プレーオフ ヒートvsペイサーズ③

ヒート2-0ペイサーズで迎えるゲーム3

アウェイで2連勝してホームへ戻ってきたヒート。というのが通常のシーズンですが、良くも悪くもバブルなので、ゲーム3を制すると1勝2敗だからなんてことはない。

しかし、実際には2試合でペイサーズは追い込まれていました。結果以上に「勝てる気がしない」内容になっており、自分たちの全てを出しても上手くいかない状況で、何かを変えないといけなくなっていました。

最大の問題はオフェンスが個人技頼みだけど、その個人技がほぼ全く通用していない事。これがどこも通用しない上に、細かくマッチアップを変えてくるスポルストラによって、特定のパターンで攻略するのも簡単ではありませんでした。

加えて、やはりアデバヨの意味は大きく、スイッチさせてすら1on1が通用しない問題。「サボニスがいれば」とよく書きますが、コンビプレーなら攻略の糸口もありそうなのですが、そんなプレーが出来ないし、ちゃんと「出来ない事を知っている」ペイサーズでもあります。

そのため、ゲーム3では戦い方を大きく変えることになりました。オフェンスをなんとかしないといけない。

でも、そもそもペイサーズはディフェンスのチームなのだから「オフェンスじゃなくて得意のディフェンスから勝機を見出そう」という発想もあるわけです。

それがゲーム2で「プレーを読んでいて抑える予定だった」ダンカン・ロビンソンの3Pに沈んだこともあって、ディフェンスのみで勝機を見出すのはムリと悟った感じです。なお、ディフェンス「のみ」がムリだからオフェンスのためにゲームを変えましたが、ディフェンスを捨てたわけではありません。

まずはなんでディフェンスから勝機を見いだせないのか。ゲーム序盤のディテールから考えてみましょう。

◎ディフェンダー・オラディポ

ゲーム2と同様にダンカン・ロビンソンの3Pという最も気になるプレーが決まって始まるのですが、ペイサーズはスターターをアーロン→ジャスティンとホリデーチェンジによって、ディフェンスを強めています。

ところが強めたはずなのにクラウダー、ドラギッチ、ドラギッチと3Pが決まり、バトラーとアデバヨにはインサイドで押し込まれ、オラディポは早々にターンオーバー連発でヒートの8点リードになってペイサーズがタイムアウト。

つまりダンカンを抑えに行ったら、他の選手に打たれてしまいました。決まったのはヒートを誉めるしかないけど、あまりにもスムーズにオフェンスを回されてしまいました。

さて、ゲーム2は観ていませんがダンカンのハイライトを見る限り、マークがオラディポでした。優秀なエースキラーとして信頼されるオラディポですが、それだけでなくガードながらヘルプポジションをとるのが上手く、自分のマークを捨てる判断の出来る選手です。

それはポジティブですが、シューター相手となると話が変わります。空けてはいけないダンカンが空いてしまうのは、その前のドライブに対してヘルプポジションい動くオラディポが引っ張られているから。

そしてこのゲーム3はドラギッチのマークで始めたオラディポが、アデバヨやバトラーがボールを持つとヘルプの意思を見せたことで、ドラギッチが2本の3Pを決める形でした。ということは、

ヒートはオラディポを狙っているのかな?

タイムアウトでマーク変更したペイサーズ。オラディポはクラウダーに変更。これでいったんは回復したディフェンス。

・・・間を飛ばしまして、2Q中盤から何故か、再びオラディポがダンカンのマークになって3Pを決められるし、フェイクに飛び込んでフリースロー。そして3Pを優先して守るから、アデバヨがハンドオフとみせかけてのバックドアパスでイージーバスケのダンカンになりました。

ディフェンダーのオラディポが逆手に取られまくっているのでした。そしてこれだけ続くって事は、ヒート的には狙っているのでしょう。

ウォーレンの対人力、ターナーのブロック力など総じてペイサーズのディフェンスは高く、ヒートは楽に得点できているわけではありません。ゲーム2では17のターンオーバーを喫しているし、2P18/41とドライブ等での得点効率も悪いのです。

しかし、ドライブに対して全体が動いてくることを理解しており、そこから生まれるフリーを確実に利用してきました。ゲーム2は27アシスト、3P18/35とダンカンを除いても決めきっています。

つまりはペイサーズとしては、自分たちのディフェンスが効いていないわけではないけど、ヒートは明確に分析して攻略して生きているわけです。

「もう一度、自分たちのディフェンスを気合を入れて実行するんだ」だけでは勝てない気がした

ことは事実でしょうし、少なからずオフェンスで打ち方ないといけないのでした。

◎改善を図るオフェンス

2連敗と結果としても苦しいけど、それ以上に内容も苦しくて、オフェンスの手詰まり感が強いペイサーズ。そのうえで、こうしてディフェンスも読み負けしている感じなので、極めて苦しいのがわかっていました。

そこでオフェンスの改善のためか、トランジションを意識して増やしている様子。オラディポがガンガン打っていくし、何よりブログドンがディフェンスの方が多そうでも強気にアタックしていきます。そんなに成功はしない。

ハーフコートでは手詰まりだからペースアップに勝機を見出した雰囲気なわけです。その考え方自体は悪くなさそうです。

しかし、このペースアップに付き合うヒート。トランジションでスキが増えれば、より正確なプレーをするのはこっちだ!とでも言わんばかりに3Pとバックドアを活用して逆を取るし、何よりもアデバヨの存在感が際立っていきます。

ハーフコートオフェンスではペイサーズの守り方のクセを読んで、3Pを打っていき、トランジションオフェンスではポイントセンターの良さを存分に発揮するヒート。

全く止まらないオフェンス。やりたい放題になっているヒート。特にバトラーが次々にパスを出していきます。それって全体が走り勝ってフリーが増えているという事でもあります。

〇前半のヒート
74点(フランチャイズハイ)
2P11/21
3P11/20

圧倒的だった前半のヒート。オープンコートで狙い通りの3Pを決めて、18点リードとなりました。もうスイープな匂いしかせず、眠たくなってきます。

◎気合で走れ!

後がないペイサーズが採用したペースアップ作戦は前半を18点ビハインドで終える最悪の展開になりました。ちなみに今シーズンのペイサーズは試合のペースがリーグ22位なので、遅い部類に入ります。自分たちの形を崩して、大量ビハインドは大失敗と言えるでしょう。

しかし、後半も同じ形で行きます。負けているからってすぐに辞めたら単なる疲れ損だし、「勝つにはこれしかないんだ」という開き直りがあります。

〇試合のペース
シーズン 99.4

ゲーム1 93.0
ゲーム2 97.5
ゲーム3 105.5

〇速攻の得点
シーズン 12.8

ゲーム1 12
ゲーム2  9
ゲーム3 22

いかにこの試合をトランジションに賭けていたのかがわかるスタッツです。ちなみにヒートはペイサーズよりも遅いチームなので、自分たちの形じゃないけど乗っかったことになります。その結果が大量リードって!

試合開始よりも追い込まれたペイサーズ。オフェンスを何とかしようとして、通用しない中で更にディフェンスプレッシャーも強めることにしました。トランジションで走りまくって、プレッシャーを強めろ!

3Qも積極的に打っていく事でペースを早めるのですが、オラディポが決まらん。しかし、ホリデー長男が簡単ではない3Pを連続で沈めてくれたので、なんとか得点が出来るように。

そして守ってはウォーレンがブリッツ気味にトップ付近へ襲い掛かり、3Qだけで3スティールを記録します。3試合で9スティールなのでウォーレンのディフェンスそのものが効いていないってことはありません。

これでさらに走る意識が高まると、ワンビッグマンとしてインサイドを塞ぐターナーもトランジションに走り、3Qだけで3つのオフェンスリバウンド。アデバヨ相手のブロックも決めていて、ターナー個人のディフェンスが効いていないってことはありません。

これに対してランニングゲームには対応していたヒートですが、クラウダーの3Pは3本全て外れ、ダンカンはファールトラブルでベンチへ。ちょっとずつ狂ってきたヒートの連携。

バトラーは3Qだけで8つのフリースローを打っており、ファイトしまくる相手に負けない姿勢をみせますが、激しく当たってくるペイサーズ相手にFGは1本も決まらず。

本当に「後がない」となったペイサーズが全力でぶつかってくることになった3Qは、34-20と一気に取り返すことに成功しました。

・・・ってペースアップしまくって34点なので、やっぱりオフェンスの方はね。こうでもしないと点が取れないし、とれてもこれくらいだ。だからディフェンスも頑張り続けるっていうペイサーズな3Qでした。気合!

3Qが終わってヒートのリードは4点まで縮まりました。

◎初めに戻る

一気に逆転と行きたいところですが、ハイプレッシャーゲームはペイサーズを蝕んでいるのも事実で、オラディポがファールトラブルとなり、ブログドンも5ファールまで増えてしまいます。

ここからベンチメンバーで立ち向かう必要があるわけですが、あまりベンチを使わないマクミラン。この狙いはちょっとよくわかんなかったので、マクミランらしい序列優先と気合重視みたいな。

この試合はヒートが52本ものフリースローを打ちました。ハイプレッシャーを保ち続けるには、選手交代しないとムリが生じて手を出すしかないって感じでした。

ということで、3Qのようには守れません。それでウォーレンは2スティール記録しているけど。

ブログドンが4QだけでFG5/6、13点と奮闘しますが、オラディポが続けず。一方でヒートもチームをリードしてきたドラギッチがFG0/5と決められず。

ハイペースで戦いながらも得点が伸びない4Qになりました。そのため常に接戦で進み、クラッチ勝負へ。

残り3分からのヒートはプレッシャーディフェンスに対して、タフショットばかりになり、全くシュートを決められず。しかし、ここでアデバヨがオフェンスリバウンドを奪い取り、なんとか得点をあげて4点リードをキープします。

この試合22点のアデバヨですが、4Qだけで11点、6リバウンドと勝負所でオールスターらしさを発揮しました。そして実はターナーよりも5分もプレータイムが短かった。

一方のペイサーズ。勝負所でタイムアウトからウォーレンの勝負を選びます。マッチアップはバトラーですが、しっかりとスイッチさせてvsドラギッチに。確かに一番確率が高そうな相手です。

しかし、ドライブしたウォーレンのコースに入っていくドラギッチ。すかさずスピンを選んだウォーレンですが、そこにはバトラーが。

勝負所のワンプレーで見事なチームディフェンスを見せ、勝負を決めました。そして、このプレーはゲーム1から続く両チームの決定的な違いでもありました。

冒頭のとおりペイサーズもディフェンスが良く、特にウォーレンはダブルチームに行ってのスティールも多くて、個人ディフェンスとしては互角に近いと思います。バトラーと舌戦していたような報道もありましたが、基本的に同じタイプで気が合いそうな2人。

しかし、ヒートはショートドライブからのパスアウトでペイサーズを攻略しまくりました。ペイント内に押し込みきっているというよりは、カバーが来ることを前提にしたパスアウトは、おそらくヒートのゲームプランだったはず。

一方でペイサーズはハンドラーが決めきるのが基本ライン。上手く打ち切るシーンもありますが、これが出ないとオフェンスが手詰まりになってしまったゲーム1だったこともあり、全体が収縮するヒートの守り方に手を焼きました。

実は両チームの守り方には大きな差はないと思います。ペイサーズの方がターナーのブロックがあるので、ちょっとビッグマンが下がり気味ってくらい。

しかし、結果はこのディフェンスの攻略方法で差がついた感じなので、致命的な差にもなりました。このヒートのディフェンスと、ゲーム2のダンカン・ロビンソンの3Pを比較してみましょう。

どちらもドライブに対して、周囲がコースを狭めるように寄ってくるディフェンスをするのですが、捉まる前にパスをしていくヒートです。

この両チームの差は狙いの差でもありますが、同じようなプレーをしてもペイサーズは打ち切らないことが多いというネガティブな面もあります。対して、ダンカン・ロビンソンはここで打つために試合に出ています。

ゲーム2の結果を受けて、戦い方を変えてきたペイサーズ。しかし、試合を決めたのは逆の立場になったときのプレーだったようなゲーム3でした。

◎気持ちなんだ

敗れて3連敗となったペイサーズですが、ここまでの2試合と違うのは「この戦い方をしたら、勝てる試合もある」と感じさせたこと。確率良く勝てるわけではありませんが、閉塞感はないよね。

でも3連敗だから閉塞感はある。試合前は「結果以上に内容が苦しい」のが、試合後は「内容以上に結果が苦しい」に変わりました。なので4連勝するくらいの気持ちが残っているかどうか次第です。

一方で自分たちの形とは言い切れないトランジションゲームを仕掛けられても勝ち切ったヒート。ペイサーズファンは負けた事よりも、勝ったヒートを称賛するしかないでしょう。

アデバヨとバトラーで組むインサイドは、このパターンで勝負を挑まれたら走り勝てるのは事実。ウォーレン&ターナーなので、良い勝負ではありますが、最後に走り勝つアデバヨと、ファールドローできるバトラーなので、ちょっとずつ上回れる。

そんなオールスター2人とダンカン・ロビンソンの3Pがキーになっているシリーズですが、実際問題としてヒートで最も厄介なのはドラギッチ。ペイサーズの出方に対して、適切に対処してくるPGの嫌らしさを感じまくるシリーズになっているはずです。

正直、ナンがケガしてなかったら・・・。

シュートを決められても、即次のプレーに移行し、18点のビハインドを跳ね返したペイサーズの強い気持ちを感じつつ、それを上回る気持ちの強さとドラギッチのゲームメイクがあったヒートでした。

◎ジャズとの違い

ゲーム6までいかなければ、もう観ないと思うのでペイサーズはこれで最後かもしれません。そこでちょっとジャズとの違いについて触れておきましょう。

ゲーム1の時点で「底が見えてしまった」と評したのがジャズとペイサーズでした。しかし、ジャズは連勝し、ペイサーズは3連敗です。結果は真逆に。

その理由は「57点のドノバン・ミッチェルへの対処」を気にしたナゲッツが勝ったのにやり方を変えてきたこと。つまりは個人能力が相手を大きく乱したわけです。

ペイサーズが自分たちのやり方を変えないといけなかったのはオラディポが本調子とは程遠いこと。そしてオフェンスが上手くいかないのもドライブしきれないことなので、(ヒートのチームディフェンスもあるけど)個人能力不足な部分でもあります。

なんだかんだで、戦術的な対応を施すのは個人能力があるからってことです。今のペイサーズの内容でもドライブさえ決まっていれば、十分に戦えるのですがシャットアウトされてるオラディポ

ウォーレンは悪くないけど、やっぱりオラディポがワンランク上のプレーをしてこそ勝てるペイサーズ。そしてオラディポは来シーズンになれば戻るのかどうか、というくらいの水準です。

これで勝利を得るには、トランジションを積極的に仕掛ける戦い方をシーズン中に手に入れるしかないのかもしれません。ちゃんとベンチメンバーを絡ませ、ハイプレッシャーのディフェンスがある戦い方ね。そんな悩みもプレーオフだからこそ味わえた感覚です。

ゲーム4をどう戦うのか。個人能力を信じるのかどうか。面白いゲーム3だったけど、どうしても将来のことが気になってしまう試合でもありました。

プレーオフ ヒートvsペイサーズ③” への2件のフィードバック

  1. カムバックサボニス!!と言いたくなるここまでのゲーム内容です…
    サボニスっていうかインサイドに面子が足らないのも気になってます
    サンプソンは予想以上に頑張ってますけど…
    ゴガかリーフが使い物になってくれればいいのですがそう上手くはいかないですね

  2. ペイサーズがトランジションに賭けているのは序盤から感じました。スターターもアーロンとオラディポを並べるより、ジャスティンの方が良いと思うのですが…
    ディフェンス+速攻出したいのに、後半はマッコネル全然出さなかったのが不服でした。サモナーがローテーション外はわかりますが、マクミランはどうしたかったのでしょうか?

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