セルティックスvsヒート

2021/5/9

もうすぐプレーオフ。6位を争うのは昨シーズンのカンファレンスファイナルの顔合わせです。共にプレーインに入る可能性があるとはシーズン前には想像もつかなかっただろうね。

ただケガ人の多さが致命的だったヒートに比べると、セルツの方は内容もマズいって事で、プレーオフでの対戦可能性は低いものの、昨シーズンと何が違うのかを考えながら試合を見ていきましょう。シーズン終盤になったので完成していなければいけない今日この頃。

◎大きな差

開始から両チームにある差を感じずにはいられない内容で、ポストアップしたアデバヨに対して、オートマティックにダンカンのオフボールでバックドアが決まるヒートに対して、テイタムがポストアップしたときにダブルチームされるけど、周囲の動きが決まっていないしパスも出てこないセルツ。

ピック&ロールしてもナンのミドルもあれば、エンドラインに行ったバトラーからアデバヨへの合わせもあるヒートに対して、基本的にはスイッチ誘導のピック&ロールでしかないセルツ。

要はヒートの方が「起点」→「フィニッシュ」のパターンが定石になっており、オートマティックに出て来るだけでなく、複数のパターンがあります。セルツはそれこそテイタムが「ポストアップするのか」「アイソするのか」「ピック&ロールするのか」というところからアドリブ要素が強く、個人の仕掛けに頼っています。

なので順当にヒートがリードする序盤。ただ、これが決定的に試合を決める要素かっていうとそうではなく、アリーザが3Pエアボールするし、バトラーはマンマークが甘くスマートやテイタムにあっさりと決められるし。

それ以上に今シーズンのヒートに感じている課題は、試合が進むにつれてトーンダウンする事。これ時代は昨シーズン同様なのだけど、オートマティックな仕掛けに対応された後になす術がないというか、序盤にパターンを使いすぎて終盤は中途半端な個人技で窮屈になる印象です。これがプレーオフになると迷いなくバトラーやヒーローが仕掛けたから窮屈にならなかったけど、今シーズンも再現できるのかは知らん。

個人技が酷いセルツですが、ぶっちゃけそれでも戦力は豪華だし、ケンバがちゃんとすれば3人アタックになるから、実はそんなに問題ありません。なお、本日はブラウンが欠場。

またトレードデッドラインで個人技に振り切った形になりました。それはスクリナーになりつつキックアウト3Pを狙うタイスから、ロバートやトリスタンによってシュートミスをオフェンスリバウンドで救う事を目指した変更であり、ネスミスやラングフォードといった運動能力の高い選手でカバーしていく形です。

要はプルアップ3Pも多く、割と自由にシュートチョイスするテイタムってこともあって、全体が連動していくことよりも、リバウンドやルーズボールなどが多く発生しても強みを発揮できるような変更だと捉えています。より自由に振舞っていいぜ。

実際にはそんな絵にかいた変化はなく、ただペイント内失点が減ってエースの3Pによる爆発力勝負に持ち込めているくらいです。しかし、ヒートディフェンスはそんな簡単に3P打たせてくれないぜ。

ブラウンがいないこともあってテイタム頼みになってしまうし、それはディフェンスだって対処がわかりやすいし。5人が豪華だったセルツと主役とわき役がハッキリしているセルツでは目指すべき姿は違うはずなんだよね。

かといってケンバはドライブしてもボールを弾かれてしまい、インサイドに入り込むことが出来ません。テイタムもポストアップするとダブルチームを食らうからインサイドを攻めこむことは出来ないし。

そんなこんなで気が付いたら16点差になっていました。まぁそりゃそうだ。窮屈なオフェンスを展開するセルツは「テイタムにボールを渡す」までが1つの仕組みで、そこからはアドリブ。そのアドリブを封じ込められたらフィニッシュは苦しすぎます。

セルツはディフェンスも後手後手でヒートはやりたい放題です。カッティングに全く対応できず、イグダラやアリーザもポストアップしてくるヒートオフェンスに有効な守り方を見つけられていない感じ。逆にヒートはマッチアップを考えて複数の選手がポストアップするのね。そもそもポストアップの回数はリーグで25位とかなので、最近の変化かな。パスするからカウントされていないだけかな。

ヒートが次々と3P決め、ラッシュで点差が付くのならともかく、徐々に、ひたすら徐々に、両チームの実力差を示すかのように地味に広がっていき、2Q残り5分で20点差。

セルツが苦しんでいるというか、安定感を発揮できない理由の1つが、単に個人技中心というだけでなく、「困ったときに組み立てるオフェンス」がないこと。アイソしかないけど、それが通じてないから困っているわけでして。
ヒートがラッシュしているわけではないので、セルツもスローダウンして組み立てれば良かったのですが、それにあまり意味がない。だから流れのまま進むしかないような。

最大26点差まで広がった前半。ヒートの一方的な展開になりました。シーズン終盤になって完成度の差が酷かった。それしか言いようがない前半でした。ヒートのFG成功率は65%と高かったのですが、3Pが決まったこと以上にカッティングからのイージーシュートだらけだったので、セルツディフェンスの問題って感じです。

◎セルツの修正

散々な前半だったので当然ハーフタイムにはいろいろ言われたことでしょう。後半になるとケンバとスマートが果敢にゴール下にアタックしていきます。前半は中途半端に良いプレーをしようとしていた気もするので、スピードでしっかりと攻略しろ、って感じです。まぁスマートは止められるわ、チャージングするわで厳しかったけど。

同時にトランジションアタックも志しているようでした。26点差あるので当然ですが、それだけでなくハーフコートでやりあったら勝ち目がないので、少しでも早い展開でアドバンテージを得ないと勝機は見えてこない。スターターがロバートではなくトリスタンになっていた事もあり(・・・これは単にケガかな)スピードアップしていきました。

こうしてテイタム頼み感が強かった形から、ケンバとスマートもドライブしたので、アウトサイドでフォーニエが空くことに。ヒートは2Q途中から収縮しすぎるようになっていて、5人全員がインサイドにいるから外が空くことが増えていました。

後半初めの22点にテイタムの得点はなく、セルツはバランスアタックになりました。ちょっとスマートとトリスタンの2人が得点力に課題はあるけど、そこはケンバとフォーニエが点を取りまくれば済むことだ。22点のうちフォーニエが14点、ケンバが6点。元マジックのエースと元ホーネッツのエースなんだからさ。

またディフェンスは明らかに強度があがります。多分、カッティングされまくっていたのを止めるために、マンマークを強めボールを持っている選手へのハンドチェックを厳しくしたのかな。ここで抜けないのがヒートの悪い所でもある。

カッティングされないために体を張ってインサイド側をカバーした事もあり、ダンカンやドラギッチに3Pを食らいはしますが、好き勝手にレイアップされるよりは遥かにマシ。カーセン・エドワーズがはいってくるとスピードでカバー対応していたこともあって、イージーシュートはなくなりました。

しかし、3Q後半になるとバトラーアタックで失点していきます。プレッシャーに来るなら単純に個人が抜けばよい。ペイント内をバトラーだけにするヒートに対して有効な守り方を見つけられませんでした。

3Q終わって105ー84とセルツは反撃したものの、点差は21点。バトラーを抑えきる個人のディフェンス力があればもう少し縮められたでしょうが、ブラウンもいないし、テイタムが相手してもダメでした。

ヒートからするとチームオフェンスは良くても、マンマーク強めになったときにしっかりと突破できるかどうかが試されたような3Qでもありました。ヒーローが出てくるのが残り1分くらいと遅く、スポルストラがチームオフェンス重視しているのは確かですが、上手く局地戦に持っていく形に変更できていたのだから、狙い通りのバトラーアタックだったのでしょう。

◎割り切りセルツ

イグダラ起点からスクリーンを使ってカットしてきたドラギッチにパスが出て、ドラギッチはそこからデッドモンへのアリウープを通します。鮮やかにしてサインプレー決めてきた。

そういえば「ヒートは何でデッドモン取ったんだ?」と思っていましたが、見違えるように頑張っているね。キングスファンがみたら怒るレベルのプレーをしているぜ。なんでこうなったのかわかりませんが、昔はスパーズにいたわけだし、いわれればハードワークなインサイドファイトするのかな。

しかし、スタートこそ良かったものの、バトラー、ヒーローとアウトサイドシュートが決まらず。一方でセルツはケンバ、カーセン、プリチャード、ネスミスと並べたスーパースモールな形で3P攻勢に出ます。スピードで振り回す形ですが、実はこの方がブラッド・スティーブンスらしいよね。

セルツはもう割り切っているので3P打ってハリーバック。ヒートはミスマッチ使ってバトラーのポストアップ。

・・・ところでさ、この試合のバトラーは40分もプレーしています。前半が26点差、3Q終わった時点でも21点差なのにだよ。順位争いしている直接のライバルだから手を抜く余裕はなかったといえばそれまでですが、このパターンになったときに個人技をバトラーにしか託せなかったとも捉えられます。

実際、15点差でバトラーがベンチに下がると、ヒーローがワイドオープンのミドルを外し、ドライブジャンプシュートもミス。で、バトラーが戻ります。お早いお帰りで。アデバヨはスピンからダンクを決めますが、セルツはフォーニエが3P、ケンバのドライブ、テイタムの速攻で残り6分には10点差になっていました。

セルツとしては、安定感はないので爆発力に勝機を見出すわけですが、3Qになって全員が果敢にアタックするようになり、4Qになって3P連打しながらスピード勝負に持ち込んで成功したことになります。点差が縮まったのは4Qだけど、大事だったのは「誰もが強気に打っていく」ってことでしょうね。

そもそも豪華メンバーなわけで、テイタムばかりにやらせている方がおかしい。ケンバが頼りない問題がつきまとっている今シーズンですが、急激に復調してきたのかな。でも前半はどうしようもなく、追い込まれた後半から力を発揮したって感じだしな。

そのケンバが強引にドライブレイアップを決めて7点差。一気にセルツペースになったところでテイタムのアイソにすると、アデバヨにダブルチームを仕掛けられ、苦し紛れのパスはアリーザがスティールします。セルツが攻めたいポイントは、ヒートが狙っているポイントでもあるわけだ。

それでもバトラーアタックを守り切ると、フォーニエがコーナー3Pをヒット。しかし、ダンカンに3Pくらい、アデバヨにはオフェンスリバウンドをねじ込まれて、残り2分で再び11点差。

即座に3Pを返すテイタム。ミドルを返すアデバヨ。テイタムはキックアウトからケンバの3Pをアシスト。なんか急激に去年のカンファレンスファイナルみたいになってきた。バトラー&アデバヨのヒートと、全員アタックのセルツ。

残り1分、バトラーがバンクショットをねじ込んで9点差。テイタムのステップバック3Pが外れたところでゲームオーバーでしたが、4Q開始時点が21点差だったことを考えると、よくぞカムバックしたセルツでした。

◎エースを信じる

シーズンも終盤を迎え、完成形をもってきたヒートに対して、未だに迷いのあるセルツという試合でした。アリーザが35分もプレーしているとか信じられませんが、ベストなバランスはこれってことか。

見事な連動を見せるチームオフェンスに、ディフェンスの状況を見てバトラーとアデバヨが個人アタックで加点するのは理想的な形です。オラディポはどうしてんだっていう疑問はありますが、形としてはわかりやすい。もう少しアデバヨがドライブしたほうが良いとは思うぞ。

しかし問題はバトラーのプレータイム。終盤に個人技勝負させたいなら、そこまでの負担は減らした方がよいぞ。プレーメイクから何からやらせておいて、終盤もエースが決めろってのは無茶だ。

バトラーは昨シーズンも終盤に弱かったのですが、プレーオフになると気持ちが乗ってきて終盤まで持ちました。そんなエースを信じるって事なのかな。ということで完成形にはなってきたけど、盤石ってわけではありません。

ドラギッチは働くでしょうが、デッドモンを新たに加えている事と言い、イグダラやヒーローの役割が単なるサブっていうならプレーオフで勝ち切るのは厳しそう。ベンチも含めた柔軟で多彩さこそが持ち味なはず。組み合わせを変えて違うパターンに持ち込めないと、シクサーズやバックスに止められてしまいそうです。ニックスにも。

セルツは「テイタム&ブラウンを信じる」方向性だと思っているのですが、本日の内容は皮肉なことに、ケンバやフォーニエにも積極的にアタックさせた方が成功しそうということを示していました。

でも、実際そうすべきだよね。まだ有能なロールプレイヤーを揃えきれていない事もあり、後半の形の方が良いに決まっているじゃん。みんなが積極的にアタックしていこうぜ。そして時に失敗もあるだろうけど、リズムを得た瞬間の爆発力を信じて戦うしかないじゃん。

エース(テイタム)を信じるのはもちろんだけど、マジックとホーネッツの前エースのことだって信じて突き進むべきっていうことでした。違う意味でエースを信じろだな。

バトラー&アデバヨ中心にどうしていくかが考えられているヒートと、個人アタックできる選手を揃えているセルティックス。随分と違いが出ているのでした。

セルティックスvsヒート” への2件のフィードバック

  1. 組み合わせを変えて違うパターンに持ち込めないと、シクサーズやバックスに止められてしまいそうです。ニックスにも。
    →ニックスファンです。
    未だティポドーのアジャスト力に懐疑的で、、ニックスのオフェンスにも同様のことを感じています。
    ホークスなのかヒートなのか、相手によるので一概には言えませんが、ニックスがプレイオフ初戦突破できる見込みはどの程度あると思いますか?

    1. まさにアジャスト力でファーストラウンド突破は難しい気がしていましたが、このままだとホークス相手なのでアジャストしなくても行けそうな。

      ハードなディフェンスが持ち味ですが、そこはブレないので、チャンスありますね。でもヒート相手だと相性悪く、今シーズン3連敗なんですよね。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA