3Pを考える~誰でも打てる35~

入門編というか、基本事項の確認というか。

さて、3Pについて考えてみたいと思いますが、きっかけは「日本代表はもっと3Pを打つべき」という質問というかご意見です。ここで代表ベースに考えるのではなく、NBAを基準に考えながら、日本代表に関して思っていることを付記していきましょう。

ダゾーンをみていると解説者が日本の3Pというか、「世界のチームは3Pをイージーに決めてくる」として、大きな課題が「練習するしかない」と話していました。指導者なので、いろいろと含めたうえで放送に乗せられるコメントが一言だっただけでしょう。

もう1つ言うと「日本代表はもっと3Pを打つ」プレーパターンをもたないといけないわけですが、そもそも3Pに対する捉え方が違ったります。そこを考えていくのが今回のテーマではありますが、概略を抑えるために説明すると例えば

インサイドに入れてパスアウトから3P

なんだか日本では常識化している事実ですが、この発想に捉われていると、この時点で本記事はゲームオーバーです。もはや常識は通じないのであり、非常にシンプルなこの形はディフェンスからしても、それくらい読みやすいって事です。読みやすいってのは十分な対策が講じられているわけです。

「インサイドにいれて収縮させてパスアウト」というのは正解ですし、未だに最も確率良く打てるシュートではありますが、常識ではなくなっています。NBAファンの中で常識になっているのはむしろ

3Pで広げてインサイド攻略

これは既に発想が逆という事です。3Pを打つからインサイドにドライブ出来るし、パススペースが空いて崩せるし、崩せるとさらに良い条件の3Pが打てるし。

ちなみにNBAで最も多くの3Pを打つロケッツは

〇ロケッツの3Pアテンプト
プルアップ 20.9本 34.1%
キャッチ&シュート 23.7本 37.4%

ほぼ半分がプルアップです。キャッチ&シュートはインサイドアウトとは限らないこともあり、もはや多くのシュートがアウトサイドで構成して打つことに。ハーデンのステップバック無双。

しかし、ここで忘れてはいけないことは「確率はキャッチ&シュートの方が高い」ってことです。ここに関しては超常識です。誰もが知っている常識です。言い換えれば

確率が下がるかもしれないがプルアップ3Pを打つことは効果的

ってことです。もしも古き考え方で「決まる確率の高いシュートを打て」という発想しか持たないとロケッツオフェンスは理解できなくなります。

①プルアップ3Pでディフェンスを広げる
②広がって事でインサイドを効果的に攻略
③キックアウトパスからの3Pで確率良いシュート

大体、こんな流れが一般的な攻略手順です。要するに3P→ゴール下→3Pと繋がるわけで、①が「確率は高くなくてもディフェンスを攻略するのに大切なシュート」であり、③が「効率の良いシュート」になるわけですから、

同じ3Pだけど意味が違う3P

ということです。ちなみにバックスにも共通することですが、①は固いインサイドディフェンスに突っ込むのではなく、3Pを打つことでリスクヘッジしてトランジションディフェンスに移行する意味もあります。が、そこを語りだしたら終わらない。

日本代表の話に戻すと、まずはどんな常識を持つかです。そして現代では3P能力について

確率の高いシューター
難しいシュートを打てるプレーメイカー

なんていうパターンわけも出来たりします。以前、シューターについて考えたことがありますが、当時の最強シューターは「エリントン」でした。

この時の基準は「シューター」の中から選んでいますが、ハーデンはシューターじゃないし、ブルック・ロペスもシューターではありません。それぞれに違う意味での3Pの役割があるのです。

とはいえ、このまま書いていくと整理がつかないので、「練習するしかない」という点と「日本はもっと3Pを打つべき」という両面に触れられるように順を追って考えてみましょう。

◉キャッチ&シュートで3P

基本のキは当然ながらコレです。みんなで練習しようスポットシューティング。「3Pも打てるビッグマン」なんて言葉は死語です。死語。当たり前じゃないかと。むしろ「3Pは打てないビッグマン」の方が貴重かも。

最近は次々にセンターたちが3Pを身に着けていきます。それもこれまでは打たなかったセンターたちです。

〇アーロン・べインズ
2012~17年  7本
17-18シーズン 21本
18-19シーズン 61本

デビューからの6シーズンで7本だったのに、昨シーズンは51試合で61本打ちました。確率は34.4%なのでまぁまぁです。

〇アレックス・レン
2013~18年 25本
18-19シーズン 204本

こちらもデビューから6シーズンは殆ど打たなかったのに、ホークスに行くと一気に204本と単なるストレッチ5状態になりました。確率も36.3%と結構良い感じ。

こうしてそれまでなら信じられなかった選手たちが、移籍すると突如として打ち始めたりします。魔改造されたマルク・ガソルやブルック・ロペスが有名ですが、今では誰もが普通に打つ時代です。

練習すれば誰でも決められるんだ

という認識をもつコーチ陣だと積極的に身につけさせています。ちょっと珍しいところだと元々3Pを打っていたトーマス・ブライアントがウィザーズに行ったら自重している例もあります。逆の珍しい例が

〇エネス・カンター
18-19シーズン 34本

あまり多くないカンター。基本的には打たないタイプなわけですが、何が珍しいかというとカンターの場合は「シュートが上手い」ということ。フリースローは80%超えるシーズンは割と普通。それだけのシュート力がありながら3Pを積極的に打つタイプに変化はしていません。

その最大の理由は「センターには3P不要」派閥のサンダーで育ったから。本当はウエストブルックがいるのだからストレッチ5は効果的なはずですがHCが不要論者だったり、何よりも「誰でも決められる」という考え方をしていなかったり。

アダムスには期待できないのだから、対比にもなるのでカンターに打たせればよかったのに。ただし、「だったらスモールラインナップにすればよいじゃん」派閥もいるので一概には言えません。スティーブ・カーとかね。

さて、このカンターはセルティックスに行きました。べインズを改造したブラッド・スティーブンスの下へシュートの上手いセンターが加入するわけですから・・・。

◉決まるさ40%なら

キャッチ&シュートなら誰でも決められる

この考え方にはもう1つ重要な要素があります。それは「誰でも決められる」というのが、「3Pを誰でも」ではなく、「イージーな3Pなら誰でも」なんです。

ドフリーで打つなら誰でも決められる

という考え方です。難しいシュートを決めると言っているわけではなく、キャッチ&シュートを決めてくれれば十分なわけです。

昨シーズンのセンター達で3Pを100本以上打ったのは22人いますが、確率が40%を超えたのは

カール・アンソニー・タウンズ
メイヤーズ・レナード

の2人しかいません。つまり「3Pを打つビッグマン」は普通だけど今だって「3Pを高確率で決めるビッグマン」は貴重なわけです。彼らの多くはキャッチ&シュートでありながらも35%前後をうろうろしています。

なお、30%を下回ったのはイバカとザック・コリンズの2人だけです。ド下手な選手もほとんどいないわけだ。酷くても30%、良くても40%くらいってことです。あと以外にはヨキッチが31%しか決めていません。これは違う問題になっていきます。

〇ワイドオープン3P

同じような視点で100本以上のワイドオープンを打ったセンターだと、タウンズが39.9%で届かなかったもののデッドモンが44%の確率でした。例によって40%超える選手は他にいません。

一方でワイドオープンになると31.6%のエンビード、31.4%のランドル、そしてイバカの3人を除けば、34%を超えてきます。だからやっぱり

ドフリーで打たせたら34%~39%くらいは決まる

という前提の下でビッグマンにも打たせているわけです。2Pに換算すると51%~59%くらい。十分に計算が成り立つ数字です。

〇リーグ平均3P 35.3%

そしてリーグの平均が35%なのでこれを超えればOKなわけです。要するに

本当にシュートが上手いビッグマンは一握り。だけど、ドフリーのキャッチ&シュートを決めるだけならリーグ平均的度は多くの選手が達成できる。

こういう理論が成立します。シュートの上手いビッグマンが増えた理由は、大してうまくなくても35%くらいは達成できるって事です。この大前提を持っているHCだと、ビッグマンに新たに3Pを身に着けさせるハードルがグッと下がります。

しかもビッグマン達は高さがあるので、ブロックに止められにくいなんて特徴もあります。どっちも大切な要素として存在しているのでした。

〇トップたちのワイドオープン
カリー 52.5%
ヒールド 49.1%
レディック 45.0%

彼らと比べてはいけません。本当にシュートが上手い選手は50%近く決めてくるわけです。センターで「ワイドオープンなら打つ」場合が35%くらいならば、本当に上手いシューターは15%近く高い数字を誇るわけです。全然違います。

なお、中には違うタイプもいます。

〇ブログトン
ワイドオープン 45.7%
オープン 31.1%

最近特集したブログトンは平均40%を超える有能なシューターですが、その中身は単にワイドオープンを決めているだけで、本当はシュート能力そのものが他の選手と比べて高いわけではありません。普通。普通でドフリーなら決めているだけ。

Bリーグでも篠山が3P40%超えています。川崎のプレーはあまり見たことがありませんが、感覚的にはブログトンに似ていると思います。堅実性のあるシュートをチョイスして、それをしっかりと決めている。

シュート以外も普通の事をやっているだけのブログトンとタイプ的には被るであろう篠山。Bリーグの他のPGよりも突破力なんかには欠けても、しっかりと普通の事を「普通になるように」プレーしています。ブログトンは「普通のことを異常な頻度で」こなしている。だから篠山のPG像自体は全く否定していないし、代表のPGとして正しいとも思っていますが、ブログトンはディフェンスの逆と取りまくって普通の事をやるからね・・・話がそれた。

いずれにしても、ブログトンのようなハイアベレージの選手であっても、その中身はただ単に

簡単な3Pを選んで決めているだけ

なんてパターンもあるわけです。だから3Pを考えるっていうのは、シュート成功率だけで考えるわけにはいきません。NBAはデータが多いから、3Pをひとくくりにしない見え方があります。というわけで今回のまとめ

キャッチ&シュートのワイドオープンなら誰でも決まる
35%以上決まれば、計算は成立する
本当に上手い選手は50%くらい決めてくる

この3本立てです。問題はチームオフェンスがどうなっているのかと、その中でどれだけフリーのポジションで待っていられるかです。ブログトンなんかフリーのポジション見つけるの上手いわけで。

そして最後に日本代表には世界最高クラスのキャッチ&シュートのワイドオープンの使い手がいます。そうそれは辻・・・ではなく、ファジーカス。

〇WCのファジーカス3P 56.3%

管理人はファジーカスのディフェンス面や、あるいは個人のオフェンス力そのものにも否定的ですが、このストレッチ5能力に関しては非常に高く評価しています。なんせデカいからシュートブロックできないし、さらにパス能力があるのでストレッチさせてのインサイドへのアシスト能力があります。多分、代表の中で最もこのパスが上手いと思います。

だから馬場なんかとは相性が良いわけで、逆にミドル打ちがちの八村だとちょっとバランス悪い。また富樫にドライブさせるならファジーカスだったかもしれません。30分プレーするのには反対だけど、使いどころを明確にしての15分~20分がファジーカスに与えるべき仕事だと思っています。

◉続く

かなり当たり前のことを書きましたが、基本的には普通の3Pは誰でも35%くらいは決めましょうってことです。ファジーカスになるなら50%だけど、その15%は「上手い選手」と「下手な選手」の差ってことです。下手でも35%なんだ。

逆に間違えてはいけないのは35%ってことは、あくまでも「ワイドオープンでのキャッチ&シュート」なわけであり、35%なのにシューター顔されても困るし、3P以外の仕事が出来なければいけません。

なんだかんだいっても大切なのは本業。本業で負けていては意味がないので、ストレッチタイプのビッグマンと3Pも打てるビッグマンは意味が違うんだ。

だからキャッチ&シュートの3Pはみんな練習しよう。でもそれはあくまでも最低限のスキルなんだよと。

だから次回は最低限からワンステップ上げてみるのです。

3Pを考える~誰でも打てる35~” への6件のフィードバック

  1. この記事を読んで気になったのはFT%が急上昇したDJが3Pにまで手を出すのかと、昨季から3Pを打ちはじめたものの戦術的な匂いがしなかったドラモンドが成長してくれるかです。前者はネッツだし仕込まれそうな気がしてて、後者はあんまり改善しなさそうな気がしてます。

    1. ネッツは3Pタイプとエド・デイビスみたいなインサイド専任をわけるので大丈夫な気もします。最近はジャレット・アレンに3P打たせるの辞めましたし。
      というか、それよりもデアンドレはネッツらしさのかけらもなくて・・・。

      ドラモンドは打つ必要ないのですが、グリフィンと組むとなると難しいみたいですね。

  2. 記事に関係無いことで申し訳ないのですがwhonotさんならロケッツの残り一枠誰を入れますか?
    まだシーズンも始まっておらず判断材料がほとんどない状況ですがご意見を頂きたく存じます。

    1. ご指摘の通り、残り1枠はシーズン始まってから考える余裕枠としておきます。

      今のところ、どう考えてもタッカーの控えとウイング不足です。
      理想は1枠を使ってトレードで両者を手に入れること。

      そしてアンソニー・ベネットがGリーグ並の3Pを決められるかなんかも判断基準かと。

  3. 仮に姚明が15年程遅く生まれていたら現代NBAでどんな選手になっていただるうかと考える事があります。
    あの時代7フッターとしてはノビィツキーの次にシュートが上手かった彼はむしろ現代NBAの方がフィットしたかもと考えたりもします。
    ゲームペースが高速化した今は負荷管理に更に気を割かなければいけないだろうとは思いますが。

    1. 確かにヤオ・ミンがただのデカい選手でなかったのは、より動けてスキルを持っていたからでした。
      今の方が多くの能力を発揮するチャンスが大きいですね。

      ただエースキャラになるのが難しい時代でもあります。そこも難しいかも。

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