さようならペイサーズ

今シーズン初めに消えたのは、まさかの5位シード

「さようなら」シリーズは割と良い感触なので、しっかりと書いていきたい題材なのですが、内容を考え、データを調べ、文章を構成していると、休みのないNBAプレーオフではあっという間に置いて行かれることがわかった昨シーズン。

出来るだけ全チームについて書きたいから、構成もデータも気にしないで書きなぐることにします。なお、1番厳しいのは意外にもカンファレンスファイナルで負けたチームです。ファイナルのプレビューとかを考える必要があり、しかもカンファレンスファイナルまで進んだのだから、内容的にも考えることが多いよね。1年前はセルティックスが課題でした。

そんなわけで随時書いていきますが、まさかペイサーズが4連敗とはね。結果とは違いセルティックスとの力の差は感じないシリーズでしたが、非常に相性が悪い組み合わせでした。加えてペイサーズの問題点がハッキリと示されるシリーズにもなりました。

◉ペイサーズのオフェンス改革

昨シーズンは「タンクチーム」とまで予想されていながら、快進撃をみせたペイサーズ。そして管理人的には「ペイサーズは良いチームだから必見」とシーズン前から予想して当たったことで、ブログの価値を高めてくれたチームでもあります。ネッツもね。

レブロンキャブスをあと一歩まで追い込んだチームに課せられたテーマは「オフェンス改革」で、素晴らしいディフェンスと拙いオフェンスの組み合わせは、明確であるが故に取り組みやすいものでした。

オラディポの個人技に頼るシステムを改善するために取り組んだのはオフボールムーブから生み出される得点。カットプレーでイージーシュートを増やしたかったわけです。プリストン的な考え方でボグダノビッチを中心にゴール下カットが増えていきました。

〇パス数 298→307
〇アシスト数 22.2→26.0

その結果は明確に出ていて、パスが9本増えただけなのにアシストは3.8本も増えています。

〇ペイント内得点 44.7→48.9

そしてペイント内得点が増えましたが、昨シーズンのトップはオラディポの8.6点。ケガで離脱しただけでなく今シーズンは5.8点とエースが大きく得点を落としながらも、チーム全体ではペイント内得点を増やしたのです。

目立たなかったけどペイサーズのオフェンス改革はそこそこ機能しており、オラディポ離脱後も勝率を落とすことなくプレーオフに辿り着いています。

中核になったのはサボニス。パス数51本、ペイント内得点9.6点で6thマンながらチームオフェンスの中心を担っていました。でも、この話をすると長くなるからオフシーズンにでも。

◉問題があったプレーオフ

ペイサーズが力の差を感じなかったのに4連敗したのは何故だったのか。その答えは極めてシンプルです。

〇4Qの得点
セルティックス 112
ペイサーズ 90

点差がついた第1戦こそ追い上げたことでペイサーズの得点が多くなりましたが、とにかく終盤で弱さを見せました。28のFG成功のうち15アシストですが、平均から考えると少ないだけでなくターンオーバーが14もあったので、オフェンスパターンが通用しませんでした。

特にひどかったのはマイルズ・ターナーで4試合で0点。シュートを打ったのはわずかに3本と期待されたエースとしての存在感を全く発揮する気配すらありませんでした。

ペイサーズが行ったオフェンス改革がカッティングを増やすことだったのはターナーのアウトサイドシュートやスクリーンがあってのものです。これがないならば、やっぱり個人突破が中心になっていきました。

オラディポがいなかったこと。それが非常に大きく降りかかったプレーオフでしたが、そもそもオラディポに頼らない形を求めていたはずじゃないかと。 ディフェンス面で大きな働きをするターナーですが、そのシュート力がチームにもたらすメリットが大きいと判断されてのスモールラインナップでもあります。

ある意味、ターナーがアウトサイドから得点を量産してくれたなら、ペイサーズのオフェンス改革は大成功だったかもしれません。平均13点ながら20点オーバーは8試合、30点オーバーはゼロと爆発力に欠けたターナーは、プレーオフでも全く得点してくれませんでした。もうスコアリングの面で信用されることはないでしょう。

そんな勝負どころのターナー問題だけでなく、このシリーズのクラッチタイムレーティングは信じられない数字になりました。

〇クラッチタイムのレーティング
オフェンス 81
ディフェンス 156

酷かったオフェンスですが、それだけでなくディフェンスの崩壊も目立ちます。セルティックスのオフェンスに粉砕されているようでは、他のチームにも勝てなかったでしょう。なお、昨シーズンもレブロンにボコられていますが、オフェンスは61しかなかったので得点できないことの方が問題でした。

あれ、ちょっと変な話です。「オラディポがいなくて苦しい」といいつつ、オラディポいた昨シーズンの方がオフェンスが上手くいっていなかったわけだ。

そんなわけでディフェンスだって問題だよね。

◉クラッチタイムとチームカラー

あまり知られていないことですが、ペイサーズはクラッチタイムに強いチームです。レーティング差はリーグ2位の13.3で接戦に勝てるからこそ好成績に繋げてきました。

〇シーズンのクラッチタイム
オフェンス 113
ディフェンス 100

しかし、これだけの数字を残しながらもプレーオフに向けて課題があったのも事実です。

〇クラッチタイムの成績
オールスター前 17勝9敗
オールスター後  6勝9敗

withオラディポ 6勝4敗

つまりシーズン終盤になると勝てませんでした。急激に接戦に弱いチームに変貌しています。オラディポが関係あるようで、そうでもないというデータもついてきます。このクラッチタイムの弱さで勝率を下げていました。

オールスター前は38勝20敗
オールスター後は10勝14敗

ペイサーズは数字以上に弱くなってプレーオフを迎えていたと言えます。その理由をオラディポに求めるのは、ちょっと難しい。

だから、気になるのは補強したマシューズの存在。プレーオフでは特に目立ったシューティングの悪さとカイリーに対抗できないディフェンス力でしたが、個人的にはそういう部分よりも、ペイサーズの持つ驚異のラッシュ力がマシューズの存在で止まっていた気がすることです。

クラッチタイムのペイサーズは別に素晴らしいオフェンスをするわけではなく、その試合ごとに好調な選手をうまく組み合わせ、ディフェンスから怒涛の速攻で粉砕するスタイルです。

オラディポがいれば個人で驚異的なディフェンスという武器もあったのですが、いないときは個人よりも的確かつ高速のヘルプディフェンスでチームとして潰していくイメージ。ここにあまりハマらなかったマシューズでした。

ただ、もちろんマシューズ個人の責任にしてはいけません。どちらかというとチームバランスが崩れたということがポイントで、全員がハードワークするだけでなく、特定の選手ではなく全員で守り抜く形がペイサーズスタイル。

そしてボールを奪った瞬間の切り替えの早さは特筆すべきものがありました。どれもこれも、見えにくい「際の攻防」という部分です。

ペイサーズの強さはチームの結束力

なのですが、結束力だけで勝てるわけじゃありません。それをプレーで表現すると、ディフェンスでは空いたギャップを埋める速度と、次にできた穴を埋めるローテーション力であり、オフェンスでは攻守の切り替えで一瞬前に出ていく速さと、誰もが追いかけるスタミナです。

つまりどれも「個人技」ではなく「チーム戦術」として評価されるような部分であり、助け合いの部分だし、協調性の部分なわけです。だからチームワークが特別なチームでした。

マシューズ(とエバンス)は個人としてはしっかりとプレーできる選手です。そこに否定する要素は何もありません。しかし、この「際の攻防」に強いタイプかというと、クエスチョンマークが浮かんでしまいます。

少なくとも「攻守の切り替え」や「読みの鋭さ」で勝負しているわけではありません。だから個人がどうこうではなく、チームカラーとして見えない形で失われていった要素に問題があった気がするのです。しかもホリデーがそこに強いタイプなのでなおさら。

朝起きて、電源を入れたら第4戦の4Qでした。その時はペイサーズがリードしていたのですが、怒涛のようにシュートは決まらずミスが続き、一方で全く守れませんでした。

それはこれまで観てきたペイサーズ像とは大きくかけ離れた姿。どんな状況でも常に粘り強く対応していき、じっくりとチャンスを待って、流れを掴んだら一気に噛みつく。そんなチームカラーとは違いミスから意気消沈していったのでした。寂しいね。

◉解体なのか?

シンデレラチームも1年経てば立派な有力チームです。目立った補強がなくても「今シーズンもやってくれるはず」という大いなる期待を抱かせながら「今シーズンもそこそこ上位」という『そこそこ』が離れなかったペイサーズ

そんな評判を打破するにはプレーオフで勝利するしかなかったのですが、残念ながらスイープ負けという最悪の結果に終わってしまいました。

そして、この敗戦はシンデレラチームの解散をも意味します。

中心となるオラディポ、ターナー、サボニスは契約が残りますが、ヤング、エバンス、ボグダノビッチ、コリソン、ジョセフ(サラリー順)の契約が切れることになります。

オラディポこそサラリーが高いものの、それでも各チームのエースクラスに比べたら安く、そして手ごろな値段の好選手たちを集めたのがペイサーズでした。中核を担っていた選手の契約が切れることで、全員をキープするのが難しく、総サラリーがリーグ25位という驚きチームは、その優位性を保てなくなります。

プレーオフで勝利していれば大物FAという道筋もあった気がしますが、いろいろと厳しくなってきました。おそらくボグダノビッチを残し、次にコリソンを狙い、ヤングとジョセフにはお買い得価格での契約を目指すでしょう。それでも様々なバランスが崩れてしまいます。

特別だったペイサーズ。最強のチームではなかったかもしれないけど、最高のチームだった2年間。勝利だけが全てじゃない中で、魅力的なチームでした。

「チームワークが大切」

そういうけれど、一体チームワークって何なのか。ちゃんと説明できる指導者なんて殆どいないはず。そんな言語化することが難しい要素を、このチームは明確に示してくれました。

高度に戦術化されたわけではないのに、個の繋がりがもたらす特別なチーム力ってのは、個々の存在を際立たせてくれもしました。『スーパースターはいなくても、誰もがスター』なのがペイサーズ

高いシュート力がありながらボールを回してチームメイトを活かしリズムを生み出すコリソン
高速ヘルプにエースキラー、苦しい時にこそ働きまくるヤング
身体能力は低いのに攻守の切り替えの早さで誰よりも前を走るボグダノビッチ
適切なオフボールムーブと体の向きに地味なスクリーンでパスコースを作っていくサボニス
空いたスペースを埋める達人にして、ゲームコントロールの達人ジョセフ

オールスターにステップアップしたオラディポとブロックキングになったターナーを中心に設計されたチームは『個人技ではない、チームとしての個の強さ』を存分に発揮してくれました。それがチームワーク。

ランス・スティーブンソンもいくつもの勝利をもたらしてくれたし。それ以上に面白ろキャラだったし。 あ、あとアル・ジェファーソンも面白かったよね。

そんな特別なチームの最後としては、とても寂しいエンディングでした。チームは誰もが平等に主役であると体現した特別なチーム。それが上手く機能しなかったラストゲーム。

#GoldDontQuit がペイサーズのハッシュタグ。耐え切れなかったラストゲーム。

さようならペイサーズ

さようなら特別なペイサーズ

まぁ、なんか結果的には全員戻ってくる気がするんだけどね。


さようならペイサーズ” への9件のフィードバック

  1. 噂になっているFA事情ですがマブスはケンバのようなスコアリングpgをとるのではなく高性能なコンボガードのコリソンをとった方がドンチッチと合う気がするのですがどうお考えでしょうか

    1. そもそもドンチッチがボール持ちすぎなので、コリソンをオススメします。ディフェンスもコリソンが上ですし。

      1. なるほど
        管質問を重ねて申し訳ないのですが管理人先生ならケンバにしろコリソンなどのガード補強かブランソンを信じてブチェビッチやまさかのdj出戻りみたいなセンター補強ならどっちを選びますか?

        1. ブロンソンでもコリソンでも、どちらでも良いけど、最低でももう1年はじっくり構えたいので、短期ではなく長期で考える選手を集めます。ジャスティン・ジャクソンなんか、成功か不成功か、ではなく将来を考えられる点で良かったと捉えています。

  2. バックスを倒すならペイサーズだと思うんですよね…
    だからもう一年見たいチームです(契約上無理なのは承知)
    セルツは良くなってる気はしないですし(むしろこっちを解体してほしい)

    1. おっしゃる通り、セルティックスはペイサーズに強いけど、バックスに強いのはペイサーズですね。ペイサーズというかヤングというか。
      もしもブラウンがヤニスを止めきるなら面白いですが、苦手なタイプなんですよね。

    2. 全くもって中身について話さないのでずれまくりで恐縮ですが。自分もチームワークの良い仲の良いチームが好きです。
      セルティックスはそういう意味で応援する気がどうもしない。
      今日もうずくまるカイリーに誰も手を差し伸べない。
      ネッツやペイサーズには一体感を感じます。
      で、人間がやることですので仲の良さはプレー内容的にチームワークの良さにも繋がると思っています。
      別に仲はよくないけど強いってのは90年代のブルズのような究極の真のプロフェッショナル集団か妄想のなかの湘北高校かだけだと思います。
      練習中殴りあった二人がその後勝負どころで「空いてたら俺にパスしろ、絶対に決めるから」という会話の後にその通りの決勝シュートが生まれるのなんてファンタジーが現実だった凄さ。
      これまたずれますがミラー時代からペイサーズは好きですがオラディポのカムバックも含め全然応援します。

  3. 残念ながら、さようならシリーズのトップバッターになってしまいました。
    全員とはいかないでしょうが結構戻って来てくれる予想です。ボグダノビッチが一番高くなるでしょう。ついでにランスも帰ってきて欲しい。
    敗因はこれからフロントが精査するでしょうから、後は信じて来シーズンを待つのみです。
    プレーオフはまだまだ続きますが、お先に失礼します。来シーズンもよろしくお願います。ありがとうございました。

    1. 1年前に「オフって書くことがない」と思いましたが、オフの方が試合を見る時間を省いて書けるし、データも動かないので、それなりにかけることがわかりました。

      オフシーズンもよろしくお願いします。

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