アンマッチ・ブルズ
サトランスキー、ラビーン、ポーター、マルカネン、カーター
ベンチにはダン、ホワイト、ハッチソンなどもいて、バランスよく若手を揃えてきているブルズ。ここまでの成績はケガ人だらけの状況で生み出された不幸な理由が大きいのでボイレンを責めたらかわいそうだ。かわいそうなんだけど、試合を見るたびにため息が出てしまう。そしてゲームレポートの感想はだいたい同じだ。
戦術と選手がミスマッチ
これはもうボイレンが悪いとしか言いようがない・・・というのは過去の話。なんせフロントは一向に戦術に合った選手を連れてこようとしない。唯一来たのはサディアス・ヤングだけど、今度はチームの中でミスマッチで浮いてしまう。
ということで、いったい何がミスマッチなのかをまとめておこう。まずはザック・ラビーンから。
◎25.0点、4.1アシスト、4.7リバウンド
素晴らしい個人スタッツを残しているラビーン。イングラムやドノバン・ミッチェルと同じくらいのスタッツを残しています。しかし、彼らほど評価することが出来ない選手でもあります。その理由はチーム成績ではなく、試合の印象なので極めて個人的な感覚に近づいてしまいます。
イングラムの役割はスコアラー系・ウイングとなり、チーム全体のトランジション&パッシングとエース・ホリデーによるプレーメイクが行われてディフェンスにギャップが生じたところをフィニッシュすることが求められます。もちろん、そんな都合の良い形ばかりではないので、時には個人技で強引に、も役割に含まれます。
ドノバン・ミッチェルは最近はPG化してきましたが、基本はスコアラー系・ハンドラーとなりプレーメイクも担当します。ただし、ジャズオフェンスの中では歯車の一部に過ぎず、日常的にはボールムーブの一端とシューティングを担っているだけです。もっとも重要な役割は、そんなチームオフェンスで崩せなくなった時に個人技でディフェンスをぶった切ること。ミッチェルの得点が少ないときはチームが困っていないとき、なんてこともよくあります。
これに対してラビーンの役割はプレーメイカー系ハンドラーであり、ブルズオフェンスはラビーンからスタートすることが多くなります。高いシュート能力だけでなく、スピードで切り刻み、アシストをする。ラビーンはイングラムやミッチェルよりも仕事量が多く、チームの浮沈を握った重要な存在といえます。
つまりラビーンの役割イメージはハーデン、レブロン、ドンチッチに近くなり、この3人に比べるとスタッツの面で劣ってしまいます。もちろん、プレースタイルは様々であり、数字が劣っているからって気にすることはないのですが、問題なのは多くのプレーが自分スタートなのに好不調の波が激しいことです。
〇得点別試合数
40点以上 4試合3勝
30点以上 12試合6勝
20点以上 24試合8勝
10点以上 13試合2勝
10点未満 1試合1勝
ドンチッチは20点に届かなかった試合が3試合しかありませんでした。すごいのか、ドンチッチに頼りすぎなのか難しいラインですが、ラビーンでみれば20点以下が14試合あって3勝11敗とわかりやすくなっています。ディフェンスの状況に応じて得点数が変化する、要するに相手次第で変わってくる役割なら問題ないのですが、ラビーンくらいボールを持っていると得点が減るだけチームは困ってしまう。
あるいはマークが強まったときにアシストで貢献する選手もいます。レブロン、ハーデン、ドンチッチは全員そんなタイプです。トレ・ヤングもね。ここ3シーズンではデバン・ブッカーもそんな感じになってきたのでアシストが6を超えています。
ということで、ラビーンは役割を考えるとちょっと物足りなくなります。この「物足りない」は「オールスターとしては」という前提がつくので、もう少し頑張ってオールスターになろうぜ!という程度の話です。ラビーンを批判するというわけではありません。むしろ「チャンスと伸びしろがある」と思いましょう。ラビーンが30点以上を記録すればブルズは勝てる、20点以下なら負ける。わかりやすエースという立場。
◎3P37.6%
そんなラビーンは高確率で3Pを決めてきます。ハーデン、ドンチッチ、レブロンを上回る高確率です。ということはハンドラーとしては極めて優れたシュート能力を持っているわけです。リラード39.8%には敵わないものの、ディアンジェロ38.0%あたりと同レベルだといえます。
そんなラビーンのショットゾーンをみるとこんな感じ
全体的に高確率に決めているとはいえ、コーナーの効率の良さが目立ちます。もちろん、そんな都合よくコーナーから打つシーンは作れないし、みんなコーナーから打ちたいわけですから、「コーナーが少ないのが悪い」とはいえません。
〇3Pアテンプトと確率
キャッチ&シュート 2.8本 41.8%
プルアップ 4.6本 35.5%
スペースのないコーナーから打つ場合はキャッチ&シュートが多くなりますが、ラビーンの確率はさらに高くなります。プルアップも悪くない数字です。総じてラビーンに3Pを打たせることは理に適ったプレーです。
〇ディフェンダーとの距離別3P
タイト(4ft以内) 1.8本 34.7%
オープン(6ft以内) 3.8本 38.9%
ワイドオープン(6ft以上)2.1本 41.1%
当たり前ですがディフェンダーがいない方が確率良く決めます。ワイドオープンは45%くらい欲しいところですが、オープンの39%は非常に優秀な数字であり、タイトでも35%決めるのも有能です。
優秀なシュート能力を持つラビーン。しかし、これらの数字を考えるとハンドラー役をさせている現状には疑問もわいてきます。つまり
もっとシュート力を活かすオフェンスの方がラビーンは活きるのではないか
ということ。プルアップでも決めていくラビーンですが、プルアップ4.6本に対してキャッチ&シュート2.8本というバランスはもったいない。これがアシスト能力も高ければ「ラビーンのプルアップ3Pに引き付けて、チームメイトがイージーシュート」という構図も成立するのですが、そういうタイプの選手じゃないよね。
またラビーンには弱点もあります。
〇エリア別シュート
ゴール下 59.4%
ペイント内 17.6%
ミドル 32.3%
ゴール下も微妙なのですがファール貰うことも含めて懸念するほどではありません。しかし、ペイントとミドルの悪さは苦しすぎます。シュートの上手いラビーンですが、スピード突破からのストップジャンプシュートやフローター系統のシュートが得意ではありません。
3P&ゴール下の優秀なフィニッシャー
ラビーンの得点パターンを定義するならば、高確率の3Pとスピード突破からのダンク(レイアップ)を徹底させるのが最も効果的。それはブルズでのプレーとはちょっと違うんだよね。そして同時に「エースキャラなのか」という疑問もわいてくるし、ウルブズ時代の使われ方は正しかったとも思っています。
◎カリーとクレイ
ザック・ラビーンとは何か。ここまでをまとめると
【ストロングポイント】
・優れたシューティング
・スピード&ダンクのフィニッシュ能力
【ウィークポイント】
・ドライブストップからのミドル、ショートレンジは上手くない
・ドライブからのキックアウトは上手くない
簡単に言えばプレーメイカー系ハンドラーとは言い難い能力なので、ポジション設定が間違っている気がするわけです。そして重要なことは
シュート能力が100%活用されているとは言い難い
ということ。ラビーン本人は個人能力でシュートを決めているけど、本当はもっとキャッチ&シュートを増やし、オフボールでオープンになるプレーを構築し、コーナーから打っていった方が効果的なプレーをすると思うわけです。なお「効果的=得点増」ではないことは注意が必要です。アテンプトが減る可能性もあるよ。
ただ現状のラビーンは「自分が得点しないとチームは困る」という構図がはっきりしており、相手からすると「ラビーンを止めればブルズは止まる」構図です。それに対して、よりシューター的に動き回って、特にコーナーまで広がっていくと空いたスペースをチームメイトは活かせるはず。
実際、ラビーンはマークにべったりつかれると動いていない。だったらせめてコーナーで動かないのが正解ですが、プレーメイカーだからそうもいかない。
さて、そんなラビーンを活かすには何が向いているのか。一番初めに思い浮かぶのがカリー&クレイのスプラッシュブラザーズパターンです。本来はクレイと言いたいのですが、現状はカリーに近いよね。この2人はトップスピードでドライブすることが少なく、ストップ系のシュートが上手い点でラビーンとは異なりますが、チームオフェンスとしてはウォリアーズ型が向いている。
コーナーを空けておいてスプラッシュブラザーズに活用させるウォリアーズは、2人が動き回ることでスペースが構築され、チームメイトは裏パスでのイージーシュートチャンスが生まれます。1人の選手がボールを持つ時間を減らすことで、シュート力の脅威を上げています。
そこにカリーのプルアップ3Pが混ざるから更に厄介。ノードリブルで得点していく「クレイが良い時間がウォリアーズが最も輝く時間」なわけですが、逆に言えば、そんな形を都合よく作り出させてもらえません。しかし、クレイをチェイスすれば、スペースが空き、カリーがプルアップ3Pを打つし、カリーにもよればインサイドはガラガラさ。
ラビーンは高いシュート能力を持ち、しかもプルアップなども高確率で決めています。でもドライブを選択してしまうと、スピードで切れ込める形以外は確率が悪くなりがち。
ならばオフボールでシューティングポジションを動き、ディフェンスがズレた状態でボールを持つのが適切。キャッチ&3Pなら高確率だし、ズレがあればドライブコースも空いているし、ヘルプも難しい。ハンドラーとしてプレーしている現状ではディフェンス全体がラビーンを待ち構えていますが、カリーとクレイの間のようなプレーが適していると思うのでした。
◎ザック・ラビーンとは何ぞや
答えは、個人が活きる形では戦術が構成されていないエースであり、活きる道が他にありそうな形で25点を奪っています。でも今がポジティブな部分もあって、カリー&クレイに近づいたら、シュートを打つ機会が減って平均得点は減るかもしれません。というか試合を見ている限り、そう見えてくるってことです。
もっとうまい使い方がありそうで、個人スタッツからも読み取れるのは、ブルズのチームとしての違和感。ラビーンは輝いているけど、果たしてベストなのかどうか。アンマッチな戦術と選手。せめてエースくらいはマッチしてほしいよね。
PORなんか面白そう。CJマカロムとトレードで。CHIに旨味がないか…
ラビーンをエースにしたいなら、いろいろと変えないといけないわけですが、今の戦術やりたいならラビーンは違いますからね。
マカラムの方が、まだハンドラーっぽいかなぁ。
ブルズファンのツイッターではラビーンはディフェンスが酷すぎて30点獲ってようやく±0だ
ってコメントを見たことありますがラビーンのディフェンスはどうですか?
ラビーンのディフェンスは悪いですが、チームとして悪いですしね。
3P守る気持ちというか、戦術が足りな過ぎて、現代NBA知ってんのかな?と思ってしまいます。
楽しい記事。とても面白かったです。
いつも楽しく拝見しております。
whynotさんはプレイヤーを区別するときに○○系○○(今回のラビーンでいうとプレーメイカー系ハンドラー)という言葉をよく使ってますが、現状のNBAプレイヤーはこの区別でどのような選手がいるのでしょうか。その辺から各チームの特徴やNBAの今後の流行とか考えられると面白いかなと思いました。かなり面倒だと思うのですが…
○○系 ⇒ 役割
○○ ⇒ ポジション
というイメージで定義できないかをトライアルしています。
これを繰り返していくことで、各チームの定義が出来れば面白いと思いながら進めているのですが、「役割」のパターンを増やしたいし、増やしすぎると伝わりにくいし。そこを悩んでいます。
ラヴィーン論を考え始めると、サトランスキーとは何か? クリスダンとは何か? ホワイトとは何か? どんどん気になってきます。きりがないので考えるのはボイレンに任せればいいと思うんですが、たぶん考えなさそうなシボドータイプなので困ります。要するに1・2番のタレントは豊富なのに使いこなせてないというか、組織的に戦う方法が考えられて無いというか。やり様によってはOKCに近いオフェンスも出来そうなのに、勿体ないです。
単純にウォリアーズに近いことが出来ると思いますが、言ってしまえばホイバーグなので、それはそれで悩むんですよね。
ホワイトを獲得してしまったのは、良くも悪くも悩みどころだったりします。
ラビィーン、マルカネン、カーターJr、ホワイトとポテンシャルある若手は揃ってきたものの、最適な戦術・組み合わせの整理ができずズルズル低迷している内に契約が切れてチーム解体…みたいな流れになってしまいそうです。
ラビィーンを核でいくならカーターはともかくマルカネンはトレードアセットにした方がいいと思うんですよね。
現状のラビーンの使い方ならマルカネンでビッグマンでも獲得したほうがベターですね。
マルカネンを中心にするならラビーンの使い方に工夫は出来ると思いますが、ラビーンのプライドなんかもあるし、トレードしたほうがベターでしょうね。
並び立たないわけではないですが、現実的には難しい気がします。
ラビーン好きなんですよねー。なんか格好いい
記事を読んでいて、ラビーンの得意&不得意を思い出しながら、『カリーとクレイの間みたいな活用法が僕はいいかなーって書こう』と思っていたら、『カリーとクレイ』だったので、ニヤニヤして読み進めました(笑)
ブルズがそーゆーラビーンを効率的に使うとは思えないですもんねぇ…ハーデン系やドンチッチ系として育てたいなら、そーゆー戦術を用意しないとですよね。選手が勝手に25点&10アシスト&8リバウンドとかにはならんですよ。
ブッカー ラビーン ビール
他にいたかな?こーゆータイプの選手が好きは好きなんですが、なんかチームとうまくいってなく思うから、モヤモヤします。弱いチームの25点平均選手って評価していいかどーかに悩みます。かつてはメロ先輩もそーでした。ウェイターズはここに入れなかった。
うーん モヤモヤするラビーン&ブルズですねー。ラビーンっていつ契約終わるのかな?
あんまりトレードやFAで動きまくるのは確かに面白くないですが、平均25点選手の価値も薄くなってきた今日この頃です。平均25点って凄いことなんですけど。うーん。
最近から興味深く拝見させていただいております。
ミネソタ→ラビーンと続いたので、
もはや夢物語ですが例えば、ハンドラー:ウィギンス、シューター:ラビーン、フィニッシャー:タウンズ、残り2枠:3andD、HC:ダントーニ
の、走力とオフェンスで相手を圧倒するミネソタとかどうでしょうか。
守備はサイズでごまかす感じで。
ダントーニ向きではないですね。パスが上手い選手がゼロなので。
リバースやスポルストラ(2人は似ていないですが)系統の交代アタックが向いているのではないでしょうか。
いずれにしてもルビオつれてこないと!
守備をサイズで誤魔化すのは賛成です。