マジックvsグリズリーズなう。
◉リーグで最もディフェンスの良いチーム
原動力になっているのはディフェンス。なんとレーティング101.7は圧倒的No1で、2位のバックスと3ポイント近い差があります。その理由を考えるのが今回のテーマですが、一方でグリズリーズのオフェンスに押されまくっている前半なうです。
余裕があればコンリーのいないグリズリーズ相手に機能していない理由も探してみましょう。
まず、最近のNBAでは「ディフェンスレーティングが良い」理由がディフェンス以外の理由だったりします。皮肉にもそれを最大に示していたのが、シーズン前半のグリズリーズ。
ひたすらに遅いペースで24秒オーバーになっても関係ないくらいオフェンスをやり直すことで、結果的に相手がトランジションオフェンスに移行する機会を減らしました。まぁ崩壊したわけですが。
2月以降のマジックもその傾向値は大きく出ています。
〇速攻での失点 10.9(1位)
〇ターンオーバー 12.6(4位)
〇試合のペース 99.9(21位)
非常にゆっくりとしたペースに移行したマジック。そのオフェンシブな理由はよくわかりませんが、無謀なアタックを減らしたからかもしれません。主にゴードンかな。
変な話、あまりポジティブに捉えていない変化だったりします。だって試合を見ているとフォーニエ&ブセヴィッチだらけか、ロスの個人技なんだもん。特定の選手に集中させることでチーム全体のターンオーバーを減らすのはレブロンキャブスやダブルPGのロケッツが実証しているので、ひとつのパターンとして有効です。
オフェンスをわかりやすくした。それがマジックのディフェンスが良くなった1つの理由です。
◉トリオ・ザ・マジック
またターンオーバーの少なさは昨シーズンのホーネッツを思い出させます。スティーブ・クリフォードHCがホーネッツ時代の反省を生かして新たなコンセプトで強化したなら面白い話ですが、実際には似たようなコンセプトで成功している印象です。
時代遅れっぽかったシステムがチームが変わって、1年経つと機能している形になるっていうのは不思議な話でもあります。ネガティブな部分が多く含まれつつも、マジックで上手くいっている理由ってのもキーポイントになるわけです。
まずホーネッツ時代と同じようなことを強く意識しているのがリバウンドです。インサイド優先で守る。ていうか、インサイドばかり守る。ただし、ファールは少ないし、リバウンドをしっかりと奪うというやり方でした。
それは好調なマジックディフェンスでは明確な形で出ています。
〇ディフェンスリバウンド率 76.1(2位)
〇2NDチャンスの失点 9.9(1位)
このインサイドでの強さがキーになっているわけですが、いくつか不思議なこともあります。まずセカンドチャンスの失点が驚異的に少ないことを考えたら、そこそこオフェンスリバウンドを取られていることです。
〇被オフェンスリバウンド数 9.2(5位)
これはリバウンドをそのまま押し込まれる率の低さを示しています。それが出来るのは「とられても必ず誰かがそこにいるから」というシンプルな理由にして、そこにいる誰か、ってのがサイズがある選手ってことでもあります。
正直オーガスティンがいたって大した意味はないでしょ。自分たちがリバウンドを確保する努力ってのは当然として、取られても収縮していれば、危険値がさがるという理論。
次に不思議なのはハワードみたいなセンターがいたホーネッツに対して、マジックにいるのはブセヴィッチです。ハワード以上の活躍をしていることは間違いないものの、そこまでゴール下に強い選手ではありません。
それでもリバウンドに関しては、確実に絡んでくる良さがあり、しっかりと数を確保してくれています。高く評価しよう。だけど、それだけでリーグトップクラスになるのは厳しいよね。
その意味で目立つのはアーロン・ゴードンとジョナサン・アイザックというウイングコンビです。個人ではなく複数人で考えた時に体を張ってポジションを確保するブセヴィッチと高い能力で飛び込んでくるゴードン&アイザックは機能性が高いトリオです。
〇ディフェンスリバウンド数
ブセヴィッチ 9.7
ゴードン 5.8
アイザック 4.4
そしてアイザックの存在はリングから6フィート以内で際立った数字になっています。ブセビッチが良すぎて目立ちにくいけどさ。リーグ平均が62.5%くらいなのでウイングとしては立派な数字です。
〇6フィート以内の被FG%
ブセヴィッチ 52.6&
ゴードン 56.6%
アイザック 67.3%
管理人はアイザックのディフェンスがルーキーからの5試合でかなりお気に入りだったのですが、今シーズンはその才能を示し始めています。ただし、対人能力に強いエースキラーではなく、見えにくい部分で多くのことをカバーしてくれる存在としてです。
これで読みの鋭さでテイクチャージを連発するような能力をオーガスティンから盗めれば、評価も一気に上がるでしょうが、今はまだマジックというチームの中で重要性があるというくらいかな。
彼らの強みは「タフなリバウンド」です。コンテステッドリバウンド(競り合いでのリバウンド)が非常に多い特徴があるのでした。
〇コンテステッドリバウンド 9.5(3位)
〇選手別
ブセヴィッチ 3.4
ゴードン 1.6
アイザック 1.1
もちろんブセビッチは良い数字を残しているわけですが、チームとして1位、2位はラプターズとウォーリアーズで、特定のセンターが奪うのではなく、ウイングたちの強さが目立つチームです。
両チームに比べれば超地味なマジックのゴードン&アイザックですが、この部分に限ればデュラント・ドレイモンド・レナード・シアカムにも劣らないってことです。
ちなみにグリズリーズのオフェンスに苦労した理由がバランチューナスにありそうです。コンテステッドリバウンドには確保率もあるのですが、エンビートで35%くらいなのにバランチューナスは驚異の48%です。
圧倒的な高さでキープするというよりも、しっかりと体をぶつけてリバウンドをキープしているマジック。その体のぶつけあいに強すぎるバランチューナスってのは、なかなかの天敵なのかもしれません。
なお、4Qになると疲れたのか、あるいはマジックの作戦なのか、バランチューナスはスクリーンでオフェンスファールを取られまくり、インサイドの強さを発揮できなくなってきたことで、マジックが驚異的に追い上げることになりました。またロスが大爆発している。
◉キース・ビーチとモー・バンバ
2月以降の数字が良くなった理由にはベンチメンバーも守れている事情もあります。それはチームが好調だから守れているってことになりますが、ひとつの変化にモー・バンバの離脱があります。
7フッターでありながら動けて飛べる超素材型の怪物は、個人としては良い数字を残していましたが、いなくなったことでチームとして守れるようになった事情もあります。ただ、バンバが悪いってことにしたら可哀そうな理由もいっぱいある。
ひとつにはセカンドユニットの構成で、ゴードンが混じり、そしてディフェンスの良いイワンドゥがいることでスターターのアイザックと同じようなコンビディフェンス感が出てきました。それは大きい。
実際にユニットとしてのプレータイムが明確に伸びてきています。
〇プレータイムの変化
スターターユニット 11.7分 → 14.6分
得点源のロスがベンチにいるので、スターター5人で出る時間がそこまで長くなかったのですが、ディフェンスが良いからか、かなり伸ばしてきました。負けている時はロスにスイッチするような戦い方。
その一方でセカンドユニットのディフェンス向上も目立ちます。もともと良かったのですが2月からの快進撃に大きく関与していそうです。
〇ディフェンスレーティングの変化
セカンドユニット 102.9→84.1
※1月まではゴードン、シモンズ、ロス、バンバ、グラント
※2月からはゴードン、イワンドゥ、ロス、ビーチ、ブリスコー
そしてこの中でバンバと入れ替わりになったビーチは素晴らしい数字を残しています。バンバと比べれば遥かに目立ちませんが、26歳のドラフト外ルーキーは完成度の高さとハッスルでバンバよりも貢献しています。
〇ビーチのスタッツ
コンテステッドリバウンド率 54%
6フィート以内の被FG 47%
特にこの6フィート以内のディフェンス率は驚異的。セカンドユニットが守れている理由はインサイドでシャットアウト出来るビッグマン、そこにゴードンとイワンドゥでフタをしていることが大きく貢献しています。
このビーチもまた特定のシーンに関しては負けない貢献度を示しているわけで、マジックがチームとして守るための選手を集めたことがわかります。
わかりますが、まぁあんまり腑に落ちないんだけどね。確実なのはカミンスキーとか、ゼラーよりもクリフォード向きのディフェンス能力を持っている事。もっといえば、MKGの素晴らしい対人ディフェンス能力よりも、アイザックのリムプロテクトとリバウンド力の方がクリフォード向きだったということ。
バンバとかの問題もあるので、選手の特徴が噛み合ったのは悪い意味ではなく7割くらいは偶然だと思いますが、単に個人のディフェンスが良いってだけではチームとしてのディフェンスの良さには結びつかないってことでした。
チームはビーチに助けられたのか、それともビーチがチームに助けられたのか。どっちでも良いけど、今のマジックはこのシステムが機能しているのでした。
そしてグリズリーズ戦で3試合目となるマイケル・カーター・ウイリアムスが、同じようにこれらのディフェンスで驚異的な活躍をし、後半になるとグリズリーズをシャットアウトし始め、毎度恒例のロスとフォーニエの驚異的なシューティングで大逆転勝利を手にしました。おいおいネッツファンのブログなのに、ふざけんな 笑
15分で5つのリバウンドをとったガードのMCW。どこのチームでも中途半端な扱いをされたかつての新人王は、マジックが求めるディフェンス能力にハマっている様子。
そしてロスの3P8/12だぜ。そんなの読めるわけないじゃん。ディアンジェロ君の4Qのみで27点に対抗したようなロスでした。
次回はヒートの予定ですが、負けてくれないと困るな。
◉ゴードンのスーパーなチェイス
さて、ここまでがマジックのインサイドがしっかりと守れている理由でした。それはホーネッツ時代と似ているけど、選手の質としてマジックの方が若干上回っているというかシステムにあっているよ、というお話。
しかし、クリフォードには致命的な欠陥があり、3Pに対するリスクマネジメントが甘々なのでした。まぁ今のホーネッツも勝率伸ばせなかったから、似たような部分はあるわけですが。
3P全盛期のNBAではインサイドを固めることはデメリットが大きいのです。出来ればビッグマンは1人で守れるタイプを用意して、残りの4人で3Pとカバーリング・ローテーションを強化するってのが、戦術的に優れているチームがチョイスする方法論です。スパーズ、ウォーリアーズ、ネッツ、ペイサーズ、バックスなどなどは、形は違えど3Pを追いかけるコンセプトがあります。
それがないから、どんなにインサイドを固めても無意味だったのですが、今のマジックは3Pを抑えることに優れています。
〇被3Pアテンプト 31.6本(9位)
〇被3P% 29.9%(1位)
ペースが遅くなったにも関わらず、そこそこの本数打たれているので、マジックの守り方は「打たせない」というスタンスではありません。しかし、驚異的に外させています。
〇ワイドオープンでの被3P
アテンプト 15.9本(8位)
確率 30.2%(1位)
その中身も普通にワイドオープンで打たれており、だけど外れているってことで、ここにシステム的な理由を求めるのは難しいものがあります。
オーガスティンやフォーニエは賢い選手であり、ローテーションで追いかけることを迷わないタイプだし、ゴードンとアイザックは追いかけるだけの高い身体能力があります。
それが形として機能しているように思えるし、だからといってシステム的に優れているわけではない。優れていないけど、大いに外させているという摩訶不思議な状態です。
このパターンの場合は「相手の下手な選手に打たせる」のが上手いチームが多くなります。そこで2月以降のvsマジックの被3Pを選手で検索してみると
〇vsマジックでのアテンプト数と確率
ステフ・カリー 17本 29%
ダリウス・ミラー 16本 25%
ポール・ジョージ 15本 40%
カリーが外しているんじゃないか!?ってことで、まぁ何とも言えないわけです。1試合だから偶然的な好不調ってのも多いしね。ちなみにクレイ・トンプソンも12本打って3本と苦しみました。
デュラント不在だったウォーリアーズに対してスプラッシュブラザーズを抑え込んでのディフェンスで勝利したマジック。それは大いに自信になったでしょうね。
この試合のカリーはオーガスティンとマッチアップしていますが、それは6本打って2本決めており、まぁまぁ。一方でブリスコー相手だと8本打って2本のみです。
驚くべきは確率ではなく、マッチアップしたのが13回しかないのに8本も打っていることです。逆に言えばカリーに打たれすぎなのに、外してくれたという事。
クレイ・トンプソンはフォーニエとのマッチアップで6本打って2本決めています。こちらもまぁまぁですが、その他で6本打って1本しか決まりませんでした。そういう意味でも何が起こっているのかわかりにくい内容です。
ちなみにケンバは7本打って0本、ブルック・ロペスは6本打って0本と、今シーズン話題の選手たちに普通に打たれているけど、外してくれている状況です。かなり不思議な数字なので、これは何とも言えません。
〇チーム別3P
キャブス 74本 28%
ウォーリアーズ 40本 22%
バックス 35本 17%
これらはマジックを誉めて良い数字ですが、3Pの確率なんて5%違えば大きな違いが生まれる世界です。だから「チームとして5%下げるディフェンス力」ってのは素晴らしいけど「10%下げるディフェンス力」ってのは偶然でしかないと思っています。カリーなんて理不尽に決めてくるわけだし。
被3Pが30%を割っているのは偶然的な要素が大きい。だけど、全く理由がないとは考えにくい。ってのが結論です。
マジックで目立つのはショットクロック残り4秒切ってからの確率を驚異の11%に抑えていることです。
〇ショットクロック別被3P%
4秒以内 11%
7秒以内 27%
15秒以内 35%
これらの数字は15秒(平均的な時間)では他のチームと大差なく、4秒以内になると驚異的に守れています。それだけ最後まで追い掛け回すことが出来ているわけです。ただし、ワイドオープンにしてしまうことも多いから、追いかけきれているわけでもありません。
そこで結論をホーネッツ時代との比較に求めると「選手の質の違い」ということになります。だから選手個々の3Pディフェンスを観てみましょう。
〇被3Pアテンプト
ロス 5.2本
ゴードン 4.2本
フォーニエ 4.1本
ブリスコー 4.1本
オーガスティン 3.6本
なんとも面白い数字が残ります。ベンチから登場しているロスとブリスコーが非常に多く打たれているという結果に。ビーチの存在でインサイドが固められているから打たれているのか、この2人がチェイス出来ないから打たれているのか。
そしてゴードンがオーガスティンよりも3Pを打たれている、というか打たれるときに近くにいるってのはポイントです。アイザックはいないのに。
〇3PへのDIFF
ロス △1.7
フォーニエ △3.2
ゴードン △11.0
ブリスコー △6.7
オーガスティン △7.2
実際にロスは打たれているし、決められています。チーム全体が良い数字なのだから△1.7を誉めることは出来ない。その一方でPG2人は素晴らしい数字だし、何よりもゴードンが驚異の11%も下げています。
というわけで、結論的にはマジックの3Pディフェンス自体はデータにある数字ほどの良さはないと考えていますが、個人能力によって大きなメリットを生み出しています。
その中核にいるのがゴードン。サイズとスピードがあるゴードンによってブロックは出来なくても、強いプレッシャーがかかり3Pを落とさせることに成功しています。
インサイドで強みを発揮するアイザックと、3Pを追いかけるゴードン。サイズと運動能力に優れたウイングコンビは、相性も良さそうです。
グリズリーズ戦のマジックは38本の3Pを打たれ、15本を決められました。これが守れなかった2つ目の理由になります。ワイドオープンで打たれることも多く、決して良いローテーションが出来ているわけではありません。
それでもインサイドを固めつつ、ローテ力に優れたガード陣と驚異的に抑えているゴードンの存在はマジックがシステム的に足りない部分を個人で補えている感じがします。
ちなみに3Pを決めたグリズリーズですが、フリースローを21本中11本も外しました。マジふざけんな。
◉vsバックス
そんなわけでプレーオフへの可能性を残す大逆転勝利を挙げたマジック。裏で行われているバックスvsヒートの結果が気になるところですが、ネッツが7位以上をキープできるなら滑り込み8位をヒートと争うわけです。
そして今回のディフェンスの数字はバックスファンが頭を抱えそう内容でした。インサイドを封じ込め、サイズのあるウイングで囲み、そして3Pを追い掛け回す。ワイドオープンなのに決まらない。
そう考えるとマジックが8位でプレーオフに参加することは非常に興味深い対戦になりそうです。ポイントになるのはヤニスに対してゴードンではなく、アイザックが守り切ること。
そうすればゴードンはより自由にチェイスをしやすくなります。フィジカル的に厳しそうなアイザックですが、ヤニスに対抗できれば一気に評価を上げることになるでしょう。
調べてみると途端に面白くなりそうなプレーオフのファーストラウンド。しかしまずはそこに滑り込むこと。
いいか、滑り込むんだぞ!
滑りこみで良いんだからな!
いつも楽しく拝見しております。
ORLファンながらディフェンスが良い理由がよく分からなかったのですが、謎の3Ptディフェンスが理由ということがよく分かりました(笑)
個人的には残りの相手を見ると、8位争いの相手はMIAではなくBRKではないかと思っております♪
目指せ勝利数、管理人様予想の4倍超!
謎っていうか、スローダウンするとお互いに3P決まりにくくなるっていう流れの問題かもしれません。最近はトランジション増えて、遅いペースだとリズム失う選手も多いですし。あとはゴードンが良いって事で。
4倍も勝たれたらブログ閉鎖だな
シモンズとバンバが抜け、メンバー的にはさらに地味〜になってからの快進撃!全員でディフェンスハッスル&固定の数名がオフェンスを引っ張って勝つ、と考えればある意味王道なのかもしれません。来期にも繋がりそうな予感!
ただシンプルオフェンスでTOを減らしたのはともかく、ディフェンスがいいのはやっぱりまぐれか…笑
勝率5割やプレーオフ争いにくい込むこと自体何年振りだろうって感じですし、ネッツは日程がタフすぎるし管理人さんは終始ネッツ贔屓を前面(文面)に出してくるしで、レギュラーシーズン終盤を存分に満喫させていただいております。笑