ナゲッツ1-0ジャズで迎えるゲーム2
至高のゲーム1ではプレーオフ史上3位となる57点を奪ったドノバン・ミッチェル。それでも勝てなかったのはマレー&ヨキッチが上回ったこと。その強烈な印象が左右していくゲーム2です。
左右されたのはゲーム1に勝ったナゲッツ
左右されなかったのがゲーム1に負けたジャズ
そんな奇妙な構図でもあったのでした。
◎57点の次の試合
「57点取られたナゲッツ」は次の試合に何をするかといえば、よりディフェンスを強めるしかない。ただ、手を出していけばファールドローされたクレイグなので、とにかくガマンしてガマンして・・・という粘りのディフェンスという意識を強めるよね。
ディフェンスこそが試合に出ている理由のクレイグ。57点も奪われては存在価値を問われてしまう。誰も問わないけど。
「57点をとったジャズ」にも思いはある。ディフェンスの硬いナゲッツだけど、ボッコボコにしたぜ。理由は何かって?MPJとかいうルーキーだ!
ということで当然のようにドノバン・ミッチェルへのマークは強まりましたが、ジャズの狙いは「ドノバン・ミッチェルで点を取る」のではなく「MPJから点を取る」です。
ドノバン&イングルスのピック&ロールをはじめから展開してMPJが「間違えた」ところで点を取っていきます。実にシンプルなのでイングルス、イングルス、ドノバン、イングルスみたいに得点してリードを得ました。
ドノバンは1Q4点のみ。なんでかっていえばクレイグもMPJも57点の方に気を取られるよね。だからイングルスに打たせまくりました。
ちなみにMPJのディフェンスは悪い。悪いけど、この記述だけ見ていたら「すさまじく悪く」見えると思います。でも、実際にはピック&ロールの時に、ハンドラーとロールマンのどちらを追うべきか、一瞬迷ったのを見逃さないジャズの異常性なので、他のチームがマネできるとは限りません。57点は絶対に取れない。ドンチッチとリラード以外は。
そんなわけで早々にMPJを隠さざる得なかったナゲッツ。ドノバンがベンチに下がってから再び起用してきました。そういうことです。
一方のナゲッツオフェンス。1Qで11点のヨキッチ。こちらもゲーム1でわかっているのは「ゴベアをアウトサイドまで引き出してしまえ」ってことです。まぁゴベアはさすがに、そんなことに惑わされず、淡々と決められていきます。
1Qでわかったのはレフリーがあまりコールしないグループっぽいこと。ヨキッチの肘が2回ゴベアの顔に当たったのにノーコールだったし、ドノバンアタックもノーファールだったし。
弱点が明確だっただけジャズが先にリードを奪い、MPJを下げてから反撃したナゲッツでジャズの2点リードで終わった1Qでした。
◎取り返せ!
ゲーム1でベンチメンバーが苦しすぎたジャズ。クラークソンの個人技しかなかった。本日も個人技全開のクラークソンで得点を続けます。ただ、MPJがコートにいるし、スペースを攻めるべきっていう感覚があるのでムディエイもドライブで切り裂きます。
トニー・ブラッドリーはゲーム1以上のハッスルでリバウンドに食らいつきまくった上でトランジションに走り、ニヤングはゲーム1よりもアグレッシブに3Pを狙っていきました。全く決まらないけどさ。
「57点で負けた事」を重く受け止め、周囲がレベルを上げようとしているジャズ。
一方で「57点取られたナゲッツ」のMPJは、試合開始直後にいじめられたのを取り返すように見事に得点を重ねます。トラウマではなく、エネルギーに出来るかはプレイヤーとしての分岐点。取り返しまくるぜMPJ
そしてドノバンが戻ってきても個人の得点は伸びません。理由はシンプルでナゲッツは早めにダブルチームに行ってパスを促す作戦です。普通に守ったらMPJから決められるのもわかっているし、プレーメイクしてくるのはドノバンとイングルスだけだし。
しかし、ここから上手すぎるドノバン&ジャズ。キックアウトとエクストラパスでシュートチャンスを作っていきます。ドノバン君は「正しいプレーをするだけ」というタイプなので、試合前半から自分で強引に行く感覚ないからね。
きれいにボールをふっていくドノバン。「自分のドライブに2人来ているのに、よくそんな逆サイドのフリーを見つけるね」というキックアウトでチャンスを作っていきます。
ただ、この展開はクレイグにファールがつかないので後半に響きそう。同じことはゴベアにもいえて、打たれてもガマンしているからヨキッチも後半に苦しくなりそう。
2Q中盤からはマレーの積極性。そこには同じくゲーム1でファールトラブルだったオニール。意地のディフェンスとコールしないレフリーってのもあって、次第にマレー&ヨキッチも苦しみ始めます。
ゲーム1の主役だったドノバン・ミッチェルとマレー&ヨキッチ。当然のようにマークが厳しくなるわけですが、もっと大切だったのはゲーム1でクレイグ、オニール、ゴベアがファールトラブルだったこと。ゲーム2はみんなファールしないで守っています。
守り方は変えていないジャズに対して、マレーとヨキッチが打っていくナゲッツ
守り方を変えているナゲッツに対してドノバン以外が打っていくジャズ。
クラークソンが3P4/6と当たりまくったこともあって、ジャズの方がリードを奪った前半でした。オニール2/3、イングルス2/4とマークが強まったドノバンから注文通りの3P連発に成功
ドノバンはFG6本のみ。3本決めたので6点。「正しいプレーをする」との言葉通り、ただひたすら正しくパスを振って、ターンオーバーはドリブルミスした1つのみ。ゲーム1とは違う意味でパーフェクトに近い出来でした。
マレー&ヨキッチで20本のFGアテンプトとなったナゲッツ。9本決めて19点。こっちはむしろもっと得点して欲しかった前半です。
そして3人のフリースロー合計が0本でもあった前半。うーん、徹底してくるね。ゲーム1と違って見えにくい要素で、お互いが高い戦略性をもって戦っていることがわかります。
前半は3Pがしっかりと決まったジャズが61-48とリードを奪いました。これで後半になってバテないドノバンと、バテるマレー&ヨキッチになったら、マイク・マローンの1人負けです。
◎スーパーすぎたエース
後半も同じような守り方のナゲッツに対して、ボールを動かしていくジャズですが、この試合初めての1on1をクレイグに挑んで3Pを決めたドノバン。さらにドノバンにスクリーンに行くイングルス、にスクリーンに行ってスイッチすらできなくしたジャズオフェンスによって、ドフリーになったイングルスが3Pで、リードが広がります。
対して、ゴベアにファールさせたいからゴリゴリ行くヨキッチ。この狙いは失敗するかと思いきや、ルーズボールでファールしてしまうゴベア。開始4分で4本のフリースローを打ったヨキッチ。そしてMPJにキックアウトで3Pと、やりたいオフェンスは出来ている。
しかし、止まらないジャズ。ドノバンがプルアップ3P、オニールのドライブキックアウトからイングルスも3P。そして開始5分で3本目の3Pを決めるドノバン。次はドライブで一回転してから、コーナーのニヤングで3P。
ヤバすぎのジャズ。3Pのオンパレード。モルガンがバックボードの横に当てている以外は決まりまくる。しかもドノバンのプルアップ以外はきれいなフリーです。
どうにも止められないナゲッツはどうする?ヨキッチが頑張るんだ。リバウンドでゴベアに競り勝ち、トランジションからアシストするポイントセンター。交代で入ってきたグラントもゴール下フリーになったゴベアのダンクを後ろから叩き落し、オフェンスでは3Pをヒット。
特にこのグラントのブロックは大きくって、3P決めまくったジャズが、きれいにゴール下のゴベアに通したのに止めてしまいました。未だにインサイドだけは攻略させないことに成功した。
まぁそれでも関係なく3P決めていくジャズ。ドノバンのプルアップ、ダブルチームに来られたら一番遠いオニールを見逃さずにコーナー3P。何で、そんなところが見えているんだ。そして遂にドライブ&ワンもゲット。スーパーエース。
点差は20点を超えました。結局のところ、前半のナゲッツは「ドノバンを抑えた」のではなくて、「ドノバン以外に打たせた」だけでした。そして決められたので3Qは
ドノバン以外に決められるし、ドノバンにも決められるし
っていう最悪のパターン。まぁジャズが決めすぎなんだけどね。
〇3Qの3P
ドノバン 5/5
チームメイト 4/7
前半6点だったドノバンは3Qだけで21点。勝負を決めてしまうスーパーエースの固め打ちでした。ダブルチームで抑えに来られたらパスを振りまくり、それでいて自分でもパーフェクトの3Pで決めてしまう。えぐいぜスパイダー。
マレー&ヨキッチはちゃんと活躍したけど、到底追い付かないレベルのパフォーマンスをされてしまったよ。3Qは43-29でトータル104-77です。デンバーのファンもドノバン・ミッチェルに対してMVPコールをしている事でしょう。おしまい。
◎戦略の戦い
「マイケル・ジョーダンをスーパースターにしろ」とはパット・ライリーの言葉だったっけな。ジョーダンを止めるにはダブルチームにカバーも用意して・・・と苦労が多く、それは結果的にチームメイトがイージーシュートを打ててしまうので「まだジョーダンにやらせた方がマシ」ってことでした。
まさにそんな感じの試合になったゲーム2は、ドノバンを抑えに行くためにいろんなトライをしたナゲッツが、ジャズのパスワークと3Pにボッコボコにされてしまいました。3Qまでの3Pが19/34なので、どれだけ楽に打てていた事か。
ただ、それにしても決めすぎたジャズの3Pは問題を難しくします。だってさ「ナゲッツのディフェンス戦略がミスだった」というよりも「ジャズの3Pが良すぎた」って感じなんだもん。
まぁいずれにしても「試合には勝ったけど57点取られた」マイク・マローンが過剰反応してしまったゲーム2でした。前半の時点で危惧していたようにマイク・マローンの1人負けです。
前半に殆どスタミナを使わなかったドノバンは3Qに異様な集中力でパーフェクトにシュートを決めてきてしまった。ゲーム1の3Pは6/15と高々40%だったのに、ゲーム2は6/7とほぼ変わらない本数決められてしまいました。だったら、スタートからドノバンにやらせて少しでも疲弊させた方が良かった。
まぁゲーム1だけじゃなくて、1週間前のゲーム0でもクラッチショットを決められまくったので、致し方ないんでしょうね。なお、休ませればよいのに、スナイダーは4Qもドノバンを出してきました。上の数字は試合終了時に違う数字になっているかも(管理人がめんどくさがって直さないかも)
ナゲッツのオフェンスはMPJの爆発もあって悪くなかったです。そこはジャズ側も明確な対策を講じることが出来ていません。ディティールについてはファールをしないことを徹底するなど工夫はありましたが、それはゲームトータルを考えてのことだよね。
シーズン通しての特徴でもありますが、クイン・スナイダーは「このやり方がもっとも勝てるはず」という戦術を定めて、それを深く掘り下げていきます。だからほぼ完ぺきな内容で負けたゲーム1だったけど、大きな変更はしてきませんでした。「これで負けたら仕方がない」という諦めもある。
代わりにナゲッツが変化してきても、全く慌てることなく対処するだけの戦術的な深みがあったね。正しいことを選んだドノバン・ミッチェルと共に。
〇ドノバン・ミッチェル
30点 FG10/14
8アシスト
パーフェクト。ゲーム2もパーフェクト。リアクションオフェンスの要素が強いジャズなので、得点が増えるかどうかは相手次第。でもアテンプトが少なくても30点取ってしまった。
〇ニコラ・ヨキッチ
28点 11リバウンド
6アシスト
FG10/21
〇ジャマール・マレー
14点 4アシスト
FG6/13
こちらも十分な活躍でしたが、勝負強さを発揮する前に試合は終わってしまいました。このスタッツで3Qまでに試合が終わってしまうのは本人たちの責任には出来ないと思います。
ゲーム3までにナゲッツのコーチ陣は悩みに悩みまくって、どんな戦略にするか決めないといけません。そりゃあ普通に考えたら50点取られる方がマシなわけですが、その戦略であってもゲーリー・ハリスがいれば40点以下に抑えられるので、ケガの状況にも苦しめられるでしょう。
一方でジャズはゲーム3からコンリーが戻ってくる想定です。プレーメイカー不足に困ったゲーム1だと「コンリー欲しい」となりますが、ナゲッツが仕掛けてきたゲーム2を考えると、ボールを持ちすぎ、FG%も高くないので「コンリー要らない」にもなりそうです。ムズカシイネ。
点差的には「至高のファーストラウンド」ではありませんでしたが、戦略によって大きく変化してくるという意味では面白いゲーム2でした。
そして、ただただドノバン・ミッチェルが圧巻だったのでした。30点なのに57点よりも凄みがあったスーパーエースでした。
ちなみにロイス・オニールが8アシスト。そんなキャラではありませんが、ただ単に正しいチョイスをしていたら、そうなっただけです。エースだけじゃないジャズらしさ。
ドノバン、ダブルチーム来たらパスを降るっていう徹底ぶりで、うまいなって思っちゃいました。なぜ反対側が見えているんだっていう驚きとともに。
そして要所要所のイングルスの良さにしびれました。
そしてルビオの頃から思ったりするのですが、コンリーとかいるとハンドラーをミッチェルに中々しないのが、個人的には気になります。ハンドラーの時のほうが調子がいいように見えて。まあ、体力的な部分とかもあるんですかね。
しかし、おもしろい試合でした!
ジャズは基本的に、立ち位置決まっているので、「そこにいる」のはわかっていて、ディフェンスを観ているんですよね。
ルビオのケガで致し方なくハンドラーやらせたら、「ひょっとしたらルビオよりうまい?」となり
コンリーのケガで満を持してやらせたら「レベルが違うくらい上手い」になっています。悩ましい。