強すぎたネッツ雑感

開幕2試合にして「強すぎ!」と思わせたネッツ。特に2戦目でセルティックスをぶった切ったのはビックリしました。と同時に、こんなコメントを頂きました。

なんでセルツが後半急にリードを許したのがよく分からなかったのですが、カイリーとKDという1on1最強なチームに、テイタムとブラウンの1on1勝負が単純に負けたということですかね?

うん、なんか、わかります。「ネッツ強~~~」とは思うわけですが、具体的にプレーを見ていると「なんでだろ」とも思うわけです。上のコメントの答え半分は、セルティックスもツービッグを続けたりして、やけに個人技アタックだったことで、ネッツが守りやすかったのもあります。

開幕2試合なので、まだまだ偶然の要素もあるのですが、それを抜きにしても強いと思わせたネッツのポイントを書いていきましょう。そして、どんな対策をするのかも考えたいですね。

◎強すぎるセカンドユニット

ラベート、プリンス、アレンと昨シーズンのスターターが並ぶセカンドユニットは豪華すぎました。ここにジェフ・グリーンとシャメットが加わりますが、PGやらされているシャメットはイマイチで、ディンウィディが加わった方が強くなります。

ただスタッツ的には彼らはそこまで稼いでいません。「強すぎるセカンドユニット」だけど「強いユニット」かと言われればそうでもない。相手のスターターユニットと対峙したら圧倒はしないよね。

そのため混ぜこぜのローテをしてくるセルツが相手だと、そこまで目立つことはないわけです。これはヤニス+ベンチメンバーにしてくるバックスあたりと対戦した時に検証したい要素ですね。

試合トータルで見た時に、強いセカンドユニットに多くのプレータイムが振り分けられることで、スターターはスタミナ的に楽になります。相手からすると常時フルパワーをぶつけなければいけないのは、試合後半に響いてきますね。

また、このセカンドユニットの嫌らしさは、スペーシングがしっかりした形で始まり、ラベートの突破からパスアウト、インサイド合わせと連携に優れ、スクリーンも複数用意されるアトキンソンな匂いが残っていること。嫌らしいくらいにチームオフェンスになっています。普通はセカンドユニットでこのレベルにはならないよ。

対してスターターの連携はそんなに。っていうかコメントにあった通りで「カイリーとKDという1on1最強なチーム」に見えるほどなわけです。

1on1ベースのスターター
チームの連携に優れたセカンドユニット

そんな両者の戦術的対比があるのは、相手からすると極めてやりにくく、逐一対応を変えていかなければいけません。「戦術のツープラトンが厄介」というのはスパーズに期待していた事なんだけど、ネッツというかダントーニ・サンズがやるとは思わないじゃん。ダントーニなんてダブルPGを生み出したHCなんだし。

ナッシュがどこまで意図しているのかはわかりませんが、いずれにしてもネッツのセカンドユニットは単に強いのではなく、物凄く厄介なのです。それも効いてくるのは

個人技 → チーム の順番よりも チーム → 個人技 の順番だと思うので、セカンドユニット後の個人技がどれだけ有効に作用しているかに注目したいです。なお、クリスマスゲームは眠くて集中力欠いてみていたので、そんなことまでは確認していません。眠くなくても同じかな。何試合か見ないとね。

◎ディフェンスが良い

ある程度は想像できたオフェンスと違い、謎なのがディフェンス。ディフェンスの良いチームになっているんだ。なんで?

この点についてセカンドユニットはわかる。相手のセカンドユニット相手にラベート、プリンス、アレン、グリーンだったら、止めて当然かもしれません。シャメットだって相手がスタークラスじゃなければ個人で守れるし。

ただ、この中でラベートに関しては「負けられない意地」みたいなものを感じていて、セカンドユニットを引っ張るオフェンスはもちろん、シックスマンとして試合終盤にキラーディフェンダーとしても活躍するために、誰よりも必死になって守っている強い意志みたいなものを感じます。

ナッシュもカリーを止めたいときにラベートを起用してきたし、おそらくラベートはこの状況でもレベルアップできるマインドをもった選手なのでしょう。一歩でも引いたら自分の価値がなくなるもんね。

守れるセカンドユニット
キラーディフェンダーになるラベート

ここまではまぁ理解できる。単なる豪華戦力って事だしね。

ところがスターターの方もラベートのように必死に守っている印象です。チームとして優れているという前に、個人個人がファイトしている。まぁジョー・ハリスは前からだし、カイリーも最近は個人マッチアップは守るし、デュラントとジョーダンには強い意識は感じないから、たまたまな気もしますが。

攻守に酷かったウォリアーズと、バランス悪めのユニットで個人技アタックしていたセルツしか相手にしていないので、本当にチームディフェンスが出来るのかは眉唾です。ジョーダンが引き出された時、同じように守れるとも思えませんが、個人マッチアップで後れを取らなければいいわけだし。

ディフェンスはわからん。でも、とりあえず守れていたから強かった開幕2試合でした。

◎忘れていたデュラント

欠場が長くなると忘れる事ってあるよね。いわゆる「常識」の中で考えてしまうわけですが、「デュラントとカイリーは合わない」ように思うわけで、それによって結論は「そこまで機能しないチームオフェンス」になるわけです。

が、違ったよ。
うん、違ったよ。
そうだよ、違うんだよ。
デュラントだけは、違うんだよ。

効率的なチームオフェンス?
デュラントが打てば、それが効率的だろ。

もう、ただそれだけです。タフショット打ちまくり。ミドル打ちまくり。でも関係ないぜ。それが決まるからこそのデュラントだ。

※別途、デュラントのみで特集記事を書いています。

欠場期間に「常識」でデュラントの事を考えていましたが、復帰して「異質」な選手である事を毎回のように思い出さされます。現代オフェンスのセオリー無視してるのに効率的という異次元なオフェンスマシーン。

◎効率の個人技

一方でカイリーは、デュラントの恩恵もあって、3Pはオープンショットが中心でした。ネッツのスターターはとにかく広くスペーシングし、ジョーダン以外はアウトサイドに広がっているため、個人で仕掛けるのが容易に出来ます。そのうえでデュラントが変態なので、みんなデュラントを追いかけないといけません。そりゃあ他の選手はフリーにもなるよね。

しかもジョー・ハリスがいます。確率ならばデュラント&カイリーを上回る効率の鬼なので、ネッツのスターターは

1人のPG
1人のビッグ
3人の高確率シューター

こんな構成になっています。ただし、これって見た目には効率的に見えて、実際にはダメなユニットです。シューター並べて成功しているチームがないように、

フリーにするためのシステム(スクリナー)
チーム全体でのパッシング
オフボールでの合わせ

こんなものが必要です。ディンウィディは基本は自分で打つ選択となり、そこにパスを混ぜるタイプのPG。ジョーダンは高さの脅威は超一流だけど、気の利いたプレーはしてくれない。ジョー・ハリスは個人では突破しない。

だから、ネッツのスターターが効果的に得点を奪えているのは「常識的には考えにくい」現象だといえます。っていうか2試合だから偶然って事だ。

そんな常識すらも破壊してしまうほど、デュラントとカイリーが個人技で決めてしまうのがネッツ。っていうかデュラント。セオリーを無視する異次元の存在なんだよね。デュラントに関してはミドルを打っても何の問題もないもんな。

なんでセルツが後半急にリードを許したのがよく分からなかったのですが、カイリーとKDという1on1最強なチームに、テイタムとブラウンの1on1勝負が単純に負けたということですかね?

つまり、このコメントは「やられている気がしなかったけど、メチャクチャにやられていた」というセルティックスファンの理解しがたい感想があったわけです。普通は大量失点するのは「ディフェンスが崩されていた」時なのに、

崩さなくても得点してしまうネッツのスターター

ってことだ。異常なフィニッシュ力なので、あれよあれよとシュートを決めてしまう。ちゃんと守っていたはずなのに・・・。その能力でブラウン&テイタムが上回るのは難しいよ。

そんなわけで「ネッツ強い!」なのですが、スターターに関してはセオリーがある強さではなく、個人のフィニッシュ力に頼った形なのでした。でも、それはとーーーってもダントーニ・サンズっぽいよね。

スターターはHCナッシュがやりたいことが詰まっている気がします。連携の良さを感じるシーンは少ないけど、誰もがチームメイトを邪魔しないので、それぞれが自分のプレーを表現しやすい形を作っているのだと思います。

◎対策はどうしようか

さて、イーストの各チームは本格的にネッツ対策を考えていく必要があります。あるいはファンはネッツが失速するストーリーを考えてみたくなります。ハーデンとのトレードが実現していれば、失速は考えやすかったのですが、開幕から好調を維持してしまうとトレードの可能性はグッと下がるよね。

最も怖いのはデュラントのケガですが、セカンドユニットの強さがプレータイムを減らしてくれる上に、スペーシングオフェンスで密集地帯に飛び込むことも少ないので、休養を挟みながら戦うシーズンにおいて、このレベルでプレーし続けることは十分に考えられます。

そんなケガの要素以外で考えてみましょう。

①セカンドユニットの弱体化

アトキンソンの匂いが残るセカンドユニットですが、「いつまでも匂いは残らない」可能性があります。ラベートの個人突破やアレンとの連携は消えないでしょうが、細かいポジショニングやオフボールでのスクリーンは消えていく可能性があります。皮肉なことにシャメットやジェフ・グリーンがフィットするほどに消えていきそうなわけです。

もしもシャメットがスターターに、ジョー・ハリスがセカンドユニットになったら「匂いを消したくない」とナッシュが考えていることになるので、ユニット構成は1つの注目点です。

昨シーズンのバブルではベテラン陣がいなくなったことで急激にアトキンソンに戻りましたが、ACジャック・ボーンは残っているので、ナッシュが違う戦術を行うセカンドユニットを残したいと考えれば残せます。

ここは時間だけが答えを知っています。開幕時に強かったけど、シーズン中盤に怪しくなってきたら、HCの問題って事になりそうです。

②デュラントを止めろ

デュラントについてはザ・スーパー・個人技なので、本人が健康な限りは延々と続きます。なんせ大ケガでシーズンを棒に振り、1年半ぶりの試合ですらこのパフォーマンスなので、本人が失速することを他のチームが望んではいけません。

普通は「起点を抑える」だったり「ダブルチーム」のような形で機能性を失わせることが出来ます。仮にデュラントを止められなくても、チームが機能しなければOKという止め方です。

レブロンを止めるとか、レナードを止めるとか、ヤニスを止めるとか、各チームにいるエース格をどうするかは必ず準備する事なので、その延長線上で考えたいところです。

しかし、デュラントはそれを許さないから史上最高のオフェンスマシーンと呼びたくなります。とにかくデュラントは「シュートを打てれば効率的」な選手なので、プレッシャーかけてても関係ないし、パスを封じても関係ないし。

デュラントキラーといえばジェイレン・ブラウンでしたが、その守り方は密着して「ターンすら許さない」形だったり、ポジション取りの時点で外へ押し出していく守り方でした。セルツには切り札があるのは事実ですが、タイスとトリスタン並べたら使えませんでした。開幕直後だしね。

また、かつてのロケッツは自分たちのオールスイッチディフェンスに自信をもって臨んだプレーオフにおいて「デュラントだけはムリ」とばかりに、アリーザのみチームディフェンスを捨てさせて、密着デートさせました。ディフェンス戦術すらを変えてでも「ボールに触らせるな」を目指したのです。

イーストの各チームはこれをやるしかありません。出来そうなのはヒート(ハークレス)、ラプターズ(アヌノビー)、ペイサーズ(ウォーレン)、バックス(クレイグ)あたりかな。ここにセルツも加わるから、デュラント対策は全チームが協力して組み立てることになるのかも。

そのうえでカイリーを止めましょう。カイリーの場合は半分は祈りましょう。決まらない時は決まらない。決まる時は止まらない。ヒートにはブラッドリー、バックスにはホリデーもいるね。ペイサーズもオラディポ次第かな。セルツは知らん。

いずれにしてもフィニッシュ力の高いチームなので「ボールを奪えるディフェンス」が重要になります。イーストは意外とそういう個人ディフェンダーを並べたチームがあるので期待したいところですが、そんな時に柔軟なラインナップを敷けないと、自分たちのバランスを崩すことになります。バックスは大丈夫かなぁ。

③ディフェンス力は続くのか?

答えは「わからない」です。現時点では個人で強引に守れている気もするし。ただ開幕直後で各チームがオフェンス優位なのに、守れているってのはストロングポイントだよね。

開幕直後の良いところは「フルパワーで立ち向かえる」ってことです。しかもプレータイムシェアしまくっているネッツなので元気だよね。

元気だから守れているのか。
強化しているから守れているのか。

まだ、どちらなのかわかりません。次の試合もホーネッツなので守れてしまう可能性が高いですが、ラメロのパスに対して、どこまでカバー仕切れるのかは1つの注目点になるかもしれません。観ないけどね。

◎強いよね

現時点で書けるのはこんなところです。2チームしか相手にしていないなら、わからないことも多い。ただ強いのは事実だし、対策としてはとにかくデュラントを何とかするしかありません。でもそれは(少なくともケガ以前は)NBAで最も難しいミッションでした。

プレーオフまでは長い。ネッツ自身も変化していくでしょう。まだ開幕したばかりで、ネッツの情報が足りず、対策が進んでいないのも事実ならば、全員が元気なのも事実。ネッツ以外も休みが長かったチームが充実しているし、どうなっていくのか。

ただプレーオフになり、接戦になればなるほど「デュラントをどうするのか」が一番重要になってくる気がします。

NBAの中心に史上最高のオフェンスマシーンが帰ってきた

ネッツは強かった。とっても強かった。だけど、デュラントの強烈すぎる印象ばかりが頭に残っているのでした。

強すぎたネッツ雑感” への6件のフィードバック

  1. ディンウィディーがスターターの意図がまだ見えないのが気になります。
    相手のディフェンスが二人のエースを止めても攻め手を保持したいのかなと。対策が進んだらどうなるか見てみたいです。

    1. ナッシュなので「選手の格」で決めているかもしれません。それは、ありがちです。

      ディンウィディがコントロールしている時は良いのですが、ボール持たなくなったら「決まらないシューター」ですからね。
      シューティング優先ならシャメットですが、そうなるとゲーム作れる選手がいないし・・・っていうアービング問題かな。

      ここにイグダラとか連れてきたら、バチっとハマりそうなのですが、そのタイプはいません。
      意外とブルースをPGにして、ディンウィディをベンチから使った方が効果的かな。

  2. 別にプレーメーカーがいなくたって、どんなマークがきても、高さと長さとありえない精度で決めてしまうKDですが、チームとしたら誰に標準を合わせたらいいんですかね?
    KDがいない方がボールが回る、KDが点を取りすぎていない方が強いというウォリアーズ問題がありましたが、チームオフェンスが機能しているならKDがわざわざ個人技をする必要もないし、KDが最後に決めるためにはチームでボールを回す必要もないし。。
    でもカリーとトンプソンが決めるためにはチームオフェンスをしないといけない。そこにKDをうまく当てはめて、怪我以外ではどこにも負けなかったウォリアーズですが、
    ネッツは誰のためのチームオフェンスをすればいいのかこのブログを読んでて分からなくなってきました。

    OKCな時も異常な突破力のあるウエストブルックに合わせて、シュート力のある選手よりも走れて、アスレティックな選手を集めていましたけど、今回の相方がカイリーというのがそれをより難しくする気がします。

    結局自分で決めれるからこの2人はチームオフェンスに依存しなく、それぞれの選手の調子次第なところがありますけど、ディンウィディとラバートとハリスとが活躍できるためのシステムを作るのがいいんですかね?それともディンウィディをセカンドユニットに入れて、スターターはハーデンシステムならぬ、KDとカイリーだけが輝いて、ほかの選手は限られた役割をこなす方にした方がいいんですかね。

    これが解決されず、もし負けが増えてきたら、もう1人自分でなんとかしてしまう選手(ハーデン)を取りに行ってしまいそうな気がします。

    1. その通りの指摘だと思います。
      相手チームからすると厄介極まりない個人技ですが、ネッツ目線で見ると「何を頼りにするのか」って答えがないんですよね。

      個人マッチアップでデュラントを止めるのは難しいミッションですが、達成されてしまうとネッツは手が打てない。
      やっぱり一番大事なのは「ジョー・ハリスに打たせる」形を用意しておくことだと思います。そこに引き付けられれば、デュラントとカイリーにはオープンスペースがあるはず。

      今のところ、打たせる形は用意されていないので、デュラントをスクリナーにするか、カイリーをパスファーストのPGにするか。今度はHCナッシュにとって、難しいミッションです。

  3. KDの強みはウイングスパンとしなやかな手首の動きにあると思います。逆に言えば、同等のウイングスパンを持ち運動能力は彼を凌ぐ選手をマークに付ければ、ルーテインの感覚が狂いミスも発生しやすくなるのでは?
    例えば、単に止めるのを目的とするならば、イーストだとヤニス、アーロン・ゴードン、ウエストだとAD、等をPFではなくSFであるKDのマークに付ければ、密着デートでなくてもおもしろいのでは?
    勿論、そんな選手は少ないし、各チームのデイフェンスバランスもあるでしょうが。

    1. ゴードンやヤニスでどうなるかは観てみたいですね。
      難しいのはインサイド担当にマークさせると、自分達のシステムが崩れることです。そんなことをしても大丈夫なチームじゃないと。
      ってことでバックスは怪しい。

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