プレーオフ①グリズリーズvsジャズ

ゲーム3

感想を書くどころか、考える価値も感じないウィザーズの後で、同じく1位と8位の対戦カードをみると、なんだかもう、こう、うん、その、やるせない気持ちでいっぱいになります。同じステージで戦っているカードとは思えないレベル差。

全ては異常なレベルアップをしているモラント&グリズリーズの放つオーラが、何が起こるのかわからない空気を醸し出しています。内容はジャズの圧勝という流れなのに、決してそんな結果にはならない不可思議で魅力的な試合。逆にこれはこれで感想を書きにくく、考えても思い出せないほど、試合終盤の強烈な印象なのでした。

◎エースと3P

グリズリーズファンからすると「反則だろ」と思えるくらい3Pが決まりまくるジャズ。これだけで試合が決まっても良いレベルで決めまくった1Qになりました。

〇1Qのジャズ 3P7/15

34点のうち、21点が3Pなので、もうどうにもこうにも。こんなに決められたらお手上げです。

この3Pは26%しか決まらなかったゲーム1のことを考えると、どうしても偶然の要素が大きいように思えます。実際、バスケの勝敗はその日のシューティングに大きく左右されるので、ましてや接戦が続くプレーオフなら1本の差が大きな差となって跳ね返ってくるわけです。だから、しっかりと守った上なら「決まっているのは偶然だから諦めるしかない」という考え方もあります。

しかし、ゲーム1とゲーム2の内容差を考えると、グリズリーズ側はそんな悠長なことは言えませんでした。共にプレスディフェンスが効き、ジャズ得意のパス回しにズレを生じさせ続け、それがジャズの3Pに問題を起こしていました。48%決まったゲーム2も客席へのパスが何本かあり、正確なパスアウトになりませんでした。

〇コーナー3P
シーズン 40.3% 11.9本
ゲーム1 2/9
ゲーム2 5/9
ゲーム3 1/3

特にリーグ最多のコーナー3Pを放っていたジャズに対して、コーナーからの攻撃を許さないディフェンスが効いていました。ゲーム3も3本しか打たれていませんが、単に打たれないだけではなく、コーナーにドリブルしたクラークソンが囲まれてスティールされるなど、

コーナーはグリズリーズディフェンスの狙い所

これは明確なポイントになっていましたが、そもそも「コーナーで囲む」っていうことは、それだけ足が動いているわけで、運動量で凌駕するグリズリーズの良さがジャズの3Pを阻害しています。

〇ディフェンス平均移動速度 3.97(1位)

それを裏付けるようにリーグで最も足を動かしているデータがあります。オフェンスはリーグ中位なのですが、ディフェンスになるとどのチームよりも動いているっていうね。

しかし、このゲーム3ではコーナー3Pが少なかった事実に反して、グリズリーズのプレッシャーはあまり効きませんでした。それはジャズの事情よりもグリズリーズの事情が関係していた気がします。

◎ファーストプレーとキックアウト

ジャズのファーストプレーはコンリーのキープから、オフボールでスクリーン交換したドノバンが3Pラインに出てきてパスが来ると、グリズリーズは2人のディフェンダーが来てしまい、ゴール下のゴベアがドフリーになったので、ドノバンからのパスが通りました。

ゲーム2を経てドノバンへの脅威を感じていたことになるグリズリーズ。なんでもないオフボールの動き1つで崩されてしまいました。ドノバンが良かったのではなく、グリズリーズ側のミスなので、それは単なる「見えないプレッシャー」です。

そしてここから1Qだけでドノバンに4つのアシストをされてしまいます。ドライブキックアウトの繰り返し。ドライブしてキックアウト、シュートにならなくてもパスが戻ってきて、再びドライブキックアウト。

これが他の選手だと、若干「ここにパスを出す」みたいな決まりごとがあって、つまり、それがコーナー3Pなのですが、スピードドライブしているように見えるドノバンなのに、視野がキープされていて、あっちにもこっちにもパスが出てきました。

あるいは「コーナーではない」というのは、グリズリーズディフェンスがドライブを防ぐために、ヘルプ担当も初めからドノバンに寄っており、近いサイドが空きまくったというのも事実です。

ゲーム1では必要のなかった周囲のヘルプが明らかに求められることになったグリズリーズ。そのためゲーム1どころか、ゲーム2よりもディフェンスプレッシャーが効いていませんでした。なお、かわりにドライブへ周囲から手を出すポジショニングに変更されたため、ドリブルを奪うスティールが増えています。多分。

パスが出る先を読んで、運動量でカバーできたゲーム1
ドライブを止めるために、3Pを捉まえきれなかったゲーム3

こんな構図になってしまいました。グリズリーズからすると「3Pを追いかけるわけにはいかなくなった」なので、ドノバンへの過度な意識がディフェンス戦略を変更せざる得ないことに繋がったのでした。それはゲーム3での修正ってことでもありますが、ゲーム4でなにを選ぶべきかは、さらに悩むことになっていそうです。

なお、ドノバン本人が3P2/10なので、これまた無視したほうが良いんじゃないか疑惑もあります。あるんだけど、難しいってのがゲーム3でもありました。

◎カイルとブルックス

エースキラーとして価値を高めまくったブルックスですが、ゲーム2ではドノバンによってファールトラブルに追い込まれてしまいました。そこで今日はカイル・アンダーソンがマッチアップする機会が増えたのですが、ドライブを止めるという点で有効に機能していたと思います。

ブルックスがカリーを追いかけたような対応は出来ないものの、ハンドチェックの上手さと体幹の変な強さがあるので、上手くドライブコースに手を出し、シュートチェックも出来るので、狙いとしては面白く、ゲーム4以降も続けてくるでしょう。

ただカイルには違う問題があって、どうしてもスクリーンに弱くなってしまいます。ピック&ロールだらけのジャズなので、ずっとカイルに担当させるわけにはいかないのでした。加えてボグダノビッチへの対応を誰がするのか問題も出てくるので、バランチューナスとJJJの両方が出ている時間帯じゃないと、ドノバン担当にはなれません。

従ってブルックスになる時間帯も多く、他にもモラントが守ることもありました。

そして今日もまたブルックスはドノバンによって退場に追い込まれてしまいました。残り2分11秒の大事な局面で3Pファールドローに引っかかってしまったのでした。どうしてもこれが守れないグリズリーズ。

試合途中でもゲーム2同様に、スクリナーを利用しに行くドノバンが、スクリーンを使って抜け出す前にジャンプし、スクリナーをかわそうとしたブルックスは体ごとぶつかっていました。とにかく、このスクリナーを使うプレーに手も足も出ていないのです。

ブルックスは一瞬だけ抗議し、自分を抑制するようにボールから離れると、かわりにタイラー・ジェンキンスが激怒。延々とレフリーにクレームし続けてテクニカルをコールされていました。ジェンキンスがこれをやるのは珍しいのですが、さすがにファールコールそのものにキレているとは思えないので、ブルックスの代わりに文句を言い続けた気がします。

さて、ここまでならいいのですが、この後、ブルックスはボール運びの時、ボールのない所でドノバンの顔面に肩パンチしてダウンさせました。レフリーが観ていないからノーコール。

マークが変わってコンリーになった後、コンリーが鮮やかに振り切って3Pを決めると、ブルックスにトラッシュトーク。すると次のオフェンスでコンリーを殴るブルックス。

ラフプレーだらけのブルックスでしたが、コンリーもドノバンも関係なく、メンタルを乱さずに決め続けていきました。6ファールで退場はアンフェアで、テクニカル2つで退場していてもおかしくないくらいです。ってことで、メンタルゲームとなるプレーオフで、地味にメンタルゲームに勝っているのがジャズなのでした。

プレーで勝ったようにみえて、メンタルで勝ったってね。こういうのって、やりまくった結果、自分が退場し、しかも負けるっていうのが一番ダサいというか、メンタルに来る気がするよね。あとNBAはちゃんと試合後の罰金なり、テクニカル追加なりをしましょう。

これがウィザーズだったらラス&ビールがクレームするだけでなく、ネトやベルタンスがボロ負けし、シクサーズならエンビードがそこかしこでフロッピングしてそう。

◎コンリーのプルアップ

そしてゲーム3でグリズリーズが何よりも困ったのはコンリーの3Pでした。カイルがドノバン担当になった理由には、コンリーをブルックスで止めたい意向もあった気がしますが、これに関しては大失敗。まったく歯が立たなかったブルックスでした。

〇コンリー
27点
2P1/6
3P7/10
8アシスト

さて、「(止めるのが難しい)ドノバンよりも、コンリーを止めた方が良い」というのがゲーム2の感想でしたが、その理由はコンリーの巧みなパスによってゴベアにダンクを食らいまくったからです。15アシストが効率的なオフェンスを生み出しているのだから、優先すべきはコンリーのパスでした。

その点では8アシストに抑え、ゴベアにもFG7/8で15点「しか」食らわなかったので、必要最低限の対応は出来たことになります。ドライブを止めに行ったと思われるチームディフェンスと、コンリーのアシスト減もあって、大失敗したわけじゃないんだよね。

ところがプルアップ3Pにやられました。ということはコンリーが持つプレーの引き出しが、見事にグリズリーズの狙いを外したことになります。だからゲーム3の3P7本はグリズリーズからしても「仕方がないプレー」だったのかもしれません。

ゲーム2はドライブしたときに、上手くヘルプを「引き出して」からパスを通しましたが、このハイライトを見てもバランチューナスは「引き出されないような対応」をしていると思います。だからこそコンリーがスクリーン利用からワイドオープンでプルアップ3Pを打つシーンがあり、ドライブもリングに対して直線的なものになりました。

ゲーム2からの修正を無効にしたコンリーが持つベテランの味。まぁベテランじゃなくてもやるけどね。でも、モラントがそれを出来ているかというと出来ていないよね。

◎ハイパーモラント

ゲーム2で47点を取ったモラント。今日も27点7アシストとハイパー。これで3試合で101点となり、プレーオフデビューからの得点でジャバー、チェンバレン、マイカン以来の100点オーバーとなりました。並ぶ名前がレジェンド過ぎるだろ。

ウィザーズにいたら来シーズンは得点王なんじゃないかってくらいのプレーぶり。ビールとトレードしてくれませんかね?八村にベルタンスも付けますよ。もちろんウエストブルックだってOKですよ。

特にこのプレーはえげつなかった。なんていう身体能力。でも身体能力でプレーしているんじゃなくて、緩急使ったキレで勝負しているんだもん。ハイパー。マジで能力ならドノバンよりもハイパー。

でも、問題のあったウォリアーズとのシーズン最終戦から5試合。褒めたたえるのにも飽きてきました。そろそろ課題も明確なので、コンリー先輩と比べて何が問題なのか触れておきましょう。

ジャズはオニールがドライブ優先で守り、スクリーンに対してはアンダーで対処していましたが、するとしっかりと3Pを決めきり、得点面に関しては「ディフェンスの考えていないプレーを選択」して決めきることが出来ています。

そもそも、これが出来る時点で多くの若手よりも上だし、3P打たずにタッカーを抜けなかったバトラーよりも上かもね。「得点王を狙える」というくらいにスコアリングに関しては完璧。シュート能力を改善させたら、一気に怖さも増してきます。

その一方で「ポイントガードとしては不完全」でもありました。スコアにいく姿勢を明確にしているモラントなので致し方ないのですが、前述のコンリーのように巧みな駆け引きをしているとは言い難く、まぁ駆け引きしなくても得点できるってことなんですけどね。

またドライブしてからアシストするのがシーズン中のモラントでしたが、バランチューナスは狙っても、ドノバンのようにキックアウトも自由自在って感じではありません。どっちに行くかは決まっているような。

もっとも、これに関してはジャズが「絶対にオーバーヘルプはしない」姿勢をハッキリしているので、キックアウトが不要でもありました。まぁまだ改善の余地はあるよ、くらいの感覚で捉えてもらえればOKです。「不満」ではないです。このレベルでプレーしている選手なんて、数えるほどしかいない。数えたことはない。

ジャズは去年もマレーに点を取られようがオニールで戦う事を辞めませんでした。キックアウトされる方を嫌がるんだよね。理由はゴベアがいるからだ。

見事な、あまりにも見事なドライブとショートレンジの正確性をみせつけたモラント。特にフローター系が決まりまくるので「止める方法がない」とすら思えました。

4Q開始時に11点差あったものの、ブルックスと共にドライブしてはショートレンジを決め続け、残り5分には逆転に成功しました。モラントを止めようがない一方で、足が痛そうなドノバンが同じようなショートレンジを外しまくっていたので、この時点ではグリズリーズが逆転勝利を得ると思われました。

◎ゴベア

ただ、ジャズは落ち着いていたと思います。ゲーム2では「ゴベアあるある」として、意地でもフェイダウェイやフローターを止めに行ってファールしてしまったり、バランチューナスへのパスを通されていたことを批判しましたが、この点についてはしっかりと修正してきました。

〇ゲーム2
ペイント内得点 22
ノーチャージエリア内 40
フリースローアテンプト 38

〇ゲーム3
ペイント内得点 26
ノーチャージエリア内 28
フリースローアテンプト 14

確かにモラントとブルックスを止められなかったジャズですが、試合トータルで見るとゲーム2からの改善点は明確でした。ショートレンジは決められてもガマンしてガマンして対応し、その代わりに致命的なシュートを打たせない事を徹底したのです。

ゴール下とフリースローを徹底して減らせ

ジャズの修正事項は明らかです。本当によくぞガマンしたよねってくらいモラントに決められ、しかも逆転されるのですが、まあガマンしたよ。

その結果、バランチューナスを10点に抑えたのだから。ただ、オフェンスリバウンドを取られ過ぎており、それもゴベアがとられるだけでなく、少し長めに跳ね返ったときにカバーするのがことごとくグリズリーズだったので、それさえなければ、ジャズが完勝で終わっていたかもしれません。

〇セカンドチャンス
ゲーム2 14
ゲーム3 21

ジャズとしてはディフェンスリバウンドが次の修正事項になるでしょう。ここさえ押さえれば、ドノバンに頼らなくても勝てそうな道筋は出来てきたゲーム3だったかもしれません。

ゴベアはブルックスのラフプレーにムカついてショルダータックルみたいなスクリーンをした以外は落ち着いて対応しました。こういうゴベアだと目立たなくても、物凄く効果的。「立っているだけで強力」であることを示しました。

4ブロックのゴベアでしたが、大事なことはブロックしなくても、そこに存在している事でした。ある意味、これもメンタルゲーム。ゴベアがガマンし続けることと、モラントが決め続ける事。どっちにも見えないプレッシャーがかかっています。

なお、確変するグリズリーズで「エースになるはずだった」JJJは、もはや忘れ去られるかのように置いてかれており、誰もがJJJよりもブルックスを求めているでしょう。しかし、今日は9点9リバウンドという数字以上に、頑張っていました。

これまでは「得点取って何とかしよう」としていましたが、そうではなくハードワークでゴベアに食らいつき、ボールに食らいつく姿勢がみてとれました。マジで全員が毎試合5つくらいレベルアップしているのに、JJJだけは3試合で1レベルみたいなペースだったのですが、今日は・・・2つくらいはレベルアップしたかな。ある意味、グリズリーズの伸びしろ。

◎スーパーエース

しかし、ガマンした末に追いつかれてしまったジャズ。残り4分27秒にモラントが26点目となるフローターを決めて、109-107。最大15点差あった上に、決まらないドノバンと決めまくるモラントで勝負ありにすら思えました。

〇残り4分半までのドノバン
25分
19点
2P6/12
3P1/8
FT4/5

コンリーの3Pに救われていたといえるジャズ。ドノバンのプルアップが決まらないので、かなり困っていました。とはいえ、この数字以上にチームオフェンスに与える影響は大きく、ドノバンがいるだけで3P成功率は上がるし、グリズリーズは見えないプレッシャーに襲われていました。

〇残り4分半からのドノバン
10点
FG2/3
FT5/6
1スティール

しかし、ジャズ最後の14点のうち、10点をもたらしたのはスーパーエースでした。ただただ試合を決めてしまったドノバン。

ってことで、またも見えないプレッシャーが増すことになったグリズリーズ。メンタルゲームと本人が言ったゲーム3ですが、ゲーム4に向けて更にプレッシャーを与えることになったのでした。

ドノバンへの対応からゲームプランを変えてきたゲーム3のグリズリーズ
ドノバンに勝負を決められてしまったゲーム3のグリズリーズ

さて、ゲーム4は何をしてくるのか。これに関してはプレーインのように「モラントがステップアップする」という対処法では難しいです。チーム全体がステップアップするか、戦略的に変化をつけてくるか。まぁ前者みたいなことをしているシリーズではないので、タイラー・ジェンキンスが頭を悩ませているでしょう。

◎オニール

えっと、今日のオニールのオフェンス面での活躍は、ザ・地味だけど、グリズリーズディフェンスを最も困らせていました。

やることなすこと、上手くいきそうになっても、オニールに間に入られて無効化されてしまう。

そんなことを書こうかと思いましたが、もうお腹いっぱいなので辞めます。そういう感想を抱いたってことだけお伝えします。

プレーオフ①グリズリーズvsジャズ” への2件のフィードバック

  1. ブルックス君よ・・・なぜ君はそんなしょうもないことをしてしまうんだ・・・熱くなってトラッシュトークくらいはいいが、手を挙げるのは違うでしょ!!whynotさんと同意見で、罰金かテクニカル!!反省しなさい!!

    試合の方は、そろそろ完敗しそうだなー、まぁモラント(てかチーム)がびっくりするくらい成長したし、プレイオフ出れてよかったなージャズとは差があるなー(MEMファン的には)やっぱコンリーすごいなーと思いながら、3Qまで観ましたが・・・
    なんですかあの4Q立ち上がりの集中力は!!ファンでも驚きです!!なぜか一度追いつき、追い越せる力!!!
    まぁ最後はスーパースターのクラッチ力に負けましたけど(笑)まぁそれもジャズのチームとしての力を感じました。
    クラッチではグリズリーズは、もうお疲れでしたしねー
    第4戦は、クラッチタイムまで、モラントを温存して先行したい!!!とまだまだ甘い希望を捨てきれてない1ファンでした。
    あと、第3戦は、JJJのいいファイトが久しぶりに見えてよかったです。気合を見せてほしい!!

    1. 47点よりも終盤までスタミナを残して試合を決める大切さをモラントはドノバンから学ぶことになるかもしれませんね。それもまたプレーオフでの経験です。

      JJJはゴベアをなんとかしなければいけない経験で、何かを掴みますかね?

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