ウインドウ6 日本vsイラン

八村も渡邊もいないイラン戦

破竹の6連勝で快進撃の日本。ウインドウ5では八村も渡邊もいないのに勝利を手にしました。カタールは弱かったけど。
まずはイラン戦を思い出してみましょう。

大きな流れとしてはイランの方が良いスタートを切ったけど、後半になると八村を止められなかったイラン。そしてイランの8番は素晴らしい選手でしたが、渡邊に全てを封じ込まれました。
今回の日本はビッグマンを分厚くしてきました。思い出してみれば八村と渡邊はサイズがあるのに、トランジションでも圧倒的でした。だから走ったら勝てたわけですが、今回のメンバーだとかなり苦しいです。
ところがイランはトランジションが全然ありませんでした。だから今回もそんなに不安視することはないのかもしれません。

一方で8番と13番はヤバかったです。解説が「フィジカルが強い」とかいってますが、フィジカルよりもテクニックで日本・・・じゃなくてBリーガー達を圧倒しました。
田中大貴が終始、素晴らしいディフェンスをしているのにタフショットになっても決めまくった8番。その8番を渡邊がシャットアウトすると、今度は比江島にマークされていた対角の13番が決めまくりました。でも、それを今度は田中が止めました。

総じて印象としてはイランの方が強そうなのですが、トランジションがないチームだったので、ファジーカスの良さが使えるわけです。シュート能力で上回るであろうファジーカスによるオフェンス対決に持ち込めば勝機はありそうです。
あとイランのビッグマンたちはスピードについてこれません。竹内と八村で勝てたわけで、今回も竹内はキーポイントになりそうなのでした。あとありがちだけど、馬場の速攻ね。

◉シュート決まり過ぎな日本、外すイラン

ストレッチ5のファジーカスによってインサイドにスペースがありまくる日本。比江島がドライブで連続攻略すれば、田中&竹内のアルバルクコンビの連携で広いスペースを見事に攻略しています。
さらに3Pが決まる決まる。富樫も比江島も決めるので、日本のペースで試合が始まります。

一方のイランはシュートが決まらないのですが、バカみたいにオフェンスリバウンドをとります。なんで、そうなるのかっていえば、ファジーカスが動かないからです。
それを周囲がしっかりと追い回すことでフォローする形なのですが、リバウンドまでは追いかけられないぜ。ってことでポジションを取られてしまい、しかもリングに向かっていくイランとアウトサイドまで追いかけたい日本の4人ってことで、まぁ論理的に奪われます。

序盤は日本のペースですが、シュートが決まらなくても得点していたイランと、決まりまくりの日本という構図は難しいものです。最近のNBAだと前半にシュートが決まるチームは後半決まらないよね。

解説がリバウンドとフィジカル星人なので、しつこいのですが、まぁ星人じゃなくても言いたくなるくらいリバウンドがとれない日本。
でも取れない理由は高さじゃなくて、反応力の差です。スモールでリバウンドとる選択肢を採用するチームがあり、リバウンドの強いガードが重宝される傾向が、Bリーグにはあまりないのでしょうね。

それでも、毎回微妙なところに落ちるわけじゃないので、ボールをもった日本は、比江島が延々と決め続けることでリードを守ります。どうしたんだ比江島。
ラマスは余裕がある中でベンチメンバーを次々に登場させます。それは良い選択だと思いますが、篠山・辻・馬場・張本・太田って機能する匂いがしません。しなかったけど辻が決めちゃったぜ!

イランは予想通りに13番がぶち抜きまくり、1Qだけで19点を奪いました。日本のゾーンが機能しないってのも予想通りだし、でも個人技勝負だと8番と13番にぶち抜かれるのも予想通り。
それをオフェンスの好調さで賄った1Qは7点リードで終わります。それはお互いの中心選手の疲弊具合を考えれば、得点以上に優位性があったと思うのでした。

◉メンタルで負けるイラン

田中大貴までタフミドルを決めちゃって、どうしたことか不思議な日本です。最後まで続く気はしないのですが、国際試合の怖いところは、負けている方が追い込まれていくってことです。そこまでチームとしてメンタルの強いチームって少ない。
イランは6番がハーフらしいのですが、スピード豊かでかつ動き回ります。「データが」っていうか、純粋に動き回る6番を捕まえられないのですが、イランの選手達もこの6番の動きに戸惑っています。
PGな6番ですがルーズボール気味になったオフェンスリバウンドを奪いまくっています。だから高さで負けているわけじゃなくてさ。

しかし、やっぱりイランはメンタルが保ち切れておらず、ディフェンスで追いかけすぎてのファールが目立っていきます。ガマン出来ないわけです。打てばよい3Pも躊躇います。
特にイランのベンチメンバーにファールが多いので、チームとしてのメンタルタフネスってのは難しいのです。「そんなときはエースだよ」ってことで、8番がロング3Pを決めます。

でも余裕がある日本はファジーカスがタフなミドルを決め、田中も3Pで続き、馬場がダンクで締めくくって11点リードになりました。トランジションの弱いイランなので、結構なリードです。

イランは4番が3ファールになりますが、本人が交代を拒否します。結構ヤバいと思っています。
で、結構レフリーが日本に味方してくれています。ファールっぽいプレーが流された後で、イランのファールって感じで非常に気持ちよくプレーできている日本だと思います。
ラマスは選手がイラつきそうになった瞬間に交代させる上手さもあって、逆にイラン側は怪しいプレーをしている選手を使い続けたりして、采配で点差をキープしている感じもあるのでした。
で、連続ファールになった瞬間にタイムアウトをコールしているラマス。点差がある余裕を活用しながら、リズムをキープする采配ってのは上手いのでした。

ところが、そんなラマスの親心をタイムアウト明けのプレーで、富樫がルーズボールを追いかけすぎてファールしちゃうんだから。
しかし、田中大貴がタフにドライブを決めて日本はリードを10点に保って前半が終わりました。比江島が決めまくってスタートした試合でしたが、2Qはファールしたので早々に引っ込めました。それでもメンタルの優位性を存分に使って、巧みに全員を交代させながら、リードをキープしたラマスに称賛を!

◉勝っているから走れ!

いや、10点リードなんてさ、速攻2本で一気にわからなくなるわけです。でもイランにトランジションがないから、仮にシュートが決まってきても、それだけオフェンスリバウンドが減るんだから、簡単には追いつかれないよね。
だって、オフェンスはファジーカスが何とかしてくれるじゃん。っていう後半のスタートです。

イランは5番のPGがディフェンスで駆け引きしていきます。ショーディフェンスにヘルプディフェンスをやりまくるのですが、日本はそういうの無視します。フリーになった選手がいてもファジーカス狙うぜ!
日本は田中が13番を止めに行きます。やっぱり日本の中では段違いのディフェンス力で仕事をさせません。でも、ピックを使って田中をはがすと、ファジーカスは何も助けてくれないので、ミドルを決められます。
でもね、ドライブからのミドルとファジーカスのターンショートって確率的には同じようなもんじゃん。

オフェンスの戦いになっている

っていうのはそういうことです。ファジーカスが守れない。でも決める。あと比江島も守れない。でも決める。
そしてまたも竹内が走ります。うぉい。これもウインドウ4と同じですね。イランのインサイドはスピードについてこれません。まさか速攻で竹内ってのは予想外ですが。

なんと3本の速攻を決めた竹内。
でも思いなおしてみましょう。前半はイランのオフェンスリバウンドに苦しんだ日本。なんでビッグマンが走れるんだ?

前半に比べるとディフェンスはインサイドを中心に守り、3Pは打たれています。ただイランがそんなに打たないってだけで。「打たせている」わけだ。
この効果はインサイドを守れるとか、リバウンドが取れるってことではなく、インサイドにギャップとなるスペースが減りました。
前半は4人が追いかけまくっていた日本ですが、追いかけないからリバウンド時にリング側を振り返る動きが減りました。「ディフェンス→リバウンド→速攻」という動きですが、明らかに体の向きを変える回数が減ったのです。

極論言えばディフェンスはサボり気味にしたことで、オフェンスへの移行を早くしたのです。それって10点リードが生み出した心の余裕であり、イランに速攻がないので「所詮はハーフコートオフェンスの繰り返し」だし「3P3連発しないだろ」っていう読みです。
仮に3P3連発したところで、まだ同点。これまで選手を長く休ませているメリットを使えばよいだけです。ラマスが落ち着きすぎ。

そんなわけで3Qの日本はそんなにシュートは決まりませんでしたが、竹内が速攻イージー3本あったので、効率よく得点できたのでした。

◉竹内スーパー

比江島タイムが終了している日本ですが、竹内タイムは継続です。何度も言うけど、前回の対戦からイランは竹内のスピードについていけていません。
しかも竹内はディフェンスでも4番を止めて、点差は12点まで離れます。ところで8番はいつになったら働くの?前の対戦半端なかったじゃん。

竹内は3Pまで決めます。マジかよ。
イランのゾーンはちょっと面白くて3-2ゾーンと2-3ゾーンが日本のボールの位置で変化します。それを竹内がコーナーに移動したことでフリーになり3P。
その逆にイランが逆サイドにキックアウトしたら竹内が追いかけて3Pをブロックします。竹内やべー。

残り7分の日本のメンバーは篠山、田中、馬場、竹内、ファジーカスです。竹内ずっと出てるじゃん。このメンバーってディフェンスの良いメンバーです。リードを持っているので、もう日本は積極的に攻める気はありません。
イランにはハーフコートオフェンスしかないので、しっかり守れるメンバーでボカスカ決められるのを避け、オフェンスはゆっくりやっておけばOKです。

なんか、また竹内が3P決めたので、もうこのまま終わりそうなので、イランの話をしましょう。
解説が「フィジカルが強い」「ミルザウェイ(4番)が、ミルザウェイが」としつこいのですが、特にこのセンター4番にあまり意味がありませんでした。走れないんだもん。
イランは8番と13番がいるし、この4番も上手いのでハーフコートの攻防では強いチームです。試合トータルでは日本がちょっとシュート決まっただけです。

しかし、彼らにはプランBがありませんでした。ベンチの6番と20番はNCAAでプレーしていたらしく、よりスピードのある展開が出来る選手でしたが、そこの良さは使われていませんでした。
多分、この2人を中心にしたプレー構成があったら、そのパターンに日本はついていけなかったと思います。それはそれでラマスは違う手を打つけどね。

「ビハインドの時どうするのか」
それがイランには欠けていました。追いかけようにも、どうすればよいのか。ハイプレッシャーで強引に流れを変えるプレーなんてないし、かといって、オフェンスでアグレッシブなシューティングなんてこともしませんでした。

しかし、実は日本にもプランBがあるかは怪しいのです。ビッグマン優位性にしたからね。でも、そこに竹内が2面性を発揮してくれました。意図的かどうかは知らないけど、明らかに前半と後半の戦い方が違ったよね。
戦術的利便性。ベテランになって、かつての姿はないかもしれませんが竹内はやっぱり日本のレジェンドだよね。っていうイラン戦でした。

◉「強くなった」って何が?

うーん、まぁ、やっぱり信じられないんだよなぁ。日本がこんな風に勝つなんてね。
まず試合スタートの良さは、まぁありがちな話です。ここは良い。チームとして長く一緒にやってきた中で、ファジーカスもいて、そういう能力は出来てきている。

しかし、最後まで波乱を起こさせなかったのは何故なのか。後半になって決めまくったのは竹内くらいなものでした。
「のらりくらりやろうぜ」ってのが、非常にしっかりと、ほぼ完ぺきに出来たのです。それが何故なのか、ってわからん。

少なくとも、この試合で目立ったのはラマスの上手さです。一度掴んだ流れを失わないラマス。ちょっと怪しかったのは太田と竹内の使い方で、調子が良いというか機能していると思ったら引っ張りました。これで後半に竹内が結果を残してくれたから、良い采配になりましたが、どうなのだろうね。

しかし、この手の展開は予選を通じて目立ちました。試合中のラマス上手すぎです。予選始まって4連敗して「ラマスの采配がひどい」なんて、試合がわかっていない批判もされていましたが、予選通じてラマススゲーって感じです。
でも、やっぱりちょっといくらなんでも出来すぎじゃね。

解説の言葉を借りるなら「バスケットではリバウンドとディフェンスが大切」です。じゃあこの試合の日本は、その部分で勝っていたのか?そんなわけないよね。かなり負けていたよ。
終わってみればファジーカスと比江島が20点オーバーです。でも重要だったのはエースキラーになった田中(馬場)と戦術的な柔軟性があった竹内です。富樫は知らん。

アルバルクトリオの働き、ってのは置いといて、上手く役割分担できていたとも言えます。オフェンスで働いた2人と、それ以外で働いた2人。そこにベンチメンバーを組み合わせていったラマス。

「日本は強くなった」
と言われると、うーんと唸ってしまうのですが、それは「強い」って表現の曖昧さからきます。だから強くなったってのが何なのか、表現を変えてみましょう。

「日本の〇〇が良くなった」
ということで〇〇を埋めてみてください。コメント欄に書いてね。

竹内は予選当初から巧みな働きをずっとしていましたし、比江島は得点で結果を残してオーストラリアに移籍しました。田中と馬場が登場するとディフェンスやチームプレーで貢献していました。辻が1試合だけ決めまくっただけでシューター的な役割の選手は重用してこなかったのも変化していません。

もちろん「八村・渡邊・ファジーカス」というのは1つの答えにはなります。だけど、八村と渡邊抜きでイランに勝っちゃったんだ。エースの安定は間違いなく大きなプラスですが、それは「凄い得点力でチームを急激に強くした」よりも、どちらかというと

ラマスの試合運びに安定感をもたらした

ってのが印象にあります。
まぁいずれにしても、これでほぼ予選突破は確実です。本当に強くなったのか、それとも試合運びの巧みさがもたらしているのか。ワールドカップでその結果を知ることになるでしょう。

そして八村がドラフトされたら、どうなるのかね?
一気に注目度が上がるだろうな。

10位以内のドラフト指名選手がいる。ってなればオリンピックの出場枠を渡さないわけにはいかないよね。なんて皮肉を言われなくて済みそうでした。

予選を通して批判もいっぱい受けたでしょうが、選手の皆さんも、何よりラマスもお疲れさまでした。もっとも本人たちはカタール戦に勝つことに集中しなければいけない状況でしょうが。


ウインドウ6 日本vsイラン” への5件のフィードバック

  1. 早速の記事公開、ありがとうございます。いつもは読ませていただくだけでしたが、興奮の余りコメントさせていただきます。

    私も、日本は強くなったというより、日本は「はっきりした」の方がしっくりきます。ラインナップや役割分担、長所、勝ちパターンがはっきりしたというんでしょうか。それは、比江島の使い方がラマスの就任当初と少し違ってきているように感じることもそうです。選手の特性を理解し、やることを徹底させていることが、良くなった要因かなぁ、と。この試合でも、熱くなって、役割以上のことをやろうとしないように、巧みにメンバーを入れ替えるラマスの気の利きように感動しています。ラマスの優れているところは、長所の組み合わせ方とメンタルコントロールなのだと思いました。どこぞの大都市のHCに教えてあげてほしいと思いながら見ていました。

  2. 良かったのは、後半相手が連続で決めて点差が詰まってきた時に、比江島選手らがファールをもらうプレーで得点を繋げることができたところだと思います。 エースがあれを出来るなら大崩れはしない。

    イランの13番うまかったですね。
    もっとドッチッチみたいに全部自分で行けばいいのに。
    あと、イランはスクリーナーをもっとうまく使って欲しかった。タイムアウト明けのプレーはほとんど成功してましたね。あんな体格があるんだし、日本もヘルプがお世辞にも上手いとは言えないのは見て分かったと思うんだけどな。多分、前半3点がもう少し入ってればなぁ…って感じなのかな。

  3. 日本は八村と渡邊のためなのか少しウイングがボールを持つ機会が増えた印象です、そこを比江島と田中(竹内)が上手く攻めてたという感じです。
    しかしゾーンにスクリーンは効くということをイランが教えてくれた前半でしたね、

  4. 正直なところ、シュートが決まる日だったという印象が強くて、あまり改善点というのは浮かびませんでした・・・。強いていうなら、日本はエースが良くなった。というんでしょうか。エースというか、ファジーカスにはやらせようっていうのがわかりやすかったのかなというか。Bリーグはあまり見たことがないのですが、NBAみたいにペースは早くないと思ったので、とりあえずビッグマンにやらせるのは合うのかなーとか思ったり。正直知識不足すぎてよくわからなかったです。でも勝てて嬉しいので、ひとまず無茶苦茶喜んでおきます!

  5. 日本のオフェンスがちょっと出来すぎな感もあった今日の試合ですが、とりあえずしっかりと勝てて良かったです。代表戦ということで戦術より個人の打開力の大きさを感じる試合だったと思ます。個人ではニック、比江島のオフェンスと田中のディフェンスはさすがという印象でした。太田、竹内はいいサポートメンバーという立ち位置で、いわゆる潤滑油てきな働きをしていたと思います。ただ残りのメンバーの「個」としてのインパクトは少なかったように感じます。馬場や篠山らはディフェンスでは貢献するけど、オフェンスでは合わせるくらいしか出来ていないため、比江島がもっと止められていたらかなり苦しかったのでは…
    また相手がゾーンをしてきたときに外から打つ選手が少なく、手詰まり感は否めませんでした。馬場、篠山らはかなりディフェンスも離されていましたし。金丸をなぜメンバーに入れなかったのか不思議でなりません。古川とかメンバーに入れてるなら金丸にしてくれよと思ってしまいます。
    まあ総じて日本の課題と考えているのは個の打開力という、すぐには改善できない問題なのかなと考えています。ただピックからの攻めはもうちょい改善出来たのではと思いますけれど。だいぶごちゃごちゃしているシーンが見られましたね。田中はアルバルクではカークといいコンビネーションを見せてくれているけれど、ニックはあそこまで機動力なきから難しいんですかね。
    なんにせよ次戦も期待しております。

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