ドラフトビッグマンチェック

第3回はビッグマンなのですが、候補者について触れる前に前提を述べておきます。ビッグマンで1位指名に相応しかった選手は近年ではADとタウンズくらいです。「相応しかった」は1位だった選手ではなくて「結果的に1位でも良かったよね」という広い意味での「相応しい」です。比較論ではなく、価値があったかどうか。

ヨキッチやエンビードは実力的には上かもしれないし、アデバヨやサボニスはオールスター選手です。でも、彼らを1位にするのは難しい。それは簡単に言うと

①ビッグマンはディフェンス力が最も重要
②1位指名なんだからオフェンスの中心となれる能力が欲しい

①はビッグマンとしての優先度、②は1位指名に求めたいこと。例えばハーデンやカリーは1位指名されても良いわけですが「ディフェンスは多少アレでもオフェンスの中心だから」といえるけど、ビッグマンの場合は両方が備わっていないとダメ。しかも3Pも決められる万能性がないとダメ

ってことで、やっぱりさ。1位指名には夢を求めてしまうよね。もちろんオデンみたいに結果的にプレーできなくてダメだったとしても仕方がないけど、【夢】くらいはないとダメさ。

今回はゴベアーの名前が頻繁に登場しそうなのですが、ゴベアーってこの対極にいるような選手でマジでディフェンスしかない。そのディフェンスもリムプロテクトしかない。ゴール下専門というアンチ現代っ子なわけですが、ジャズでは「ワンステップの重要性」みたいなものを叩き込まれたので、その専門だけを極めてきました。つまり①の専門家。

DPOYの常連だし、1位指名でも悪くない結果を残していますが、だからといって②が皆無なゴベアーに夢はみないよね。そういうことだ。

◎ジェームズ・ワイズマン

ドラフト1位の最有力候補だったはずが「11位でスパーズ」なんて予想まで出てきてしまったワイズマン。でもさ、【夢】はあるよね。もっとも大きな夢があるよね。

まず何より大きい。ウイングスパンが7-6だとか。立っているだけで驚異。にもかかわらずメチャクチャ動ける。トータル能力が優れているのにデカいのがワイズマン。シュート能力も期待できるレベルなので、マジで夢がある。

運営がバカみたいに儲けているけど、選手は一切の報酬禁止・海外でプロもダメなNCAAの金銭問題に抵触した懸念から、早々に大学を抜け出したワイズマン。「1年間のブランクがマイナス」と思われていそうですが、かつてのMPJがケガで順位を落としたのとは意味が違うので、そこを懸念する必要はなさそう。

でも、順位を落としている理由は純粋に「1年分の経験値を溜められなかった」ことだと思います。夢はあるんだけど、現実になるまでには、かなりの時間を要しそうなので、指名しても育てないといけません。ところが上位指名を持つチームは「育てる時間なんてないよ」みたいな。

3位ホーネッツ、5位キャブスあたりが育てれば良いのですが、キャブスは他の選手を狙いそうみたい。じゃあホーネッツはというと・・・

◎オヌエカ・オコング

ホーネッツはオコングを選ぶかもしれない。ワイズマンに負けないサイズと身体能力を持つモンスターですが、オフェンス面はシューティングスキルが足りず、ディフェンスでの貢献度が高そうなタイプです。つまり能力的にはワイズマンとタメを貼るけど「夢」は足りないわけだ。

ただ、センターとしての大事な能力で考えるとオコングが1位指名されてもおかしくないわけです。周囲が能力を引き出してあげればワイズマンよりも活躍しそう。チームオフェンスの一部になる能力はオコングの方が高そうです。

ただ、リバウンド後のボールの保持位置やシュートに行くまでの動作が大きいなど、改善すべきポイントも多い。不器用なゴベアーはこれらの動作を小さく、少なくすることでインサイドフィニッシャーとしても活躍出来ています。要するに動きを減らすことで、シンプルなフィニッシュとなりダンクを増やしている。

オコングもそんな部分を徹底して伸ばしていけば、早々に戦力になると思いますが、3位指名だったらゴベアーと同じでは満足しないし、本人も多彩にプレーしたいだろうね。

◎オビ・トッピン

オフェンスハイライトだけみたら「なんでこの選手が1位候補ですらないのか」と思いたくなる選手・・・なんだけど、動きがカクカクしていて不器用に見えるゴベアーみたい。そこで損をしていそう。

オフェンス面は3Pも含めて色んなことが出来、フィニッシュパターンもあるので使い方もいろいろ。ただ、この手の選手にあるあるなのだけど、NBAだとPF(死語)はウイングやコーナーから1on1を制するのが重要ですが、そこまでスピードもないので、センターをやらせるべき。要はディフェンスの良いスモールなウイングを相手にしたら、完封されてしまうかもしれない。

ただ、そうなるとディフェンスでリムプロテクターとして不安が大きく、線も細いのでインサイドファイトも不安。不安・不安・不安。完成度的にはワイズマンやオコングよりも上だし、オフェンスで主役になれるかもしれない。でもビッグマンとしてはねぇ・・・。

そんなわけでオフェンスは問題ないので、ディフェンスを育てる自信があるチームが獲得しましょう。予想はキャブスですが悪夢だな。セルツに行けば正しいディフェンスを育ててもらえるし、オフェンス面はセルツ向きだと思います。

ビッグマンはワイズマン、オコング、トッピンの順位がサイトによってバラバラです。夢のワイズマン、ディフェンスのオコング、オフェンスのトッピンなので、そりゃあチーム事情によって欲しい選手は違うよね。

個人的には「ビッグマンが欲しい」ならオコングを、「スターが欲しい」ならワイズマンかトッピンなんだと思います。成功する可能性でいえばオコングが最も高いけど、夢はワイズマンなんだよね。

さて、この3人が10位くらいまでに指名され、次がちょっと離れそうな予想です。ウイングが甲乙つけがたいし、パトリック・ウィリアムスやヴァッセルみたいに守れそうなウイングが多いことも理由でしょう。スモールで対処できるなら、敢えてビッグマンは取らない。

◎プレシウス・アチウワ

ワイズマンと同じメンフィス大のPFで、ワイズマン以上に走れてスキルを持っているのがアチウワ。このスピードと高さでアタックされたらNBAでも止められない気がします。その割には順位予想は低い。

アチウワはウイングで起用したほうが良さそうです。ドライブスピードがある反面、パワー負けしそうな体なので、インサイドファイトは向いていない。ただしウイングにするにはシューティングは不安みたい。

うーん、素晴らしいポテンシャルを持っているからこそ、もう1年大学でエースキャラとしてフィジカルを磨き、自分でアクションして得点するパターンを増やした方が良かった気がするタイプ。早々に成功するかもしれないし、延々と期待されているだけになるかもしれません。

◎ジェイレン・スミス

ポストムーブを持ちながら3Pも決められるビッグマン。クイックネスで万能な夢があるアチウワに対して、堅実に現実的なスミスって感じ。2年生なので、ちょっとだけ多く経験を積んだことで身についたスキルも多そう。下位予想なのでポストアップを持っていないチームに向いているかもしれません。飛び道具的な。

ルーキーとしては期待できるんだけど、「別にルーキーを育てる必要ないよね」と言われてしまいそう。より可能性を感じさせるためにはポストからのパスを身に着けよう。

◎アレクセイ・ポクスビスキ

インサイドでパスを出せるプレーメイカーを求めるならセルビアのビッグマンだよね。ってことで読み方の分からないセルビア人7フッターが登場です。

いやー、上手い。超上手い。上手いっていうかイマジネーションがある。

が、細い。まぁ細い。あぁ細い。

うーん、ビッグマンとしては苦しいけど魅力のある選手です。ガードやらせた方が面白いかもね。セカンドガードとしてシューター役を中心にサイズとスキルを生かしたプレーをして欲しい。どれだけワガママな注文だよってことで、活躍しそうなんだけどポジションが難しいからフィットするチームじゃないといけません。難しいわ。

どっちにしてもビルドアップしましょう。1年間Gリーグでフィジカルアップとアメリカバスケに慣れてからデビューして欲しい。サマーリーグとかあれば、いろいろと経験を積めたのにね。「夢」はあるけど「現実」があまりにも遠いタイプでした。

◎アイザイア・スチュワート

アメリカなビッグマンならこちら。総合力の高さが光り、爆発力が足りない空気はあります。フェイバーズに例えられていますが、ゴベアーの様に圧倒する要素を持たないけど、コートにいると大きな違いを地味に作ってくれそう。全部出来るけど、器用貧乏な。

ピック&ロールを中心としたツーメンゲームを取り込むチーム向き。ディフェンスが向上して、的確にコースに入れる様になれば一気に頭角を現すかも。みんなNBAのコールと忖度に悩まされるので、そこを乗り越えてリスペクトを獲得できるのかどうか。

PFもセンターも行けそうですが、本格派を相手にするのは不安。使い勝手を求めるチームにどうぞ。

そんな感じでビッグマンもおしまい。あとはドラフトを待つだけです。ほぼ全員が一長一短だったので、各チームを悩ませまくっています。ビッグマンはちょっと難しそうなので、やっぱりウイングが豊作っていうイメージです。結果は来年にならないと分かりませんが。

そして指名順位が揺れまくっているので、当日のトレードも発生するのでしょう。欲しい選手は誰なのか。チーム事情によってあまりにも違う結果が生まれそうです。

ドラフトビッグマンチェック” への4件のフィードバック

  1. いつも楽しく見させてもらってます
    自分の贔屓のMIAは記事に出てたジェイレンスミスにインタビューしたりアリゾナのナジをワークアウトに呼んだりしててレナードが戻って来ないと予想してジャンプシュートの上手いビックマンをアデバヨの相方として欲しがってるのかと参考になりました
    指名順位的にスミスが取れるかは微妙なのですが

    1. そこってべインズとか狙えばよい気がしているので、ドラフトなのかFAなのかも悩みどころですね。
      ファイナルまで行ったので、即戦力を求める気がしています。ジェイレン・スミスはレナードとアデバヨの両方をこなせるか試されたのでは。

  2. お疲れ様です。
    出遅れてしまいましたが、全てのドラフトチェック記事読ませていただきました。
    まとめ助かりました。
    全ポジションのハイライト見た上で思ったのは、トッピンとんでもねーな、だったのですが、仰られている通り、サイズがネックになりそうですよね。
    贔屓のチームがドラフトを軽視する傾向があったので、例年ドラフトはスルー気味だったのですが、このブログで贔屓のチーム以外の状況もある程度把握できるようになるとドラフトも楽しいですね。
    DALが贔屓なのですが、指名権トレードするのかなあ?指名権トレードも勿論、理解できるのですが、個人的には粒ぞろいのウイングから指名して欲しいなと思ってます。

    1. マブスはハンドラーが充実しているので、ウイングは狙うかもしれません。「これ」と決めた選手に集中する傾向があるので、そういう選手がいないとスルーですね。残りはカーライルが無名の選手を何とかしてくれる、みたいな補強。

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