2019プレーオフ クリッパーズvsウォーリアーズ

修正を重ねる両チーム

ウォーリアーズはボーガットを辞めてリビングストンがスターターです。この変化はいろいろなことを物語りますが、最大の要素は「ウォーリアーズがクリッパーズに合わせないといけない」ってことです。

これまでロケッツくらいにしか合わせていなかったのに、自分たちの強みを全面に出す方法よりも、相手に応じた対応を優先しなければいけません。なお、試合中は毎試合のようにやっているから、問題があるわけではない。

◉早々に修正したいこと

ゲーム4から続くオフェンスの問題点は「ドレイモンドが役に立たない」ってことです。だからべバリーが自由になっていました。「ディフェンスで自由になっていた」っていうね。

その延長線上でボーガットがいると得失点差が大きくマイナスになり苦労したのですが、これはドレイモンドがインサイドで強くないので、ミスマッチを全く生かせておらず、かといってボーガットにマークされているガリナリがヘルプというか、リバウンドに参加してくるって事でした。

ボーガットが悪いってよりも、ドレイモンドが役に立っていないから、インサイドの人数を減らしたようなスティーブ・カー。この点ではゲーム5の後半もドレイモンドにはインサイドに立たせました。でもボーガットもいたからさ。

なお、ディフェンスはやっぱりボーガットの方が問題だったことは付け加えておきます。

そんなわけでオフェンスリバウンドに参加して、相手がべバリーだから押し込むドレイモンド。ポストアタックは完膚なきまでに止められますが、さすがにリバウンドでべバリーは完敗です。

さらにデュラントとカリーがドライブからのシュートを決めていく通常通りの良いオフェンス・・・と思いきや、リビングストンのシュートが決まらず、ドレイモンドも確率が悪く。スターが個人技というパターンに留まっています。

その間に、順番に素晴らしきアタックをしていくクリッパーズ。ガリナリがデュラント相手でも物おじせずにターンシュートを決めれば、SGAはルーキーとは思えない安定感のあるプレーと、ドレイモンドに離されている事情から3Pも決めていきます。

またも豊作なルーキーにおいてSGAはトップから離されていますが、どんな相手でも通用するプレーをしているし、ディフェンスの成長も見込めるので、プレーオフの舞台でこそ意味のあるPGになりそう。

ところが、ルー&ハレルが登場したころから、流れが変わり始めます。

ひとつにはイグダラとルーニーが登場したことでウォーリアーズのディフェンスが安定したこと。オフェンスよりもディフェンスの問題って事。

この形はスティーブ・カーの好きなやつだよね。スターターが強力とみせかけて、大事な場面ほどイグダラかルーニーを混ぜている。地味な仕事ばかりする2人がカリーとデュラントを輝かせる。

そのディフェンスはルーを潰そうとしており、トンプソンが周囲との連携から上手くボールを奪います。そうしてディフェンスからの速攻が加わったウォーリアーズはあっさりと逆転します。

大切なのはクリッパーズの得点が止まったこと。残り4分半で23点まで進んでいたクリッパーズでしたが、そこからの3分で2点しか取れませんでした。

またルーニーがゴール下担当になり、イグダラがボールの配給役もこなす中で、ドレイモンドがポストでの中継役になって良いパスを出していくように。

よく言えばパスが上手くオールラウンドなドレイモンド
悪く言えばパスを出す相手がいないと役に立っていないドレイモンド

結局、1Qは35-31でウォーリアーズリードに。クリッパーズとしては作戦が成功していただけに勿体なかったのですが、イグダラとルーニーではなくリビングストンをスターターにして、ベンチメンバーで上回る作戦に成功したウォーリアーズという見方も出来ます。

トランジションの連続はデュラントを止めることが出来ない形になっており、特にジャマイカルがベンチに下がると苦しかったクリッパーズでした。

◉史上最高の

イグダラのスティール、vsテンプルでターンシュートを&ワンで決めるデュラント。NBAがなんだかんだいってもウイングが重要といわれるような内容です。

とにかくどうしようもないデュラント。1Qで足をひねったカリーがロッカーに下がる中で、1人で成立させています。それはつまりクリッパーズが避けようとしていたハーフコートの戦いです。

トンプソンとイグダラのディフェンスが驚異的なくらいにルーを止めてしまうので、オフェンスで対抗する手段に欠けているクリッパーズ。ゲーム3まではデュラント担当にしていたべバリーで攻守に対抗していたわけで、カリーがロッカーに下がって点も踏まえ、守り方を変更したカラミアンの考え方が揺れているかもしれません。

タイムアウトからデュラント起点を増やし、ボーガットも登場します。さらにレフリーの意味不明なコールもあって、1人でオフェンスを構築しているデュラント。コールについてはデュラントは悪くないよ。

つまりデュラントと仲間たちにして、その仲間たちはデュランス優先の考え方です。なお、守ってもルーを守り切り、そのままトランジションの中でキャッチ&シュートのデュラント。えぐ過ぎる。反則過ぎる。

2Q開始から4分ちょっと。ウォーリアーズの得点は13点。デュラントの得点は13点。

カリーも戻ってきたことで、個人技の時間からバランスを取り始めるウォーリアーズ。ドレイモンドのパスはべバリーが読み切り、カリーのアタックも止めるのですが、デュラントはやっぱり止まらない。

あまりにもデュラントで、クリッパーズはトランジションに移行できなくなりました。ゲーム5のコメントで「苦しくなった時にフリースローなんかを稼いでキープした」ってのが良かったクリッパーズですが、この時間はそれが出来ません。

ルー&ハレルがベンチってのもありますが、そもそもそういうことをチームとして狙っているのか疑惑があるので。ただ、3Pとゴール下よりも多くの事をやりたいクリッパーズの良さが、そんなプレーを導き出していたとは思っています。

そのルー&ハレルになっても、やっぱりオフェンスが成功しないクリッパーズ。なんとかトランジションからガリナリのミドルが決まったくらい。「トランジションからミドル」って笑っちゃうよね。でも、それもクリッパーズ。

どんどんディフェンスが苦しくなるクリッパーズ。どうしてもデュラントに張り付く必要があるジャマイカルなので、ヘルプにはいけません。当然ね。ルーニーにしろイグダラにしろ、しっかりとスペーシングしたうえで空いたスペースを使っていくので、ウォーリアーズはイージーシュートも増えていきます。

ゲーム5でも得点はとられまくっても「イージーシュートを打たせない」という形が成功していただけに、いろいろと失敗しているクリッパーズなのか。全てを成功に導いたデュラントなのか。

〇前半のデュラント
38点
FG 12/17
3P 4/8
FT 11/11

ウォーリアーズが奪った72点のうち38点がデュラント。

質と量の戦い

そんなのウソでした。正しくは

史上最高のオフェンスマシーンのワンマンショー

ってことで、一体全体どうすればよいのか。偉大過ぎたデュラントの存在は全てをかすませるのでした。前半1分半しかベンチに座らなかったデュラント。

そのひとつ1つのプレーだけでなく、尋常ではないスタミナ―はどうなっているのか。そして、クリッパーズはわずかな期待を胸に、スタミナ勝負に持ち込めるのか。少なくともトランジションを増やさないと苦しいぜ。

◉ディフェンスの戦い

遂に折れたリバースorカラミアン。ゲームプランとは違うであろうデュラントにべバリーのマッチアップへの変更します。するとコーナーに行ったデュラント。ひょっとするとウォーリアーズもまた「リードがあるから、しばらくはデュラントを封印」と考えたかもしれません。

これに対して奮起したのがSGA&シャメット。デュラントはべバリーが観てくれるからとばかりに、カリー周辺を追い回し、スティールからトランジションに移行します。

また地味にあったのは、ジャマイカルがデュラントではなくなったのでカバーリングの人数が増えたこと。べバリーも含めて積極的にボールを狙ったディフェンスを支えています。

そしてオフェンスでもSGA&シャメットで後半開始早々に7点を縮めます。あぁ素晴らしきルーキー。

タイムアウトのウォーリアーズは、やっぱりデュラント。連続3P。ただし、デュラント以外はカリーもイグダラもリビングストンも外します。だから広がらない点差。

ただ、イグダラが登場するとまたもディフェンスが締まります。パスで動かしていくクリッパーズだけど、全く崩れないウォーリアーズディフェンス。

なので次第にウォーリアーズペースに。そんなにシュートは決まっていないけど、守れているからリズムが出てきます。ルーが登場しても流れは変わらず。

こう見ると「ゲーム4でルーを完封した」のに「ゲーム5でルー&ハレルにやられた」ってのが、ちょっとよくわからなくなってきます。1つにはファールコールの違いがあり、ホームだけど一方的にクリッパーズが困っています。

それはシューティングファールが減ったということで、コンタクトを嫌がるウォーリアーズという風にも映ります。思い切りの良いミドルも少なくなっているので、そこがキーになっていそう。

でもミドルが決まる続けるってことはないし、少しばかり決まっても3Pみたいに怖くはないよね。っていうそれなりに現代的な考え方だと思います。

ということで、3Q残り2分になると逆に21点差に広がります。前半同様にクリッパーズが陥ったのは「点が取れない」っていうこと。オフェンスはなんだかんだでデュラントいるから、守れれば勝てる状態。

セーフティリードもあるし、スローダウンして堅実にいけば問題なさそうなんだ。タイムアウトも使って慎重に進めているスティーブ・カー。さすがに2試合も大逆転負けを食らうわけにはいきません。

◉さようならクリッパーズ

さて、さようならクリッパーズの時間ですかね。

シーズン全体の事は以降に振り返るとして、このシリーズについて触れましょう。終わってみれば4勝2敗で突破したウォーリアーズなので「1位と8位」と考えれば苦戦したけど、「57勝と48勝」と考えれば順当な結果だと思います。

ゲーム2が31点差の奇跡の大逆転だったこと
べバリーを使ったディフェンスの工夫

というので、クリッパーズが大きなインパクトを残したシリーズでしたが、やっぱり戦力差は補えませんでした。でも「質と量」だから戦力差がどれだけあったのか、となります。

キーになっているのはズバッツとジェローム・ロビンソンで、この2人をもっと起用できれば量のメリットが出たはず。勝利したとはいえ、ガリナリが41分もプレーしたゲーム5ってのは微妙なラインだったかもしれません。

なお、4Qにマッキーニーやボーガットも登場している事もあり反撃しているクリッパーズですが、ジェロームもプレーしています。選手のベーシックラインが向上しているNBAなので「元気な選手が強い」というシンプルな答えだったりします。

非常に素晴らしいゲームプランを用意してきたドッグ・リバースでしたが、相手がウォーリアーズってことを強く意識しすぎた面もあります。

カラミアンがHCやったら上手くいかないと思うのは、偏ったACにバランスをもたらすHCという組み合わせだからこそ機能しそうだからで、クリッパーズは大胆な作戦を採用しながら、全体でみればバランスアタックでした。

それがデュラントという存在に、偏ってしまったゲーム6。一方でオフェンス面ではデュラント頼みでも、ディフェンスは全員で対応するぜっていうウォーリアーズでもあります。昔はもっと偏っていたけどね。

ディフェンスの話をすると、両チームの違いってのもありました。これはシリーズというよりも、大きな流れの中での変化です。

シャメットが非常に戦略的な守り方をし、それでいてカリーに張り付くようなチェイスディフェンスを披露しましたが、シクサーズ時代よりもディフェンスでインパクトを与えており、何なら将来のクレイ・トンプソンってくらい期待されそうです。

べバリーやSGAも含め、さらにはデュラントとデートしていたジャマイカルといい、カラミアンがもたらしているディフェンス力は「個人を上手く守る」方法論が中心になっています。そこにカバーが組み合わさる。

一方でリーグに革新的なトランジションゲームをもたらしながら、ディフェンス力を維持したウォーリアーズのロン・アダムスACは、ローテーションやヘルプディフェンスの面でディフェンスを構築しています。

カラミアンの作戦の中心がべバリーによるエースキラーなら、アダムスの作戦の中心はイグダラによるスーパーローテーションディフェンスです。どちらも個人としてはもう一方でも力を発揮しているけどね。

ゲーム6でもキーになったのは、量で攻めてくるクリッパーズのバランスアタックに対して、マッチアップバランスを崩さないという事。当然ピックやハンドオフで動かしてくるクリッパーズですが、少し穴が開いてもすかさず埋めるチームディフェンスがありました。

加えてルーに対しては、イグダラが守っているようでいて、実質的にはピックなどで剥がされた後のカバーリングの的確さが活きています。剥がされたイグダラが次の選手を見つけるスピードは異常です。

今、これを書いて失敗したと思うのは、カラミアンvsアダムスで1つの記事になりそうじゃない。よし、書き直そう。

◉粘るクリッパーズ

試合はクリッパーズが粘ります。メンバーを落としていたウォーリアーズですが、デスラインナップ+ルーニーに戻します。これで逆転されたらシャレにならん。

何が起きているかというと、1つにはべバリーがデュラントを苦しめており、だけどデュラントからしても大きなリードがある中で、わざわざここで攻める理由がありません。

パスを振っていくデュラントですが、ボールを貰うと決定的なパスを出しているドレイモンドを除いて、どうもピリっとしません。カリーが必死になって得点を取りに行くのが精いっぱい。

それに対して、さすがに4Qまで来たので吹っ切れているし、強気に攻めるしかないという感じで攻めていくクリッパーズ。ただし、こちらも次第に3Pが決まらなくなります。

デュラントもカリーもいないクリッパーズですが、そこをルーで何とかしてきたシリーズ。でも、さすがにそれだけでは対抗しきれなくなってきました。やっぱりトバイアスが欲しかった。トバイアスがいれば、序盤を任せ、ルーは終盤に集中できただろうなと。

そして残り2分半でルーとべバリーがベンチに下がり、終戦モードになったのでした。

ゲーム6でキーになったのは当然デュラントですが、そのデュラントの影に隠れてペイント内の得点差に違いが出ています。

〇ペイント内 GSW-LAC
ゲーム1 42-40
ゲーム2 42-50
ゲーム3 42-52
ゲーム4 42-36
ゲーム5 38-54
ゲーム6 62-42

つまりゲーム3を除いてペイント内得点が多い方が勝利するという、オールドチックな結果です。なお、数字はオールドですが、その中身は「ヘルプに潰されない」形の現代型です。ルー&ハレルとか、ディフェンダーがいたら外すルーニーとかさ。

そしてゲーム6は大きな差がでました。耐え切れなかったクリッパーズです。それでも3人のルーキーをローテに加えながら、そしてスターが足りない中で素晴らしき戦略性を発揮したことは大いに印象に残りました。サンダーとか戦略のかけらもなかったし。

その強みは20点離れても粘り強く戦えるメンタリティです。正直、戦術的な注目点よりも、そんな不思議な強さがあったクリッパーズ。マジックとちょっと似ているけど、マジックよりもオフェンス力があった。

ある意味、昨シーズンのペイサーズみたいなシーズンとなったわけで、オフの最重要ターゲットにも大きなアピールが出来たファーストラウンドとなり、その最重要ターゲットさえいなければ勝利していた可能性もあったと感じさせてくれました。

さようなら。現代NBAの難しさを大いに発揮してくれたクリッパーズ。

2019プレーオフ クリッパーズvsウォーリアーズ” への7件のフィードバック

  1. ロケッツはもうオラクルに入って練習してるみたいですね

    選手や陣営がこの試合を観ながら対策を練ってると妄想すると胸が踊ります

  2. クリッパーズは2月でタンキングモード突入かと思ったのですが、まさかそこから2ヶ月半も楽しませてくれるとは。望外のプレーオフに出るだけでなく、一生忘れないほど印象的な勝利も2つありました。
    サヨナラ、クリッパーズですが、もう気持ちは夏のFAマーケットです。何てったって59Mのキャップがあります。2人FA獲れれば一気に優勝候補。来シーズンが楽しみです。

  3. KDは存在が反則…。

    ただでさえ勝たせる力を持つ選手がレブロンに対抗出来ていた通算得点のペースを平気で落とし、自ら給料まで抑えてしまうじゃないですか。

    ネッツに移籍して急にお金お金と言い出して人間らしさを見せてくれないですかね…。

  4. KDに対して十分ラブコール出来たと思うので、クリッパーズのPO進出は実りがありましたね。若手達もいい経験とアピールになりましたし。SGA、シャメット、ロビンソン、素晴らしい。

    NYKより断然こっちに行くべきでしょう。

  5. 毎日更新お疲れ様です。

    3Q辺りで、シャメットがスティールしてシャイとの2メンからアーリーで3Pを決めたところはマジクレイしてましたね。
    もしかして、このシリーズが”何か”の始まりなのかも…と感じさせなくもないプレーでした。

    「元気な選手が強い」はほんと同意です。
    今はいろんな要因から、40分ハイパフォーマンスを維持することは不可能ですよね。
    個人的に24秒もOR後14秒も好きじゃないのですが、スピード化が進むとしても、結果としてペイサーズやクリッパーズ、去年のラプターズのツープラトンみたいに、量で勝負するチームが増えるのなら悪くないかなーと悲観せずに見ていきたいと思います。

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