこんな時のためのデュラントのはずなんですが、G5は意地でもコートに戻ってきそうな雰囲気なので、どこまで抗えるか見どころだと感じてます。