2021/12/8
ルーク・ウォルトンが去ってから4勝3敗のキングス。負けた試合は点が取れなかったことは過去と同じでも、点が取れれば勝てるようにもなっています。そしてマジック戦はスゴイハイスコアになったんです。
マジックはディフェンス力のある選手を集め、サッグス中心に再建を進めるのだと思ったら、コール・アンソニー中心にオフェンス勝負みたいになっています。サッグスとWCJによるコンビネーションから作られるのが楽しみだったけど、現実には個人技アタックからの展開になっており、攻守に予想外だ。
◎期待と違うマジック
サッグス&WCJというのは、ハンドラーとビッグにそれぞれプレーメイカーを置き、パス交換とオフボールムーブでオフェンスが構築されます。そこにギャリー・ハリスやテレンス・ロスといったベテランが加わり、ワグナー弟のインテリジェンスにも期待したかったよ。
しかし、コール・アンソニーが個人技アタックから周囲へと展開していくチームとして戦っています。これがドンチッチなら将来を期待したくなるチームだけど、現状で言えば「アンソニーがスーパースターになるのを待つぜ」というスタンス。だから、どうも好きになれない。
とはいえ、アンソニーは得点力のある選手だし、さすがにこの形に慣れてきたからパスを出す意識も高くなっており、チームとしても形になってきています。まぁそれが「弱くても面白い戦術のチームだ!」とはならないだけで、現実路線として否定するほどではないって事だ。
アンソニーがベンチに下がるとロスがアタック&アタック&アタック。アンソニーとロスのチームっぽくなっています。こうなるとWCJには役割がないし、オケケなんて何をすればいいのかわかんない。たまーにスクリーンに行って、ミドルレンジでウロウロして、リバウンドに飛び込んで、頑張る気持ちだけはあるけど、何もしていないに等しい。
ただ、チームとして共有化されているのは「攻守の切り替えの早さ」なのか、シュートを決められてもスローインが早く、次々にオフェンスを展開していきます。こうなると鮮やかな連携よりも、強気に個人で攻め切る能力なので、立派に対抗している1Qです。
それにしてもディフェンスが緩い。トランジションを強めると守れなくなる典型例みたいなディフェンスで、あっさりと抜き切られることが多い。バンバやロペスをリムプロテクターにしているのが悪い方向に流れている感じもあって、最後のところで救ってくれる選手がいるからさらに抜かれているような。
もちろんアイザックもいなければ、フルツもいない。サッグスだって離脱しているし、タレントは揃っていないんだけど、だからこそチームの色を出さないといけないじゃん。それが「トランジションとハンドラーアタックのオフェンス」になっているマジックです。でィフェンスへの意識は低く、守⇒攻はとってもスピーディー。
うーん、オフェンスはまだいいよ。考え方は色々だしさ。ただ、守れる選手をロスターに加えたはずがユルユルなのはなんなんだろうね。なお、1Q終盤から2Q序盤にかけてPGやったのがワグナー弟なんだけど、周囲が見えていないね。期待されていた能力を発揮しているとは言い難く、得点が入ったわりに良い印象のないマジックの1Qでした。
◎頑張って走るキングス
一方のキングスはウォルトン解任の頃まで死んでいたフォックスが、ドライブでコンタクトしながらレイアップを決めきり、出番のなかったバグリーは3Pを決めればリバウンドに絡みます。
そういえばジェントリーが悩んでいそうなのが5人目のスターターで、今はテレンス・デイビスになりました。PFタイプではなく3ガードをチョイスしたので、より走りたい意向を示しています。そこにバグリーってのは実は論理的なんだけど、切り捨ていていたウォルトンなのか、ツービッグでは意味がなかったのか。
そんなわけで走れるビッグマンの存在が両チームの差として大きく、ホルムズのダンクで7点リードにします。WCJとバンバを揃えているはずのマジックが、ビッグマンの機動力で負けている。
アルビン・ジェントリーはペリカンズ時代もトランジションチームが得意でしたが、マルチなビッグマンを絡ませるのも得意技でした。能力の高いガードとマルチなビッグマン。キングスはバーンズが目立たず、他のウイングは休みなので、この傾向が強くなっています。
2Q中盤になってバグリーもホルムズもベンチに置くと、ここでトリスタン・トンプソンが登場します。ここも走れるビッグだね。3ガードに走れるビッグでハイペースの試合に対抗していくジェントリー。加えて言うと、展開が早いとエンドラインからエンドラインまで走り、リバウンドに参加しまくり、フィジカルファイトしているビッグマンは疲労が目立ちがち。
キングスもホルムズが頼りになるとはいえファールトラブルも多かったしね。それが選手交代でインテンシティを保ったままトランジションゲームを戦えているように見えます。両チームの差が出ていたインサイド。一方でマジックがWCS&バンバになると負け始めたトリスタン。怪しいファールドローで繋ぐこともあったけど、ゴール下の弱さが目立ってしまった。
ウォルトンの問題はインサイド合わせが下手なことでしたが、そこは改善された感じはありません。つまりは選手のモチベーションとプレーシェアによるスタミナは上がった気がするけど、鮮やかに合わせていくコンビネーションが増えたわけではない。HC交代したからと言っても、そう簡単に増えるわけもないし。
ってことで、お互いにアグレッシブだけど個人技の組み合わせな空気感。「元気な方が強い」をやっているように見えた前半です。交代していくキングスが優位だったけど、休んでいたスターターが帰ってきたらマジックが取り返した。
点差が詰まった残り2分。フォックスがミドルで突き放しに行きます。ドリブルからのフェイダウェイが全く決まっていなかった印象の1か月前なのに、なぜか決まるようになっているフォックス。さらにハリバートン→バグリーという交代でインサイドを厚くすると、バーンズとトリスタンの合わせも決まります。
そしてフォックスはアイソからのレイアップ。交代策が効いた上に、エースが躍動する形で6点差にしたキングスでしたが、最後にバンバがブザービーター3Pを決めて70ー67で終わります。
◎初めての速攻
ハーフタイムに修正されたのか、ファーストオフェンスがアンソニーとWCJのパス交換からインサイド⇒インサイドの鮮やかなコンビプレーで決めたマジック。でも次はアンソニーのプルアップ3Pだった。一方でキングスは前半に控えめだったバーンズのミドルになり、お互いに使っていなかった武器で攻めています。
離脱したホルムズの代役は引き続きトリスタンでしたが、こちらも速攻に参加しフォックスのパスからフィニッシュ。非常に良い派入り方をした両チーム。どっちもディフェンスの修正はなかったのかな?
お互いに気持ちよく決めていく中、仕事をしたのはハリバートン。アンソニーのドライブを横から飛び出してスティール速攻で8点リードにします。驚くことに、これがこの試合初めての速攻での得点でした。両チーム合わせて137点も決まった前半なのに、ノープレッシャーなディフェンスだったからカウンター速攻はなかったんだってさ。
キングスは更にフォックスがドライブからのフェイダウェイを決めると、守ってもアンソニーにドライブさせず、マジックをシャットアウトします。
フォックスはバンバをぶち抜いてのレイアップ、WCJにコンタクトしてコールがあったのを確認してからダブルクラッチで点差を広げていくと、ベンチから出てきたダビオンの3Pで16点差に広げます。
あんなに不調だったフォックスに異次元のスピードが帰ってきて、トリスタンが走り、ダビオンが決めきった。乗り始めたキングス。怒涛のオフェンス。でも、きっかけはハリバートンの仕事。あとフォックスvsビッグマンになっても工夫をしないマジックディフェンスの怠慢。
しかし、ノれていないヒールドのシュートミスがリードを溶かしていきます。なんで1人だけプレーに迷いが生じているのか不思議ですが、テンポが悪くなったぜ。逆に入り始めたら止まらないロスで反撃に出るマジック。あっという間に立場が逆転していく両チーム。
それでもキングスがマシだったのはダビオンとハリバートンを並べてディフェンスを頑張れたこと。アレックス・レンのインサイドでの奮闘もあって二桁リードを保つと、残り15秒でヒールドの3Pミスをバグリーがプットバックダンク。これで104-92でリードして3Qが終わります。
オフェンスが目立ったけど、なんだかんだで3Qの差はディフェンスでした。勢いを生んだハリバートンのスティールと、マジックの勢いを止めたダビオンとレンのディフェンス。あと、やっぱり走れているのはキングス側のビッグマンでした。
◎フォックスとハリバートン
そのインサイドにバンバとロペスを並べると、早速オフェンスリバウンドでなんとかしてくれます。だけど、やっぱりプレッシャーのないディフェンスなのでハリバートンに3Pとレイアップを食らい、ダビオンからレンの合わせで再び16点差。
バンバが3Pを返しても、ハリバートン→レンのアリウープ。ロビンのフックはレンがブロック。元ウィザーズ同士。タイムアウトでトリスタンと交代すると、さらにハリバートン→トリスタンのアリウープです。ところがダンクを決めたトリスタンはWCJとレフリーに向かって吠えてしまうのでテクニカル。お前はルールを知らないのか。
それでもハリバートンが3Pで、もう楽勝モードのキングス。止められないフォックスのスピード&フェイダウェイとハリバートンのプレーメイクが光って作ったリードでした。残り7分あるけど、しっかりとゲームメイクすれば問題ないでしょ。
・・・でも、フルアタッキングモードなんだよね。守りに入るには時間がありすぎるから否定はできないんだけど、とにかく時間を使わずに攻めていくから、勢いも得点も増えるけど、なんだか危うい。ちょっとシュートが決まらなくなるとサクサクっと追い上げられてしまう。
こういう時にはコール・アンソニーの勢いは助かるよね。勢いに任せてシュートにまで行けるし、思い切りが良いから確率も悪くない。さらにWCJやワグナーの3Pもあってトランジションでチャンスが生まれそうなマジック。
しかし、怪しくなりそうなところで、またもハリバートンがスティール。働き者だな。
ってことで、最後までハイテンポでやりあっていた両チーム。キングスはそれでいいのか疑問が大きいのですが、要所のハリバートンが効いて感じでした。
〇ハリバートン
18点
11アシスト
3スティール
〇フォックス
33点
FG12/18
キングスはこれがやりたかったんだろうね。でもウォルトンには出来なかった。そんな匂いがするフォックス&ハリバートンのコンビでした。試合を作り、連携を生み出していくハリバートンとスピードで攪乱し、得点を積み上げていくフォックス。想定したことは同じだと思うし、戦術的な進歩を臨めるほどの準備も出来ていないはずなのに、上手くいっているガードコンビ。
特にフォックスのシュートが決まりまくるのはなんだろうね。HCの問題なのか、ルールの問題なのか、単にフォックスの調子が上がってきたのか。このレベルのプレーをされると、ちょっと止められないぜ。それくらいのフォックスでした。まぁ代わりにバーンズ先生の出番がグッと減ったけどさ。
◎7人が二桁得点
マジックはスターター5人に、ロスとロビンが二桁得点でした。これをみればバランスアタックなのに、試合の印象は全然違うんだよね。基本的にアンソニーとロスに打たせるためのプレーをし、そこから周囲に展開していく感じ。ただ単に確率が良かったから二桁が多かったのか、それともリズムがいいのか。よくわからん。
130点はとりすぎだし、100点を超えたのもピストンズやロケッツが相手の試合だし、今日は良すぎたのかな。それともキングスのディフェンスが悪すぎるのかな。どっちなのかはわかりませんが、マジでもうちょっとディフェンスを頑張れよ。これに未来があるのかどうか、いまいちわからんのでした。
個人としてはいろんな選手が活躍しているわけで悪いことはないよね。ただ、どうしてもこの戦い方は「ス―パスターと仲間たち」にする必要がある。素晴らしいスターと、良いロールプレイヤーを育てないといけません。全員が中心選手として伸ばしたいのだと思っていただけに、ちょっと残念。
あとオケケは勿体ないからトレードしてあげて。戦術的に今のマジックではムリでしょ。
この空気が何に似ているかといえばオフェンス力は一流の勝てないキングスだよねぇ。才能がある選手はいるし、素晴らしい活躍をするけど、だからと言って勝てるわけじゃない。フォックスクラスの個人能力をエースが持ち、ハリバートンのようなIQが加わらないと厳しいぜ。
142-130と大味な試合でしたが、久しぶりにキングスの強い部分が観れたのは面白かったです。時間と点差を考えた行動は出来ないっぽいけど、アルビン・ジェントリー自体がそういうこと出来ないイメージなので、打ち勝つスタイルを極めるしかないだろうね。ただ「元気なビッグマン」と「守れるダビオン&ハリバートン」を上手く使い分けている気はしました。
だから以前よりも安定しているというか、戦い方を調整できている。選手交代のディティールだけど、その違いが勝率の違いなんだろうね。
最近試合展開が重いチームが少なくて、今シーズンのマジックは、ディフェンスガチガチで、ペース落として、毎試合重い試合をやるんだろうなとシーズン前はワクワクしていたのですが、たまに観ても別にそんな感じはなくて悲しいです。もっとディフェンス勝負にして、ペース落として、困ったときのコールアンソニーの方が面白そうだと思うのですが。