サンズvsペリカンズ

2020/12/27

共に良いスタートを切れた今シーズン。ペリカンズはイングラムがプレイヤー・オブ・ザ・ウィークです。1敗しているし、他にいなかったのかな~とは思いますが、プレーメイクでも能力を発揮し始めており、得点もアシストもハイアベレージです。

サンズはバブルそのままに好調を維持し、クリス・ポールの活躍がなくても構築出来ているのが印象的でした。あとは接戦をどれだけものにできるのか。それはクリス・ポールの仕事だ。

共にプレーオフを目指すライバル。マブスがイマイチとか、ロケッツがトラブルとか、ナゲッツが守れないとか、いろいろあるので星勘定を考えすぎても仕方ありませんが、似たような立場だけに直接対決で叩いておきたいところです。

◎考え方の違い

試合開始から、オフェンスの考え方の違いがハッキリ出るような形です。インサイドにアダムスとザイオンがいるペリカンズは、どうしてもゴール下には人が多いので、そこまでドライブするのは難しく、ミドルで打ち切る形と、ザイオンによるパワープレーで押し込んでいきます。

一方でインサイドにはエイトンしかいないサンズは、ドライブでゴール下まで侵入し、キックアウトパスが機能します。どっちが良いとかではなく、考え方の違いで、インサイドが薄い方がインサイドアウトを活用し、厚い方がミドルレンジを活用しないといけません。

この形はペリカンズディフェンスがインサイドにフタをしたこともあって、サンズにパスミスが出るとスティール速攻で先手を取ります。ただリードというほどではない。

これがベンチメンバーと交代していくと形が変わっていきます。ザイオン→ハートになったペリカンズはインサイドが広くなり、アダムスの強さで強力に押し込めもすれば、イングラムはドライブでレイアップまで行きます。ビッグが1人になったことでゴール下を制圧していくペリカンズ。

ちなみにアダムス→ザイオンと同時にイングラム→ブレッドソーにしたので、イングラムとザイオンを離して起用することを意図しているかもしれません。この2人のプレーエリアが被るのが問題だったので、調整していくのかな。

一方のサンズはエイトン→サリッチなので、そりゃあ弱くなります。ゴール下の攻防では完敗。代わりに5人がアウトサイドで構えるので、よりドライブが効果的になるはず。アウトサイドでパスを回し、コースを見つけたらドライブ→パスアウトからコーナーで待っていたギャロウェイの3P。

1Q通して自分たちの強みであるゴール下を厚くしていたペリカンズに対して、効果的なドライブフィニッシュは出来なかったものの、その分パスアウトでフリーの3Pを作り、最後はサリッチのブザービーターで逆転したサンズが31-29とリードして終わりました。

◎チーム力の差

キャメロン・ペインがポストアップするザイオンとの1on1になりながら、パスアウトさせ、リバウンドも奪うと、オフェスでは自らプルアップ3P。一時的なものではなく、本当に成長したようなプレーぶり。

サンズはペインが引っ張るセカンドユニットでカム・ジョンソンのオフボールムーブによる崩しもあって、しっかりとアドバンテージを得られるのが良い部分。一方でペリカンズはイングラムがいないと急激に苦しくなるのが課題でした。そのため起用する選手を絞ることにし、ハート、レディック、メリの3人だけがベンチから登場します。8人ローテ。

しかし、ザイオンが1人で踏ん張ります。エイトンとの1on1に持ち込んで、スピードで振り回して、ブロックをかわしながらのレイアップを連発。なお、クリス・ポールには止められたので、スピードが通用しない小さい選手が嫌いなのかも。

そのザイオンを下げると、アダムスじゃなくてヘイズを起用してきます。もちろん、イングラムも出てきます。
早速プレーに迷うヘイズ。ピック&ロールに呼ばれたりして、アダムスやザイオンとは全く違うチョイスをさせられているので、そりゃあ迷うよね。本当に奇妙なほどにヘイズが加わっただけで、オフェンスが形にならないペリカンズ。ブレッドソーがボードの後ろからのジャンプシュートを決めて得点的にはなんとかしますが、本当に奇妙。

さらにNAWをコートに送り出すSVG。スターターが戻ってきそうな2Q中盤から若手を起用しています。よくわからんローテ。

オフェンスが全く形にならないペリカンズ。まぁシーズン序盤だから選手を試すのは良いのですが、コートに出しているだけで、NAWもヘイズも迷いまくっているので、役割定義が出来ていない感じです。全員が個人突破しろってことなのかな。

ヘイズはザイオンと同時起用にしてあげれば良さそうなのですが、何故かビッグマン1人+4ガードです。ワンビッグでゴール下の戦いに耐えられる能力は身についていないよね。NAWはロンゾ、イングラム、ハートと一緒だからハンドラーにもならないし・・・

てことでサンズが13点リードにします。サンズが良かったわけではない。ペリカンズのオフェンスが悪かっただけ。NAWのディフェンスは良かったけど、守れたポゼッションにエイトンのオフェンスリバウンドもあってさ。

サンズのローテも面白くて2Q残り5分くらいでブッカー中心、+ベンチメンバーが3人のユニットになります。選手交代を繰り返しながら、混ぜ混ぜユニットにして、いろんな組み合わせにしますが、それでも選手に迷いはなく、ちゃんと機能させます。お互いのローテが変わっているので、スターター同士がぶつからない2Q。残り3分半でブッカー→クリス・ポール。

この時間帯にスターターが戻ってきたので追い上げたかったペリカンズでしたが、カム・ジョンソンやサリッチがオフボールで動いてディフェンスを崩してからのフィニッシュ。そしてペインが難しいドライブレイアップ。クリス・ポールの(嘘くさい)ファールドローで逆に22点差に広げられます。

前回も書きましたが、特に目立つのがカム・ジョンソンが動き回ってディフェンスを動かしてしまう事。それが自分の役割とばかりに違いを作った上で3Pを決めていました。ギャロウェイのコーナー3Pといい、みんな違う役割だけど、自分の仕事を知っている。

ペリカンズを見るのは2試合目ですが、ヒート戦も同じようにローテの隙間から崩れていきました。それで8人ローテに変えたのかと思いきや、2Q中盤からズタズタに。選手の戦術理解が足りないのか、HCの起用法が悪いのか。

そしてこの試合は、困ったところでイングラムに任せたプレーで、あっさり3Pを打って決まらず。これが決まっていれば、違ったのでしょうが、毎試合のようにユニットの悪さで組み立てられず、エース次第ってなったら厳しいよね。

ということで2Qは
ユニット構成で組み立てられなくなったペリカンズ
混ぜこぜユニットでも変わらぬプレーをしたサンズ

そんな明暗がハッキリと別れました。チームとしてはサンズの方が強いですよ。というのがハッキリしてしまった。これが1年という時間の差か。プレーオフを目指してペリカンズは、この差を埋めていかなければいけません。

◎何もしないブッカー

前半はFG1本しか打っていないブッカー。それで成立していたサンズ。さすがに打ちたかったのか、突然のプルアップ3Pを打って外します。「何やってんだ?」というシュートですが、そんなシュートが後半まで出てこないのが今のサンズ。

クリス・ポール、クラウダー、エイトンの3人がトップでプレーメイクしていると思ったら、コーナーのブリッジスがスッとゴール下にカットしてダンク。見事過ぎるプレーで点差が離れていきます。クリス・ポールはザイオンとのアイソにしてプルアップ3Pさ。

そしてクラウダーの苦し紛れのステップバック3Pが決まって32点差。よし。終わりだな。充実していたサンズと、苦しくなるほどに個人技のペリカンズでした。

それぞれのチームについて語りたいところですが、サンズを語るのはとても難しいです。それは「語ってみたい」ものでもあります。今シーズン初めてかな。分析したいチームだ。

ただし分析するには、もう少し時間が経過してもらわないと厳しいです。サンズの良さは「5人の役割定義」ではなく、「10人の役割定義」がされていること。エイトンの役割を出来る選手はベンチにいませんが、全く違うサリッチや、より動き回れるジェイレン・スミスと、タイプの違う選手が違う特徴を出しています。

これがユニットを混ぜこぜにしても機能しているのだから凄いよね。ただし、もちろん機能していない時もあります。その中でカム・ジョンソンとペインを評価しているのは、違うユニット構成であっても自分の特徴を存分に発揮している事。相性が悪いことを苦にしないだけの良さがあるのでした。

そしてブッカーが目立たなかったように「他の選手が特徴を発揮できているならOK」な空気があります。ブッカーはイングラム以上に個人で得点できる良さを持っています。トリアーノ時代から3シーズン、そこにパスアウトも身に着けていきましたが、基本は自分がプレーに参加することで貢献できる選手です。

それが全く輝かずにチームが輝いたペリカンズ戦でした。ブッカーが得点するパターンはドライブしてのフィニッシュや、ストップジャンプシュートですが、分厚いヘルプが用意されているペリカンズ相手だと、少なくともインサイドでのフィニッシュは難しかったと思います。そんな中で何も気にすることなくフィニッシュしなかったブッカー。後半は打ちまくっているけどさ。

まぁ要するにサンズは相手に応じて使える武器から使っていった感じかもね。もっとも、この試合が良すぎただけなので、ほめ過ぎも危険。

一方のペリカンズはイングラムが凄い。得点力ではなくプレーメイク全般に絡んでいく事で、昨シーズン以上の存在感を発揮しています。ホリデーのトレードがイングラムの成長を後押ししたといっても過言ではないでしょう。

が、そのイングラムのターンオーバーが多くなったことで、チームも止まってしまいました。多いって言ってもリーグのトッププレイヤー程は多くないのですが、それくらいイングラムに頼る部分が大きいって事でしょう。

ザイオンの異常なフィニッシュ力も健在。ある意味、この2人が異常に決めることで勝利をもたらしているような戦い方です。でも2人はプレーエリアが被るから、相乗効果はないよ。別にエース2人に相乗効果がないなんて珍しくないので、プレーオフを目指す意味では気にしすぎることはありません。

じゃあなんで苦しいんだろうか。それは試合の中の「ここがポイントだ」というシーンで勝負をかける手段が乏しいからでしょうね。だって、その前からイングラムとザイオンの個人技使っているしさ。

ザイオンは良い意味で昨シーズンよりも個人で得点する手段が増えています。悪い意味でチームメイトがザイオンに決定的なパスを出すシーンが減っています。ちょうど、ここを書いている時にNAWからザイオンへのアリウープが出ましたが、ワンビッグじゃないとなかなか出にくいプレーだ。

ってことで課題は「ロンゾ+ザイオン」によるオフェンスの構築ですかね。もう少しツーメンゲームを取り込みたいし、この2人で崩していき、周囲のロールプレイヤーを絡ませるのも大事さ。

SVGの選手起用には困った部分が多いですが、「迷っている」というのは、トランジションからアタックしまくった昨シーズンにはなかった困り方なので、ポジティブに捉えましょう。まだシーズンは始まったばかりなので。これがシーズン中盤なら大問題だけどね。

そんなわけでモンティ・ウィリアムス2年目体制のサンズの方が、戦術的に大きく上回った試合でした。試合は戦術だけでは決まらないけど、あまりにも大きく出てしまったのでした。

サンズvsペリカンズ” への10件のフィードバック

  1. サンズの迷いのないパス回しとペリカンズの混乱ぶりが対照的でしたね。
    ペリカンズオフェンスが失点につながる危ない終わり方ばかりしてたのが差になったような印象でした。
    走る展開も減ったのでヘイズの長所も消えちゃってて苦しいですね。
    ①イングラム&アダムスと②ロンゾ&ザイオンでパフォーマンスを落とさない戦いが理想ですが、②が全然なので今後の成熟を祈りたいです。

    1. 始まったばかりなので仕方ないですね。ザイオンのプレーは予想外に個人アタックしているので、ポジティブに観ることも出来ます。
      そこからチームにどんな感じで派生させるのか。そこまでパスが上手くはないと思うので、絡ませ方はチームで考えないといけません。

  2. 前回の試合後にSVGは「ベンチの選手が何人プレーをするかが問題ではない。何分プレーするかだ。」と語っていたこともあり、今日も8人ローテで行くのかと思っていたのですが前回以上に起用する選手を増やし、彼らに出場時間を与えていたのには驚きました。
    ペリカンズはまだアイデンティティもないですし、当分は試行錯誤といった状態ですかね。

    1. 今日は終盤にカイラ・スミスが観れたのは良かったです。
      実はタイプ的にはロンゾよりもカイラの方がこのオフェンスには合っていそう。
      今はいろんな選手を試すしかないと思いますが、SVGが開き直れず勝利も求めたいから揺れている感じですね。

  3. アダムスがボールを持った際に困ってしまっていることが印象的でした。素人目に見てですが、イングラムとザイオンだけではなくて、イングラムとアダムスもスペースを潰しあってしまっているようにも感じました。また、サンズのパスアウト時にあまりにもサンズの選手が外側でフリーになっている状況が多く、外を全くカバーできていない印象を多く受けました。サンズが上手く崩していると思いましたが、同時に守る際のルールも整備されていないのかなとも思いました。素人目に見た感想ですが、イングラムとザイオンに期待していただけにイングラムとザイオン以外の部分が上手く整備されていない状況に残念さがあります。まだシーズン始まったばかりなので今後に期待しながら気長に見ていきたいと思います。

    1. アダムスの困るシーンとヘイズの困るシーンは似ていましたね。
      ハイポストあたりでパスを貰った時に、周囲がアクションしないから「あれ?」みたいな。
      ただ、アダムスについては、もっとインサイドでパワープレーを狙うのが基本なので、まだ良いのだけど、ヘイズにそのパターンがないので迷いばかりでした。

      アダムスは起用なので、もっと使い方は豊富ですが、今のところパターンが少ないですね。
      イングラムと絡んでいないのも事実だと思います。

      とはいえ、ワンセンターでもプレーエリア被るとなると、救えないので、そこはイングラムが頑張るしかありません。
      しばらくして上手くいかないなら、違う形に移行するかも。

  4. 実際は攻めかねてただけかもしれないですが、ロンゾに張り付かれて中にアダムスがいるときは全然無理をしなかったブッカーが印象的。
    ペリカンズのセカンドはすぐに解決するのは難しそうな印象でとくにヘイズは見てて苦しい…。

    1. 後半になってブッカーが個人アタックを繰り返したので、どっちだったのか、わかりませんね。
      FG1本でもガマンできるようになったブッカーかな。

  5. サンズはあともう一人ハンドラーが欲しい。ペインに次ぐ若手が欲しいですね。ハリバートンを逃さなければと後悔せずに済めばといいのですが。FA市場からのビックとトレードに期待です

    1. どうですかね。ジャボン・カーターもいるし、ハンドラーが必要なのか、スコアラーが必要なのか、ペネトレイト担当が必要なのか。シーズン考えるとブリッジスの代役の方を補強したほうが良い気もします。
      もう少し時間をかけて、必要な選手を補強するのが王道かな。ビッグを厚くし過ぎていると思います。

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