レナードはラウリーが嫌いなのか

刺激的な内容になるかもしれません。ドギマギ!

ゲーム4を観ていて大いに気になってきたシーンがありました。それはラウリーが3Pを外したけど、レナードがオフェンスリバウンドを抑えた時。マジックのディフェンスは収縮してレナードを潰し続けるこのシリーズですが、リバウンドを取られても素早く囲みました。

その瞬間、ラウリーはドフリーになっていました。そのラウリーの方向を向いていたレナードは迷わずパス

・・・するかと思ったら、パスモーションから迷うようにしてパスの方向を変化させコーナーにいたダニー・グリーンへ。

このプレーはディフェンスの次の動きを読んだと評価できる一方で、さすがにパスカットできるほどラウリーの近くにディフェンスはいなかったし、ラウリーに出しておいてエクストラパスという選択肢もあったはずです。スパーズらしさはそっちかな。

ファーストラウンドはここまで3勝1敗。ラプターズはディフェンスの良さでテレンス・ロスのクレージーな活躍と、裏をかいてくるオーガスティン以外には殆ど困っていません。

その一方でオフェンス面ではレナードが潰されるシーンが目立っており、体調不良(インフルみたいな)という事情を差し置いても、というか体調不良だからこそ早めにパスを振れば良いのに、それよりも自分でインサイドに行く選択が多いレナードは奇妙でもあります。

そんな折に出てきたこのプレーは、レナードがラウリーにパスを出すことを嫌がっている、あるいはレナードがいて欲しいポジションにラウリーがいない、そんな連携面の問題を提起したくなります。またゲーム1でシュートを外しまくったラウリーへの信頼が薄い可能性すら出てきます。

その点ではシーズンを通してラプターズはレナードがボールを持つとオフボールの動きが消えていく傾向があり、それでもラウリーがいれば1人で動きを作るし、レナードを囮にさえするゲームメイクがありました。

要らぬ憶測をすればレナードがやりたいことと、ラウリーのプレーに疑義が生じていのです。多分、そんなことはないのだけどね。

そんな心情的な話は別にして「ここが気になった」から「数字で調べてみる」のがこのブログの本質です。最近は本質から大きく逸脱しているので、ワンプレーから調べてみたくなったのは楽しい楽しい。

◉ラプターズのパスゲーム

まずはラプターズ全体の数字から。シーズンとプレーオフでは傾向値が変化しますが、とはいっても様々な相手と戦うシーズンとは違い、プレーオフでは『マジックのディフェンスが』という条件が大きいので、シーズンから大きく逸脱していなければ通常の範囲内です。シーズン→プレーオフです。

〇パス数 299→301
〇アシスト数 25.4→24.3

こう見ると割とシーズン通りのプレーが出来ています。マジックのディフェンスはリーグトップクラスの数字で、実際にラプターズも苦労しているわけですが、試合の印象に反して通常通りのプレーが出来ている様子です。

〇アイソレーション 7.7回→8.0回
〇 〃    得点 7.2点→8.5点

プレーオフでは増えていくアイソレーションですが、ここまでのところ大きな変化はありません。しっかりとパスを回すプレーに時折アイソレーションが混じる程度。そして得点率が伸びており、むしろ効果的に混ぜ込まれています。

同じくアイソレーションをレナードのみにしてみます。

〇 アイソレーション 3.9回→4.3回
〇  〃    得点 4.1点→4.0点

レナードについては少し抑えられ気味ですが、悲観するほどの落ち方ではありません。絶対数が少ないので1,2回連続で決めれば逆転する数字。ただ、やっぱりアイソレーションは少し増えているし、わずかではありますがチームメイトが仕掛ける回数は減ったわけです。プレーオフ仕様。

ちなみにテイタムは平均5.0回仕掛けて2.3点しかとれていません。全く解決していない問題がありますよと。

また、レナードの個人スタッツを確認するとゲーム3をFG5/19と体調不良の影響を強く感じさせたのですが、4試合トータルでは素晴らしい数字を残しており、こちらもアイザックとゴードンに苦労している印象とは大きく異なります。

〇得点 28.0
〇FG 53%
〇3P 43%
〇アシスト 3.3

シーズンを上回る成績になっており、マジックの問題はレナードを抑え込めていないことになるのです。ただし、ターンオーバーだけは2.0回→3.0回に増えており、ミスを誘い出す形はしっかりと作り出せているマジックディフェンス。

アイソレーションの効率はそこまで良くない一方で総合的な数字は改善していることから、インサイドで囲んでくるマジックディフェンスに対して『チーム全体でレナードに効率よく得点を取らせる』事が出来ているといえます。この前提は大切です。

実際にフォーニエにマークされていたラウリーが、レナードに対してスクリーンに行くことでスイッチ対応を難しくしてからのインサイドへのカットプレーなんかは非常に有効でした。ガソルがトップにいることも含めて、レナードがやりたいプレーがやりやすい工夫は存在しています。

◉ラウリーのプレーぶり

PGラウリーはゲーム1のシューティングスランプが目立ちましたが、PGとしての役割をしっかりと果たせています。

〇得点 10.8
〇FG 39%
〇3P 28%
〇アシスト 8.5
〇ターンオーバー 3.3

ゲーム1の醜態から得点面で数字は悪いのですが、アシストだけはしっかりと結果を残しています。それはレナードが関係している気がするでしょ。でもそうではないのです。このアシスト8.5をもう少し分解してみると

〇ラウリーのアシスト先
レナード 0.5
シアカム 2.5
ガソル 1.5
イバカ 1.5
グリーン 0.5

こうして面白いくらいスパーズコンビにアシスト出来ていません。なお、ローテ的に一緒にプレーする時間は減らされており、イバカが多いのはセカンドユニットに混ざるからです。

とはいえ、レナードには平均12.5本のパスを通し、そこから4.0本のシュートが生まれているので、パスをしていないわけではありません。レナードがラウリーのパスからキャッチ&シュートで決めるシーンが少ないだけです。

このシリーズでレナードは42本のFGを成功させていますが、そのうちアシストがついたのは15だけです。1試合で4本平均ですね。シーズンの平均は3.4本なのでプレーオフの方がちょっとだけ多くなっています。でもラウリーのパスからは決めていないわけだ。

なお、グリーンについてはFG29%とラウリーのパスからシュートを決めることが出来ていません。シューター的な役割なのにPGラウリーとの相性の悪さを感じてしまいます。今のラウリーはドライブキックアウトタイプではないので、ムービングしないグリーンは使いにくいのかもしれません。

〇レナードへのアシスト数
ガソル 5
シアカム 4
グリーン 3
ラウリー 2

4試合トータルのアシスト数です。こう見てもラウリーが少ないことがわかります。繰り返しますが、パスの数は12.5本と多いけれど、アシストは発生していないわけです。

レナードはラウリーが嫌いなのか。ってのはこういう事なのでした。

◉レナードtoラウリー

PGのラウリーはボール運びのためにパスを貰うことが多いので、被アシストは少ないけど、パスを貰う本数は多くなりがちです。シアカムから18本のパスを貰っていますが、アシストは0です。

〇ラウリーへのパス本数
シアカム 18.0
ガソル 16.3
グリーン 10.8
イバカ 10.3
レナード 7.8

こうしてまた仲が悪い疑惑を上げてしまいます。1人だけかなり少ないレナード。3.0リバウンドのグリーンですら10本を超えるのに、6.5リバウンドのレナードが8本にも満たないなんて。

それだけレナードがラウリーにパスを出していないということになりますが、そもそもレナードはパス自体出していないじゃないかと。なので、そっちを確認してみましょう。レナードがそれぞれに出したパス数。

〇パス数
ラウリー 7.8
ガソル 6.5
シアカム 5.5
グリーン 4.3
イバカ 4.0

なんだかんだでラウリーに一杯出していることがわかりました。よかったよかった。そもそもレナードがパスを出していないわけだ。次にアシスト数をみようかと思いましたが、サンプルが少ないので、レナードのパスからシュートになった回数をトータルで並べます。外したのはラウリーが悪いわけだし。

〇パスからシュートになった数
グリーン 8
ガソル 8
イバカ 6
シアカム 5
ラウリー 5

突然、順位が入れ替わります。注目すべきはグリーンです。17本のパスのうち8本がシュートに結びついているわけです。コーナー担当のグリーンなので、確かにパスを受けたらシュートになる可能性が高いのですが、それにしてもって数字です。

冒頭に書いた通り、「ラウリーがフリーでもグリーンを探した」感じのレナード。レナードのパスからラウリーがシュートを打っていないのは、いったいどんな理由があるのか。

その前についでだからグリーンを考えてみましょう。レナードのパスは8/17でシュートになっていますが、ラウリーの場合は7/38と非常に少なくなります。パス交換が好きなラウリーらしさでもありますが、訝しみたくもなるものです。

◉マジックの対策なのか

グリーンの数字をシーズンで観てみると、プレーオフで大きく変化した傾向が伺えます。

〇シュート数/パス数
ラウリー 2.3/6.9
レナード 1.1/2.7

シーズン中はもっとラウリーのパスからシュートを打ち、レナードのパスからは打っていなかったことになります。つまりは、マジックディフェンスがそこを狙ってきた可能性があるわけです。

同じくレナードとラウリーの関係性をみてみましょう。

〇シーズン中のシュート数/パス数
ラウリー→レナード 5.6/11.6
レナード→ラウリー 1.6/6.4

プレーオフと比べるとそれぞれのパス本数は少なく、シュート数は多い傾向があります。つまり、プレーオフになって「パスは出すけどシュートに結びつかない」ケースが激増したのです。

ひとつ考えられるのはマジックがオーガスティンとMCWでラウリーを優先的に守っていることです。レナードにはインサイドでこそ囲むけど、基本はゴードンとアイザックが個人で対応しています。なお、より抑えているのはアイザックの方。

ラウリーがシュートをかなり外していることもあって、レナードが愛想を尽かしたのか。あるいはマジックがプレーメイカー同士の連動を嫌がり、そしてシアカムやガソルを空けることを優先した事情が絡んでいるのか。

まだシリーズは終わっていませんが、マジックが大逆転を狙うにしろ、ラプターズがセカンドラウンド以降で戦う相手にしろ、この2人の関係性は少しねじれた形で推移しており、ひとつの狙いどころにもなっています。

ラプターズのオフェンスはラウリーあってのもので、ラウリーがいないとレナード一辺倒になってしまう危険性が高くなり、シュート力が課題のシアカムやリバウンドに参加しないガソルのデメリットが強く出てしまうでしょう。

ラウリーが上手く周囲をオフェンスに組み込んでこそのラプターズ。そして優勝のためにデローザンを上回るエースだからこそ迎え入れたレナードが個人技で勝負を決めるのが理想形。だけど両者が融合してこそ、オフェンスパターンが複数ある怖さが出てきます。

レナードはラウリーが嫌いなのか。その答えはNoでしょうが、コートで表現されているのはYesと言いたくなる現象です。

スーパーエースとPGがどのように絡んでいくのか。まずはラウリーがしっかりとキャッチ&シュートを決めるところから始めたいところです。



レナードはラウリーが嫌いなのか” への18件のフィードバック

  1. 初めてここにコメントするバスケの殆どを知らない素人ですが、管理人さんはラプターズが嫌い、若しくはマジックが好きだからラプターズを下げてるんですか?
    今年のRSの記事を見ても、ラプターズが負けた試合を主に取り上げて、レナード加入の弊害を全面に押し出してますよね。
    この記事で取り上げてるマジックの問題もgame4を見れば、上手く対応出来てきているのではないでしょうか。
    正直ラプターズを応援してる身としては、あまりいい気はしません。
    駄文失礼しました。

    1. この内容はそういう書き出しをしているだけで、ラプターズを下げているのではなく、単にシーズンとプレーオフの違いを書いているだけです。ラプターズに起こっている変化がマジックの作戦という可能性があるだけで、むしろラプターズだけを取り上げてデータを調べまくっているくらいで。
      レナード加入の弊害というのは、そもそも感じてなくて、それよりも脚が止まるようになった謎とガソル加入で選手の数不足は気になってますが。

  2. レナードの意識の変化じゃないですかね?わかりませんが。
    彼は証明することの優先順位がチームとしての成功に一元化出来ていないと思うのでプレーがすこしイビツな気もします。ラウリーというフランチャイズプレーヤーに対して無意識下での拒絶反応だったりして。
    まぁ少なくともトレード自体にはラウリーが激おこだったのは事実として知っているでしょうし。
    ラウリーはとっくに割りきっててもレナードってちょっと世間知らずというか変人だと個人的には思っているので笑。

    1. なるほどね。スパーズ時代との違いを個人的には見せつけたいという。でも意外とラプターズもチームオフェンスだしなぁ。

  3. 管理人がBOSを嫌いなのとかも伝わってくる
    ていうかカイリーについてこれない手下たちが嫌いって感じで
    BOSのことを「カイリーと仲間たち」とか言ったり
    カイリーが不在時に勝ってたことには意味がないみたいなこと言って

    1. 去年のセルツ見てて
      今年のセルツが嫌いじゃないやつなんてそんなにいないですよ…
      誰が悪いとかはないですけど(辛辣なことも言うけど私はカイリーファン)
      ファンの自分ですらそう思うのに
      あと管理人さんの考え方は逆かと思いますよ。

  4. 商業では書けない記事タイトルですね。来年レナード残るかわからないし、移籍してきた経緯もあるし、ファンの方は不快になりそうですね。
    まぁ、個人ブログですし、表に出てないだけで不仲もないとは言い切れませんがね…あれだけ休んで特別扱いされてれば。
    ラウリーをスコアラーとして信頼してる感じはないですね。ニックナースも全体のマネジメントのほうを任せてるみたいですし、チームとしてラウリーに得点はあまり期待していない、頼らないことにしていそう。

    1. 書いてる本人はラプターズ好きなのにね。
      ブログだから書けることってのが良いわけで、題名以外は過激でも何でもないのですが、商業的ではないですね。取材してないし。

  5. 面白い内容ありがとうございます。
    データブログらしく面白いです。

    ウォーリアーズだと、グリーンはボールを持つとカリーを探し、カリーはトランディジョンでトンプソンを探すイメージがあります。
    レナードがラウリーを嫌いではないとすると単にシューターを探しただけだったということでしょうか?

    1. おそらくマジックのディフェンス対策としてコーナーまで広く使うというのは作戦に組み込まれていたはずです。ゲーム4からは攻略してきたので、狙いでもあったと思います。ラウリーはマークされるし、スティール速攻が嫌だから、特に序盤はコーナー優先。

  6. ここ有料にした方がいいんじゃないですか?あんまり高いと困りますけど

    1. 1人月額100円で全員が加入してくれるなら、儲かるのでやりたいです。
      でも10人に1人だったら苦しいし、加入者が今後も増えるってのも考えにくいでしょうね。

      だから、いっぱい宣伝して読者を増やしてください。
      まぁ初見だと何書いているのか、理解できない部分も多いでしょうが。

      1. 八村の活躍次第では日本人のNBA人気も加熱していく可能性があるんじゃないかと

        1. だとしても普通に「八村のここがダメ」と平然と書くブログの読者が増えますかね 笑

  7. 活発な議論はいいですね〜
    他人の意見を受け入れられないような人もこのプログ読むんですね。それが驚き。

    あのシーンは今見直すとちょっと変ですよね。
    個人的に思うのは、立ち位置的な意味で、レナードもなかなか大変なんだろうなー ってこと。
    ラウリーはラウリーで、レナード立てつつ、オーガナイズしつつ、ヘルプディフェンスしつつw
    さらにシアカムとのホットラインが出来つつあると思うんです。そこがメディア的にもフォーカスが当たるので、なーんとなくレナードもモヤモヤしたり。
    そういう諸々の一端が出ちゃったのがあれなのかなー って感じました。

    1. それね。このブログって読むほうにも読解力だったり、ユーモアだったり、皮肉だったり求めているので。

      ラウリーとシアカムの相性が良すぎて、ラウリーが気にしてレナードにパスしている感じはありますね。
      ラウリーはやっぱり「動いて合わせる」タイプが好きだし、スパーズは動き回るけど既定のポジションを使う方が多かったですし。

      まぁシーズン中は違ったので、マジック対策ってのが大きな理由だと思います。

  8. こんばんは、とあるsasクラです。いつも楽しく記事を拝見しています。自分が観戦した試合と記事で取り上げられた試合が被った時は捉え方の違いを考察して、自チームに還元できないか試行錯誤しています。

    “データ”を見ながら語る、と銘打ちながら数字には現れない部分を表してくれるのがとても好きです。個人的に1番お気に入りのフレーズは”フィルジャクソンは性善説の人物”です。データ全然関係ないやん、でもなるほどな、本質です。ハードワークを重要視しているのも好印象です。

    (以前にも書かれていましたが)語り口が否定的なので、カチンとくる人がいるのも仕方ないのかなと。しかし自分の様に楽しみにしている読者が大半だと思います。応援しています。長文失礼しました。

    1. データを並べる理由って、逆にそういう事を書きたいからってのもあります。「データ以外が勝負を決める」というのが何なのか。
      それはデータ並べないとわからないよね。という。

      つまり世の中は相反性で構築されているわけで、だからこそ否定性ってのは肯定のためには必要十分条件に値し、感覚的な要素を適切に表現するためのツールとして絶対性というのは・・・・・・・・・・・

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