休日と酒

オールスターなのでホリデーです。

ハーデンvsポール・ジョージ。それは試合中に働かせまくられているエース同士の打ち合いでした。

実際にこの2人は良く働いています。ハーデンはひたすらに得点を取ることを求められ、空前のワンマンプレーを発揮してはハイスコアを連発しています。
一方のポール・ジョージはエースとしてハイスコアを連発するだけでなく、ディフェンスでもエースキラーっぷりを発揮。攻守にハイレベルな活躍をしています。でもさ、この2人はそれが試合結果に出ているから救われるよね。活躍することでチームに勝利をもたらしているのがハーデンとポール・ジョージ。


一方でこの2人よりも最も長い時間プレーしている2人の選手はチームが苦しいからこそ、楽な展開でベンチに座る時間がなく、なおさらにプレータイムを伸ばし、だけど負けてばかり。
とっても苦しい時間を過ごしているけれど報われない。報われていないけど、プレーっぷりは十分に評価してよいのでした。
長い時間プレーしているのに試合に勝てないのだから、休みの日にはビールくらい飲んでくれってなもんです。

そんなわけで今回は「ホリデーとビール」の雑談

ブラッドリー・ビール 2158分
ジュルー・ホリデー 2144分


3位のトバイアスより100分以上長くプレーしています。要するにほぼ3試合近く長い時間プレーしているわけだ。ちなみに昨シーズンはレブロン御大がリーグ唯一の3000分オーバーと非常によく働かれましたが、この2人はレブロンを超えるペースで試合に出場しています。
時代は高速化しただけでなく、ベンチメンバーを上手く使えるチームが優位性を持つようになってきました。試合トータルで強くないと勝てない時代。

エースが働きまくるのが必ずしもチームにアドバンテージをもたらすわけではない。だけど、2人ともしっかりと貢献し続けている。だから、かわいそうに思えてくる。

◉ビールの場合

〇ビールのオン/オフ レーティング
オフェンス 110.2/101.0
ディフェンス 113.2/104.5

オフェンスで明確な違いがあるビールの存在。110を超えているわけだから、割と優秀なのですが、ビールがいないと酷いウィザーズです。
大黒柱のウォールが離脱し、その点では致し方ない面がありつつも、チームメンバーを考えると非常に苦しいものがあります。そんな悪いメンバーじゃないぞ。

今シーズンのビールは高い得点力を誇っていますが、3Pの確率が落ちました。落ちた理由はプルアップ3Pを多く打つようになったから。それでも36%近くの確率で決めており、個人で突破する能力に磨きがかかってきました。

〇ブラッドリー・ビール
得点 25.1点
FG 47.2%
アシスト 5.4
リバウンド 5.1
スティール 1.4
ブロック 0.8

なんとすべてキャリアハイ!!!
特に素晴らしいのはFGの高さで、2P55%近くあります。シューター系のイメージが強いですが意外とミドルの確率が高いわけではなく、インサイドへ切り込む能力が向上し、ゴール下シュートが増えました。
シュートの好調さではなくゴリゴリのエースムーブで得点を増やしています。ウォールの役割を引き継いだといえますが、マークが厳しくなっているはずが67%近いゴール下の確率を維持しているわけなので、なおさら高く評価できます。

チームとしてビールを頼り、頼られたビールはより高確率で得点を生み出しているのです。最近ではパスを回せてシュートの上手いサポートメンバーを増やし、ビールを活かす体制になっています。

長時間プレーしオフェンスの役割が大きくなり、それでいて得点効率を上げているビール。相手のマークも厳しくなっているはずにも関わらず、その活躍ぶりは称賛すべきものです。
ちょっと古いタイプのSGエースっぽくなっていますが、オールスターに相応しい個人能力を存分にみせてくれているのでした。

ビールがいなければオフェンスが構築出来ていないウィザーズは、そもそもハンドラー任せの事情もありますが、オフェンスのスタートになれる主役系キャラを減らしてしまった事情もあります。HCからするとビールを使う以外に道がない。
もともとウォールの突破力を中心に設計されていたウィザーズですが、ウォールが抜けてもカバーするだけの突破力を発揮しているビール。助けられているともいえますが、本来の強みとは違うよね。それでもハイアベレージのビールに称賛を。

しかし、ビールはチームにリードをもたらしていません。
37分のプレータイムで△2.3点。ウィザーズはチームで△3.0点なのでまぁ平均的でもあります。

つまりオフェンス面の課題からビールを長く起用しているし、それはレーティングで10近い差を生み出しています。ビールがいればよいオフェンスチームで、いないと最低レベルのオフェンスチーム。

でもディフェンスはその逆。ビールがいる時間に守り切れていない。

これがプレータイムが長いデメリット。ビール本人のディフェンスは悪くないけど、チームとしては致命的に守れないし、とにかくハードワーク出来ていません。
トップの位置から仕掛けることが増えたのは必要な変化ですが、切り込むビールを観て周囲がトランジションディフェンスに備えるような切り替えが出来ていません。だからビールがいない時間の方が守れるってのは、オフェンスシステムの問題でもあります。

ある程度のプレータイムに絞ることで全員が活力を持ってプレーできるのが流行系。特に高速化しているのでビールに頼っているツケはオフェンスよりも、そこから連動するディフェンスで出ています。
ビールはハードに動き回るけど、オフェンスの負荷が大きいのだから、せめてディフェンスは周囲がフォローしなければいけません。

素晴らしい働きを見せているビール。
しかし、チームとしての問題は大きいし、試合終了の時点で相手を上回るための戦略が欠けているウィザーズです。

◉ホリデーの場合

〇ホリデーのオン/オフ レーティング
オフェンス 113.2/101.8
ディフェンス  108.7/112.8

こちらは攻守に素晴らしい差を生み出しているホリデー次男。オンコートだと+4.5、オフコートだと△10.9。その差はなんと15.4もあります。
ホリデーの存在感が際立ちまくっているのがペリカンズの現状。オールスターにはアンソニー・デイビスではなくホリデーが出場すべきとすら言いたくなるのです。特にオフコートの時のレーティング差がやばいよね。

ビールと違うのは「エース」というわけではないこと。ADだけでなくランドルとミロティッチがいるインサイドがエース的な役割を受け持ち、その一方でプレーメイクをしてくれるのは常にホリデー。
ペリカンズはペイトンがケガで離脱していた時間が長く、その不在を1人で埋めていました。まぁチーム設計の失敗なわけですが、そこはいろんな事情もあるし仕方なかったけどね。

〇ジュルー・ホリデー
得点 21.1
FG 47.0%
アシスト 7.9
リバウンド 5.1
スティール 1.6
ブロック 0.9

ホリデーも得点がキャリアハイ。アシストも8本近くあるので非常に優秀な成績を残しています。またブロックがキャリアハイなのですが、これはチーム事情がもたらしている気も。
昨シーズンはオールディフェンスチームに選ばれたようにディフェンスの良さは折り紙付き。チームとしてのディフェンス力はアレなのにね。

ペリカンズの場合はオフェンスよりもディフェンスが属人的で、ホリデー(とAD)がいるから守れている部分も多くあります。どこにでも手を出してくるホリデーによって、強引にチームディフェンスにしているイメージ。
ただオフェンス面はケガ人が多い最近の事情を除けば、ホリデーに負荷をかけまくっているわけではないし、ていうかホリデーは3Pが決まらないし。

ホリデーがいないとプレーメイクの面で苦しすぎるのは事実ですが、ホリデーを起点に周囲がフィニッシュするチームオフェンスは出来ています。
攻守に高い貢献度を求められるだけに、長いプレータイムは大きな負荷をかけることになりますが、起点でありエースでもあるビールほどの重要性があるわけではない。

ただし、ってのがありましてホリデーがいることでディフェンスからの速攻パターンが増えてきます。それがオフェンス力に大きな差をもたらすし「ペリカンズらしさ」を存分に発揮するには欠かせない要素です。

〇速攻での得点
オンコート 11.5
オフコート 2.7

プレータイム的にはオンコートが3倍ちょっとなので、まぁまぁの差があります。ホリデーがもたらしてくれるのは、数字的な部分以上にペリカンズの勝ちパターンです。
試合開始からADを中心にして打ち合いを望み、トランジションからイージーシュートを増やしていく。だけど、ずっと打ち合っているようでいて、途中からディフェンスで違いを生み出して、自分たちのペースに巻き込んでいくのがペリカンズ。
その中心にいるのがホリデー。エースではないけど「どうやって勝つのか」という意味合いではADよりも存在感があるし、実際にクラッチタイムで働きます。

しかし、ビールのプレータイムの長さがもたらしたのが、チーム全体のディフェンス力低下なら、ホリデーのプレータイムの長さがもたらしたのは「勝ちパターンの喪失」です。
苦しい試合が多いペリカンズは、とにもかくにもホリデーを使わざる得なかったし、試合展開が苦しくなればなるほどホリデーはその働きを試合の早い段階から強めていきました。

昨シーズンは打ち合いを繰り返しつつ、4Qになるとホリデーがエースキラーとしてプレッシャーを強め、しかも得点まで生み出していましたが、どうにも今シーズンはそこまでスタミナが残っていません。

〇昨シーズンからの4Q変化
得点 4.6点 → 5.4点
FG 50.0% → 42.9%

得点の絶対値は増えていますが、効果的なプレーにはならなくなってきています。ちなみに3QまではFG49%なので、どうしても勝負所でスタミナ切れみたいになっています。
こんな数字を並べなくても変化は明らかで、3Qくらいになるとチームがオフェンスの打ち合いに耐え切れなくなりそうで、致し方なくホリデーはギアを上げます。
上げたのは良いけど、接戦が続くと交代させにくい事情もあってプレータイムが長くなり、さすがに4Qに失速するのでした。

前半に流しているといったら言い過ぎですが、お互いがオフェンスでやりあうような形にしておいて、後半になると徐々にプレッシャーを強めていく戦い方が勝ちパターンのペリカンズ。
早めにホリデーが動き出さないと苦しい状況は、プレータイムの長さが要因ではないのですが、働かされることでどうしても4Qで上回ることが出来なくなってきました。

チームはどうやったら勝てるのか。最大の武器をどこで有効に使うべきなのか。単にプレータイムが長いのではなく、戦い方への迷いを感じてしまうホリデーでした。

◉勝てないのはエースが悪いのか

この2人は走行距離でもトップ2です。リーグで最も走っている2人。ご苦労様です。
平均ではホリデーの方がほんのちょっとだけ長い距離を走っていますが、そんなに大きな差ではありません。しかし、攻守で分けた時にオフェンスではホリデーの方がかなり動いており、ディフェンスではビールの方がかなり動いています。

これは両者の特徴を考えると逆の気がしてきます。単にプレータイムが長いだけでなく、一般的な選手の平均移動速度と比べてもホリデーはオフェンスで良く動き、ビールはディフェンスでよく動いています。
自分が大きな役割を担っているのと逆の部分で運動量が増えてしまっているのです。

なお、ハーデンはこの2人に比べると驚異的に動いていないけどね。運動量25%オフって感じ。つまりさ、それで成立するようにロケッツは構成できているわけです。

「より大きな役割を担っている選手の運動量を減らす」
ということはチームを設計する中では大切な事項です。例えばオフェンスではビールへの負荷が大きいわけですが、本人はそんなに動いていないってのは、ビール中心に考えた形がそれなりに成立しています。だからオフェンスレーティングも高い。

素晴らしいプレーをしながらもチームの結果に結びついていない2人

勝てないチームのエースっていうのはそれなりに責任があるし、プレーに問題があることが多いわけですが、この2人は大活躍しており文句をつける要素が少ないのです。
あるいは勝てないチームは選手の特徴を引き出せていないケースがありますが、この2人はチームの中でしっかりと自分の良さが発揮されています。
だからこそ報われていないし、勝てないからこそプレータイムが長くなる。そこには悪循環が存在しているように見えてきます。

プレータイムが長いこと、あるいは走行距離が長いこと。それ自体に問題があるというよりは「エースがやるべきこと以外の部分」が論理的に構成できていない問題がありそうです。
でも、「それ以外に問題があるからエースのプレータイムが長くなる」って、もう何書いているのか意味わかんなくなってきました。いずれにしてもチームを俯瞰的にみると、上手く機能させることが出来ていません。

両チームともにADとウォールというより重要な選手がいるわけですが、セカンドエースにしては非常に論理的にプレーできているだけに、非常にもったいないのでした。
如何にしてプレーの負荷を減らしていくのか。まぁ今シーズン中に解決するとは思えないけどね。

◉あとがき

軽い気持ちで働き者の2人をとりあげてみましたが、走行距離のデータは興味深いものがありました。ビールがディフェンスで動かされてどうするんだと。

ハーデンやレブロンのスタミナの凄さは特筆すべきものがある反面で、この2人は試合中にサボりまくっています。全然動かない。だから、まぁ長い時間プレーしていてもおかしくないわけです。
特にロケッツは運動量を落とさせる方法論を考えて、実現させることでエース中心の戦略を作ってきました。これは試合トータルでの戦略です。

逆にウォーリアーズはスターを揃えているけど、彼らのプレー強度をシェアする形を作り上げています。攻守のバランスもそうですが、3Qのカリーと4Qのデュラントみたいな部分もあります。
いかにしてエースをサボらせて長時間プレーさせるのか。
それもまたひとつの戦略です。勝てないからプレータイムが長いのか。それともサボらせる戦略がないから勝てないのか。

考えても堂々巡りだから、休日に酒でも飲んで明日もまた頑張ってもらいましょう。


休日と酒” への5件のフィードバック

  1. ASのリザーブ発表のときにホリデーがsnubとして話題にすらならなかったのは悲しかったです。
    スタッツ的にはPGっぽいですがゲームメイクは得意ではなく、本人もオフボールで動きたい、2番がやりたいと以前に言ってました。ただ2番をやるにしてはシュート力(3P)が厳しいので、ハンドラー、ゲームメイクの出来る3番と組ませたら面白いのになと思いました。
    管理人さん的にはホリデーは誰と組んだら、もしくはどこのチームに行ったら面白いと思いますか?

  2. 休日(ホリデー)と酒(ビール)ですか笑

    ビールの2ptFG、ホリデーのレーティング驚異的ですね。両者ともチーム成績に反映されてないのが、ツライですね…

  3. ビールがドライブして倒れながらもレイアップを決めるシーンが増えてきたような気がします。
    だいたいそういう時は相手も早く攻めてくるのでトランジションで何かしらミスが起きてイージーに返されるシーンを観るとあんなに頑張って点をとったビールが不憫で仕方ないです。サンダーからグラントとかファーガソン連れてきて欲しい。
    レイカーズもですけど内部に問題があるチームはチームディフェンスに約束事がないのか、徹底できてないのかで崩壊してる印象です。

  4. 突撃するエースがいるチームにはトランジションディフェンスを頑張る仲間が必要ってことてすよね。今レイカーズになくて、サンダーにあるのがそれだと思ってます。

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