3Pを考える~+1~

キャッチ&シュート・ワイドオープンを決めるのは現代では誰もがやるべきこと。そこから+1ってのは何かがテーマ

チームでボールを回し、フリーになってのキャッチ&シュートは誰でも35%以上は決めないといけません。打たないチームもあるってだけで、そういうチーム以外だったらちゃんと練習すれば決まるんだ理論。

ここからが「シュートが上手い」とされるために次の一歩を踏み込むことになります。WCで日本代表はトルコ戦だったかよく3Pを決めましたが、それはほぼキャッチ&シュートのフリーでした。そして日本に3Pが少ない理由が+1不足だと思っています。

+1ってことは、+2や+3もいるわけですが、カリーなら+10くらいだよね。あいつ何でも出来るじゃん。ヒールドも何でも出来るタイプだからNo1シューター争いしていると評するわけですが、それは確率とは違うパターン問題です。まぁカリーもヒールドも今回の内容全て出来ます。

でも、誰もが全部できるわけじゃないので、得意技を探して身に着けるのが育成段階だと大切な気がしています。3P決めるのは普通、そこに何を足せるのか。

◉3P&ドライブ

いきなり3Pではないっていう。上手にドライブ出来る選手と出来ない選手では3Pの意味が全く違うって事です。+1の選手ではないけど、例えばジョー・ハリス。

スピードやハンドリングスキルに優れたタイプではないジョー・ハリスですが、ドライブの決定力が高い特徴があります。その理由は「3Pの上手さ」で引き付けておいての、インサイド攻略があまりにも上手いから。サーカスショットが上手いってのもある。

オンボール、オフボールで器用にインサイドのギャップを見つけていきます。そしてこれはネッツらしさでもあって、インサイドを使えるように全員でスペーシングしています。クルッツ君がブレーク出来た理由もインサイドへ飛び込む上手さなので、3Pで広げる→インサイド攻略のわかりやすい例示チームです。

ブルック・ロペスがストレッチ5としてブレークした理由もこのドライブ。一歩がデカくてワンドリブルされたらインサイドに入れてしまう。スピードとかないけど、飛んじゃうと流石に追いつけない。飛ばないと高いから打たれてしまう。

〇100回以上のドライブをした中でのFGトップ4
ニヤング 63.6%
アンテトクンポ 63.3%
ロペス 62.2%
ダリウス・ミラー 57.9%

ペリカンズのミラーはグッと落ちますが、次がシアカムの57.2%なので差があります。ヤニスのみが3P関係なく決めている感じです。怪物。

そしてトップにいるのがジャズのニヤング。わかりやすいストレッチ4はそのシュート力を武器にドライブをしているわけです。スピードもないし、ハンドリングスキルもないし、インサイドプレイヤーとしてのパワーも不足気味。でも、どれも標準スキルがあるから、3P&ドライブで上手くプレーを構築しています。

まさかニヤングが登場するとは思わなかったでしょ。それがデータの面白さですが、ニヤングがわかりやすく3Pに+1を持っている選手って事です。「3Pを打てるビッグマン」なんて特に意味がなく、そこに「3Pを囮にドライブを高確率で決める」が引っ付くとレベルアップです。

そしておそらく、このタイプの日本人はBリーグにいないのではないかっていう。竹内譲次はかなり頑張っていたと思いますが、他には思いつきません。「3Pとポストアップが上手い」という選手はそれはそれでよいのですが、連続するスキルではないので苦しいですね。

その意味でグリフィンなんかは微妙なんだよね。3Pとインサイド侵入が連続するスキルというよりは個別のスキルって感じがします。なお、このタイプの最強はレブロンです。プルアップ3Pは決まる変なタイプにして、ドライブが怖すぎるから3Pをチェックできないという。

こうやって+1を並べていくのが今回の趣旨ですが、さすがにドライブはここから先とはちょっと毛色が違います。でも、意味としては「どんなプレーを身に着ける必要があるのか」「3Pを練習する」という疑問の答えに含まれる一手であることは間違いありません。

◉コーナー専門職

次に登場するのは「フリーでキャッチ&シュートで3Pを打つ」だけで良いのですが、それがコーナー専門職という事で+1されるタイプです。現代的な3&Dと呼ばれることが多いです。

渡邊雄太がどうにもコーナーが下手で困ってしまうのですが、コーナーの位置は「スペースが狭い」「左右にずれてパスコースを作ることが出来ない」「単純にリングの見え方が嫌」なんていうネガティブな理由があるのも事実です。「左コーナーは得意だけど、右コーナーは苦手」なんていうタイプもいます。

〇17-18シーズンのジャスティン・ホリデー
左コーナー 22/49 45%
右コーナー 29/91 32%

ブルズ時代のホリデー長男は何故か右コーナーがとっても苦手。苦手なのに、そっちからばかり打たされているっていう謎。なお、グリズリーズに移籍して両コーナーが40%を超えるようになっています。

〇ジュルー・ホリデー
17-18シーズン
左コーナー 16/37 43%
右コーナー 5/32 15%

18-19シーズン
左コーナー 11/23 48%
右コーナー 5/18 28%

そして次男も苦手。こちらはまだ克服できていませんでした。1年前のオフは「兄弟で右コーナー3Pの練習しているでしょう」と書いたのですが、そもそもアテンプトが少ない次男です。ホリデー家には左コーナーだけのコートがあったりして。

とまぁ稀有な例というか、調べていられない案件なのでたまたま気になったホリデーをあげただけですが、やっぱり右と左は全く違う気もします。コーナーの場合はパスを受ける角度が両コーナーで逆になるので、利き手の感覚も含めて違いが出るのはよくわかります。

得意なら高確率
不得意なら低確率

そんな風になりやすいのがコーナー3Pです。狭いスペースでも打ち切ることが出来、しかもコーナー特有の感覚に優れていないと専門家にはなれません。渡邊ならタイプ的にコーナー専門家になれるかと思っていましたが、WCで34点取っちゃって全く違うタイプになりかけています。

ちなみにホリデー3男は

〇アーロン・ホリデー
左コーナー 2/6 33%
右コーナー 3/10 30%

誤差の範疇ですが、もう少し頑張りましょう。長男と三男が同じチームでプレーすることになったとさ。役割は全く違うので弟のプレーメイクから兄がコーナーから狙うのかな。

〇リーグ平均
左コーナー 38.6%
右コーナー 37.8%
それ以外  34.9%

そしてコーナーのもう1つの特徴は確率が高いこと。まぁフリーになりやすいし、距離が短いから。「誰でも35%」理論と異なるのはコーナーならば38%くらい決めて欲しいって事です。3%程度の違いではありますが、それ以上にコーナーを確率良く決めることが出来ればオフェンスの拡張性が高くなるからです。

前回の冒頭で書いたのが3Pもひとくくりには出来ないって事で
①プルアップ3Pでディフェンスを広げる
②広がって事でインサイドを効果的に攻略
③キックアウトパスからの3Pで確率良いシュート
こんな感じで順序だてられ、①と③は同じ3Pでも違うとしたわけですが、コーナー3Pは完全に③側にある3Pです。

だから「高確率で決める」ことが大切。インサイドを攻略しに行ってからのパスアウトが多いので、これを決めきらないとオフェンスが完結しません。

弱点を克服したホリデー長男はリーグで3番目に多くコーナー3Pを打ちました。その結果、コーナーだけは高確率になりました。

〇18-19シーズンのホリデー
コーナー3P 164本 41.5%
その他の3P 298本 31.5%

コーナーから打たせたらEFG60%を超える高確率マシーンです。ホリデーの場合は専門家ってわけではありませんが、それでもリーグ3位なのだからコーナーから決めることで生き残っているともいえます。次男・三男はプレーメイカーです。

リーグで最も多くのコーナー3Pを決めたのは、いうまでもなくPJタッカー。ハーデンのパスから打ちも打ったり、そして元々はシュート能力が高い選手ではなかったのが、この2年ですっかり信用されるコーナー専門家になりました。

〇PJタッカー
コーナー3P 277本 39.4%
その他の3P 106本 34.9%

タッカーの数字でわかりやすいのが、そのほかの3Pはいわゆる「誰でも決められる」レベルの数字になっていることで、コーナーからのみ40%近くなることで意味があるシューターです。

そしてタッカーが代表格になる理由が、シュートを打つことに関してはコーナー3P専門家なのだけど、「打たなかった時のプレー」にあります。コーナーに構えるということは、オフェンスリバウンドに参加しにくいし、トランジションディフェンスも間に合いません。普通は。

タッカーが素晴らしいのは、コーナーでパスを待ち、パスがこなければ即座に次のプレーに移行している事。ここがコーナー専門家の難しい所で「高確率の3Pとハードワーク」がセットになります。だって、決めるだけならシューターとして育ってきた選手が頑張った方が確率高くなるわけで、そうではないタッカーがコーナー3Pに関してはレジェンドクラスになる理由がここにあります。

コーナー3P2位はこれまた面白い人材です。

〇ダニー・グリーン
コーナー 184本 50.5%

ラプターズに移籍したダニー・グリーンは、新たにコーナー担当を振り分けられ、もともと持っていたシュート能力を生かして最強クラスの3Pシューターに返り咲きました。その理由がコーナーにあったということ。

スパーズでの終盤は微妙な選手になっていたのですが、ある種のスパーズらしさは「フリーのキャッチ&シュート」を決めるのがシューターとしての役割でした。そう、ダニー・グリーンの印象は『+1を持たない選手』でしかなく、見た目は高確率でも普通のシュートを決めているだけのブログトンパターンに見えていました。

それがラプターズに来て何が変わったかといえばコーナー担当に固定されたこと。そしてシューターレベルの選手がここを担当するとレジェンド・タッカーよりも10%くらい高確率で決めるという事。

グリーンもトランジションに戻ることを強く求められているのですが、そこはスパーズでも同じだったよね。50%を超える確率で決めてくれるからコーナー役としては最適だし、グリーンの能力的にもこの役割はぴったりとあっていました。だってコーバーとかレディック役は出来ないじゃん。

割と奥深いコーナー担当の話。ここまで含めてコーナーをこなせる選手って日本にいるのかな。NBAファン層からすると渡邊雄太に期待していたのはここでした。シューターというにはコーバーやレディックにはなれないし、かといってロバーソンレベルのディフェンダーではないし、イグダラレベルにゲームコントロールも出来ません。

だけど、フリーのキャッチ&シュートを打ち、打たないときはハードワークで支え、そしてSG~PFまで守れるオールマイティなディフェンス。攻守に働ける道がコーナー専門家には詰まっていると思っていたわけです。コーナー3Pが上手くなかったのが予想外。

適性があれば高確率で決められる
そもそもシューターなら超高確率で決められる

それがコーナー担当。+1たる所以は、通常よりも確率があがることと、3P以外の部分が難しいってことにあります。ウイングのキャッチ&シュート専門なんて利用価値がないけど、コーナーなら話は違うよ、ってことでした。

◉+2

続きは次回になりますが、題目としては

プルアップ3P
ステップ&3P
ムービング3P

何て感じで「シュートの上手い選手」と位置付けられる3Pに触れていく予定ですが、今回の項目は決してシュートが上手い選手には限らないというのがポイントです。

キャッチ&シュートをワイドオープンなら誰でも決められる、というのが前回ですが、シュート力としてはそこから大きく積み上げていない選手でも、連動するスキルを持っていたり、専門的に決めていけば立派なシュート能力になると考えているわけです。

そもそも「誰でも決められる」のであれば、打ち続ければ上手くなるもの。概ね、そんな感じで試合に出ていることで上手くなっていく部分も大きいでしょう。もちろんシュートが得意な選手は彼らとは10%以上も確率が違うわけですから、3Pを打つのは当然、35%くらい決めるのも当然、だけどそこから先はシュートセンスが重要です。

さて、そんなわけで今回並べた+1の項目は、よく考えると+2にもなります。なんせシュート能力そのものが向上するかどうかではなく、その周辺スキルを持っていることが大切だから。要するに

コーナー専門+3Pからのドライブ能力

を持った選手はどうなんだってことです。ここで登場するのが、コーナー3Pアテンプト4位と7位の2人です。

〇コーナー3P
ジェレミ・グラント 156本 39.7%
パスカル・シアカム 149本 41.7%

大きな成長を遂げた2人はともに3Pの確率向上が目立ちましたが、その内容はコーナーから打っていったこと。そしてともにドライブの脅威があるからこそフリーになりやすかったともいえます。

メインウエポンはスピードのある突破、そこに3Pを、それもコーナー専門として身に着けたことで、効率アタックを繰り返すようになりました。それは3Pが広げてくれた可能性ともとれるし、誰でも向上する3Pともいえれば、コーナー適性があった2人とも捉えられます。

見事な+2を持っていることは大いなる武器になっており、逆にシアカムなんかはレナードがいなくなったラプターズでエースキャラになってコーナー待機じゃなくなったらどうなるんだろうね。

既に立派な武器を持っている選手でも身に着けていく3P。それもコーナー3Pをバシバシ決めることが出来れば戦術的にも個人的にも大きな進歩が見込めます。それは「能力を持つ選手をコーナーで待たせる」ということ。Bリーグでそれが出来るのかどうか。そして育成年代ではどうすればよいのか。

実は3P以外の能力をしっかりと育成し、ある程度成熟してからポジション適性を再度調整していくほうが好ましいでしょうね。3Pは誰でも決められるのだから。いわゆる勝利至上主義ではない育成という問題であり、NBAでは進化しないと退化するので、常にステップアップできるかが問われる要件な気もします。

グラントとシアカム。3Pの話なのに、最後に出てくるのがこの2人。現代バスケではビッグマンが3Pを打つのは普通。そこに何が足されているのか。+1から先に進めるのかどうか。

3Pを考える~+1~” への3件のフィードバック

  1. タッカーおじさんは分かりやすい例ですよね。PJ.タッカーなのにCN(コーナー).タッカーなんて実況の人に言われたりするぐらい。

    昔っからコーナー担当&ディフェス&ハッスル要因はチームを影で支えていましたよね。おフランスのバトゥームもこのタイプだと思うだけどなー(フィジカルが少し弱いイメージだけど)

    ロン・アーティストしかり、シェーン・バティエしかり(バティエもおフランスだっけか)

    ワタナビーにはそーゆータイプになっていくものかと思っていましたが… てか、そーなれないとポジションない気がするだけなのかも。だってクリス・ボッシュにはなれないだろーし。

    まさかのまさか コーナースリーが入らないとは予想外。

    ラス君はコーナースリー何パーセントで決めるシーズンになるのやら

    +1や+2 をするにしても、まずはスリーを(特にコーナーを)35%で決めるとこがスタートラインですねー

    ダニ・グリーンなんてまさに象徴。更に確率でいえばエリートクラスですよねー。コーナーエリート。

    そしてビッマン系ウィングのグラントやシアカムがコーナースリーを1つのエサとして使いこなして、元々高いドライブ力を発揮しているのは本当に良き例。

    竹内じょうじはまずはあの貰い脚トラベリングをゼロステップに見せる練習してからフローター系のフィニッシュを練習して欲しい。

    それ以外にスリーをエサにしてドライブもするビッマン日本人を僕は知らない

  2. 分かりやすいお話です。
    いつもね、漠然とヒールドはカリーの次に凄いシューターなんだと言ってきたし、3pコンテストで優勝したジョーハリスが凄い凄い言われてるのをみてて、「ヒールドの方が凄いやないかい!」と思ってました。
    それはその+の役割のことだったんですねぇ。
    ヒールドやカリーがコーナー専門やったら60%以上決めそうですね。
    カリーなんて詰まり気味のコーナーでもドレイとの一瞬のハンドオフだけで軽く決めてますよね。

    先日どこぞのメディアが発表してた10年代のシューターランキングは突っ込みどころもあって面白かったですよ。

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