ゾーンについて思うこと

今シーズンってゾーン増えたよね

前回の記事はネッツとスパーズがそれぞれ3Pに対してゾーンを用意したって内容なのですが、それに対してコメントをいただきました。今回はコメント返しの記事です。

互いに3P対策としてゾーンを使っていることやゾーンの方法論までは全くわかりませんでした。そういった高度な戦術的駆け引きまで分かればもっとNBAを楽しめるのでしょうね。

しかし、ごめんなさい。本当に両チームが「3P対策でゾーン」だったかはわかりません。そういう予想に過ぎないのです。逆に「ゾーンだから3Pシューターを並べた」って可能性もあるわけで、これは一概に正解かはわからず、「おそらくそういうことだろう」という管理人の予想から成立しています。

偏見であり予想を基に考えてみる

っていうことです。エジソン的に言えば1%のひらめきを99%のデータで補うのが理想ですが、残念ながら99%も補えないのでこれまでの経験に基づいた予想を使うわけです。
今回の記事でいうとそれは

ポポビッチとアトキンソンへの信頼

と言い替えることもできます。3P47%のジョー・ハリスと47.5%のバータンスがいる両チーム。
3Pをオフェンスのメインウエポンに設定し、華麗なるパッシングとスクリーンを駆使した高度なオフェンスを組み立てるネッツと、流麗なボールムーブとベーシックなポストオフェンスを組み合わせてフリーを作りリーグで最も高い確率で3Pを決めるスパーズ。

それぞれの特徴を無視してディフェンスを構築するようなHCでないことは明確です。
またスパーズのディフェンスは意外にも運動量で成り立っている部分があり、しっかりとアウトサイドまでチェイスしていきます。マンツーなら追い掛け回すのに、3Pを得意にするチームにわざわざ3Pを打たせるような守り方はしません。しないよねポポビッチだもの。
逆に自分たちが3Pを活用してストレッチさせ、インサイドを上手に活用していくアトキンソンが、アウトサイドをフリーにし続けるわけもないよね。
だからそれぞれのHCへの高い信頼と、お互いのチームの状況を考えると、意図して3Pを止めるためにゾーンを敷いたと予想できるわけです。もちろん、それだけじゃないだろうけどさ。

そう思って試合を見ていくと、あら不思議、なんだかそう思えてくるものです。特にこの両チームの守り方は、可能な限りインサイドを手薄にする守り方でもありました。
スパーズのゾーンをぶっ壊したのは3P5/6のジョー・ハリスだけでなく、ディアンジェロ・ラッセルとジャレット・アレンのコンビがゾーンのど真ん中を打ち抜いたことでした。

ゾーンのど真ん中がフリーになり、そこを有効活用するネッツ。逆に言えばスパーズが警戒していた部分がそこではなかったということです。
特にアレンが真ん中のスペースを見つけたということは、相手をするはずだったオルドリッジがシューターへの警戒のために引っ張り出されたということ。3-2気味のゾーンを採用するチームは結構珍しいのですが、スパーズがチェイスしまくることを優先するチームだと思い出せば納得もします。
よりコート全体を追い掛け回しやすい体形です。その代わりど真ん中が空くので、得意のローテーションでカバーしたかったわけですが、ディアンジェロのプレーが独特で読めず、間に合わなかった。

そう捉えるのが自然だと見えてくるわけでした。正解かどうかは知らない。

一方でネッツのゾーンは2-3です。特徴的だったのは両ウイングがボールと逆サイドにいてもアウトサイドまで出てきていたこと。スパーズが

「5人がアウトサイドを分担することでフリーを減らしつつ、インサイドは全員がカバーする」

のだったのに対して、ネッツは

「4人でアウトサイドを追い掛け回し、アレン1人がインサイドをカバーする」

という図式です。いずれにしても、アウトサイドを優先的にカバーすることを目指していて、その人数とスペースの埋め方に差があるのでした。
なお、ネッツの場合はマンツーマンでもアレンやエド・デイビスは自分のマークマンを無視してインサイドを守っていることが多くあります。
これって管理人のようなレベルの低い草バスケをやっていると、センターがインサイドにいるってだけで普通ですが、イリーガルディフェンスのあるNBAでは珍しいくらい極端な守り方だったりします。

本当はペリメーターも守れるくせにサボっているアレンかと思いましたが、ケンバが相手だと追いかけていたので、相手に合わせて結構細かく指示が出ていそうです。

◉ゾーンが増えた気がする予想

話が前回の続きになってしまいましたが、要するに「ゾーンをやった理由」なんて、正解はわからないから、それぞれのチーム事情やHCの特徴から予想してみるってことです。これが全チームを観ている特権みたいな部分でもあります。逆に特定のチームの情報足りなかったりするけどね。

さて、表題。とはいえ、今シーズンってゾーンが非常に増えた気がします。これはデータで追いたいけど、そんなデータないし、加えてゾーンとマンツーの境目もなくなってきました。
例えばロケッツのスイッチングディフェンスですが、あれはマンツーマンである反面、全てをスイッチしていくなら、かなりゾーンの考え方に近くなります。
あるいはブレイザーズのレイトスイッチは、ピック&ロールを使われた際にビッグマンが一旦はハンドラーと距離を中途半端に空けてファイトオーバーをさせる、と見せかけてやっぱりスイッチします。って、これも瞬間的にやっていることはゾーンです。

現在のNBAは3Pがオフェンスのキーポイントになっています。スイッチングディフェンスは、その3Pを打つためのスクリーンを無効化する目的があるし、レイトスイッチは「ミドルなら打っていいよ。3Pとゴール下はダメ」みたいな目的があったりします。
そうやって3Pを警戒する方法論が発達する中で、ゾーンが増えた気がするってのは、なかなか新鮮ですし、前述のスパーズやネッツの守り方は、そこを意識している気がしてくるわけです。

ゾーンの狙いは3Pを打つためのオフェンスを意図的にやりにくくする目的があると予想しているのは、そんなリーグ全体の傾向です。いろんな形で守る方法論を考えた結果、ゾーンは有効策ということになったのではないかと。

ひとつには、3Pがメインになったことでインサイドを攻めるのが下手なチームが増えたってのもあります。だって、1人の選手が全てを出来るわけじゃないし。
またアイソレーションが増えた昨シーズンへの対抗策にもなります。ハーデンvsセンターのスピードミスマッチを作りたくてもゾーンならそれが出来ません。
試合中にゾーンをやることで、相手の得意技を封じれるなら、そこそこメリットがありそうです。

昨シーズンの印象だとゾーンが多かったのはヒート。選手が少なかった時期は特に多かったです。
頻繁に使うってことは相手を選ばず使うってわけです。つまり「このプレーを止めたい」という特定の目的があるわけではなく、試合の中でオフェンス側に変化を促しています。

このチェンジングディフェンスは、策を練るのが好きなセルティックスに有効に機能していました。3Q途中からゾーンになると、ハーフタイムに指示した内容が全て吹っ飛んでしまいます。選手が少なく、変化をつけにくかった時のスポルストラはゾーンで違いを生みだろうとしました。
この発想は常識的なものでしかありませんが、NBAでは珍しかったわけです。多分理由は、どうしてもゾーンの完成度が高まらず、オフェンス優位になりやすいから。

スポルストラはホワイトサイドの時にゾーンを使うのを好みません。アデバヨで使いたい。その理由はビッグマンが追いかけるべきゾーンが広いからです。マンツーの方がまだ楽っていうハードワークを求めるやり方。

チェンジングディフェンスは流行系になってきたわけですが、たぶんそれは昨シーズンからヒントを得たのだと思います。オフェンス的な理由か、それともどこかのチームのゾーンが高い機能性があったからか。
選手には新たな能力が求められることになります。ゾーンを構成できるディフェンス戦術の持ち主ってのが、そのうち重用されるのかもしれないのでした。

しかし、未だにプレーオフでゾーン活用で勝ちあがるチームは登場していないという事実もあります。これが今シーズン後半のひとつの見どころだと思っています。
果たしてゾーンは勝利をもたらすことが出来るのか。トップチームで採用しているチームも少なく、本当の流行になるのは、まだ先の話かもしれません。

◉コメント返しの続き

ここからはスパーズの話

スパーズをここ3試合連続で見ているとのことですがどういった印象をお持ちですか?
やろうとしていることは間違ってないけど力不足なのか、やろうとしていることに問題があるのか。ディフェンスに関しては、間違ってないけど力不足なのが明白なような…。

ディフェンスに関しては間違いなく「間違ってないけど力不足」です。さすがにいくらなんでも守れないというか、デローザンというか。
よくあるのがトランジションに備えて人数は戻れているのに、ピックアップミスをすること。これはらしくないというか、個人が止める能力が低かったりします。

ここ2試合、エース2人が割と良いスタッツを残して連敗しているのは、チームとてやろうとしていることがハマらないのでエースが力づくで点を取っているからのような気がします。


ラプターズ相手に全く強引さがなかったオルドリッジは、ニックスとネッツ相手だと自分で行きました。その理由は簡単で、ラプターズはダブルチームを厭わずディフェンスしてきます。
ニックスはゴール下までこないとヘルプに来る意識がないので、オルドリッジは得意のポストアップからのターンシュートを使えました。ネッツはそのうえでスモールなチームなので、ミスマッチも多かったね。

エースとして1on1の状況ならばオルドリッジもデローザンも自分で行きます。しかし、2人来たらパスをするってことの徹底度が高まってきたのが印象的でした。
デローザンといえばポンプフェイクであり、「そのフェイクにひっかかったら罰金」のチームに苦い思い出があるわけです。しかし、最近の印象は引っかからなかったら、もう一回オフェンスをやり直す冷静さがあるってことです。
デローザンは「強引かどうか」ということよりも、常に冷静な空気感をまとっているのが、クラッチに弱かったラプターズ時代との違いを感じさせてくれます。その意味で、むしろクラッチタイムも自分を忘れないってのが良いかと。

スパーズのオフェンスは、非常に良いオフェンスになっています。これで勝てないのが不思議なくらいです。主役たちの周りにバータンズやベリネリ、フォーブスにミルズと順番で起用でき、確率の良いシュートに繋げることが出来ています。

しかし、ネッツ相手にゾーンをした理由を「ネッツのやりたいオフェンスをやらせないため」と予想しましたが、スパーズは「スパーズのやりたいオフェンスをやりすぎ」な気もしています。要するに意外性がゼロ。

デローザンは素晴らしいプレーメイクをするようになりましたが、素晴らしくたって、そもそも意外性のあるプレーはしません。だから延々と「良いオフェンス」が続くだけで、あていだってなれるわけだ。
そこで思い出したいのが

「意外性のあるプレー」といえばジノビリ

という長年スパーズが武器としてきた事実です。今のスパーズに不足しているのは、ダンカンとパーカーによる流麗なオフェンスではなく、アクセントになるジノビリです。

ロスターを見回しても、このタイプが全くいないチームです。まぁ過去にもジノビリ以外誰がいたっけって感じではありますが。
細かく言えばジョナサン・シモンズとか、あと名前忘れた人とか、フランスでクルーザーに乗っている人とか。少しずついた気もするけどさ。

ゾーンディフェンスを使うことで、相手の得意なオフェンスをさせない

のがひとつの流行系と書いておきながら、

スパーズは自分たちの得意なオフェンスをしすぎ

と批判してみる。なかなか忙しいわけですが、オフェンスでもディフェンスでもワンパターンだと相手が慣れてきてしまうってことです。
たまには違うこともやってみたほうが、試合トータルでは優位に働くのではないでしょうか。

そしてたまにはコメント返しってのも悪くないよね。自分でネタを考えるのではなく、思い付きで書けるわけだし。


ゾーンについて思うこと” への7件のフィードバック

  1. ジノビリのプレーもっと見たかったなぁ。NEXTジノビリが現れる日は来るのでしょうか…

  2. まさか自分のコメントが記事に使われるとは夢にも思っていませんでした。驚きとともに嬉しさすら感じています。ありがとうございました。

    管理人さんにデローザンやオルドリッジをはじめスパーズのオフェンスを褒めていただいて嬉しいところなのですが、意外性が無さすぎるという欠点は私も常々感じていました。

    スパーズはオフェンスでもディフェンスでも自チームの戦力を最大化するようなシステムを考え、それを徹底することで個の力で劣っていてもスーパーエースがいなくても勝ってきたチームだと思います。それはそれで素晴らしいと思うのですが、相手の予測を逆手に取ったり、わかっていても止められないようなプレイをしたりする選手も必要ということですね。かつては前者のようなプレイはジノビリが、後者のようなプレイはダンカンが担ってくれていたように思います。昔を思い返しても仕方ないのですが、改めてビッグ3時代はいい時代でした。

    「フランスでクルーザーに乗ってる人」はディアウのことですね。彼のプレイは意外性もありリズムも独特だし読みづらくて本当に好きでした。唐突な質問ですが、現役の中でディアウやジノビリみたいな選手って誰だと思いますか?ディアンジェロラッセルくらいしか思い付きません。

  3. 変化や意外性をつける選手はいたとしても、昨年ファイナルMVPのJR・スミスさんタイプではないですしね。

    マヌーさん なにしてるかなぁー。ポポさんの後任としてスパースフロントに入らないかなー。

    スパーズとネッツのゾーン合戦をしたとこちらのブログで見て『そのチーム同士のゾーンディフェンスなら何かあるな』と思わす信頼感はありますよね。

    策が無くてゾーンだったとしても、『策があってゾーンを試している』風に見えるのはこちらの思い込みでしょーね。そーゆー目で見てるとそー見えてくるのが人間らしいので。

    ジャズやセルティックスがもしやってもそー思うかも。

    5人で相手チームを守る とゆー意味ではゾーンもマンツーも境目はグレーですしね。

    ゾーンディフェンスの可能性をディフェンス3秒ルールがあるNBAで試行錯誤してくれる事は楽しみではありますね。

  4. スパーズのディフェンス、運動量を前提としたシステムなのに質を問う以前に量的な面で負けてるのが根深いなと思います
    若くてちゃんと走るデリックホワイトがいなくなると急に負けが込むのをみていると
    ロードトリップか終わってホームが増えると多少はましになるとは思いますが

    1. 確かにホワイトが1人でカバーしている感じが。フォーブスも追いかけることはするのですが。

      ガソル抜いて空いた1枠をどうするのだろうか。

  5. 意外性というワードでまず思いついたのはランスなんですが、スパーズには劇薬すぎますかね……。あと僕の印象だとウェイドなんか結構相手の裏をかくプレーが得意な気がするんですが、ラストイヤーですもんね。個人的に推したいのはルビオなんですが、ディフェンスは多めに見てあげてほしいかなと思います。

    1. ランスは裏をかいているわけではなく、純粋に面白いだけです。
      ルビオは上手いけどシュートがね。

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