2019/03/03 マジックの強さ、ペイサーズの弱さ

逆の立場で考えてみよう

上位にいるのはペイサーズ。下位にいるのがマジック。だけど、NBAの場合は数点の違いで差が生まれてくるわけで、些細だけど多きな差ってことになります。
ペイサーズのベースにある強さはチームワークですが、それは誰もがハードワークを欠かさないことから生まれるケミストリー。

必ずリバウンドに飛び込む
速攻に誰もが参加する
ディフェンスローテーションの徹底

           etc 

ここに昨シーズンよりも論理的なオフェンス力を加えてオラディポ不在でも勝利を重ねているわけですが、決してトップチームという強さではありません。そこを目指して頑張ってはいるけどね。
それでもベンチの層が厚く、そして実は結構タフショットが上手い事情もあって、勝利を重ねているわけです。

なお、本日はペイサーズ最大の武器とすら思われるサボニスが不在です。サボニスの不在はオフェンスの流動性を失わせ、リバウンド力不足になりがちです。ここもいろいろな問題があるのでした。

一方のマジックは若手に切り替えると思いきや、ベテランで構成されるチーム。オールスターになったブセヴィッチを中心とし、オーガスティンとフォーニエが巧みに組み立て、ゴードンとアイザックが支えます。マジで若い2人は高い運動能力で支えるって感じです。
そこにベンチからジョナサン・シモンズとテレンス・ロスが同じように構成するのですが、シモンズはシクサーズへ行き、プレーしないフルツが加わっています。

もともとそんなに強くないベンチメンバーがさらに弱体化したわけですが、いうほど成績が落ちてはいません。これは戦力だけをみたら「シモンズがいないだけ」なのですが、マジックの戦い方を考えると結構不思議だったりします。
この試合は試合中にオーガスティンがケガをして、さらに層が薄くなったマジック。層が厚く充実しているペイサーズに対してどんな戦い方になるのか。

◉ターナーの弱さ

開始直後に10点を連取し飛び出したマジック。それをペイサーズが追う展開は、点差に反してイージーな内容になっていきます。
ペイサーズはマイルズ・ターナーをトップにおいて、ピック役として利用すると中途半端なショーディフェンスをするマジックディフェンスをみて、ポップしたターナーが簡単にフリーになれます。
だから次々にミドルを決めていくターナー。オフェンスはこれをしていれば何の問題もなく、さらにハンドラーが深く侵入すればカットしてくるターナーの豪快なダンクになるのでした。

今のペイサーズのエースはボグダノビッチですが、本当はターナーにその役割を担ってほしかったわけです。高い運動能力をもつターナーは同時に高いシュート力があるのが強み。
いわゆる現代的なセンターとして、広い範囲を守れる機動力にブロック力を併せ持ち、アンソニー・デイビスに近いものがあります。

そのターナーのシュート力を存分に使えたわけで、ブセヴィッチにはマークしきれませんでした。マジックは守り方を変える必要があったのですが、そこまで大きく変えなかったのはひとつのポイントでもあります。
もちろんターナーへの対応は気にしつつ、それよりも継続してインサイドを攻めこまれることを嫌がるマジック。ちょっとばかりリスキーな守り方なわけですが、これが成功するから怖いわけだ。

本日はサボニスが不在なので、ベンチから出てくるのがオクイン。TJリーフもコートにいるので、リーフにピック役をさせればよいのに、何故かオクインをチョイスするので同じ形でもオクインのミドルなら、そんなに怖くありません。これが成功した1つの理由。
もう1つの理由はサボニスならば、ポップしてのミドルを積極的に打ちながらも、ハードワークを欠かさないのでリバウンドにしつこく絡んできます。それが足りないのがターナーの欠点。

ミドルレンジや3Pから打ってきて決める。そのうえ、オフェンスリバウンドにも絡んでくる。基本的に自分が打ったシュート以外のリバウンドって話なので、決して同時にやるわけではないのですが、アウトサイドまでついていかずフリーにすることで、本人に打たれるだけでなく、ブロックアウトが難しくなっているはずなのです。
ターナーはブロックアウトされていないけど、そんなにオフェンスリバウンドに飛び込んでこないから、インサイド優先で守っているブセヴィッチは成功していきます。サボニスならリバウンドを取っているぞ。

高いスキルを持ち、機動力とブロック力で存在感のあるターナー。しかしあと少しのハードワークが足りないのでした。とはいえ、これだけなら「無いものねだり」なので良いのですが、ペイサーズが優位に立っていく3Q以降にターナー最大の弱さが登場します。

なんだかんだ言っても、フリーになれる機会があったはずのターナーは次第に存在感がなくなります。ブセヴィッチは相変わらずアウトサイドについてこないけど、シュートを打つ選択が出来ないターナー。
ターナーの問題は「安定感と継続性」自分が圧倒出来ているなら打ち続けるべきだったのに、それが出来ないんだ。時にラッシュするけど、試合を決めてしまうくらいまで延々と決まることがないんだ。

チームオフェンスを忘れない

ってのはペイサーズの強さなのですが、本当はエースになってほしいはずのターナーがエースになれない理由。自分が優位なら、相手をKOするまで打ちのめさないといけない。
ブセヴィッチとターナー。高いスキルとシュート力に運動能力を併せ持つターナーの方が、選手としての能力は上なのだけど、オールスターに選ばれたのはブセヴィッチ。その理由は高い能力を延々と発揮することが出来ないってことさ。

◉続けるエースのマジック

ビハインドになったマジック。しかもオーガスティンがいない。
明らかに苦しい状況ですが、ペイサーズについていきます。これって結構不思議なわけで、明らかなペイサーズの流れだけど、どうにもついていけてしまう。

そのプレーはほぼフォーニエ&ブセヴィッチ。延々と2人でやっています。どちらも強力なエースってわけではありませんが、シュートの上手さと的確なパスの判断があるので、変なミスがないのが特徴です。
つまりターナーが持ち合わせていなかったエースによる「安定感と継続性」があるマジック。この継続性って、試合の中で失敗したプレーでも成功したプレーでも慌てずに続けることが出来るって意味です。信じる強さ。

そんなに強力ではないけど、だけどプレーがわかっているし、少しずつでもシュートチャンスが生まれるなら継続しようぜっていうメンタルの強さ。
KOパンチはもたないけれど、しっかりと打ち続けるから、チーム全体としても安定した試合運びになっています。

加えてターナーにはないシュート力とハードワークの両方があるのがブセヴィッチの良さ。以前に触れたけど、ブセヴィッチってアウトサイドプレーを減らして成功しています。それだけインサイドに詰めているってことだ。
継続性とハードワークでターナーを上回っているからオールスターのブセヴィッチ。試合の中で存在感が失われていったターナーのオフェンスと、試合を通して働いていたブセヴィッチのオフェンス。

センターの違いはそれぞれのチームカラーの違いにもなっていました。時にラッシュすることでリードを得るペイサーズと、しぶとく食らいついていくマジック。
とはいえ、ペイサーズにはディフェンス力があるから普段はしぶとさってのが目立つのだけどね。

要するにあれだな。負けている時に強いペイサーズの良さはしぶといディフェンス力とそこから生まれる速攻で追いつくこと。だけどKOするほどのオフェンスはない。
同じく負けている時に強いマジックのオフェンス力。だけどやっぱりKOするほどの強さはないから、今の成績があるってことだ。
トータルではペイサーズの方が強いさ。だけどペイサーズの弱さとマジックの強さが目立つような展開になった試合です。

◉KOロス

何とかついていったマジック。それは素晴らしいけど、KOパンチがないわけだから、なかなか逆転できません。そんな状態の4Qになると、最後の時間なのでフォーニエ&ブセヴィッチに加えてロスがコートに登場します。
そしてこのロスが止まらなくなります。このパターンは結構なマジックあるある。アンストッパブルなテレンス・ロス。タフショットだろうが何だろうが決まり続けてしまう男。

一方でペイサーズは3Pが決まらなくなります。どうにもこうにも、ちょっとずつフリーになるのに打ち切らず。何を基準に攻めれば良いのか迷っている状態に。ホリデー三男を出せ。

久しぶりに出てきたペイサーズの勝負弱さ。ここをオラディポが何とかしまくったのが昨シーズン。サボニス、ヤング、ボグダノビッチで何とかしてしまうのが今シーズン。
しかし、ヤングのダンクがミスになり、ボールムーブからフリーになったボグダノビッチの3Pが決まらず。サボニスが不在でターナーが目立たない構図が重くのしかかります。

ペイサーズは試合を通して3P7/24というのが響いたのでした。 ターナーはフリーになれるはずなのに。

そして思い出したいのがインサイド重視で守るマジックの構図。アウトサイドが決まらなければ、得点がなかなか伸びないよね。ターナーはオフェンスリバウンドに絡めていないし。
ただし、この守り方はオフェンスでロスが決めまくっているからこそ成立しているに過ぎません。ディフェンスでは3Pで突破される可能性を含みながらも、KOしにいくロスで掴んだリード。

残り55秒で7点リード。試合のペースは完全にマジック。トランジションから勝負をかけたコリソンの3Pが外れ、これで終わると思った試合は、今度はリードされたペイサーズがお得意のプレッシャーディフェンスで驚異的な反撃をします。
フルコートディフェンスでボールを奪い、コリソンがレイアップに行くもこれをブロックしたゴードン。それでもマイボールなのでタイムアウトから、コリソンが3P。これまで外しまくったのは何だったのか。

さらにプレッシャーディフェンスは続き、ヤングがボールを奪って最後はマシューズのゴール下で残り30秒2点差にします。ここまで苦労していたのがバカみたいなペイサーズ。なんでそれが、もっと早くできなかったのか。
タイムアウトのマジックは最後のオフェンスをフォーニエに託すと、時間をいっぱい使ってフェイダウェイ3Pを放ったフォーニエ。これが決まって逃げ切ったマジックでした。

ていうか、フォーニエは今シーズン何度目のゲームウィナーだ?
フォーニエのラストプレーがなければ、マジックはもっと早くに意気消沈してこんな戦い方していなかったとすら思うのでした。

マジックの強さはフォーニエ&ブセヴィッチで徹底している事。
ペイサーズの弱さはターナーで徹底出来ないこと。
そんな構図の試合に見えたのでした。

ただし、1人の選手に頼らないのがペイサーズの強さでもあります。だからターナーがエースになるというのが求められているわけでもありません。
もっと強くなりたいなら、そしてプレーオフで勝ちたいなら、ターナーはフリーのシュートを「決める」のではなく「決め続ける」ことが求められるのでした。

試合を通して9本のFGしか打てなかったターナー。リバウンドも6つのみ。中心選手でやり続けたマジックでした。

なお、アーロン・ゴードンも11点だから、マジックはマジックで継続性には大きな課題があるんだけどね。フルツとゴードンとか安定感と継続性が不安なコンビだな。アイザックもか。
そんなわけで負けている方が強さをみせる奇妙な試合でした。

2019/03/03 マジックの強さ、ペイサーズの弱さ” への7件のフィードバック

  1. シーズン前は確か10勝予想でしたよねマジックは?
    マジックファンの私は酷く傷つきました。ここはひとつお詫びとしてマジックの今季、もしくは今後の展望などを簡単にまとめた記事をあげていただきたい。私は酷く傷ついています。

    1. 反省してお詫びの記事を書きたいところですが、今後の展望と言われるとフルツ君が戻ってきてから書きたいと思うので、オフシーズンまでお待ちください。
      この度は深く傷つけた上に、お詫びに時間がかかり大変申し訳ありません。またブセヴィッチが安定感と継続性をもって活躍していることも合わせてお詫びいたします。

      http://nba-data.work/?p=3715

  2. ターナーの継続性、これはだんだん良くなっているんですがやはり最大の課題ですね。良いプレーをして乗っていけると思ってもひとつのプレーで元に戻ってしまう。今年ブロック王をとれればひとつ殻を破れるのではと期待しています。

    1. ブロックだけは継続性あるんですけどね。確かに何かしらのタイトルやオールスターみたいな格付けが出来ると改善するのかもしれません。

      ヨガトレーニングは効果あったのか、なかったのか。

    2. マジックの躍進ぶりには驚きです。
      話は別なのですが、管理さんがツイートしていたJazz vs bucksの
      激アツだった試合の記事を是非読みたいです❗️
      お願いします😭😭😭

  3. ターナー評があまりに的確なので思わず唸ってしまいました。外れても良いから打てと。ウエストブルックを見習えと。
    3Pの確率が高くてアテンプトが少ないチームなので、ホリデー三男は貴重なプレイスタイルなのですが、3位キープしたいからジレンマがありそうです。あの怖いもの知らずな感じはプレーオフで活きると思うんですよね。

    1. ホリデーとタイリークを逆にする発想がないのかなー。たまにはコリソンでなくホリデーでも良い気がしますし。
      そこらへんがマクミランの頑固さ。でもそれで結果も出ているし。

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